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輸出、円高、デフレの嘘と日本の人件費


 円高、人件費など輸出に関わるものでひとセットだったのですが、内容にまとまりなくタイトルだけですごく悩みました。


 とりあえず、人件費の話から。

 日本の人件費はどれくらい高い?- R25(2012年2月25日11時00分)というのがありましたので、読んでみました。

明治大学国際日本学部の鈴木賢志准教授が、スイスの大手金融機関UBSが作成した調査レポート「Prices and Earnings」2009年版を日本視点で再計算し公表したデータによると、東京の平均は、税引き前で380万円。世界的に見ると60カ国中7位だった。ちなみに、東京より上の5都市は以下の通り。

1位チューリッヒ(スイス)563万円
2位コペンハーゲン(デンマーク)533万円
3位ニューヨーク(アメリカ)500万円
4位オスロ(ノルウェー)423万円
5位ルクセンブルク393万円

上位は一見して北欧が多いが、北欧には税金が高い国も多い。そこで税引き後の年収で見たところ、東京 は307万円で5位という結果に。たしかに世界的に見て日本の賃金は高いようだ。

では、日本が進出している生産拠点の国々はどうだろう。経済産業省「海外事業活動基本調査」2009年版によると、日本企業の海外現地法人の数は、北米 15.8%、中国30.0%、ASEAN4(タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア)が16.2%、NIEs3(シンガポール、台湾、韓国)が 11.7%とのこと。そこで、これらの国を前出のデータ(税引き前)で見てみると、

28位ソウル(韓国)181万円
30位シンガポール145万円
49位上海(中国)74万円
58位ジャカルタ(インドネシア)34万円

といった結果に。日本の製造業と熾烈な競争を繰り広げる韓国も、賃金水準は日本の半分以下。グローバル企業のアジア本社が集中するシンガポールに至っては、日本の4割にも満たない。こうやって比べてみると、日本の人件費がいかに高い水準かわかる。しかも今は、1ドル=70円台という超円高時代。円建てで見れば、日本人の人件費はさらに高くなっているのだ。

だが、残念ながら「賃金水準の高さ=暮らしの豊かさ」というわけではない。ちなみに日本は人件費も高いが、物価も高い。前出のデータによると、東京の食料の値段は世界1位、賃料を含む一般的な物価水準は世界3位。世の中ではデフレといわれているが、それでもなお、日本の物価は世界トップクラスなのだ。我々サラリーマンにとってはなんとも切ない状況である。

 東京を基準としているのはどうかなぁ?輸出には向かない話かなぁ?と思ったのですけど、「日本が進出している生産拠点の国々はどうだろう」とありますので、最初から輸出を意識して書かれたものみたいです。あんまり良い記事じゃなかったですね。

 上記は証拠不足ですが、多くの輸出ライバル国と比べて、日本の人件費が上回っているのは確かでしょうから、輸出業を営む上である程度不利になるのは間違いありません。


 それとともに悪者とされるのが「円高」です。

 これは海外でも同様の見方らしく、円高は病か症状か 何をどう治療すべきか(要登録 ダイヤモンド・オンライン 2011/10/14 加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家])によると、"フィナンシャル・タイムズもBBCも、きわめてスタンダードな正統派の解説をしているわけです。日本は当面、円高を何とかしなくてはならない"としていたようです。

 一方で違う視線も記事には紹介されていました。

 これに対して10日付のロイター通信記事が、別の角度から分析していました。「日本にとって、円高を抑えるより円高と共存する方が簡単だ(Easier for Japan to live with strong yen than tame it)」という見出し記事です。

(中略)

 記事では仏銀行ソシエテジェネラルの在京エコノミストは、円の為替レートが高いか低いかとは関係なく「すべてはロビー活動」ゆえのことだと話しています。「官僚は企業に何が欲しいか尋ねて、企業はこれこれが欲しいと答える」。それを受けて政府は、日本企業による国内生産拡大と海外資産獲得を助成するのであって、為替レートは実際は無関係なのだと。

 企業は実際には政府助成がなくても円高のチャンスを利用して海外資産獲得に動くし、政府助成があっても日本の製造業の「空洞化」は抑止できないとアナリストたちは見ていると、記事は書きます。日本企業が生産拠点を海外に移すのは、円高だけがその理由ではなく、低い税率や安い労働力や成長市場との近さも要因なので、円高対策だけとっても解決にはならないというのです。

 (中略)ならばどうすべきかというと、短期的には政府は為替レートに汲々とするよりも、12兆円にもなる復興予算を経済につぎ込むべきだし、長期的には農産品などに市場を開放し輸入を促進し、輸出入を均衡させるべきというのが、この記事の提案です。

 実際の話、為替レートはコントロールしきれませんし、現実的な対応を検討すべきだというのはその通りだと思います。

 記事は、内需拡大と輸出促進のほかに、高齢化・少子化の進む日本にとっての治療法は「周知だ」と書きます。社会的・政治的タブーを打ち破らなければ実現できないが、それでもどうすればいいのかは「周知だ」と。つまりは、外国人労働者をもっと受け入れることと、伝統的な男女の役割の定義を緩めることだと。後者について記事ははっきりとは書いていませんが、つまりは子育て中の女性がもっと労働力として市場に出る必要があり、そのためには保育ケアが今よりもっと安価に提供されなくてはならないというわけです。

 「外国人労働者をもっと受け入れる」は日本人の嫌がるところですが、その前にあった「海外資産獲得」も同様です。

 外国人労働者の受け入れ+出産した女性の再就業+内需拡大を実現すれば、日本にとって「最大の諸悪の根源(the biggest scourge)=デフレ」の対策になる。デフレこそが、慢性的な円高の原因でもある(デフレで購買力が上がる円に対して、ドルは購買力が下がり続けているので)。デフレを何とかしなければ、円高は続く。それが、このロイター記事の主張です。つまり病気の比喩をしつこく使うなら、デフレこそが病で、円高は症状ということでしょうか。そして治療法は、内需拡大と女性の再就業と外国人労働者受け入れだと。

 ここにうん?と思い、原文を読むと確かに「deflation」とありました。検索して他を見てもデフレ=円高みたいですね。ただ、内需拡大はデフレ対策と言うよりは景気対策が本質で、結果的にデフレ克服という順番だと思いますけどね。

 この私の感想は10月に掲載したときの感想をそのままですが、その後書いた実質実効為替レートや実質為替レートで見ると超円高は嘘には以下のようにありました。

 日本については、円高が輸入品の価格を引き下げ、デフレにつながっている側面が大きいとされるそうです。

 ただし、GDP(国内総生産)に対する輸入の比率は1割前後に過ぎないから、やはり『円高をデフレの主因とまで考えるのは無理がある』(JPモルガン・チェース銀行の佐々木融・債券為替調査部長)との指摘は多いという話です。

 また、そもそも私はデフレ悪玉論を信じていません。なぜならデフレの定義を読むと、デフレは不況の原因ではなく結果だからです。

 多くの専門家が定義と違う解釈をしているのが不思議でしようがなかったんですけど、海外でもそうなんですね。


 さて、日本の輸出のライバルである韓国は、円高に悩んでいた日本とは違い、ウォン安で輸出を増やしました。

 では、ウォン安(日本で言えば円安)と輸出好調は、本当に国民を幸せにしたのでしょうか?


 "韓国、貿易額「1兆ドルクラブ」入りで深まる矛盾"(リンク切れ 日経新聞 アジアBiz新潮流 ソウル支局・島谷英明 2011/12/19 7:00)という記事には以下のようにありました。

世界で9カ国目。1兆ドルの水準を昨年も維持していたのは6カ国にとどまる。「2020年には2兆ドルを目指す」と韓国の鼻息は荒いが、国内では輸出を増やしてもその果実を実感しにくくなっているという矛盾が膨らんでいる。

 「イ・ミョンバクOUT!」。ソウル市内では11月22日の国会本会議で与党ハンナラ党が米韓自由貿易協定(FTA)の批准同意案を強行可決して以降、断続的に反対デモが続いている。「1%の大企業の輸出や雇用のために99%を犠牲にするのか」。デモの参加者らが糾弾しているのはFTAだけではなく、その背後に感じとる李政権の「大企業優遇」の姿勢にもある。

 こうした見立てはあながち飛躍した論理とは言い切れない。「貿易はメシの種と働き口の源泉」(李大統領)というのは間違いではないだろう。だが単純に輸出を増やせば、それだけ国内経済が広く潤う構図は弱まっている。むしろ輸出のために国民が犠牲を強いられる側面も強まってきた。

 韓国銀行(中央銀行)などの集計によれば、最も新しいデータである2009年の輸出生産誘発係数は1.9371。例えば1000ドル輸出すれば国内の生産を1937ドル増やす波及効果があることを意味している。だが、この係数は1995年の2.0166から大きく低下している。

 係数で測ると、ごくわずかな差のように見えるが、今年の見込み輸出額5500億ドルに当てはめると95年と09年の生産誘発額の差は437億ドル(約3兆4000億円)もの規模になる。

 背景には、部品や素材の調達先を国内ではなく、日本などの海外に頼る割合が比較的大きい電機・電子分野の輸出伸長があるとみられる。電機・電子が輸出額全体に占める比率は、サムスン電子などの世界市場での躍進と軌を一にして95年の12.5%から足元で4割弱に上昇している。

 半導体をはじめとする電子デバイスなど労働集約型ではない製品の輸出増加も手伝って、輸出が雇用を創り出す力も落ちている。


 09年の雇用誘発係数は輸出10億ウォンあたり7.3人。07年に急低下した後、やや持ち直しつつあるものの06年の水準を下回っている。09年の民間・政府による投資の雇用誘発係数は13.5人と上昇傾向にあり、輸出との差が広がっている。

 輸出が国内で金の卵を産む鶏というのは古い発想になりつつある。輸出主導による成長の果実を実感できない国民は、輸出を押し上げるウォン安が物価高などに拍車をかける現状に不満を募らせやすくなっている。

 08年からのウォン安基調の持続で、輸入物価が輸出物価以上に上昇して交易損失が発生。国民の豊かさを示す実質国内総所得(GDI)の伸び率が実質国内総生産(GDP)の伸び率を下回る傾向が定着している。国際通貨研究所の調べでは、交易損失の規模はGDPの約7%に相当し、ウォン安の負の側面が表れている。

 日本のFTAだと輸出はそれほど伸びないという話もされていますが、韓国は輸出が目的のようです。しかし、輸出が雇用を創り出す力が落ちて、国民の受ける恩恵は落ちているようです。

 理由は「労働集約型ではない製品の輸出増加」とありますけど、これは防ぎようがない歴史的な流れですね。


 とりあえず、ここではウォン安の話。

 円高(ウォン高)は良い側面もあり、輸入の際には有利になります。結局、長所と短所は必ずあります。


 駄目、駄目という話ばかり書いてきて、次もまた駄目な話なのですが、一つのヒントとなりそうです。 

シャープの旗艦工場だった亀山では、液晶パネルの生産効率を高めるための設備更新が進んでいた。

 厳戒態勢の中で最新鋭の生産装置が運び込まれる。工場内部の取材はシャットアウト。トラックで運ばれた装置を工場に搬入する通路は物々しくブルーシートで覆われた。

 亀山工場の人々が警戒していたのは海外メーカーの偵察部隊だった。半導体のDRAMでは製造装置メーカーを経由して生産ノウハウが台湾や韓国に流れ、価格競争に持ち込まれた、というのが業界の通説。「同じ轍(てつ)を踏むまい」。パネル投資では技術流出に神経をとがらせた。

(中略)

 このころの日本の電機業界には「パネル至上主義」とも言える高揚感が漂っていた。ある企業はそれを「製造業の国内回帰」と呼び、別の企業は「ブラックボックス戦略」と呼んだ。

 自動車も電機も海外生産が主流になり、日本で作って輸出する「モノ」がどんどん減っていく。そんな中、世界市場で競争力を持つパネル産業の勃興は「国産品で世界と戦う」という往年の必勝パターンの復活を思わせたのだ。

 だが、日本の電機各社がパネル至上主義にのめり込んでいったそのころ、米国はまるで違う方向に動き出していた。

 シャープが堺工場の建設を決めた2007年は、米インターネット検索大手のグーグルがスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)向け基本ソフト「アンドロイド」を公開した年である。

(中略)

 それより少し前の2006年秋にはSNS(交流サイト)の米フェイスブックが一般向けサービスを開始している。人々の余暇の過ごし方は「居間でテレビを見る」から「スマホで仲間と交流する」に変わった。この変化がテレビから「茶の間の王様」の地位を奪った。

 王様の地位を追われたテレビは年率3割の価格下落が続き、今や40インチの液晶テレビが3万円台で売られている。「1インチ1万円が勝負どころ」と言われていたパネル事業は「1インチ1000円割れ」の惨状だ。

 日本のテレビメーカーは韓国メーカーに敗れたとされるが、日本の家電量販店に韓国メーカーの製品はほとんど並んでいない。海外では韓国勢が世界市場を制覇したが、先頭に立つサムスン電子ですらパネル事業では利益が出なくなってきた。

 日本はパネル戦争で韓国に敗れたというのは近視眼的な見方であり、大局では米国発のネット革命に足をすくわれたのではないだろうか……。

 スマホの付属品であるイヤホンで3万円の高級品が売れている。情報を取り込むメーンゲートはテレビからスマホに移り、消費者はメーンゲートであるスマホには出費を惜しまない。一方でサブゲートに転落したテレビは「とりあえず映ればいい」と考えている。テレビの急激な値崩れはその証左ではないか。

テレビ敗戦「失敗の本質」 シャープ、パナソニックを惑わせた巨艦の誘惑(2012/3/20 11:07  日経新聞)

 どうまとめて良いか頭を悩ませましたが、円高と国内雇用と海外進出 新製品と新産業で紹介したものと重なるところを感じました。

 そこでは、価格決定権を獲得するには画期的な新製品を開発するべきであり、さらに供給トラブルの可能性を考えれば「どこにでもある素材や部品を使って、どこにもない製品を開発する」ことだとありました。

 それがとても難しいことで、かつ日本は苦手っぽいのですが、みんなが欲しいと思う製品じゃないと売れませんし、大したことない製品なら買い叩かれて利益を出せません。

 人件費などの条件の悪い中で輸出業を中心としたいのであれば、そこは必ず突破しないといけないんじゃないでしょうか?


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  ■実質実効為替レートや実質為替レートで見ると超円高は嘘
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  ■円高と国内雇用と海外進出 新製品と新産業
  ■「輸出立国日本はもう無理」論 ~製造業はダメ~
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