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茶のしずく問題、悠香の対応は?厚労省の評価は?


 <茶のしずく問題、悠香の対応は?厚労省の評価は?>、<コムギのアレルギーリスクを事前に予測可能だったのか?が争点>など、過去に書いた茶のしずく石鹸アレルギー問題についてまとめています。


●当初の3倍以上!茶のしずく石鹸アレルギー問題 発症者数増加

2012/3/26:「茶のしずく」アレルギー1500人 厚労省まとめ(2012/3/23 21:13 日経新聞)によると、せっけん製造販売会社の悠香(福岡県)が販売した「茶のしずく石鹸(せっけん)」の旧製品で小麦アレルギーの発症が相次いでいます。この件に関して悠香は厚労省に報告しているようですが、2011年10月時点での発症者の報告は471人でした。

 しかし、2月末までの事例についての報告では、発症者は全国で1567人に上り、3倍超に増加。現在の商品には原因とされる小麦由来成分が含まれておらず、同厚労省は「新たに被害が拡大したわけではなく、旧製品で過去に発症した人が報告している」とみているようです。

 また、別の記事茶のしずく:アレルギー発症報告、1786件に 厚労省佐々木洋 毎日新聞 2012年3月23日 20時29分(最終更新 3月24日 1時42分)ではこれより多い被害件数でした。茶のしずく石鹸のせいで症状が出ているとは気づかなかった人が多いでしょうから、まだまだ増えるかもしれません。

<悠香(福岡県大野城市)が販売した「茶のしずく石鹸(せっけん)」の旧製品によるアレルギー発症問題で、厚生労働省は23日、10年9月から12年2月末までの発症報告が計1786件になったことを明らかにした。悠香には昨年11月時点で500件超の報告があったが、関係学会などの注意喚起により大幅に増えた。
 厚労省によると、せっけんなどの医薬部外品や化粧品の使用による全身性アレルギーの報告はこれまでほとんどなかった。このため、専門家は日本アレルギー学会のホームページを通じて症例を集め、発症予防や診断基準の確立に向けた研究を進めている。
 厚労省が同日の医薬品等安全対策部会で行った説明によると、製造販売業者からの報告が1567件、医療機関からが219件あった。このうち入院などが必要な重症例は、それぞれ172件、54件。ただし業者と医療機関からの報告は重複している可能性もあるという>


●小麦が原因の「食物依存性運動誘発性アナフィラキシー」がある

 アレルギー症状に関しては、日経新聞では、<目の周囲が腫れることが多く、使用後に小麦を食べた後の軽い運動でも呼吸困難に陥ることがある>としていました。毎日新聞はもう少し詳しく、以下のような説明です。

<日本アレルギー学会や厚労省によると、アレルギーの原因とみられるのは旧製品に含まれる小麦由来成分「グルパール19S」。グルパール19Sが洗顔などで皮膚から吸収されて体内で異物と認識され、アレルギーの原因となる抗体が作られるため、小麦を含んだ食品を食べると食物アレルギーを発症すると考えられるという>

 検索して出てきた2012年3月19日の医療相談室 アナフィラキシー、日々の注意は?(読売新聞)では、<「食物依存性運動誘発性アナフィラキシー」と診断されました。小麦が原因だそうです。日々、どんなことに注意すればよいですか>(60代女性)という質問に医師が答えていました。

・永倉 俊和 用賀アレルギー クリニック院長(東京都世田谷区)
<ご質問の病気は、特定の食品を食べた後に体を動かすと、呼吸困難や血圧低下による失神などの症状(アナフィラキシー)を引き起こす病気です。アレルギー反応の代表格で、すぐに治療しないと命を落とすことさえあります。(中略)
 質問の方がどうかはわかりませんが、食べ物に小麦が入っているかどうかを常にチェックし、食べた後はできるだけ安静にするよう心がけましょう。
 また、緊急用の自己注射(エピペン)を常に携帯してください。呼吸困難や意識の低下などを自覚した場合、直ちに太ももの外側に注射します。この注射を打ってから病院に行くと、何もしない場合と比べて症状が軽く済み、救命率も大幅に上がります。
 小麦の成分が入ったせっけん(商品名=茶のしずく石鹸(せっけん))を使った後に小麦を食べて運動し、この病気を発症したケースが報告されたことが国などの調べでわかっています。該当商品はメーカーが自主回収し、今は流通していないとのことですが、詳しくは、厚生労働省やリウマチ・アレルギー情報センターのホームページなどでご確認下さい>

 いろいろと過敏になりすぎるとそれはそれで心身を痛めますが、石鹸が原因というのはたぶん多くの人に予想外だったでしょう。こういう形の被害もあるというのは心に留めておくと、何かあったときの原因を推測するのに役立ちそうです。


●「迅速な対応」茶のしずく問題、悠香の対応は?厚労省の評価は?

2012/4/26:書きたいことがたくさんあってあまり書いていなかった茶のしずく問題ですが、どうしても触れておきたいことが出てきたのでもう一度。前回引用部には「厚労省によると、せっけんなどの医薬部外品や化粧品の使用による全身性アレルギーの報告はこれまでほとんどなかった」という話がありました。

 この問題は特異なケースであったので茶のしずくを販売していた株式会社悠香は問題を予想することはできなかったように見える書き方です。この予測可能・不可能は別として事が起きてしまった以上、その対応がとても大事になってきます。それが茶のしずく問題では良くなかった可能性があり、これは一度書いておいた方が良いと思いました。

 この問題について精力的なのは、ネットアイビーニュースというサイトです。いくつも記事がありますが、私がタイトルを見て驚いたものが、厚労省が「悠香の対応は迅速」と評価?~茶のしずく事件DM(1)(2012年3月 5日 12:55 山本 剛資)というもの。販売元の悠香は厚労省に褒められたそうなのです。

<NET-IBに匿名の封筒が届いた。その封筒には悠香から送られてきたというダイレクトメールと、一通の手紙が添えられていた――。(中略)
 「私は悠香商品を使用した実績がありますが、被害にはあっておりません。会員にこうした文章を送り、自己防衛に走っているようです。反省の『は』の字もありません。どうか糾弾してください」
 (中略)この文面で最も驚かされたのは、「このような対応(小麦成分を抜いたこと・被害者への対応)につきましては、専門家からも、『悠香の対応等は、速やかで妥当であった』とのお言葉を、厚生労働省からも、『悠香の対応は、迅速かつ適切であった』とのコメントを頂戴しております」というくだりだ>


●「迅速な対応、ありがとうございました」というやり取りはあった

 しかし、作者が厚労省に確認すると「現状から、そのようなコメントを出すことは考えにくい。(誰がコメントしたか)確認を取るのは難しいが、通常、行政側が自主回収の対応を評価するようなことはない」と否定的なことを言っているそうです。また、他の評価も以下の通りだといいます。

<また、専門家に関しても、NET-IBでは医療関係者や業界関係者、関連団体、国民生活センター、弁護士など、これまで多くの専門家を取材してきたが、「悠香の対応等は、速やかで妥当であった」という言葉は全く聞くことができなかった。聞こえてくるのは「悠香の対応はひどい」である>

 リンク記事から続けて読める続報では、被害者から「厚労省が『悠香のDMの内容は虚偽』と認めた」と連絡が入ったとのこと。NET-IBは被害者が話をしたという担当者に聞いてみると、以下のようなやり取りを悠香側としたという話です。

<この担当者は、個別の対応で「迅速な対応、ありがとうございました」「ご協力、ありがとうございました」などと、メールのやり取りをしたことを明かした。だた、「全体の対応については評価していない」とし、前回の担当者同様、「行政側が企業の対応を評価することはしない」と加えた。悠香の対応に関してはコメントを出していないため、悠香DMの厚労省のくだりは「事実無根」として問題ないと語っている。
 どうやら悠香は、メールや電話などで挨拶的に交わされる言葉を拡大解釈し、「厚生労働省からも、『悠香の対応は、迅速かつ適切であった』とのコメントを頂戴しております」と記載した可能性が高い>


●厚労省から注意喚起後もリスクがある石けんのテレビCMを流す

 不祥事企業トップはジャパネットたかた高田明社長を見習え!で紹介したジャパネットたかたは、すぐさま「販売自粛」を宣言したのが良い対応だと評価されました。一方、茶のしずく石けんの場合は、「悠香は2010年10月に厚労省から注意喚起を受け」た後もコマーシャルを続けていたとネットアイビーでは指摘しています。

<『茶のしずく』石けんの使用者は、まさかCMに出ている製品が、小麦アレルギーの原因だとは思うはずがない。これは被害を拡大させた要因の一つだ。死に至る可能性もある危険な石けんなのだから、少しでも早く自主回収を決断すべきだった。そして自主回収に関するテレビCMを放送するなど、告知にも全力を傾ける必要があった。それらをしていないのに「悠香の対応等は妥当であった」はないだろう。
 そもそも悠香は、「会社のトップによる説明」という最低限の説明責任も果たしていない。「真実は一つ」と言い切る自信があるならば、堂々と記者会見を開き、中山社長自らの口で語ればいいのだ>


●茶のしずく製造元のフェニックスは安全性試験を行っておらず…

 また、被害発生の対策は可能?~茶のしずく事件DM(6)(2012年4月 5日 07:00 山本 剛資)では、問題の成分「グルパール19S」を含む石鹸を作った製造元の(株)フェニックスにも罪がある可能性も指摘しています。

<グルパール19Sをフェニックスに販売した原料会社の(株)片山化学工業研究所は、データ・マックスの取材により、安全性確認試験を実施していないことがわかっている。片山化学工業の代理店は、フェニックスにグルパール19Sを販売する際、成分の規格を示すMSDS(化学物質安全性データシート)を提出し、安全性試験が行なわれていない旨も説明したという。グルパール19Sはもともとパンをふっくらさせる成分で、食品以外では整髪料での使用実績しかなかった。
 もちろん「加水分解コムギ末」は医薬部外品の成分として、厚労省が認可している成分である。ただ、フェニックスは化粧品での実績がなく、安全性確認試験もされていないことを、販売先に告げていたのだろうか。
 (中略)安全性に問題がある成分をわざわざ使用する会社が悠香も含め10社もあるとは考えにくく、フェニックスは石けんの中に、安全性に問題がある成分が含まれていることを、販売先に告げていなかったと思われる>

 おそらく本来であれば、安全性試験を行うべきだったのでは?という意味でしょうね。実は同じ加水分解コムギ末でも、(株)成和化成は動物実験の安全性試験をやっていたとのこと。なお、この『Promois WG』はグルパール19Sと比較して分子量が小さいもので、今回のものよりリスクがむしろ低いものでした。

<「タンパク加水分解物は、分子量が大きいと、アレルギー症状が発症する可能性がある」ということも、基礎知識として知っておく必要があるだろう。大手化粧品メーカーに、このことを知っているか聞くと、「異物と認識される程度に大きな分子量を持つたんぱく質の場合、そのアレルギーの可能性を考慮しなければならないのは、当然のことであると認識しております」との回答が返ってきた。さらに「当社が化粧品で使用している原料は、タンパク加水分解物を含めて、じゅうぶんな安全性試験を行ない、安全性が確認できた原料のみを使用しています」と話した>


●茶のしずく石鹸集団提訴535人、最終的に1000人超の見込みに…

2012/5/28:悠香の「茶のしずく」一斉提訴へ、通販各社に問われる安全への〝信頼〟(2012年4月26日 19:56)では、冒頭によると、全国で組織された被害者弁護団がついに悠香を一斉提訴。第一次提訴の原告は535人で、損害賠償請求額は70億円超に上りました。

 この提訴に関わってくる法律にPL法があります。このPL法について「茶のしずく」一斉提訴~PL法って何??(日経ウーマン 2012年4月27日 07:29(司法書士法人SOLY 代表社員 中村 麗子))では、わかりやすく説明していました。

 通常、、日常生活において、「訴えてやる!」などと言う場合は、民法の不法行為に基づく損害賠償請求権が多いそうです。ただ、この場合、被害者である消費者の側が、「自分が損害を被ったこと」に加えて、相手方の販売会社の「故意(=わざとやったか)」か「過失(=注意を怠ったか)」があったかを証明するというのはハードルが高いです。

 そこで作られたのが、PL法(製造物責任法ともいう)という法律だそうです。この法律によって、消費者側は、「製造物に欠陥があった」ことを証明しさえすれば、製造者側に「故意」や「過失」がなくても、責任を負わせることができるようになった…と説明されていました。

<同法が施行されることによって、製造業者側の「製品の安全」対する関心が高まったと言われています。それはそうですよね。それまでは、仮に製品に欠陥が見つかったとしても、その事について「故意」「過失」がなければ責任が問われなかったけれども、PL法が施行後は、欠陥があって、それによって何かの損害が生じれば、必ず責任を負わなくてはならなくなったのですから。
 そこで企業としては、「表示・取扱説明」を充実させたり、「製品の安全性を重視する社内体制の構築」をしたり、「PL保険に加入」することなどが対策として練られることになり、これがひいては消費者保護につながっています>

 今回の茶のしずくの訴訟においても、やはり「損害賠償をする根拠は、PL法(製造物責任法)に基づく損害賠償請求権」という風にPL法は深く関わってきます。


●コムギのアレルギーリスクを事前に予測可能だったのか?が争点

 ここで最初の記事に戻ります。やはりPL法の話が出ており、裁判の争点は、いくつかあり、その一つが、PL法が定める「開発危険の抗弁」という免責事由。製品を開発した時点で欠陥を予見し得なかったか、というものです。予想しようがなかった場合は仕方ない…ということになるのでしょう。

 ただし、<弁護団は「免責が認められるのは開発当時の"最高水準の知見が基準。アレルギーの原因とされる加水分解コムギ末の懸念を示した文献はすでにあり、予見できた」と一蹴>しているそうです。また、 もう一つの争点は「損害」の評価だとされていました。

<交通事故等の損害賠償を参考にするが、これらは身体の一部を失うなど"目に見える被害。食事制限や行動制限、精神的ストレスなどアレルギーの損害をいかに認めさせるか、この点「食事制限の範囲が広範に及ぶなど日常生活への影響が大きい実態から立証していく」(同)とする。
 弁護団は1~2年の早期解決を目指し、被告を法人のみとした>

 なお、東京弁護団・中村忠史弁護士との一問一答では、「第三次提訴を含めた原告数の見通しは?」という質問に、以下のように答えているやり取りがあり、現在より提訴する人が増えることはほぼ確実なようです。

「1000人はいくと思う。9つの弁護団が第一次提訴に間に合わなかった。東京弁護団は150人が受任手続きを行っており、今回の提訴に間に合わなかった方が70人。新規申し込みを踏まえ100人は見込む」


【本文中でリンクした投稿】
  ■不祥事企業トップはジャパネットたかた高田明社長を見習え!

【関連投稿】
  ■安愚楽牧場被害は詐欺ではないのか?
  ■医療・病気・身体についての投稿まとめ

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