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格安航空会社LCC、実は薄利多売でなく高収益


 倒産して良かったJAL(日本航空)とANA(全日空)のウォルマート式LCCにおいて、LCCは実は通常の航空会社とさほどサービスは変わらない、薄利モデルではなくきちんとした収益性の確保を目指しているといった話は書きましたが、この点についてより詳しく書かれた「LCC」値段のカラクリ(PRESIDENT 2012年3月19日号)というシリーズがありました。

 LCCというと、パイロットは人件費の安い国の人材を採用し、機材は大手のお古を使い倒す「安かろう、悪かろう」のエアラインというイメージが強く、ぎりぎりの利益しか出ないビジネスと見る向きも多い。だが、それは誤りだ。(中略)

 安さだけに目を向けるとLCCの本質を見誤る。飛行機はいずれも新造機で、B747やA320の操縦経験のある日本人のベテランが操縦桿を握る。何より、薄利多売のビジネスではない。利益率はむしろFSA(フルサービスエアライン=既存の航空会社)以上だ。10年のエアアジア(マレーシア)の売上高営業利益率は27.1%、ライアンエアー(アイルランド)が13.4%。一方、JALは13.8%、ANAは5.0%。LCCが世界の空を席巻しているのは、FSAの半額で販売しても2倍の利益を生み出す仕組みを構築しているからである。

 ただし、倒産して良かったJAL(日本航空)とANA(全日空)のウォルマート式LCCでは、「欧米航空会社では本体との路線競合を避け、グループ内LCCの路線の収益性が低くなるなど失敗事例も多い」という失敗例もありました。

 また、今回のシリーズでも世界のLCCのシェアを示すとともに、その難しさが指摘されています。

 01年にはわずか8%だったLCCのシェア(座席数ベース)は、11年には24%に達した。

地域別に見ると、ヨーロッパではすでに35%以上に達し、北米でも28%強。だが、アジア・パシフィック地区では18%にすぎず、日本を含む北アジアに限定すると4%だ(航空経営研究所調べ)。鎖国に近いほどのLCC発展途上エリアも、もう世界の趨勢とは無関係でいられない。成田空港の年間発着枠は現在の22万回から14年度には30万回に増枠され、4本目の滑走路が完成した羽田空港も30万回から最終的には44.7万回に増える。LCCを受け入れる外的環境は着実に整いつつある。

航空経営研究所取締役事務局長の紀和夫氏は言う。

「海外のLCCをANAもJALも見て見ぬふりをしてきた。下手に動けば、儲け頭の路線に影響が出るからです。外資は規制により事業会社への出資が3分の1を超えられないため、単独では日本に進出できません。しかし、足かせがない異業種の日本企業と組めば進出は可能です。それは避けたい。だったらいまの段階で自分たちが手を組もう。そう考えたのでしょう」

 ただ、目標としては、最初から薄利を目指しているわけではないということです。

「LCCのビジネスモデルは従来のものとはまったく違う。目指すのは『空飛ぶ電車』。このコンセプトに基づいて、コスト削減ではなく“コストマネジメント”を図っている。楽しみながらやりくりをしています」

LCCの利益率の鍵は、1座席を1キロ飛ばすのにかかる費用(原価)にある。FSAの平均が5円なのに対して、ライアンエアーは2.3円、エアアジアにいたっては1.81円と3分の1に近い(航空経営研究所調べ)。原価を抑えるには、機材、空港費、人件費、燃油費、販売費などあらゆる要素を見直さなければならない。


最初のポイントは機種の選択だ。座席の収容力と燃費のよさ、乗客の乗降時間が短くすむA320かB737。短距離向けの機種のどちらかに絞り込めば効率はよく、一つの機種ごとにトレーニングを受け資格を取得しなければならないパイロットや整備士の育成費用が軽減できる。機材が新しければメンテナンス費用も少なくすむ。これはLCCの定石だ。

 (中略)座席はすべて革張りだ。高級感を演出するためだが、拭くだけで掃除が終わるという理由も大きい。すべての選択にコストマネジメントの狙いがある。

 空港でかかる費用も全面的に見直した。ANAで長年パイロットとして勤務し、定年退職後にピーチへと転職した取締役の角城健次氏は言う。

「飛行機は自力でバックできないことをご存じですか。バックさせるときには専用の車両を使いますが、費用が発生するので関空の滑走路には斜めづけで着陸します。これならバックせず、Uターンして離陸できますからね。空港では、利用料が高いボーディングブリッジ(搭乗橋)も使いません(笑)」

 LCCではないものの価格の安いスカイマークエアラインに一度乗ったことがありますが、ひどく出発時刻が遅れました。

 一列の狭い通路で人を乗せていくので、時間がかかりやすいのです。そして、その搭乗効率の悪さを吸収できるスケジュールも作っていませんでした。

 飛行機の発着の間隔を短くする方が効率良く稼げるというのはよくわかるのですが、それができる体制になっていません。正直、全体的に設計思想が杜撰だなと思いました。

 LCCをやるなら、そうならないように設計しないといけませんね。


 と書いて、次を見るとスケジュールの話もありました。

 飛行機の折り返し時間の短さもLCCの特徴だ。FSAの35~40分に対して、ピーチでは25~30分を予定している。早く折り返せばそれだけ機材の稼働時間は長くなる。FSAの稼働時間が7時間。ピーチが目指すのは12~13時間だ。

「いまそこにあるもの」は使い倒す。その方針はCA(客室乗務員)にも適用される。CAは客が降りた後の簡単な掃除も行う。一人で何役もこなすマルチタスクが原則である。

LCCの路線は2地点間を単純往復し、飛行機は必ず同日中に出発地に戻ってくるので、CAや操縦士の滞在費はゼロ。ピーチでは就航都市を国内5都市のほか、海外ではソウル、台北、香港など、関空から片道ほぼ4時間圏内に設定しているが、それは「窮屈な座席で耐えられるのは4時間が限度」(井上氏)という考え方に加えて、経費カットの意味合いもある。4時間のフライトであれば日帰りできるからだ。

 ちょっと書いたスカイマークエアラインは怪しいのですが、安全の話も。


 ただし、断じて「ロー」にしないものがある。

「飛行の安全です。過去にはメンテナンスを怠って倒産に追い込まれたLCCがいくつもある。安全なくして航空会社は成り立たない。全社員共有の価値観です」(角城氏)。

 最後にターゲット層の話。

 ピーチがターゲットとして狙うのは、ウェブでの購入に抵抗がなく、飛行機に乗り馴れたオフタイムのビジネスマンだ。

「電車並みの運賃を提供すれば、旅行がしやすくなる。気軽に福岡のラーメンを食べに行ったり、帰省の回数を増やしたりもできるでしょう(中略)」と井上氏は言う。

 国産LCCが根付くかどうか、注目していきたいところです。


 追加
  ■日本のLCCの不安 果たして成功するのか?

 関連
  ■倒産して良かったJAL(日本航空)とANA(全日空)のウォルマート式LCC
  ■アメリカン航空は計画倒産!?競争力向上には破産がおすすめ と 日本航空(JAL)への影響
  ■静岡の新規参入航空会社の提唱するビジネスモデル
  ■ウォルマートの在庫管理1~良い欠品、悪い欠品~
  ■ベンチャー三銃士 ハウステンボス黒字化の澤田秀雄エイチ・アイ・エス会長
  ■その他の企業などについて書いた記事

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