2020/05/22:
●デメリットだらけで医療の安全を脅かす大学病院の院長選挙を禁止
●選挙禁止の理由、ショック療法・看護師の意見も・減ってるからなど
●大学病院の院長選挙を禁止し学長が決定…デメリットはないのか?
2020/08/04追記:
●「選挙ではなく学長が選ぶ」の結果、大分大学で独裁者が誕生!
2021/01/27追記:
●暴言学長の暴走か?対立していた病院長が突然解任される…
2021/07/18追記:
●学長選びは公平に…正論言った教授、奈良女子大学学長から任命拒否 【NEW】
●デメリットだらけで医療の安全を脅かす大学病院の院長選挙を禁止
2020/05/22:毎日新聞は自分のところの記事に関する反省会みたいな記事を出していておもしろいです。その中で、院長選挙に関する報道がわかりづらかったのでは?とする
紙面審ダイジェスト:大学病院長選挙禁止はいいこと? - 毎日新聞(2017年3月23日 12時40分(最終更新 3月23日 12時40分))という記事が目に付きました。
これは2017年3月4日朝刊2面の<大学病院長選挙 禁止へ/派閥争い「患者不在」/厚労省 改正法案>という記事に関するもの。厚生労働省は、全国の大学病院の院長選出に関し、教授会などでの選挙を禁止する方針を決めたことを伝える記事でした。以下のような理由だと、当時の記事では説明されていたといいます。
<学内での派閥争いが影響して医療の安全確保に指導力を発揮できる人材が登用されていないと判断した。外部有識者らによる選考委員会を設けるなど選考過程の透明化の義務づけを盛り込んだ医療法改正案を今国会に提出し、2017年度中にも施行する>
<院長の任命権は本来、学長にあるが、追認するだけになっている>
厚労省幹部「大学病院は、出身大学でいがみ合うなど、まさに患者不在」
医療安全に取り組むNPO法人の理事長「病院長はこれまで内部の事情で決まっていたため、医療安全を理解していない人もいてリーダーシップも弱かった」
●選挙禁止の理由、ショック療法・看護師の意見も・減ってるからなど
作者(司会?)は最初これを読んで「とてもよいことが始まるようだ」と受け止めたとのこと。ただ、読み進めていて疑問を感じました。人事の透明化、民主化を求める動きの中で「選挙」という方法は悪くないのではないかの他、以下のような理由です。
<弊害が多いから選挙は禁止する。一見、まっとうなようだが、ずいぶん乱暴ではないか>
<「学長が決定」となれば、監督する立場の厚労省や文科省にとっては格段にコントロールしやすくなるのではないか>
一方、毎日新聞の医療福祉部長は、「東京女子医大や群馬大、京都府立医大など不祥事が続いている中で、ショック療法が必要」とした他、以下のような理由でこれを肯定的に捉えていました。
<選挙イコール民主的というのは最初はそうだったが、今の医療現場はかつてのように医者が中心ではない。看護師やスタッフ、何より患者の視点も必要だ。医者だけの意見で院長を選ぶのは時代遅れと言わざるを得ない。大学病院もそういう問題意識を持っていて、この問題を審議した検討会では大学や医療関係者から強い反対はなく、賛成の声があった。必ずしも一方的な話ではないと思う>
<大学病院の65%が病院長の選挙を実施しているが、実施する病院は減ってきていて、選挙をやらずに選んでいる病院が増えている。そういう流れの中で出てきた改正案だ>
●大学病院の院長選挙を禁止し学長が決定…デメリットはないのか?
ただ、私はやはり弊害も大きいと思うんですよね。外部有識者らによる選考委員会があるとはいえ、研究不正や不祥事の調査委員会がそうであるように、不適切な選考によって委員会が形骸化するということがあり得ます。結局、良し悪しはここの人選次第ですね。人選が悪かった場合、学長による独裁化という別の大問題を誘発する可能性を感じます。
賛成理由もよく見てみると、論理的ではないものが多いです。まず、ショック療法はひどすぎで、こう言えば何でも許されるというものではありません。また、他のケースで考えるとわかりやすいでしょうが、「実施する病院は減ってきているから65%残っていても全部禁止」というのも強引すぎな賛成理由。多数派だから廃止…は理由になっていません。
一方、「医者だけでなく看護師やスタッフ、患者の視点も必要」というのはその通りというもの。なので、それで医師以外を含めた選挙…となれば賛成できます。私も今の院長選挙を全面的に支持するわけではないです。ただ、「じゃあ投票者を増やそう!」ではなく、なぜか「学長の決定」になってしまうというのは変な話。非論理的でしょう。
大学や医療関係者から強い反対はないからOKというのも、実は必ずしも良いことということではありません。当事者が望んでいても良くないことは、上がちゃんと良くないと言わねばならないでしょう。また、これも忖度や前述のような不適切な人選がある可能性があります。自民党内からすら反対された検察庁法改正案も、「現場が求めた」と主張して擁護者は正当化していました。
なので、こういうヘンテコな判断理由ではなく、改正の具体的な内容そのものを見なくちゃいけないのですけど、前述の通り、学長による独裁化を誘発する可能性という大きなデメリットがあります。今後追記したいのですけど、すでに大学の学長決定では弊害の例が出ているように見えるんですよね…。
●「選挙ではなく学長が選ぶ」の結果、大分大学で独裁者が誕生!
2020/08/04:「すでに大学の学長決定では弊害の例が出ているように見える」と書いたのは、
大分大学学長、選挙勝利の学部長や教授を選ばず別の人に 左遷もの件が頭にあったため。以下のように多数の問題が噴出しています。権力を集中させると、悪い人が権力者になってしまった場合に危険すぎると思うんですよ…。
・学長の任期上限を撤廃する。
・ルールに基づいて教授会が投票で選んだ学部長候補について知らせようとしたのを拒否し、そのルールを撤廃する。
・教授会が投票で選んだ人と異なる人を学部長として決定する。教授やOBだけでなく学生もそれに抗議すると、新学部長が学生全員に批判するメールを送りつける。
・ルールに基づいて教授会が投票で選んだ学内の教授候補について検討せず、投票で負けた新しい人を教授に任命する。
・投票で1位だった准教授を専門外のポストへ左遷し、辞職に追い込む。
●暴言学長の暴走か?対立していた病院長が突然解任される…
2021/01/27:また学長が暴走したのでは?という話がありました。そもそも大学以外での組織でもトップの暴走はよくあることですから、トップへの権限強化自体がリスクってことかもしれませんね。政治においても「日本も権限の強い大統領制にすべき!」みたいな声がありましたが、知っての通り、アメリカはそれでたいへんなことになってしまいました。
学長の暴走で追記したかったのは、他の投稿でも書いた旭川医科大学の問題です。旭川医科大学の古川博之病院長が突然解任されました地元北海道新聞の。
旭医大病院長解任 コロナ下「団結に水差す」 道北医療に影響懸念:北海道新聞 どうしん電子版(01/26 11:44)などによると、吉田晃敏学長と対立していたため、事実上の粛清だと考えれらる部分があります。
まず、吉田晃敏学長と旭医大病院の古川博之病院長の対立が表面化したのは前年の12月。古川病院長は、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した慶友会吉田病院(旭川)の感染者の受け入れを緊急に検討した際に吉田学長が拒否したことや、学長が病院長に対し「受け入れるならおまえが辞めろ」と言ったと証言していました。
また、吉田晃敏学長が前年11月の非公開の学内会議で新型コロナウイルスでクラスターが吉田病院について「コロナを完全になくすためには、あの病院が完全になくなるしかない」などと発言したことが週刊文春で報じられ、会議の録音データも公開されて問題にもなっています。大学側は情報提供したのは病院長だとしている一方、病院長は否定しているのですが、これも火種になっていました。
この解任が粛清であろうというのは、プレスリリースからもわかります。
「発言で混乱させた」 旭川医大、院長解任で正当性主張:朝日新聞デジタルによると、リリースではその理由について、以下のように書いており、前述の件を問題視して粛清されたと考えられる内容でした。内部告発者への報復的なものでもあります。
①昨年4月と11月の学内説明会や会議の内容を録音・録画して外部に漏洩(ろうえい)した
②昨年11月の新型コロナウイルス患者受け入れを巡る吉田学長との協議を報道機関に恣意(しい)的に話して混乱を生じさせた
③昨年12月の学内の会議で信頼回復に取り組むことを確認した後も報道機関に大学の方針と異なる内容を発言し混乱させた
●学長選びは公平に…正論言った教授、奈良女子大学学長から任命拒否
2021/07/18:前回追記した旭川医科大学の学長は、その後多数の問題が判明。詳しくは他の問題とセットである
旭川医科大学が重大ではないとした教授の医師不正報酬、1億円以上の可能性で書いていますが、学長関連だけでも、「病院から学長に謎の高額報酬」「経歴詐称」「勤務実態のない学長特別補佐に不正報酬支払いを指示」「執務時間中に飲酒」とやりたい放題でした。
一方、今回の新しい話としては、奈良女子大学の問題があります。ここまで見てきたように学長に関する問題が続出していることを踏まえてだと思われますが、奈良女子大の城和貴教授が学長選考会議に対して公平性の担保を求めるプレゼンテーションを行いました。もっともな主張であり、正論だと思われます。
ところが、今岡春樹学長がこれを「学長選考会議に不当な圧力をかけた」として、候補として選ばれていた大学の評議員に指名することを拒否。各学部が選出した評議員の候補を学長がそのまま指名するのが慣例であったのに、これを例外的に拒否してしまったとされていました。権限強化のせいで、こうした学長独裁化問題は日本各地で起きてしまっています。
【本文中でリンクした投稿】
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大分大学学長、選挙勝利の学部長や教授を選ばず別の人に 左遷も ■
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