私は自転車によく乗っていて好きだったので、ショックだったのですが、自転車が健康に良いというのは事実ではないようです。一つは排ガスによる健康被害、また、長時間乗った場合はサドルの圧力による健康被害も起きます。
また、自転車の選手に限った話であるものの、部分的な「運動不足」により、骨折しやすい体になってしまうという話も出ていました。(2012/5/29)
●自転車が体に良いというのは大間違い
2012/5/29:自転車乗りにショックな話があったのは、
自転車は体に悪い 性的能力の低下、排ガス被害、骨粗しょう症の原因に(要登録 日経ビジネスオンライン 石 弘之 2012年5月7日(月))という記事。タイトルだけで大体わかりますね。
記事冒頭で石弘之さんはいくつか世間で言われている自転車の長所を挙げています。
「健康によい」
「環境にやさしい」
「交通渋滞や駐車場不足を緩和する」
「運動不足解消」
記事で否定されてしまったのは最初の「健康によい」で、それによって最後の「運動不足解消」もイメージと違うものとなってしまっています。
それ以外の「環境にやさしい」「交通渋滞や駐車場不足を緩和する」は本当ではあるものの、自身は排気ガスを出さないのにその被害を一身に受けるというタバコの副流煙みたいな被害があるようです。
●健康被害のリスクが高くなる理由は自動車の排ガス
ロンドン大学のジョナサン・グリッグ教授らは、都市部の自転車通勤は肺や心臓に負担が大きいとする調査をまとめ、2011年9月にアムステルダムで開かれた欧州呼吸器学会で発表しました。
調査は自転車と徒歩で通勤する各5人を選んでタンを採取、そのなかの炭素の量を比較したというもの。対象はいずれも喫煙習慣のない18歳から40歳の人たちでした。正直言うと、5人というのは少なすぎですけどね。
とりあえず、この結果、"自転車通勤者の肺の中には、徒歩通勤者に比べて2.3倍の黒色も炭素が多いことがわかった"としていました。訳がこなれていませんが、「黒色」というのは要するに肺の黒い汚れが濃いということかもしれません。また、大気汚染の話なので黒色炭素(ブラックカーボン)の誤訳かもしれません。ブラックカーボンは大気中の黒色微粒子だそうです。
記事では、炭素の正体は、主として自動車の排ガスから放出される煤の微粒子だとされていました。この煤が、肺機能を低下させ心臓病を招く原因もなるといいます。研究者によれば「交通が混雑する大都市で自転車を乗り回すのは、炭坑で働くのと同じ影響がある」と警告。
自転車をこぐことは、運動になるのは事実で、呼吸が深く速くなり車の運転よりも2~3倍も多く空気を吸います。ところが、これが災いしてで、健康に悪い物質もたくさん吸ってしまうというわけです。
大気汚染の健康被害を研究する英国アバディーン大学のジョン・アイアーズ教授は「大気汚染のなかで自転車に乗るのは心臓病の発生を助長する」と警告します。その危険度は、高血圧や高コレステロール血症よりも低いが、受動喫煙ぐらいの影響はあるとみられています。
結局、自動車が悪いには違いないので、じゃあ、自転車はやめようと自動車に戻ればますます環境は悪化します。ガスマスクでもして走りましょうか? それじゃ、不審者ですけどね。
●長時間自転車に乗る人には性器への被害が続出
一方、記事で最も文量が割かれていたのは、性器への被害についてです。
米国では、警察官、救急隊員など約4万人の男性公務員が長時間自転車に乗っています。そして、彼らの間から、さまざまな性的トラブルが報告されています。とくに、毎週25時間以上も乗る人には、「性器が鈍感になった」「勃起しにくくなった」「睾丸(こうがん)が慢性的に痛む」など性的な能力低下の苦情が多発していました。
米国労働安全衛生研究所(NIOSH)の調査によると、生殖器への血流が滞り性的能力が低下し、陰嚢(いんのう)に違和感があるなどの影響の出る可能性が高いことがわかっています。長時間自転車に乗れば血行障害が起きてもおかしくないほどの圧力がかかっていることもわかりました。
さらに、これは、サドルの形状が大きく関わっていることも判明。通常の自転車のサドルは、ノーズが前方に突きだして股で挟み込むようになっているものが多いです。この形だと鼻先の細い部分に体重が集中してかかり、陰部を圧迫してしまいます。一方で、先の尖っていないサドルでは、1平方センチ当たり71グラム程度で圧力が小さく、障害が少ないことがNIOSHの実験で判明していました。
●男性だけでなく女性もサドルのせいで被害
上記だけ読むと勘違いしてしまいそうですが、男性だけの問題ではありません。ベルギーのブリュッセル大学病院のリュク・バイヤンス博士ら婦人科専門医が、女性の自転車愛好者を対象にした調査によると、自転車によく乗る人は、そうでない人に比べて2倍も性的機能を損ないやすいとのこと。ショッキングですね。
これもやはりサドルの形状の問題。女性器に必要以上の負担をかけるのです。この調査対象者の94%までがお尻痛くなるなどの症状を訴えて、60%が性器の不快感を訴えていました。
毎週16キロ以上乗る48人の女性ライダーを対象にした米国イエール大学医学部のマーシャ・ゲス博士らの報告でも、やはり問題が報告されています。女性の自転車愛好家は、そうでないグループに比べて性器の感度が低下する傾向があるそうです。
デザイン重視の流行のサドルは、左右2つに分かれてノーズがとがっているタイプだ。これだと、長く狭いノーズに体重か集中して性器周辺の神経系や血管が圧迫されます。この結果、微妙な部分の皮膚がすれたり、はれたり、感覚がなくなったりするというのです。
●自転車競技選手に骨折が多い意外な理由
もう一つ、骨粗しょう症の問題がありますが、これは「通勤や週末の遠出程度の一般の自転車愛好者には、この心配はほとんどない」そうです。ただし、話としては興味深いものでした。
自転車競技選手に骨折が多いことは、舗装道路を高速で走って落車すれば、骨折しても不思議はないと片付けられていました。だが、レーサーの骨折があまりに多いで、精密検査をしてみました。
結果、ベテランの選手ほど骨密度が異常に低く、若年性骨粗しょう症にかかっている選手も多いことが明らかになりました。有力選手の骨密度が2割ほど低くなって、高齢者なみに骨がスカスカになっていたというから、驚きです。
実は、この調査の前にも、米オクラホマ大学スポーツ学部の大学院生アーロン・スマサーズがこの事実を発表していた。レースシーズンを終えたばかりの27~44歳の選手を調べたところ、背骨や腰の骨密度が低く、他種目の運動選手と比べても明らかに骨折事故が多くなっていました。
自転車競技選手の63%は背骨や腰骨の骨密度が減少していたが、陸上競技選手では19%。自転車競技も含まれているトライアスロン選手も陸上選手と変わりませんでした。過酷なロードレースで体が鍛えられ、当然骨も丈夫と信じられていただけに、「20代男性の骨粗しょう症は衝撃的だった」と彼は語っています。
この理由が意外です。自転車競技選手は
「運動不足」だというのです。ただ、ちょっと変わった形の「運動不足」。実体験として自転車の運動量は実は大したことないのでは?と思っていましたが、記事での記述が直接自転車は運動量が少ないとは書いていませんでした。
骨は骨にかかる負荷によって鍛えられるものです。ふだん運動をあまりしない高齢者が、転倒しただけで簡単に骨折するのも同じ理由です。自転車競技の場合はなめらかな舗装道を走るために、骨への衝撃が少なく、運動量は大きくても、骨は鍛えられていなかったという状態になっていたのです。
運動量としてはあるものの、体の使用する部分が特定部位に限る関係で骨を鍛えるような運動にはならないといてことですね。「運動不足解消」は完全に否定されませんが、これはまた「体に良い」を否定する材料となってしまいました。
●自転車で健康被害なんて嘘だ!否定する研究も
2018/01/03追記:自転車の健康被害の問題は否定する研究もあると知りました。以前から、勃起障害(ED)などの性機能障害や排尿障害のリスクが上昇するという報告があった一方で、両者の関連を否定する報告もあり、長年にわたって議論されたといいます。
(
専門医に聞け! Q&A サイクリングと性機能 2017年10月09日 13時00分 週刊実話より)
2017年5月に開かれた米国泌尿器科学会で、世界各国のスポーツクラブに所属する男女のサイクリストを対象に実施された最新研究の結果では、二つの発表がありました。研究は米カリフォルニア大学などのグループが行ったもので、英語圏のスポーツクラブに所属する男性アスリートから研究参加者を募集。参加を希望した5851人を対象に、性機能や前立腺症状を評価したものです。
(1)「サイクリストの性機能はランナーやスイマーよりも良好、前立腺症状も差なし」
(2)「サイクリングは心血管に恩恵があり、泌尿器疾患や性機能障害の心配は不要」
また、今回の研究は女性についても行い、「男女ともにサイクリングによって心血管へのベネフィットが期待できると考えられ、泌尿器や性機能に悪影響をもたらすのではないかとの心配は不要」とのコメントがあったそうです。
●健康に良いの、悪いの?結局どっちなの?
この紹介をしていた牧典彦・小山病院院長は、"論争に一応、決着をつけた結果といってよいでしょう"とおっしゃっていました。ただ、どうしてそう言えるかの理由は書かれていませんでした。新しいから正しいということは考えられないので、今回の調査の人数が多いからですかね?
科学論文では、正反対の結果が出るということは珍しくありません。科学って実は、むしろズバッとした結果がなかなか出ないものなんですよ。「~です」と言い切っちゃう専門家さんの方が、むしろ怪しい場合が多いので注意してください。
このように結論が分かれた場合は、メタ解析と言って、複数の調査を総合して分析したものを見るのが一番信頼性が高いです。自転車の健康被害についても、メタ解析の結果を待った方が良いでしょう。ただ、現状結論を分かれているところを見ると、そこまで大きな問題ではなさそうだとは感じました。
最初の投稿で指摘されたように、サドルによって強い負担がかかっているのにも関わらず、問題がないどころかむしろ良いとする今回の研究は、正直怪しいものも感じます。ただ、悪影響が出ている人が一部でいても自転車に乗ることで良い影響がある人の方が多いので全体としてはプラス、実は自転車以外が原因なのを誤解しているなどの説明も一応可能でしょう。
前述の通り、私はメタ解析が見たいのですが、結果がはっきりするまでは、特に気にしないってことで良いと思います。
自転車を普段から乗っている人 → 健康への影響が不確定なのでそのまま乗る
自転車を普段から乗っていない人 → 健康への影響が不確定なのでそのまま乗らない
ただし、自覚症状として明らかに強い痛みを感じている方は絶対やめましょう。そういう場合は他の人たちを基準にしたって仕方ありませんからね。ご無理なさいませぬように。
ああ、あと、そういえば、この研究では自動車の排気ガスによる健康被害については見ていないので、引き続きそっちは有効だと思われます。
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