2020/04/25:
●のれん代の問題?武田薬品がOTCアリナミン・ベンザブロック売却
●よく言う「のれん代が高いことは必ずしも悪いことではない」って本当?
2020/06/25:
●明らかに高すぎる買収…巨額ののれん代で大きな損失のリスク
●クリストフ・ウェバー社長が武田薬品を潰す?シャイアー買収の不自然さ
2021/06/01:
●格付け会社が一斉に格付け引き下げ、株価も急落し下がり続け… 【NEW】
●シャイアー買収は意味不明って本当?実は結構支持する声もあった! 【NEW】
●のれん代の問題?武田薬品がOTCアリナミン・ベンザブロック売却
2020/04/25:
武田薬、大衆薬手掛ける子会社売却へ、3200億円超の規模-関係者 - Bloomberg(2020年4月24日 12:23 JST)によると、武田薬品工業が一般用医薬品(OTC)を手掛ける完全子会社の武田コンシューマーヘルスケア(TCHC)を売却する方針だと報じられたそうです。
正式なコメントは出ていないものの、野村証券を起用し、売却に向けた入札の準備を進め、複数の買い手候補に打診を始めているという具体的な話が出ています。武田薬品工業の一般用医薬品というのは、ビタミン剤の「アリナミン」、風邪薬の「ベンザブロック」などといったもの。有名どころであり、ヒット商品がなかったわけじゃないんですけどね。
この売却は後述するような「のれん代」の問題ではないか?と思いました。記事では、武田薬品は約7兆円でアイルランドの製薬大手シャイアーを買収し負債が膨らんだため、非中核事業の売却を進めている、と書いていたんですよね。
●よく言う「のれん代が高いことは必ずしも悪いことではない」って本当?
のれん代が高いことは必ずしも問題ではないと言われます。ただ、高すぎるのれん代で失敗することもあるんですよね。例えば、国策企業とも言われていて政府と関係が強い東芝は、政府が推進する原発に力を入れた買収をしましたが、これが大失敗したことが不正な会計の動機となりました。
武田薬品ののれん代を問題視した記事は検索すると、過去にも多数出ていますね。例えば、
4兆円「のれん」なおリスク :日本経済新聞(2020/1/8付 日本経済新聞)という記事が見つかります。
こちらによると、武田薬品工業は創薬型企業への変身を目指しており、もともと重点領域以外の事業や資産を売却し、約5兆円ある有利子負債を削減する方針を掲げていたそうです。ただし、株式市場からの評価は低調だとのことで、支持を得られるような方針ではなかったようです。
前述のシャイアー買収では、「のれん」と有利子負債が膨らみました。武田は国際会計基準(IFRS)を採用しているため4兆円に及ぶのれんを定期的に償却する必要はないそうですが、新薬開発が失敗した場合や予期せぬ訴訟が発生した場合は、減損処理を迫られる可能性もあるとされており、常にリスクになっている感じでした。
●明らかに高すぎる買収…巨額ののれん代で大きな損失のリスク
2020/06/25:武田薬品ののれん代リスクは過去にいろいろ報道されていたみたいですね。例えば、
武田薬品、誰のための「7兆円」買収なのか?失敗の懸念広まる、膨張する巨額有利子負債(編集部)という2018.05.24の記事が見つかります。
この記事の時点ではまだ買収は実現されていませんでした。アイルランド製薬大手のシャイアーを総額460億ポンド(約6兆8000億円)で買収することで合意したところ。有利子負債を加えると、8兆3000億円規模の買い物。実現すれば、日本企業による過去最大のM&A(買収・合併)と見られていました。
ところが、この時点ですでにもう失敗ではないか?というのが記事の見方だったんですよ。問題点としては、大型M&Aを繰り返していることによる巨額の財務負担、増資による株式希薄化があります。この懸念から武田薬品の株価は下がり続けの状況で、交渉が明らかになって以降だけをとっても2割下げでした。
私が気にする巨額の「のれん代」の負担についても記事では触れており、「もっとも重要な点」としていました。武田薬品はシャイアーの株価に6割のプレミアムを付けており、3兆円規模の「のれん代」が加わる形。シャイアーの収益が悪化すれば、一気に「巨額の減損が発生する」リスクが常時あると指摘されていました。
シャイアーはこれまで何度も買収が取り沙汰されてきた企業。逆に言うと、売れ残り的なところもあるみたいですね。シャイアー側の求めた価格では、どの製薬会社も割りに合わない買収だと考えたのでしょう。一方、武田薬品は買収金額を上積みしたことから「明らかに高値掴み」との見方が出ていました。
●クリストフ・ウェバー社長が武田薬品を潰す?シャイアー買収の不自然さ
記事タイトルには<誰のための「7兆円」買収なのか?>というものが含まれていたものの、記事内ではメリットの低そうな買収にこだわった理由については、ほとんど書かれていませんでした。それだけ理由が思いつかないものなのかもしれません。
そのような中でも理由として見れそうだったのが、クリストフ・ウェバー社長の起死回生策という表現があったこと。クリストフ・ウェバー社長はこれまで失敗続きのためになにか成果がほしかったため、シャイアー買収という目立つことをやり遂げたかった…といった感じですかね。
また、当時の社長・長谷川閑史相談役がこのウェバー社長をスカウトして以降、経営陣が創業家と対立しているため、巨額増資によって創業家の持株比率を相対的に低下させる目的…という見方も出ています。ただし、これは本当ならひどい理由です。そういう見方が出でてしまうほど、不自然な買収と見られていたみたいですね。
●格付け会社が一斉に格付け引き下げ、株価も急落し下がり続け…
2021/06/01:最近の武田薬品工業の業績でも調べてみようかと思っていたのですが、ブックマークしていた古い記事を遣ってなかったので今回はそちらの話を。
武田薬品、格付け会社が一斉に格付け引き下げ…財務悪化で株価急落、巨額買収の落とし穴(ビジネスジャーナル 編集部)という記事でした。
例のシャイアー買収総額は、日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)としては過去最大である460億ポンド(約6兆6000億円)。この買収により武田薬品は世界第8位の売上規模となり、世界のベスト10、“メガ・ファーマ”の仲間入りを果たしました。記事では記載がありませんでしたが、日本では武田薬品がぶっちぎりトップの売上規模のようです。
ただし、記事では、その代償は大きいと指摘。有利子負債が6兆円近くに膨らむ上に、1兆円以上の「のれん」が急増。実際、格付け会社は、財務リスクを懸念して格付けを下げているとのこと。この他、株式市場でも評価されず、2018年12月5日の臨時株主総会で買収が承認された後の18年12月7日、武田薬品株は急落したとされていました。
<格付投資情報センター(R&I)は、武田薬品の発行体格付けを「ダブルAマイナス」から「シングルA」に2段階引き下げた。ムーディーズ・ジャパンは、発行体格付けを「A2(シングルAに相当)」から「Baa2(トリプルBに相当)」に3段階下げた。
東京株式市場の評価も厳しい。18年12月7日、武田薬品株は一時6%安の3859円まで急落した。4000円を割り込むのは13年1月以来6年ぶり。下落は続き、12月19日に年初来安値の3498円をつけた。12月28日の大納会の終値は3705円(87円安)。17年12月29日の大納会の終値6401円と比較すると42%の下落だ>
●シャイアー買収は意味不明って本当?実は結構支持する声もあった!
一方で、株主の過半を占める機関投資家が賛成し、株主の3分の2以上の同意を得たために、買収案が可決されているというのも事実。シャイアー買収のために発行される普通株式の募集事項を取締役に委任する議案は89.13%の賛成で可決されました。評価する声もかなり多いというのが事実であり、ここだけ読むと、「買収に全くメリットがない」とする一つ前の記事は何だったのか?という感じです。
<シャイアーの純利益率は28.2%で、武田薬品の9.0%を大きく上回る。これは世界の製薬業界でもトップクラス。低収益にあえぐ武田薬品の収益力の強化につながる。シャイアーのEBITDAは約7300億円で、武田薬品の約2倍という高収益企業なのだ。
投下した資金を買収先企業の何年分の利益で回収できるかを示す「EV/EBITDA倍率」は11倍。製薬業界のM&Aは13~14倍程度といわれている。シャイアー買収を「武田薬品がグローバル製薬業界になるための好機だった」と捉えたウェバー氏の決断を評価するアナリストは少なくない>
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