2022/04/14追記:
●スカイマークを思い出させる悲惨なLAPA航空3142便離陸失敗事故 【NEW】
●無免許や安全軽視の問題パイロットを会社の方針で雇用が根本原因 【NEW】
●安全軽視で収益重視…優先順位を間違えているスカイマーク
2012/6/7:以前の投稿で書ききれなかったスカイマーク(旧社名スカイマークエアラインズ)の安全に関する話をもう少し。スカイマークのトラブルに関するニュースは枚挙に暇がありませんので、その印象は皆さん持っていらっしゃると思いますが、スカイマークでは問題が異常に多いのです。
Wikipediaでもどっさりあります。
<2006年3月、
抜本修理すべき機体を、期限を9か月過ぎるまで放置していた問題が発覚した。また2005年以降、経営陣の方針に批判的なパイロットや確認整備士らが数十人規模で退職し、人手不足と指摘されており、国土交通省が抜き打ち検査を実施するなど、同社の安全管理体制を懸念する声が当時あがっていた。日本経済新聞の2006年3月21日付社説によれば、社長の西久保がITベンチャー企業的な成果主義的人事制度を導入したことが原因といわれ、国土交通省が職員7人による同社専従の特別監査チームを発足させ、場合によっては経営体制の見直しも浮上すると報じている。さらに、2007年4月13日には、航空機に整備漏れがあったこと、把握後も運航したことに対して、安全運航への認識が甘いとして、国交省から厳重注意を受けている>
この問題で成果主義を悪とする見方は単純すぎるでしょう。ただ、以前も書いたように食品に関わるところの食中毒など、費用を削れるところとそうでないところがあります。ここらへんの優先順位を間違えたと言った方が適切でしょう。JR西日本の福知山線脱線事故も優先順位を間違えたところが見えました。
ここらへんは以前しつこく書いていた二元的思考の弊害かもしれません。この場合の二つの極論は、「安全無視で収益のみ考える」と「収益無視で安全のみ考える」。本来この両極だけということはなく、安全は第一にしてそれに影響しないところでより収益を上げるといったこともできます。長い目で見れば、安全は収益性と反しないとも言えるでしょう。安全な運航を続けた方が、企業の利益にもなるためです。
●レーダーが故障していたのにそのまま出発した理由がひどい…
スカイマークの問題は前述の通りたくさんありますので、サクサク紹介していきましょう。以下は3つまとめて紹介。このうちの真ん中も安全軽視の例であり、やはり優先順位を間違えた…というものになっています。
<・2007年11月3日夜、神戸空港から羽田空港に着陸した機内で、ドリンク提供用のカートがギャレーから客室通路に飛び出し、乗客の1人が足を骨折、1人が肩に軽傷を負う事故があった。ギャレーのカートの扉の鍵の閉め忘れとみられている。
・2008年3月に、スカイマーク機に搭載の気象レーダーが故障していたことを把握していながら、
修理しないまま、羽田 - 新千歳間の4便に、そのまま就航させていたことが判明した。羽田空港内に、レーダーの交換部品の在庫がなかったためといい、整備体制の不十分さが指摘されている。
・2008年6月、機長2名が病気を理由に退職したため、乗務員が不足し168便が欠航(運休)する事態になった。6月の運休は旭川線48便、新千歳線24便、神戸線56便、福岡線48便の計168便。7月1日 - 8月31日には引き続き計124便が運休したほか、8月 - 9月に運航予定だった神戸 - 那覇線の季節運航が中止されている。国土交通省は、同社に対し運休情報の提供を徹底するよう求めるとともに、パイロットを早急に確保するよう指示した。また、6月16日には羽田空港内同社事務所に対して、国土交通省による抜き打ちの立ち入り検査が実施された>
また、最後のところは
格安航空会社LCC、実は薄利多売でなく高収益で少し書いたような、スケジュール設計の悪さが見えます。
業務改善勧告
・2010年4月 国土交通省が3週間に渡り行った立ち入り調査で以下の点が不十分であると指摘した。
乱気流に遭遇した場合に必要とされる機体の整備・点検
操縦士2人のうち1人が離席した場合の酸素マスク装着義務
離陸前の機内安全設備の説明の客室乗務員の人数
客室乗務員の英語力不足によるパイロットとの意思疎通が不十分であること
●事故・トラブル多発のスカイマーク、安全は眼中になし
Wikipediaの記述は順番を入れ替えて紹介していますが、次のものがスカイマークの思想、優先順位のおかしさが一番現れていると思った例でした。
<2010年3月9日、同年2月5日に運航された羽田発福岡行き017便について、機長は十分に声が出せない状態にあった客室乗務員について「非常脱出の際支障がでる」と判断、安全上の判断から交代を求めた。これに対し、
社長の西久保が機長判断に介入する形で機長を交代させ、体調不良の客室乗務員をそのまま乗務させていたことが判明した。契約期間が2年間残っていたにもかかわらず、同社はこの機長の雇用契約を即日解除した。西久保と会長の井手隆司の経営トップが国土交通省に呼び出され、「安全運航を脅かしかねない行為」として文書による厳重注意を受けた>
明らかにおかしいでしょう。交代させるのは体調不良の客室乗務員の方であり、機長を変えるというのは頭がイカれているとしか思えません。機長を解雇するより、社長を辞めさせた方が良いです。先に書いた「スカイマークの思想、優先順位のおかしさが一番現れている」というのは、要するに短期的なコストカット策やそれに従う従業員を重視して、安全運航などは眼中にないといった会社の方針です。
前回のとき高速バス事故、今回でJR西日本の例を出しましたが、そういう業界だけでなく工場・建設・医療などなどの安全に関わる仕事は、みなそちらが最優先なのは常識です。そうじゃない会社・人も多々あるでしょうが、少なくとも私はそれを本気で信じています。この優先順位を変えることは、個人の考えならともかく、社会的には許されません。
●安全重視の機長を解雇する一方で、安全軽視の機長を重用
次の話もこちらとセットで見ると、スカイマークの異常性が見えてきます。
<同月、副操縦士や機長が飛行中に記念撮影をしていたり、飛行高度の設定ミスなどの問題が発覚したため、国土交通省は、2010年3月15日から4月2日まで3週間にわたり航空法に基づく経営部門も含む特別安全監査を実施した。しかし、前述の記念撮影問題で諭旨解雇処分となった副操縦士を、その後
約3か月後に、地上職員に再雇用していたことが明らかとなり、有識者からは「社会を欺いている」などの批判の声が出ている>
先の安全を重視した機長をの雇用契約を即日解除し、安全を軽視した副操縦士はこっそり再雇用というのは、もう心の底から意味がわからないと思います。あまりにも理解できなすぎて、どういう考え方しているんだろうと興味深く思うくらいです。
もうちょっと書きたいことあったんですけど、またいっぱいになりました。あとでもう一つアップします。ここでの分を一旦まとめますが、最後の2例に見られるような企業としての思想が、スカイマークの一番の問題だと思います。これはもう「安全を軽視する」と、企業として宣言しているに等しいです。
●スカイマークを思い出させる悲惨なLAPA航空3142便離陸失敗事故
2022/04/14追記:スカイマークはLCCじゃありませんが、価格が安めの後発参入企業です。こうした企業はイメージと違って、必ずしも安全軽視ということはありません。むしろ大手以上と思えるほどトラブルが少ない企業もあり、データ的にも新興企業系LCCの方が墜落事故が多いというのは見たことがないです。
なので、稀な例と理解してほしいのですが、過去の海外の飛行機事故の例を見ていて、スカイマークのことを思い出しました。「新興企業」「パイロット不足」「機長らが機内で仕事以外のことをしてた」「問題ある機長を会社が使用」「安全軽視で収益重視」などの点がスカイマークを思わせるものでした。
<1999年8月31日現地時間午後8時30分頃にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスよりコルドバに向かう予定のLAPA航空に属するB737型旅客機、3142便が客室乗務員5名、乗客95名を乗せ、ホルヘ・ニューベリー空港より離陸を試みるが失敗。止まり切れずに滑走路をオーバーランし、空港外に飛び出した挙句にガス工場に突入し大破炎上した。
この事故で乗員乗客(機長・副操縦士含む)63名と空港外で旅客機に跳ね飛ばされた乗用車の運転手など2名の計65名が死亡した>
上記は、
LAPA航空3142便離陸失敗事故とは - ニコニコ大百科から。事故の直接の原因はフラップが離陸前に降りておらず、離陸速度を超えても必要な揚力が不足したために起きたものだといいます。「フラップ」というのは、航空機の主翼後縁部(もしくは前縁部)にある可動翼片で、これを動かさないと飛行機は飛びません。事故調査委員会の調べでパイロットらが操作を忘れたことがわかっています。
<コックピットボイスレコーダーを解析したところ、機長のグスタポ・ウェイゲルと副操縦士のルイス・エチェヴェリが女性客室乗務員と離陸前にコクピット内で世間話(それも恋愛話や帰った後の夕食の約束など仕事に全く関係ない類の物)やコクピットにおける禁則事項である喫煙行為をしており、それにより気を散らしてチェック項目にあったフラップ操作をスルーしてしまった可能性が非常に強かったとされている。
挙句の果てに離陸動作中に機体に装着されているマスターアラームがフラップが下りていないために離陸不可能であることを大音量で伝えていたにもかかわらず(時間にして30秒以上もである)、両パイロット共に「何のアラームなのかわからないけど大丈夫だ、問題ない」という何の根拠もない自信を発揮して早期に離陸を中断せずに強行した結果、事故につながったのだった。チェックリストの読み上げも手順を逸脱した杜撰極まりないものだったため、音声を聞いた事故調査委員会のメンバーをあきれさせてしまったという>
●無免許や安全軽視の問題パイロットを会社の方針で雇用が根本原因
このような「フラップを離陸前に下さなかったために揚力不足を起こして離陸に失敗した事故」は過去にもあり、おしゃべりが原因のものもありました。ただ、アラームの不具合が重なったものばかりで、「パイロットらが鳴っているアラームを30秒以上ガン無視」は他に例がないといいます。
では、なぜこんな機長を使っていたのか?というところが問題に。本件の機長はベテランでした。
Wikipediaによると、JIAACの報告書は「操縦士は両名とも技術的、心理的要件を満たしていた」と述べていたそうです。一方で、以下のように問題ある行動は見られていました。
「彼らの飛行とシミュレータによる訓練の記録には、操縦に不適格な兆候が度々表われていた。もし彼らが急場ではそれらの悪癖を払拭出来ていたのだとしても、結局は日頃の不真面目な態度が直らず、それが3142便の操縦室における弛緩した態度にも表われた」
さらにそもそも「操縦士は両名とも技術的、心理的要件を満たしていた」が間違いだったと後に判明。後の法廷審理では機長の免許が失効しており操縦資格が無かったことがわかったのです。検察当局は運航会社の組織と運営方針がアルゼンチン空軍による統制を欠いていたことが事故の根本原因だとしています。
<例えば、操縦士が無免許で飛行することをLAPAは容認していた。これらの過失が認められたため、LAPAの取締役の一部と空軍で航空会社の監督に当る担当者が刑事訴追され陪審審理にかけられた>(Wikipediaより)
<事故当時機長らが所属していたLAPA航空は急伸の航空会社であり、パイロット不足から質の低いパイロットを雇用しなければならなかった台所事情があったのも一因である>(ニコニコ大百科より)
<この事故の生存者は「機内に着席して安全のしおりに目を通そうと思ったら備え付けられていなかった」という証言を残しており、このことからもLAPA航空の航空事業者としての態度を窺うことができる>(ニコニコ大百科より)
Wikipediaでは、<なお、LAPAはこの事故から数年後の2003年に倒産した>という記載もありました。最初のときに<長い目で見れば、安全は収益性と反しないとも言えるでしょう。安全な運航を続けた方が、企業の利益にもなるためです>と書いていたように、短期的視野の安全軽視ではむしろ収益を悪化させてしまうことがあります。
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