2012/6/8:
●パイロットが言う「旅の最も安全な部分は終わりました」の意味
●たまにある安全軽視の姿勢を堂々と見せる航空会社、日本では?
●墜落事故の犠牲者が最も多かった航空会社に「乗って良い」理由
●途上国の航空会社の死亡率は、先進国のなんと8倍もある!
●飛行機墜落事故の確率、途上国の航空機の方がむしろ安全?
●競合する国際線とそれ以外で大差、国内線は相当悲惨な可能性
2020/06/28:
●パキスタン航空など、国内パイロットの3割が免許不正取得
●パイロットが言う「旅の最も安全な部分は終わりました」の意味
2012/6/8:翻訳した出版社がヒット作の「
ヤバい経済学」をパクったタイトルで出した「
ヤバい統計学」という本を読みました。
タイトルはパクリですけど、統計学云々以上に、一つ一つのエピソードがおもしろかったです。その中で最近続けて書いている航空機の話があったので、そこらへんでちょっと書きます。
この書籍の225ページでは、「みなさんの旅の最も安全な部分は終わりました ご自宅まで安全運転でお帰りください」というあるパイロットの挨拶を紹介していました。飛行機墜落事故の確率は今では極めて低いものなのです。
このパイロットのジョークは、飛行機墜落事故より自動車事故の方の確率(死亡事故の確率も?)が高いということを言ったのでしょう。
●たまにある安全軽視の姿勢を堂々と見せる航空会社、日本では?
とはいえ、少しでも安全な航空機に乗りたいと思うのは自然なことであり、逆に言えば他よりも安全性が低いとわかっている航空会社に乗ろうとは普通思わないと思われます。
しかし、明らかに安全を軽視する姿勢を堂々と見せる会社はなかなかありませんので、どの航空会社が問題あるかはなかなかわかりません。幸いまだ深刻な事故を起こしていませんけど、
事故・トラブル多発のスカイマーク、安全は眼中になしで書いたスカイマークのような堂々と安全軽視する企業はなかなかありません。
では、どうやってそれを見抜くかと言うと、実際に墜落する事故の確率から考えてみるというのが一般的な発想だと思われます。
●墜落事故の犠牲者が最も多かった航空会社に「乗って良い」理由
「ヤバい統計学」はアメリカで出された本ですので、出てくる例もアメリカのものが多いです。243ページには、1987年から1996年の間にアメリカ国内線の20%を運航したUSエアウェイズが、墜落事故の犠牲者では50%を占めていたと書かれていました。
じゃあ、「USエアウェイズは危険な航空会社だね」というのが普通出てくる結論だと思うのですが、航空安全の専門家アーノルド・バーネット教授のたどり着いた答えは違うんですよ。
バーネット教授は主な航空会社7社のうち1社が、上記のUSエアウェイズのような悲惨な数字になる可能性を計算したところ、11%となりました。つまり、かなり高い確率でどこかの航空会社に事故が重なる可能性が高いということがわかったわけです。
これだけだとまだ安心できませんが、バーネット教授はある期間に安全面で1位だった会社が、次の期間には最下位になっているという例も発見しています。要するに順位がころころと入れ替わるくらいに、各航空会社の安全性にはほとんど差がないということです。
●途上国の航空会社の死亡率は、先進国のなんと8倍もある!
これよりもっとおもしろかったのが、全体のタイトルにした先進国と途上国の墜落事故の確率。途上国の航空会社の死亡率は、先進国の航空会社の死亡率のなんと8倍。
これはもう途上国の航空会社は危険ということで今度こそ間違いない気がするのですが、条件によってはかなり違った結論になるのです。
バーネット教授は上記のように全部を含んだ死亡率ではなく、先進国と途上国が競合する路線、ほとんどの場合は先進国と途上国を結ぶ路線に限った死亡率で比較してみました。
すると、2000~2005年の場合、どちらのグループにおいても、飛行機事故によって死亡者が出る確率は150万便につき1便という結果になりました。結論としては、安全性に大差がないということです。
●飛行機墜落事故の確率、途上国の航空機の方がむしろ安全?
さらに1987~1996年の場合、前述の条件の路線で途上国の航空会社が運航する割合は62%でした。もし途上国の航空会社が先進国と同じくらい安全であるなら死亡者も同程度占めるはずですが、先進国より危険であれば犠牲者は62%よりもっとずっと多くの割合を占めるはずです。
しかし、実際に途上国の航空会社の犠牲者は全体の55%を占めるのみであり、むしろ先進国の方の犠牲者の割合が増えています。
タイトルで「途上国が先進国より安全?」とした部分はこれのせいですけど、結論としてはこちらも大差ないとしておくべきでしょう。犠牲者の比較ですので、大型の航空機の運用が多い航空会社の方がより多く占めやすい…みたいな理由はありそうですけどね。
●競合する国際線とそれ以外で大差、国内線は相当悲惨な可能性
この話では、誤解を招かないために、強調しておきたいところはあります。最初の条件をよーく思い出してほしいのですけど、これは競合路線の場合なんですね。前述のような結果となったのは、途上国の航空会社が優秀な乗員を国際線に集中させているためでは?という仮説がありました。これは逆に言うと国内線は悲惨ということです。
何しろ途上国の航空会社の死亡率は先進国の航空会社の死亡率の8倍であるにも関わらず、競合する国際線ではそれが変わらないわけですから、国内線を中心とした競合しない路線だけでそれだけの事故の差を作り出しているということです。なので、途上国国内線の死亡率の先進国との差は、8倍程度では済まないでしょう。
最初に示したように飛行機事故それ自体がもともと極めて低い確率とは言え、このように相対的に見て明らかに落ちやすい飛行機に乗るというのは、ちょっと気持ち悪いと思うのも仕方ありません。乗るべきじゃないと、脅すつもりはないのですけどね。
●パキスタン航空など、国内パイロットの3割が免許不正取得
2020/06/28:<パキスタン 3分の1近くのパイロットが免許を不正取得か 2020年6月28日 6時01分 NHK>という記事がありました。5月に起きたたパキスタン航空の旅客機の墜落事故の調査の過程で、判明したものです。ただ、上記までの話と矛盾するとは言えないものでした。
とりあえず判明したのは、事故を起こしたパキスタン航空を含む国内の各航空会社のパイロットなど合わせて860人のうち、3分の1近い262人が、免許を不正に取得した疑いがあること。地元メディアは、いわゆる「替え玉受験」が横行し、監督官がそれを見逃していた、などと伝えています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200628/k10012486751000.html
こうなると、やはりパキスタンの飛行機は心配だなと感じるのは当然。正直私も最悪だと思います。ただ、前述の通り、現実のデータでは途上国の方が悪い…とはなっていませんでした。なので、やはり国際線と国内線の違いといったところがあるのかも。とりあえず、仮にパキスタンの飛行機に問題があったとしても、他の途上国の競合する国際線は異なるとは言えるでしょうね。
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