★2012/6/13 シェールガスの環境問題,地下水汚染,地震など問題だらけ
★2013/3/1 シェールガスブーム、環境破壊と天然ガス資源の無駄遣いを促進
★2013/4/2 シェールガス革命でCO2排出量の多い石炭火力発電が急増した理由
★2012/6/13 シェールガスの環境問題,地下水汚染,地震など問題だらけ
シェールガスについては、環境問題も気になっていました。今回読んだのは
「シェールガスの環境問題」の具体的な中身 地下水汚染やメタンガスの漏洩だけではない(要登録 日経ビジネスオンライン 2012年4月23日 大場紀章)というもので、これまた古いですね。のろのろしていてすみません。
問題点は大きく5点ありました。
(1)掘削に用いられる化学物質(潤滑剤、ポリマー、放射性物質など)およびメタンガス(天然ガス)などによる地下水の汚染
シェールガスの採掘に使われる水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)という技術は、化学物質を添加された大量の水を地下に圧入することで、ガスが存在する地層にヒビを入れてガスを取れやすくします。その際に使用した水の一部は、地上に戻り一時的に作られたため池に入れられ、処理をして再利用されるか、地下や川などに捨てられます。 |
化学物質を添加された大量の水を用いることで、水質汚染が起こります。一部地域では既に飲めなくなった水の代わりにガス会社が水を配給しているところもあるとのことですから、深刻です。
この水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)は、他の問題をも引き起こしますのでこの部分は何度か引用します。
5つの問題の中でも、最も身近で強く懸念されているのは、この(1)だそうです。
というのも、「試行錯誤の末、効率的な生産のために付加される化学物質の種類が徐々に増えて」きたというように、化学物質の種類は多いものの、「用いられる化学物質は企業秘密で非公開とされてきたため、環境影響評価の調査を行うことすら困難」だという理由です。
さらにたとえ悪い調査結果が出ても「業界や政府の圧力によってもみ消されてしまってきた」なんて、不穏当な噂もあるようです。
問題となる化学物質は、「採掘時というよりは使用済みの汚染水を貯蔵するため池からの漏洩や、汚染水を地下に圧入廃棄する段階で汚染が発生している可能性が高いと考えられて」おり、米国の環境基準を超える濃度のものも既に見つかっているようです。
「この結果に対し、ガス産業界は水の層とガス層の深さの違いや、技術的に管理は可能であると反発して」いるそうで、展望に明るい兆しはあります。
"「シェールガスバブル」に便乗して参入した中小ガス企業が、劣悪な管理で採掘して環境汚染を引き起こしている可能性"もあり、行政がどこまで対処するかでしょうね。環境より経済を優先すれば、野放しにすると思います。
なお、使用されている化学物質の中には、放射性物質もあります。放射性ヨウ素131などが、発生する放射線によって、地下の様子を計測する目的で使われているとのことです。
放射能に対する強烈な拒否感情はアメリカ人も強そうだったんですけど、問題になっていないんですかね?
ものすごい(1)だけ長いですが、台所の蛇口から炎が上がることがあるなど、メタンガス自体が地下水に混入してしまうという問題もあります。
空気中のメタンガス濃度が高くなり、シェールガス田付近の空気中メタンガス濃度は引火レベルともありました。
ただし、地下水や空気中に天然ガスが混ざることは、シェールガス開発がなくても広く自然に起き得るとのことですし、健康被害についても確定的でないようです。
"EPAは2011年12月、地下水にメタンガスの混入がみられたペンシルバニア州ディモックの住人に対し、「ただちに健康に影響が出るものではない」との電子メールを送付"したものの、"翌月に主張を変えて、じん速な対応を取るように求め"るなど、不安定です。
やっと終わりました。あとはサクサクで。
(2)採掘現場から空気中に漏洩するメタンガスによる健康・爆発・温暖化リスク
この話は初耳です。
「シェールガスの開発は、従来型の天然ガス田に比べ一つの井戸から生産されるガスの量が少ないので、結果として比較的多くの井戸を掘る」ことになるそうです。
出口が多いってことなのかな?とにかくこれによりガスの漏洩が従来型の天然ガスに比べ発生しやすくなるそうです。
なお、温暖化リスクに関しては、「メタンガスは、二酸化炭素に比べて21~72倍(タイムスケールによって異なる)の強い温室効果」があるためです。
一般的には天然ガスは化石燃料としては二酸化炭素の排出が少なく、いわゆるクリーンだとされています。
しかし、コーネル大学のHowarth教授は、前述の漏洩を含めると、トータルで石炭に匹敵または超える温室効果があるとして、論争になったようです。(反論も出ています)
(3)温暖化問題に対する総合的な影響(メタンガス漏洩・開発に伴う森林伐採・再生可能エネルギーの導入抑制効果・安価なガスによる消費拡大)
これ、(2)も含んじゃっていますから、当然「メタンガス漏洩」の点は同じ説明です。
この「メタンガス漏洩」の原因は井戸が多いことでしたが、同様の理由により「森林伐採」の問題も従来型の天然ガスに比べ発生しやすくなるそうです。
また、「シェールガスは現時点で米国のガス価格が安価であることに貢献してい」ます。
このこと自体は良いことなんでしょうけど、「安価な天然ガスが再生可能エネルギーの開発を鈍化させたり、経済成長に貢献して結果的に温室効果ガスの増大につながったりするのでは、と懸念している人たち」もいるようです。
経済が停滞する方が地球温暖化には有利ってのは間違いないんですが、気持ちは複雑ですね。どこの国でもいっしょの話で、日本も景気が良くなるほどまずいです。
先の引用部前半の「再生可能エネルギーの開発を鈍化」に関しては、実際にシェールガスによって天然ガス価格が下落し、「2010年以降米国における風力発電の導入量は激減」したことも書かれていました。
(4)大量の水を使うことによる地域の水不足リスク
ここで(1)で出てきた水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)が再登場します。
シェールガスの採掘に使われる水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)という技術は、化学物質を添加された大量の水を地下に圧入することで、ガスが存在する地層にヒビを入れてガスを取れやすくします。その際に使用した水の一部は、地上に戻り一時的に作られたため池に入れられ、処理をして再利用されるか、地下や川などに捨てられます。 |
「大量の水」を扱うため、水不足が発生するそうです。水不足が発生するほどってすごい量ですね。信じられません。
これは「現時点の米国では、水の再利用率を高めるなどの対応によって大きな問題となってはいません」ということですが、中国や欧州ではアメリカより水資源が貴重であるので、問題化するおそれがあるとのこと。
(5)排水の地下圧入による地震発生リスク
見出しの通り、またまた水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)の出番です。
シェールガスの採掘に使われる水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)という技術は、化学物質を添加された大量の水を地下に圧入することで、ガスが存在する地層にヒビを入れてガスを取れやすくします。その際に使用した水の一部は、地上に戻り一時的に作られたため池に入れられ、処理をして再利用されるか、地下や川などに捨てられます。 |
「地層にヒビを入れてガスを取れやすく」するんですけど、そのせいで起きなくて良い地震も発生してしまいます。
問題点は以上です。
既に「フランスとブルガリアでは、環境問題の懸念から国としてシェールガス採掘を禁止」しているそうです。
これらの問題点の中には「浄水設備をつけるなど技術的な対策である程度、環境影響を抑えることが可能」なものもありますが、その場合には価格上昇要因になるのは間違いありません。(途中で書きましたが、行政や企業が対策するかどうかは、環境面と経済面の兼ね合いです)
とりあえず、現状の安価なシェールガスは、膨大な問題を無視することで成り立っているようです。
★2013/3/1 シェールガスブーム、環境破壊と天然ガス資源の無駄遣いを促進
最近、一気に見なくなったシェールガス関連の記事。以下も日本のものではなく、フィナンシャル・タイムズのものです。
環境破壊では既に
シェールガスの環境問題,地下水汚染,地震など問題だらけをやっていますが、こちらも見てみます。
米シェールガス開発が生む資源の無駄遣い
FINANCIAL TIMES 2013年2月6日(水) 日経ビジネスオンライン Ed Crooks and Ajay Makan(©Financial Times, Ltd. 2013 Jan. 27)
今や米国の産油ブームは、宇宙からも見て取れるほどだ。夜間の衛星写真を見ると、この5年間で米国の産油業界を一変させた大油田であるノースダコタ州バッケンのシェール油田が、シカゴと同じくらい明るく写っている。
光って見えるのは、「フレアスタック」と呼ばれる焼却塔で、そこでは油井から出る天然ガスを毎日、24時間燃やし続けている。
この炎の輝きは、米国のシェールオイル及びガスブームのあまり輝かしくない側面を照らし出している。開発を急ぐあまり、産油に伴って放出される不要な天然ガスを処理する施設への投資が間に合わないのだ。
油田で出るガスを燃やして処理する「フレアリング」の問題は、何十年も前から認識されてきた。アフリカのニジェール川デルタやイラクの砂漠で燃え盛る炎は、発展途上国の原油採掘に起因する汚染と環境破壊の象徴とされてきた。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130131/243077/?mlt&rt=nocnt 私も国内の天然ガス設備でボーボー燃やしているのを見たことがありますが、てっきりそういうものだと思っていました。
こういう問題はアメリカは無頓着で、2000年代後半になってやっと削減に……という遅さです。
しかし、その削減方向もシェールガスブームで逆行、2011年は僅かながらも増加に転じました。
フレアリングは温暖化ガスの排出量にも大きく影響する。米国産原油は多くの場合、サウジアラビアなどから輸入する原油よりも温暖化ガスの排出量が少ない。しかし、フレアリングを計算に入れると、ノースダコタ産原油の多くではこの利点が失われる(それでも、カナダのオイルサンド原油の産出に伴う発生量よりは相当少ない)。
カナダの方が垂れ流しなんですかね。
また、これは環境破壊だけの問題ではありません。
「過剰なフレアリングは環境を損なうだけでなく、貴重な資源の無駄遣いでもある。業界が積極的に取り組まなければ、操業許可にも悪影響が及びかねない」 (環境問題に取り組む多くの投資家のネットワークであるCERES(セリーズ)のアンドリュー・ローガン氏)
シェールガス価格の誤解 アメリカは安いのに日本は高いと言う人は馬鹿などいくつかで書いていますが、現状アメリカのシェールガスが安いのは、使い道がないゴミだからです。
米国の天然ガス価格は2008年のピーク時の100万BTU(英国熱量単位)当たり13ドル(約1200円)強から同3.4ドル(約310円)まで急落している。
そのため現状では、油田で発生するガスは、有用な資源というより、処分すべき厄介ものと見られることが多いのだ。
また、もともとパイプラインが多いという極めて恵まれた環境のアメリカですら、以下のような問題があるようです。
単一の油田としては世界最大級の1つであるノースダコタ州にあるバッケン油田は、面積が約3万9000平方キロメートル。これは英国のウェールズのほぼ2倍に当たる。だが、この油田は一番近い大都市からでも数百キロメートルもあり、世界でも屈指の僻地油田と言える。ガスを利用するなら、必要なパイプラインや処理施設をゼロから敷設しなければならない。
で、仕方ないから燃やして捨てていると……。
ただ、これはシェールガスとしても利用できていないと思われますので、シェールガスのせいというよりは過剰な油田開発(シェールオイル?)のせいと言った方がいいかもしれません。
まあ、油田のせいにしろ、シェールガスのせいにしろ、環境破壊と資源の無駄遣いには変わりありません。
こういったエネルギーブームは今のアメリカの景気を支えている一要素なのですが、あまり素直には喜べない代物のようです。
★2013/4/2 シェールガス革命でCO2排出量の多い石炭火力発電が急増した理由
タイトル見て「どうして、そうなった?」と首を傾げた記事。
シェールガスがもたらす石炭復権
温暖化対策の先頭を走ってきたEUが翻意したワケ
山根 小雪 2013年3月5日(火) 日経ビジネスオンライン
米国に世界中の注目が集中するなか、シェールガスの影響で思わぬ変化が起きている地域がある。
EU域内では2012年、発電量に占める石炭火力の割合が前年比で7%以上も増えた。伸び率は過去40年で最高水準というから驚く。
欧州といえば、京都議定書の策定を牽引し、CO2排出量の削減を声高に叫んできた地域だ。EU-ETS(欧州域内排出量取引制度)を世界に先駆けて導入し、着実にCO2排出量を減らしてきた。温暖化対策で大きな効果を上げてきたのが、石炭から天然ガスへの燃料転換だった。
石炭の発熱量当たりのCO2排出量を100とすると、天然ガスは60と少ない。石炭火力発電のCO2排出量は、天然ガス火力発電所のざっくり2倍とイメージすれば良い。(もちろん、最新鋭の石炭火力発電所の環境性能はもっと高い)。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130301/244404/?mlt そうです、ヨーロッパなんか一番うるさいところだったはずです。
それなのに何で地球温暖化対策をやめちゃったのか?というと、お金の魔力というか魅力です。
国際エネルギー機関(IEA)チーフエコノミストで、IEAが毎年発表している「世界エネルギー展望」の編集最高責任者のファティ・ビロル氏はこう説明する。
「シェールガスが見つかった北米で石炭が余り、行き場を失った安価な石炭が欧州へ流入した。北米でのガス価格が適正水準よりも遥かに安価になってしまったことが、石炭消費を押し上げている」
ただ、石油設備にそのまま天然ガスを入れて使えるか?というと、そうはならない気がします。
新設ならモロに影響しそうですが、既設が主体でしょうからちょっとピンと来ません。休止設備を稼働させて……といった感じでしょうか?
さらに次のような話も。
北米のガス市場「ヘンリーハブ」で取引されている天然ガスの価格は3~4ドルと低迷。日本の輸入価格の約5分の1という水準だ。ビロル氏は、「ヘンリーハブでのガス価格が安すぎて投資の魅力が薄れ、ガス資源の開発が停滞している」と嘆く。
シェールガス価格の誤解 アメリカは安いのに日本は高いと言う人は馬鹿によれば、もともと天然ガス設備は投資額がでかく敬遠されがちだったそうです。
こうなってくると、ますますシェールガス以外の天然ガスは減ってしまうのかも……。
また、ヨーロッパだけでなく日本でも同様の動きがあるようです。(こちらははっきりと新設の話です)
東電は2月15日、新規の火力発電所の入札の受け付けを開始した。東電が提示する発電価格などの条件から勘案するに、石炭火力発電でなければ応札は不可能だろう。東電は昨年11月に公表した「改革集中実施アクションプラン」のなかでも、福島県の復興策として「世界最新鋭の石炭火力発電所プロジェクト」を上げている。
地球温暖化が叫ばれるなか、国内での石炭火力の新設は不可能と言われてきた。2000年前半に電力自由化の流れとともに、複数の石炭火力の新設計画が持ち上がった。オリックスと東芝の合弁企業や、三菱商事の子会社のダイヤモンドパワーが新設を試みるも、環境省の認可が降りず、断念した経緯がある。
今回の東電の入札に際しても、環境省は石炭火力による新設に猛反発している。だが、東電管内での原発再稼働は見通しが立たないことを考えると、ベース電源として石炭火力を増やすのは現実解だ。
シェールガスの環境問題,地下水汚染,地震など問題だらけによれば、シェールガスは「石炭の発熱量当たりのCO2排出量」以外の部分で環境破壊をしており、なんか環境問題的には世界をあまり良くない方向に導いている感じがします。
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