島津製作所やGSユアサの話をまとめ。<同じ島津だけど…?ノーベル賞で有名な島津製作所と薩摩藩島津氏の関係>、<GSは島津源蔵の頭文字!実はGSユアサも兄弟企業だった>、<島津製作所子会社、よりによって医療機器に故障タイマーしかける>などをまとめています。
2023/02/12追記:
●島津製作所子会社、よりによって医療機器に故障タイマーしかける
2023/05/23追記:
●「島津さん」 京都の人が敬意を込めてさん付けで呼ぶ珍しい企業 【NEW】
仏具とノーベル賞 京都・島津製作所創業伝 鵜飼秀徳 (著)


●同じ島津だけど…?ノーベル賞で有名な島津製作所と薩摩藩島津氏の関係
2019/03/12:
ノーベル賞受賞の発見を「棚ぼた」と言われ、田中耕一さん憤慨で書いた田中耕一さんで有名な島津製作所。私も大学で島津製作所の機器を見たときには、真っ先に薩摩藩の島津氏のことを思い出してしまったのですが、たまたま同じ島津というのではなく、実際、関係大アリなんだそうな。ただし、血縁関係があるわけではありません。
Wikipediaなどによると、薩摩藩の島津家17代当主・島津義弘が、京都の伏見から帰国する途中、豊臣秀吉から与えられた播州姫路の領地に立ち寄りました。その際、そこに住んでいた武士の井上惣兵衛尉茂一が領地の検分などの世話をしたといいます。
井上惣兵衛の心のこもった対応に感動した義弘が、300石のお墨付きと刀槍、そして「島津」の姓と「丸に十」の家紋を贈ったとのこと。現在の社名も「丸に十の字」の社章も、ここが源流となっているそうです。別のところを見ると1500年代後半となっていましたので、江戸時代になる前みたいでした。「薩摩藩」(正式には鹿児島藩?)という呼称が始まった時期より前かもしれませんね。
●島津家がもともとやっていたのは仏具づくりだった
ただし、島津製作所のもととなるものを作ったのは、井上惣兵衛ではありません。もっともっと後、島津源蔵という明治維新の頃の人です。彼は仏具の製造をしていた島津清兵衛の次男であり、彼自身も鋳物具足師としての修業を積んで独立していました。当初、この仏具店は御所や多数の寺社を取引先に抱え、安定して需要を得ていたと考えられています。
ところが、新政府は王政復古、祭政一致の国家づくりを目指し、神仏分離令を布告。つまり、天皇中心国家への転換を目指したことで、問題が起きます。神仏分離令は、これまで混淆していた神道と仏教を切り分けよ、という法令。これが、その後の廃仏毀釈に繋がります。
廃仏毀釈が激しかった鹿児島県 イスラム過激派の如く仏像を破壊でもやった廃仏毀釈というのは、寺院の破壊行為、仏教文化・習俗の毀損のこと。特に水戸、松本、富山、津和野、高知、宮崎、鹿児島などで盛んであったものの、古都京都も、少なからず廃仏毀釈の影響があったとのこと。そこまで影響はなかったのではないかと思いますけど、
日本全国のお寺・神社・教会の数 京都の寺の数が意外、1位じゃないのことも思い出しました。
当時、京都は東京への遷都によって荒廃。都市再生のため、寺から仏具などの金属を供出させ、インフラや武器などに転用させていきます。廃仏毀釈によって、金属を型に流し込んで製造する鋳物仏具業は、危機的状況に追い込まれたわけです。
(
明治維新の“悲劇”が生んだ京都ノーベル賞企業:日経ビジネス電子版 鵜飼 秀徳 2018年12月17日より)
●GSは島津源蔵の頭文字!実はGSユアサも兄弟企業だった
このまま終わると、当然、島津製作所ができることにはなりません。島津源蔵は、化学技術の研究・教育、および勧業のために作られた官営・公営機関である舎密局(せいみきょく)で、理化学の知識と技術を習得。鋳物で培われた技術を利用して、理化学機器の製造の受注を請け負うようになっていったとのこと。二代目の島津源蔵になる頃にはこれが軌道に乗り、仏具業からは完全撤退。国内初のX線写真の撮影に成功し、翌1897年に教育用X線装置を商品化しています。
さらに、二代目島津源蔵は、蓄電池も研究。1897年に京都帝国大学の理工科大学から注文を受けて二代目・源蔵は鉛蓄電池を作製し、これは後に改良され「GS蓄電池」となりました。GSは島津源蔵の頭文字を取ったものだといいます。この蓄電池は日露戦争で徴発(人の所有する物を強制的に取り立てること)されています。
その後、第一次世界大戦が勃発するとドイツからの蓄電池輸入が途絶えたため、三菱・大倉財閥や京都財界によって島津製作所の蓄電池工場を独立させることに。1917年に日本電池株式会社が設立されました。日本電池は合併し、ジーエス・ユアサコーポレーションに繋がっています。こちらも源流が島津製作所と同じとは知りませんでした。
(日経ビジネス電子版、
島津源蔵 (2代目) - Wikipediaより)
日経ビジネス電子版の記事のタイトルは、<明治維新の“悲劇”が生んだ京都ノーベル賞企業>というもので「明治維新の“悲劇”」と表現していたように、仏教を迫害して良かったね…とはしないでほしいのですけど、ピンチをチャンスに変えた企業の代表例だと言えそうです。
●コメリの扇風機など手掛けるユアサプライムス、GSユアサと関係ある?
2021/07/26:ホームセンター・コメリがプライベートブランドのような感じで扇風機を販売していました。この扇風機の製造(?)を見ると、ユアサプライムスとの記載。で、島津製作所の関係企業だ!と思ったのですが、上記を読み直してみると、兄弟会社であるジーエス・ユアサコーポレーションのうち、島津と関係するのはユアサではなく、ジーエスの方でしたね。
また、ユアサプライムスの「ユアサ」とも別のユアサ…という可能性も考えたのですが、こちらはちゃんと関係あった模様。それぞれの企業について簡単にまとめると、以下のような感じです。ユアサプライムスは、冷暖房機器などの卸売との説明もあったので、製造はさらに別に委託している可能性もありそうでした。
・ジーエス・ユアサコーポレーション 日本電池(GS)とユアサコーポレーションが2004年に経営統合。
・GS(日本電池) 1895年に島津源蔵 (2代目)が日本で初めて鉛蓄電池を製造したのが始まり。
・YUASA(湯浅電池) 1913年に初代湯浅七左衛門が金属の電解科学に関する研究を開始したのが始まり。ユアサコーポレーション(旧 湯浅電池)による蓄電池の製造は、ユアサ商事の源流となる金属問屋「炭屋」直営の湯淺鉄工所(大阪府堺市)に設けられた湯浅蓄電池製造所(1915年開設)に端を発し、1918年に湯浅蓄電池製造として独立した。
・ユアサ商事 1666年に初代湯淺庄九郎が京都で炭の販売業を創業したのが始まり。
・ユアサプライムス ユアサ商事の子会社。冷暖房機器、電機製品、住宅関連商品などの卸売をする。
●島津製作所子会社、よりによって医療機器に故障タイマーしかける
2023/02/12追記:個人的にはイメージの良かった島津製作所ですけど、残念なニュースが入ってきました。
「不合理で厳しい」ノルマが背景、不正疑い43件 島津製作所子会社「故障タイマー」問題で調査委が指摘:東京新聞 TOKYO Web(2023年2月11日)という悪いニュースです。ときには生命にも関わってくる医療機器を故障させるものですから、普通の製品でやるよりずっとやばいですね。
<島津故障偽装問題 島津メディカルシステムズ熊本営業所の社員が公立病院で医療用装置の定期点検をした2017年、「エックス線管球」と呼ばれる主要部品にタイマーを設置。1カ月余りでエックス線が出なくなり、部品交換費としてメディカル社が約228万円を受け取っていた。島津製作所は昨年9月、16〜18年に5件の不正があったと発表し、外部調査委員会を設置した。装置は体内を動画で透視でき、胃や腸のバリウム検査や内視鏡手術などに使われている>
<島津製作所(京都市)子会社の島津メディカルシステムズ(大阪市)が熊本県内の医療機関に納入したエックス線装置を巡り、故障を偽装して部品を有償で交換していた問題で、島津製作所は10日、弁護士らによる外部調査委員会の報告書を公表した。2019年までの11年間に熊本、宮崎、鹿児島、長崎4県の41医療機関で計43件の不正やその可能性があると認定>
故障タイマーの不正そのものが前述の通りもちろんやばいのですが、不正の理由がこれまたやばいのです。報告書では、営業所長ら7人を嫌疑濃厚とし、動機として不合理で厳しい業績目標の達成が求められていたことを挙げているとのこと。これは「だから不正して良い」という意味ではなく、組織全体、特に上層部に問題があるという意味で深刻な指摘です。
<(引用者注:報告書では、)不正の動機として、各営業所に厳しい業績目標が割り当てられたことや、不正をした社員がこうしたプレッシャーにさらされていたことを指摘した。「社員が金銭的な利益を個人的に得るわけではない」として、組織上の問題を挙げた>
また、組織全体、特に上層部に問題があるとことを類推させる話はまだあります。島津側はこれまで、2022年4月の内部通報で初めて不正の疑いを把握し、翌月の5月から両社で調査を開始したと説明していたものの、これが嘘でした。なんとこれより5年も前に内部通報があったにも関わらず、改善されていなかったというのです。これでは擁護しづらいですね。
<報告書では、メディカル社の社員が17年、証拠となる写真と録音を同社の執行役員企画管理本部長(当時)に提出し、内部通報していたことが明かされた。通報は社長らに報告されず、被害を受けた医療機関にも説明されなかった。
島津製作所の広報担当者は「関係する組織や方々に多大なご心配とご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げる。再発防止の取り組みを徹底して信頼回復できるように努力する」とした。不正による健康被害は報告されていないとしている>
仏具とノーベル賞 京都・島津製作所創業伝 鵜飼秀徳 (著)

●「島津さん」 京都の人が敬意を込めてさん付けで呼ぶ珍しい企業
2023/05/23追記:島津製作所関係で、
仏具とノーベル賞 京都・島津製作所創業伝 鵜飼秀徳 (著)という書籍があったので、内容紹介やレビューも見てみようと思いました。が、コメントあるレビューはゼロで想定外。得点のみの評価は14個あって、4.8というかなりの高さ。ただ、コメントがないとよくわかりませんね。
戸惑いつつ検索してみると、幸い
『仏具とノーベル賞 京都・島津製作所創業伝』|ひらめきブックレビュー ~気軽に味わう、必読書のエッセンス~ | 日本経済新聞 電子版特集(情報工場 エディター 倉澤 順兵)で良い書籍紹介がありました。ちなみに書籍の著者の鵜飼秀徳氏は、浄土宗正覚寺(右京区嵯峨)の副住職も務める京都出身のジャーナリストだというので驚きです。
<「島津さん」。京都に本社を置く理化学・精密機器メーカーの島津製作所は、地域の人々からこう呼ばれている。敬意と親しみのこもった「さんづけ」がなされる企業は、同社のほかに大丸京都店しかないそうだ。
島津製作所といえば、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんが在籍する企業として知られる。一方で、明治の創業時から日本の産業界を支えてきたことはあまり知られていないのではないか。本書『仏具とノーベル賞 京都・島津製作所創業伝』は、そんな島津製作所の歴史をひも解くノンフィクションだ。同社創業者の島津源蔵と、その息子で「日本のエジソン」と称された二代目の梅治郎の親子の活躍を中心に、時代の変化を受け止めながら柔軟に業態を変化させ、ものづくりにまい進する様子を生き生きと描いている>
仏具とノーベル賞 京都・島津製作所創業伝 鵜飼秀徳 (著)

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