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再生可能エネルギー 日本のバイオマスの問題点


 再生可能エネルギーは太陽光発電への関心ばかり高く、私もそちらの話をたくさん書いています。

 新しい順
  ■スペインに学ぶ再生可能エネルギーの全量買い取り制度
  ■再生可能エネルギーの全量買取制度は失敗した?買取価格42円は高すぎ
  ■再生可能エネルギーの全量買い取り制度の参考に カリフォルニア州の補助制度
  ■再生可能エネルギーの全量買取制度に関して、自然エネルギーへの批判・問題点


 しかし、バイオマスもおもしろいのでは?と思っており、日本のバイオマス政策はなぜ迷走したのか 事業のほとんどが採算合わず(要登録 日経ビジネスオンライン 2012年7月2日 泊みゆき)を読んでみました。


 泊みゆきさんによれば、"2011年2月に総務省のバイオマス政策評価で、「1374億円以上かけて国が行ってきたバイオマス政策によるバイオマス関連事業214事業中、効果が発現しているものは35事業で、これらにも施設の稼働が低調なものが多い」と指摘され"ているのは、

"事業が計画された時点ではあまり認識されていなかったライフサイクルアセスメント(LCA)を持ち出したり、マテリアル利用を資源有効利用ではなく温暖化対策効果で測ろうとしたりする点"

 には違和感を覚えるものの、
 
"特に公的機関や第三セクター、森林組合が行っているバイオマス事業のほとんどで採算がとれていない"

 というのは事実として認めなくてはならないと感じているようです。


 しかし、バイオマスが不利になっている理由として、以下が挙げられています。
 バイオマスなど再生可能エネルギー利用が進んでいるヨーロッパ諸国とくらべ、日本では化石燃料の枯渇性や気候変動リスク、大気汚染の影響などの社会的負荷を価格に反映させる、すなわち外部経済性を内部化する制度がこれまでほとんど実施されてこなかった。具体的には、炭素税、再生可能エネルギー全量買い取り制度(FIT)、排出権取引制度などだ。

 このため、環境など社会的コストがかかるが見かけ上の価格が低い化石燃料などが、好んで使われ続けてきたのである。それが、化石燃料に対してバイオマスが競争力を持ちにくかった理由の1つとなっている。

 北欧やドイツで木質チップやペレットが使われるのは、市民の環境意識が高いからというより、炭素税などによって、化石燃料より安いからである。

 この点については、今年7月からFITが始まり、炭素税(地球温暖化対策税)も同じく10月から導入されることが決まった。制度の成否は設計が適切かどうかによるが、一歩前進したと言えよう。

 え、炭素税始まるんです?全然知りませんでした。

 これって、すごい重要なことじゃないです?何で話題になっていないんでしょう?


 それは置いておいて他の理由は以下です。


【バイオマスを想定していない制度】

 廃棄物の運搬に関する規制がネックになっていた。


【一次産業の停滞】

 "日本では農地の分散化、点在化、小規模経営が多い、林業の停滞などにより、農林業廃棄物・副産物の大量収集が欧米にくらべて困難なことが多い。 "

 以前書いたように、林業は先進国向きの一次産業だそうですので、ここを頑張って欲しいですね。


【設備、機器、ノウハウの未発達】

 改良を加えながら使われてきている欧米と違い、"日本では1960年代にエネルギー革命が起こり、暮らしにおける薪炭材利用は、ほぼ駆逐された。"


【補助金のまずさ】

 "これまでバイオマス政策においては、研究助成、設備投資などに対する補助が行われてきたが、ランニングコストについては補助がなかった。さらにバイオマス利用事業において、利用可能な資源調達やエネルギー需要などの予測が不十分であったり、建設計画がずさんであったり、運用が適切に行われなかったりしたケースが多々ある。(中略)

 さらに計画・実施体制が不十分であっても、補助金が出てしまうので、事業が実施された。つまり、補助金供与の際の審査が十分でなかった。"


【事業者の資質】

 "バイオマスが環境によいから、地域資源の活用になるからと「バイオマス利用ありき」で事業を進めるとすると、次第にバイオマス利用が目的化し、状況の変化に対応できず、経済性を維持できなくなる。一方、バイオマス事業の困難さをよく認識した上で、臨機応変に対応し、柔軟かつ現実的に事業を運営しているケースもある。 "


【市場性を考えていない】

 "国内の多くの木質ペレット工場では間伐材などを購入し、粉砕、乾燥して木質ペレットを製造すると、40~60円程度の製造コストとなり、灯油に対して競争力を持つことが難しい。"


【設備機器が高い】

 "ペレットストーブやバイオマスボイラーは、機器の価格が灯油ストーブや重油ボイラーにくらべて、数倍から10倍程度と著しく高価"


【農水省主導の失敗】

 "バイオマス・ニッポン総合戦略の立案が、その少し前に起きた狂牛病による農水省のイメージダウンを回復させる意図があったと言われるように、政府のバイオマス事業は、厳しい財政事情の中で予算獲得の名目として使われた側面が強い。それは農水省に限らず、他の省庁でも同様で、「バイオマスバブル」とも言われた。しかも、農水省、経済産業省、林野庁、環境省、国土交通省、文部科学省、総務省など多数の省庁にまたがり、十分な調整なしに政策が行われた。

 そしてバイオマス発電などが思わしい成果を十分上げられないことが明らかになりつつある時期に、今度は世界的なバイオ燃料ブームが起き、「日本でもエタノールを」の掛け声の下に、研究開発、実験・実証事業が多数行われた。そして、「バイオマス政策評価」で断じられたように、残念ながらそのほとんどすべてで成果を上げられなかったのである。 "


【専門的な政策担当者がいない】

 "もう一つの要因に、公務員の頻繁な異動も挙げられるだろう。バイオマスのように複雑多岐にわたる内容は、2年程度の在職期間内に精通することは難しい。かつ、事業を計画し軌道に乗せるにも短すぎる。ちなみに、総務省の評価は、たまたま10年近く農水省を担当していた職員がバイオマス政策に疑問をもったことがきっかけで行われた。

実は、製紙会社やセメント会社が導入したバイオマスボイラーのように、民間の取り組みでは、効果を上げているものもある。今後のバイオマス利用においても、民間での導入に行政がサポートする姿勢が重要だろう。"


 気になったところとしては、まずひとつ、"補助金のまずさ"や"バイオマスが環境によいから"というところですね。

 私は何度か書いていますけど、慈善的な事業も、継続性がなければ、本当の慈善とはならず、無責任なものになると考えています。

 再生可能エネルギーの全量買取制度シリーズでもしつこく書いてきましたが、再生可能エネルギーも本当に役立つものを作らなくては長い目で見て良い結果になりません。

 ランニングコスト・採算の問題は、こういう無責任で軽い偽善的な意識から来ていると思います。

 環境問題を考えているよというファッション性だけで、本気になって考えていないのです。


 もう一つ、上記では主に大きい施設でのバイオマス利用を考えているというのが気になります。

 ストーブの話もちょっとだけありましたが、私がバイオマス利用に魅力を感じているのは、原料も設備もエネルギー使用もその場でという小規模な利用です。

 そうなると、輸送の問題は相対的に減ります。そもそもバイオマスの輸送する距離が長くなればコストは高くなり、ますます価格競争力をなくします。


 そういう意味で、"民間がこれからバイオマス利用する場合、どのようにとり組むのがよいだろうか"の部分は、注目しました。
 第一に、採算がとれること、長期にわたって使える見込みがあることが大前提である(こんな当たり前のことを挙げなければならないあたりが、バイオマスの悩みである)。

 第二に、トータルでの環境負荷である。温暖化対策として本当に有効か。生産、加工、使用、廃棄だけでなく、資源採取(土地利用転換、生物多様性の維持など)やその周辺(間接影響)へと配慮すべき事柄がどんどん広がっており、注意が必要である。

 第三は、他の用途との競合である。要するに、「素材や飼料などには使えない、使いづらいならエネルギー利用を考える」という原則である。

 最近の知見を集約すると、エネルギー利用目的での木材伐採、植林、農産物栽培などの「バイオマス目的生産」は、かなり周到に考えてからでないと行うべきではないようだ。温室効果ガス収支が悪くなりがちであり、経済性の面でも厳しく、農地収奪のような社会問題のリスクもある。

 逆に言えば、農林業の生産や加工、使用後に出る副産物・廃棄物であれば、人為的に誤った制度でもないかぎり、ほぼ問題ないと考えられる。他の用途に向かないなら、エネルギーとして使えばいい。

 一番良いのは使い道のない副産物・廃棄物の利用であり、これは経済的合理性とも相反しません。


 節電や環境問題で気になるのは、何か新たにお金をかけたり、製品を買わせたりして対策しましょうというのが主体になりがちなことです。

 しかし、エネルギーの有効活用や副産物・廃棄物の利用は、無駄にしていたものを活用しようというごくごく当たり前の特別じゃないことであり、そういう大したことのなさそうな行為でも、立派に環境問題に貢献できるのです。

 新しい設備を……という方が大々的で格好良くて、わかりやすくて、お金のやり取りもたくさんになって嬉しいのでしょうけど、今捨てているものについても見直してほしいです。

 これは以前書いた廃棄物発電と浸透圧発電 ~再生可能エネルギー全量買取法では除外~でも気になりました。

 使えるものをどんどん捨てて、エコ商品をたくさん買って満足するような本末転倒さを感じなくもないです。


 関連
  ■廃棄物発電と浸透圧発電 ~再生可能エネルギー全量買取法では除外~
  ■スペインに学ぶ再生可能エネルギーの全量買い取り制度
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  ■再生可能エネルギーの全量買取制度に関して、自然エネルギーへの批判・問題点
  ■再生可能エネルギーの全量買取制度に関して、自然エネルギー批判への反論
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