消費税増税反対十大理由(高橋洋一)で最後にちょっとだけ出てきたように、消費税増税反対派の高橋洋一さんは軽減税率に反対しています。
一方、こちらも時折紹介している小峰隆夫さんは消費税増税に賛成しているのですが、軽減税率に関しては反対の立場のようです。
実は
消費税増税反対の小沢系,理解できないという世論調査の結果に出ていた世論調査の中で偏って賛成が多かったのがこの軽減税率なんですけど、上記の反対からすると消費税増税よりもよほど問題である可能性があります。
高橋洋一さんはまだ書いていないと思うので、記事はとりあえず、
軽減税率は「民意のバイアス」が生じる典型例 国会の参考人質疑の中で考えたこと(下)(要登録 日経ビジネスオンライン 2012年7月4日 小峰 隆夫)からだけ。
まず、軽減税率の考え方はこうです。
消費税は、必需的な財・サービスにも同じようにかかる。しかし、必需的な支出が所得に占める比率は低所得層ほど高くなるため、消費税の負担も低所得層ほど重くなってしまう。これが逆進性の議論である。そこで、必需的な色彩の濃い食料品は税率を低くすべきだという考えが出てくる。これが軽減税率の議論である。
考え方はよくわかります。3年ほど前に消費税増税に関してアンケートみたいなものがあったとき、私はこの軽減税率の話を書き、賛同を示しました。
ところが、既に書いている通り、消費税増税賛成・反対派を問わず評判が悪く、
私の知る限り、この軽減税率の導入に賛成する経済学者を見たことがない。この点は、一般の人々の考えと経済学者の考えが大いに食い違うところである。
とも書かれています。
いったいどうしてこんなことになるのでしょう?
とりあえず、ここまで読んだ時点で思いついたのは、そういう細かい取り決めをするよりは買うものは好きに選ばせて、低所得者層だけ無条件で還付しても大した違いがないし、シンプルで無駄もないということでしょうか?
既にどこかで読みましたが、軽減税率の適用・不適用を決めるために利権が発生することがないというのも、魅力的な気がします。
じゃあ、続きを見てみます。
では経済学者はなぜこれに反対するのか。今回(引用者注:参考人質疑に)出席した参考人4人は、一人ずつ反対を表明したのだが、全員が異なる理由を述べた。最初に答えた小塩氏は「公平性の追求という政策目的から見て効果的でない」という観点から反対であると述べた。五十嵐氏は「税制はシンプルな方が望ましいから」反対だと述べた。村岡氏は「10%程度の税率であれば、逆進性はそれほど大きくないから(10%を超えた段階で考えるべき問題であるから)」反対と述べた。
順番が最後になった私は次のように述べた。「複数税率にして食料品は軽減税率ということにすると、何が食料品で何が食料品でないかという線引きをめぐる問題が出て、なるべく食料品にしようと課税逃れの工夫をする人が出てきたりする。せっかく工夫するならもっと建設的な工夫をしてもらいたいと思います」
(補足すると)これは次のようなことである。食料品の税率を低くするのは、それが生活必需品であるからだ。すると、「高級フランス料理の食事を軽減税率にする必要はない」という議論になるだろう。高級フランス料理が生活必需サービスだとは言えないからだ。すると「外食は軽減税率から外し、自宅で食べる際の食材だけを対象にすればよい」ということになる。すると、同じハンバーガーでも、ハンバーガーショップで食べると軽減税率の対象ではなくなり、自宅に持ち帰ると軽減税率になるというややこしいことが起きる。
また、食料品は軽減税率ということにすると、例えば、おもちゃを売ろうとした時、食料品のおまけにおもちゃを付けて、「これは食料品である」と言い出す人が出るかもしれない。課税逃れの工夫をする人が出るのだ。こうした税金逃れのための工夫は、一種の「レント・シーキング行動」(限られた特権によってもたらされる利益を追求する行為で、経済学的には資源の浪費だとされる)であり、同じ工夫でも社会的に見て建設的な工夫だとは言いにくい。どうせ工夫するなら、もっと建設的な工夫のために頭を使ってほしいというのが私の言いたかったことである。
大体想像通りでしょうか。確かにこういった理由の方が納得できます。3年前の私は考慮不足でした。
小峰隆夫さんは"先を越されてしまったので、あえて別の理由を述べた"ということで(他の人もそうだったりして)、実際には"「公平性のための政策としては非効率的だ」という理由が最も重要と考えて"いるようです。
年収300万円の世帯の食料支出が100万円としよう。食料は必需的な性格が強いので、年収が増えてもそれほど食料への支出は増えないはずだ(年収が2倍になったからといって、ご飯を2倍食べるわけではない)。ここでは、年収が100万円増えるごとに、食料支出は20万円増えるとする。年収1000万円の世帯の食料支出は240万円となる。
消費税を10%にすると、年収300万円世帯の税負担額は10万円であり、1000万円世帯の負担額は24万円となる。年収に占める比率は、300万円世帯が3.3%であり、年収1000万円世帯では2.4%となる。所得が低い層ほど、所得比で見た税負担が高くなる。これが逆進性である。
この逆進性をなくすために、食料品の税率を5%に据え置いたとする。税金を払わないで済んだ金額だけ補助金を受け取ったと考えると、300万円世帯への補助は5万円、1000万円世帯への補助は12万円となる。高所得層の方が多くの補助を受けることになる。確かに低所得層を補助してはいるのだが、それは高所得層により大きな補助を行った上で低所得層を補助しているのだ。いかに非効率的な分配政策であるかが分かるだろう。
私の言う大体同じはちょっと違ったかな。むしろ悪いのかも。確かに高給な食材を食べている人の方が、結局還付が大きくなります。
実は順番を入れ替えており、本当は最初にあった話なのですが、「自分の身の回りのマイナスを避けようとして、かえって大きなマイナスが及んでしまうことがある」というバイアスの話を小峰隆夫さんはしていました。
(引用者注:参考人質疑の)質問者のトップバッターは民主党の勝又恒一郎議員だったのだが、勝又議員は私にやや意外な質問をぶつけてきた。
勝又議員は「小峰先生は、本来の政治主導というのは、民意をそのままくむのではなくて、むしろ民意のバイアス、偏りを修正して、長期的に政策を誤らせないようにすることが大事だと指摘されています。そういう観点から、今の国会における社会保障と税の一体改革をどのように見ておられるか、感想をお伺いしたい」と私に質問したのだ。
これに対して私は概略次のように答えた。
「しばしば世論調査で人々の考えを聞き、民意に従うべきだという議論が出ます。しかし、民意には民意のバイアスというものがあると思います。それは、『短期的な視点で物事を判断してしまう』ことや『自分の身の回りのことを中心に物事を判断してしまう』というバイアスです。
しかし、短期的なマイナスを避けようとして、長期的にかえって大きなマイナスを抱え込むということはよくあります。また、身の回りのマイナスを避けようとして、回り回ってかえって大きなマイナスが身に及んでくるということもよくあることです。
こうした民意のバイアスを避ける仕組みが『間接民主主義』だと私は思います。従って、国会議員の方々は、自らの判断で長期的に国民のためになる政策を考えていただき、もしそれが民意に反するものである場合は、(民意に従って自らの考えを修正するのではなく)民意の方を説得していただきたいと思います」
そして、"税・社会保障問題は、この「民意のバイアス」が発生しやすい典型的な政策課題"と言え、特に"今回の参考人質疑の中で取り上げられた軽減税率の議論はその典型"であると言えるようです。
先に書いたように、こちらは消費税増税と違って国民が諸手を挙げて賛成です。さらに消費税増税に関してキーとなっている自民党が言い出した案(これは先の利権との関係ではという噂もあります)なので、通る可能性も高いということも心配です。
私は現時点の消費税増税に反対していますが、こちらは長いスパンで見れば必要なことは確かです。しかし、軽減税率は採用する必要性はありません。
このままだと増税してなおかつ軽減税率もという、最低最悪の道に進んでしまうのでは?と危惧しています。
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