私はそもそも副業を禁止する権限があるのだろうか?というところから不思議なのですけど、副業解禁!の流れが出ていて話題になっていました。一方で副業のデメリットというのも主張されています。ただ、どれも副業を解禁する以前から起きている問題ばかりで、説得力は感じませんでした。
2018/09/14:
●そもそも企業に副業を禁止する権利はあるのか?
●副業解禁のデメリットは嘘だらけ…それ副業関係ないじゃん!
●そもそも日本政府が副業禁止を事実上推奨していた
●欧米化が推進される!日本企業が「副業解禁」で壊れる理由とは?
●副業解禁で一番困るのは、ブラック企業かもしれない理由
2019/12/20:
●副業解禁企業リスト ソフトバンク、DeNA、HIS、ユニチャームなど
2020/08/04:
●会社にマイナスどころかプラス?むしろ副業を必須にした方が良い説
●企業側のメリットは「社員の成長」「本業との相乗効果」と…
●そもそも企業に副業を禁止する権利はあるのか?
2018/09/14:企業で社員に副業・兼業を解禁する動きが相次いでいるとのこと。ただ、そもそも企業が個人の私生活に干渉する権利ってあったんですかね? 「彼女を作った方がいい」や「結婚しないの?」などのセクハラもそうなのですけど、個人の自由への干渉というのは気になるところです。
(関連:
同性間セクハラの具体例「初体験は?」「風俗行け」「結婚は?」など)
とりあえず、日本では、副業を禁止していた会社が多数であり、最近になって「解禁」の動きが出てきたとのこと。ユニ・チャームの場合は社内から「どうやって副業を探せばいいのか」「どんな副業があるのかわからない」といった声も上がるということで、「解禁」というか「推奨」といった感じで、2018年4月に副業制度を開始しています。
まだ始まっていないものの、社員の副業・兼業を認める検討を始めた武田薬品工業は、むしろ副業を許さない企業に問題があるという危機意識がある模様。「キャリア採用が増える中、『武田は古くさい働き方しかないんだな』となると目を向けてもらえない」(寺川澄夫グローバルHR日本人事室労務管理ヘッド)としていました。
(
副業・兼業“解禁”相次ぐ、課題は? 2018年08月31日より)
●副業解禁のデメリットは嘘だらけ…それ副業関係ないじゃん!
記事では、「課題は?」としていましたが、おそらく"古臭い"人たちが言いだすのは、本業が疎かになることと、機密情報の流出だろうと思いました。実際、記事でも、「現状、民間企業で兼業・副業を受け入れる場合、他社への情報漏えいリスクなどの懸念はどうしても生じてしまう」と書いています。でも、これ変な話なんですよ。
そもそも現在情報漏えいが起きていないか?と言うと、ガンガン起きています。例えば、正社員を減らして契約社員やアルバイトを多用することで、そこから漏れたといったことが起きていますよね。副業の有無に関わらず、他社への情報漏えいは会社のルールで禁止すべきであり、加えて情報漏えい防止措置を取るべきです。副業の禁止は、全く本質ではありません。
また、記事では出てこなかったものの、「本業が疎かになる」というのも同様。副業をしていようがしていまいが、仕事をいい加減にやられると困るのはいっしょ。そういう人は副業の有無に関わらず評価を低くする、生産性を高める工夫するなどで対応していき、副業をしているかどうかは本質ではありません。
別記事の日経ビジネスオンラインによると、新生銀行では、競合する金融機関や情報漏えいのリスクが生じかねない企業での副業は禁止しているとのこと。今までにも情報漏えいする人は正式に働かずにこっそりと漏らしてきたのであまり意味ないと思いますけど、この方針ならまだ理解できます。
(
「副業解禁」で壊れる日本の「カイシャ」:日経ビジネスオンライン 磯山 友幸 2018年4月27日より)
ただし、会社の想定した、会社に役立つ仕事しか認めないという方針の企業がちらほら見受けられるのは気になるところ。どうしても滅私奉公的な、私生活でも会社のために尽くせ!という意識が見られますね。社員を会社の所有物かなにかと勘違いしています。
●そもそも日本政府が副業禁止を事実上推奨していた
企業に副業を禁止する権利はそもそもあるのか?に絡んでですが、日経ビジネスオンラインによると、なんと日本政府が禁止を事実上推奨していたみたいですね。厚生労働省は「モデル就業規則」というのを作っており、そこに「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業禁止の規定があったんだそうです。2018年1月にこれをやっと削除しました。
このせいもあるのか、中小企業庁の調べでは、大半の企業が副業を「原則禁止」としており、認めている企業は全体の14%に過ぎなかったそうです。
一方、もともと副業解禁論が出てきたのは、多様な働き方を求める人が増えたことが背景にあるとのこと。サイボウズの青野慶久社長が政府委員などとして、「副業禁止を禁止せよ」と強く主張したことなどがきっかけだといいます。サイボウズの青野慶久社長は、他にも先駆的な主張をしていらっしゃる方です。
ただし、政府が「副業解禁」に動いた最大の理由は深刻化する「人手不足」だといいます。ひとつの会社に縛り付けておく「働かせ方」を続ければ、労働人口の減少とともに、人手はどんどん足りなくなります。一方で、ダブルワークなどを解禁すれば、効率的にひとつの仕事を終えた人が、他の仕事に就くことで、人手不足を吸収するだろうという思惑がある模様です。ここらへんは副業解禁のメリットだとも言えそうですね。
●欧米化が推進される!日本企業が「副業解禁」で壊れる理由とは?
私生活まで縛ろうという副業禁止の方針は、いったん就職すれば、定年退職を迎えるまで面倒を見続ける「終身雇用」が前提で、社員の能力はすべて会社のために使うのが前提だろうとしていました。ただ、すでにいわゆる「リストラ」がガンガン行われており、「終身雇用」の方はほとんどの企業で壊れています。なので、今は会社側による一方的な搾取状態ですね。
また、記事がタイトルで"「副業解禁」で壊れる日本の「カイシャ」"としていたのは、個人の仕事の境目に関する話です。これはかなりややこしかったのですけど、なるべく簡単に説明してみます。まず、欧米企業では、その社員の仕事が何かを明確に示しているため、同じ課の隣の社員が残業していても、さっさと帰宅していく、と言われます。一方で、境目がはっきりしない日本では、際限なく仕事が来るので長時間労働になりやすいとも言われています。
なので、個人の仕事の境目がはっきりすることは良いことだと思うのですけど、「副業によってこれが進むのではないか」という予想が書かれていました。企業は社員の「本来業務」の副業は依然として禁止しようとするものの、それを禁止するにはまず「本来業務」を明確化する必要があり、結果、仕事の境目がはっきりしてくるだろう…という理屈です。で、これが従来型の日本の「カイシャ」を変えてしまうことになるということですね。
●副業解禁で一番困るのは、ブラック企業かもしれない理由
ただ、やっぱりこれは良い方向性でしょう。会社が面倒を見てやっているんだからムチャな要求にも応えろ!という日本の考え方は、明らかにブラック企業。うちでは、
社員は家族という会社にブラック企業が多い理由 疑似家族制度導入の万協製薬紹介のガイアの夜明けに反響などの話をやっています。
記事の最後にあった"あたかも「擬似家族」のようだった日本の伝統的な「カイシャ」は急速に壊れていくに違いない"というのは、むしろ歓迎すべきことでしょう。
あと、こうやって書いてきて思ったのは、副業がうまくいくことで、今まで都合よくブラックな働き方をさせていた奴隷社員らに逃げられてしまうかも…という心配も、副業を解禁したくない企業にはあるのかもしれません。
●副業解禁企業リスト ソフトバンク、DeNA、HIS、ユニチャームなど
2019/12/20:
<話題の焦点>=広がる“二兎を追う”働き方、「副業解禁」関連に注目 投稿日時: 2018/04/26 12:10[みんなの株式] - みんなの株式 (みんかぶ)は、株関連の記事。副業を解禁した企業は生産性の向上などが期待されるとしていました。
こういう株購入推奨記事は当てにならないために、私は批判しています。ただ、副業を解禁している企業の具体例を出していたので、そういったまとめ的な意味では役に立つ記事でした。
2016年 ロート製薬が「副業制度」を導入。
2017年 ディー・エヌ・エー、ソフトバンクグループ、コニカミノルタなども相次いで副業を解禁。
2018年
新生銀行が、社員が個人で事業を営んだり、業務を受託する「個人事業主型」に加え、他社に従業員として雇用される「他社雇用型」についても、所定の条件を満たせば認める制度を導入。
ユニ・チャームが、職場環境の整備や改善の一環として副業を認めた。
エイチ・アイ・エスは副業を解禁すると発表。訪日外国人向けの通訳ガイドなどに就いてもらい、本業でのサービス向上につなげたい考え。
●会社にマイナスどころかプラス?むしろ副業を必須にした方が良い説
2020/08/04:私が言っているのは、副業最高!みんなやるべき!といったものではありません。会社にいる時間以外を縛るのは問題で副業をやるかどうかは自由だろう…という話。副業が会社のために役立つかどうかも関係ないし、そこを重視すると個人を束縛し、自由を侵害することになると考えています。
ただ、
副業が社員を強くする コロナ・ショックが加速する新しい雇用の形:日経ビジネス電子版(2020年4月28日)という、むしろ副業が会社を助ける…といった感じの記事があり、気になってブックマークしていました。
記事で最初に出ていた研修事業やイベントの企画などを手掛けるアソブロックは、もともとかなり特殊な会社。決まった事業はなく、社員がそれぞれ「好きなこと」を事業として手掛け、給料は社員が自らの成果を踏まえて申告して決まるところだといいます。
ここは新型コロナウイルス問題が直撃して、代表が会社の解散を社員に打ち明ける形に。ただ、「兼業必須」という超副業重視の方針のために、社員のひとり他の社員にが副業を凱旋できました。また、他にも副業がある社員が給与削減や出勤削減を申し出て、余裕のない社員の方に給与を優先して払ってなんとか乗り切ったとしています。
●企業側のメリットは「社員の成長」「本業との相乗効果」と…
ただ、上記の例はちょっと特殊すぎるかな…と。フリーライダーを強く憎む人が一定数いて、特に日本では海外より多いとされており、うまく行かないような気がします。いい人が集まったら…というもので、一般論として良いかは微妙ですね。また、個人個人に負担を強いるものであり、望ましい形と言えるかどうかも微妙です。
ということで、他も見てみましょう。記事で出ていたもう一つの事例である、IT企業エンファクトリーも「専業禁止」を掲げる副業原理主義な会社。創業者はリーマン・ショックなどの経済不況を意識し、もともと不況に強くなることを狙っていたみたいですね。副業を個人のセーフティーネットとして使う形です。
とはいえ、「社員の成長」「本業との相乗効果」についても触れられていましたし、「会社が社員の収入を保証する責任の分散」といった話も。こういうのは会社側の都合であり、私が重視しないところ。むしろここらへんを利用されて、ブラックな条件にされちゃうと困る注意が必要なところかもしれません。こうして見ると副業重視論というのも、危ういものを秘めてそうですね。
【本文中でリンクした投稿】
■
同性間セクハラの具体例「初体験は?」「風俗行け」「結婚は?」など ■
社員は家族という会社にブラック企業が多い理由 疑似家族制度導入の万協製薬紹介のガイアの夜明けに反響【関連投稿】
■
風邪で休んだバイトに罰金1万円!たとえ正社員でも違法の可能性 ■
パレートの法則・働きアリ(2-6-2)の法則による組織論の嘘 人間はアリと違う、長谷川英祐准教授も言及 ■
成功報酬・インセンティブより未達成ペナルティ・罰則が効果的…は本当? たとえ有効でも違法行為の可能性 ■
成果主義と罰則がうまく行かない理由 行動経済学の実験の意外な結果 ■
インセンティブはピザと褒め言葉が効果的 現金報酬はむしろ逆効果の可能性 ■
ビジネス・仕事・就活・経済についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|