もともと書いていたのは、神社宮司がおみくじの凶が出ても気にしなくていいんだよという話でした。「おみくじは占いではありません」という説明。ただ、おみくじの歴史について説明した記事では、そもそもおみくじというのは占い要素を取り入れてお金儲けを狙ったものであり、引き直ししたくなるように作られているといったものでした。
その他、<今は神社のイメージが強いおみくじ…祖先は神社?お寺?どっちなのか?>、<江戸時代になってお寺のおみくじ人気に…羨ましい!と神社がパクリ>、<不要だった占いを追加…ついに射幸性を増して有料になったおみくじ>といった話もやっています。
●凶・大凶が出てしまった!神社宮司が説明する気にしなくて良い理由
2012/7/19:検索していると、「お金払っておみくじが凶だったら、神社に火をつけたくなる」など、物騒なことを書いている方がたくさんいて驚きました。でも、別に凶が出てもそんな腹を立てる必要はないのです。
知っ得!しゅうなん再発見 第1回に出ていたおみくじ作成の最大手女子道社の三代目宮司宮本公胤さんは、以下のようにおっしゃっていました。
「おみくじは占いではありません。たとえ、凶が出ても縁起が悪いと落ち込むことも、大吉が出て有頂天になることもありません。内容をよく読み、反省すべき点は反省し、励ましのお言葉として受け止め、日々努力を怠らないことが大切です」
2021/12/24追記:読み直していて、「神社に火をつけたくなる」などと書く人がいるってすごいなと思って気になって検索したのですが出てきません。読んだのは10年くらい前なので、もう見つからないでしょう。変わりに別のお怒りな人の例を追加。今検索してみると、こういう怒ってる人より落ち込んでいる人の方が多い感じですね。
<おみくじで凶を引いて、結ぶところがなかったのでビリビリに破いてしまったんですけどバチはあたりますかね?だってそのあと、友達が大吉引いたんですもの…腹が立ってしまって思わずやってしまいました>(
ヤフー知恵袋より)
●今は神社のイメージが強いおみくじ…祖先は神社?お寺?どっちなのか?
2017/12/25:上記の宮司さんは、「おみくじは占いではありません」という説明でした。ところが、おみくじの歴史を見てみると、思い切り占いの要素があると言う人もいます。しかも、これは寺社の金儲けのために取り入れたものだろうという、寺社の方が聞くと「そんなわけない!」と否定したくなりそうな予測がされていました。これは私の説じゃないので、怒らないでくださいね。
その話へ行く前に、まず、おみくじの誕生から見ていきます。私は神社の方がおみくじのイメージが強かったのですが、実を言うと、日本での元祖はお寺。神社はこのパクリでした。日本のおみくじの起源は、南北朝時代に中国からもたらされた「天竺霊籤(てんじくれいせん)」であるとされているそうです。
「天竺霊籤(てんじくれいせん)」とは、観音菩薩のお告げとされる五言四句の漢詩集を、一首ずつ短冊状に作ったもの。これは、観音経(観世音菩薩の衆生(しゅじょう)救済のさまを説き、その名を唱え供養することを勧めたもの)の教えを広めるために、寺院に参拝に来た人々に一つ一つ手渡しをして配ったものだそうです。
また、「手渡しをして配った」とあるように、当時はタダだったみたいですね。この短冊は「観音籤(かんのんくじ)」と名付けられ、多くの寺院で行われていたそうです。ただ、内容的にもお硬いもので、仏法の教えを元にした教訓や、説法のようなものでした。今イメージするくじ的な要素はまだありません。
(
おみくじで凶を引いたらどうする?東洋思想に彩られた諦観の世界 LIFULL HOME'S PRESS 2017年12月2日 11時00分 (2017年12月9日 10時55分 更新)より)
●江戸時代になってお寺のおみくじ人気に…羨ましい!と神社がパクリ
誕生当初はそうでもなかったようなのですが、このくじが江戸時代に入ってからブレイクします。そうなると、神社側も黙っていられません。キリスト教がライバルの宗教からパクってクリスマスを作ったように、神社もパクります。宗教ってのは、結構、俗なものですよね。
(関連:
キリスト教のクリスマスの起源はパクリ キリストの誕生日も無関係)
ただ、内容的にはそのまま持ってくるとおかしくなります。江戸時代も観音経の教えが相変わらず掲載されていたのかは不明ですが、そもそも仏教の内容という時点で神社では使えないために変更。江戸時代後期の安政6年(1859)に登場した「和歌みくじ」は、日本書紀と古事記の神代巻から神の言葉を選んだものだったそうです。
また、パクったことを気にしているのか、自分たちで思いついたものだと言いたいのか、仏教や易経の影響を排除した日本独自のものであることが強調されていたとも書かれていました。寺社の方が聞くと「そんなわけない!」と否定したくなりそうな話と書いたのですが、特に神社系の人にはきつい説明になっています。
●不要だった占いを追加…ついに射幸性を増して有料になったおみくじ
なお、この時点でもまだ、"吉凶に優劣や順位を付けるといったような、サイコロ占い的な性格は持ち合わせていなかった"とされていました。現在メインでデカデカと掲げられている吉凶占いは、神社がパクった時点でもまだなかったんですね。これは、本来吉凶占いはいらないものだったとも言えるかもしれません。
一方で、江戸時代には、街角に立ち、吉凶を書いた紙片を2~3文という少額で売る「辻占(つじうら)」というものも流行っていました。<この辻占の射幸性を御籤が取り込み、今のおみくじの原型へとつながっていった>と記事では説明。射幸性を増して…ということですから、かなり良くない感じですね。
そして、ここから布教の宣伝道具というだけでなく、お金儲け的な要素も加わります。無料だったものが、有料となりました。"吉凶の順位を付けてサイコロ占い的な要素を付加したことで、御籤の売り上げが更に伸びただろうことは想像に難くない"としていたんですよ。本来いらない射幸性をわざわざ入れたのですから、辻褄が合う話です。
なお、過去に
宝くじは普通にギャンブルであり賭博である 競馬と同じ公営賭博でやったように、なぜかギャンブルとして叩かれない宝くじですが、定義的には完全にギャンブルです。そして、宝くじは「富くじ」と同じ意味で、こちらも過去には寺社が発行していたものでした。寺社とギャンブルというのは、関係が深いものであるようです。
●おみくじの凶・大凶を引いて引き直しは可?寺社側としては当然…
記事では、さらに寺社とギャンブルの関わりについて説明。実は占いと賭博には古くから深い関係があり、鎌倉時代に書かれた「紙本淡彩東北院歌合(かみぼんたんさいとうほくいんうたあわせ)」と言う職業紹介の絵巻によると、賭博を職能とする「博打(ばくち)」という職業が存在し、巫女と共に描かれていたそうです。
なので、占いには射幸性があり、賭博的な要素もあるのも納得という話。そして、おみくじを引いて凶が出たらもう一回引きたくなる、大吉が出るまで何度でも引き直すという行為は、悪いことを恐れ避けたいと言う気持ちと、幸運を得たいという欲求から生まれており、射幸心そのもだと指摘されていました。
おみくじの引き直しというのは、罰当たり的なところを感じます。しかし、<おみくじは何回引いても良いのかということに対する回答は、おみくじは何回も引き直すように作られてきた歴史が存在するだのから、何度引き直しても別に悪いことはないということになるだろう>としていました。
●東洋的な世界観では未来を受け入れるしかない?
元記事は、「おみくじで凶を引いたらどうする?東洋思想に彩られた諦観の世界」というタイトルで、ここまでがタイトル前半の「おみくじで凶を引いたらどうする?」の話。これらの歴史的経緯はおそらくあまり嘘がないであろうと思うので、そう問題ないでしょう。
ところが、タイトル後半の「東洋思想に彩られた諦観の世界」は怪しかったんですよ。作者は、西洋的な世界観では、未来は不確定なものとしていました。
一方、東洋的な世界観での未来は、その文字が表す通りに「まだ来ていない」だけで、既に何が起こるかは決まっている状態。そして、未定な状態なら、自分の頑張り次第で何とか作り上げていくことができるが、未知なだけで既に決定していることなら、人は受け入れることしかなす術はないと説明していました。
その上で、不幸に見舞われた人を、さらに頑張れと叱咤激励するのではなく、仕方ないから受け入れて気楽に休めと言うのが東洋的な考えだとしています。
●おみくじは「東洋思想に彩られた諦観の世界」?
が、これは出典などがなく、根拠のない独自研究っぽさを感じて、本当かいな?と思いました。とりあえず、西洋で生まれた科学においては現在、不幸に見舞われた人を、さらに頑張れと叱咤激励するものとは考えられていないでしょう。
また、西洋で主流のキリスト教なんかも、不幸を受け入れろ的なところがあります。
宗教もお祈りも無駄でいらない?教会で銃乱射、マザー・テレサも疑いで出てきた、銃で撃たれて死んでも幸せ、苦難こそ重要なんてのが、その極端なものでした。
さらに、未来を受け入れるしかないというのが東洋的な観点であるのなら、むしろおみくじの引き直しなんかせずに結果を粛々と受け入れるという、逆の行為になるのではないか?とも思います。そして、引き直ししてしまうってのは、むしろ未来が変わることがあると思っているからではないでしょうか?
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