2020/04/28:
●3密大人数視察セクハラ議員らの「ハウジングファースト」とは?
●ハウジングファーストは早く自立できて成功率が高く低コスト
●左翼・リベラルな政策ではない?アメリカで採用した政権は…
●ハウジングファーストは左翼が失敗したやり方で逆効果だ!と批判
●依存症者を助けないと批判のハウジングファーストを調べてみると…
●3密大人数視察セクハラ議員らの「ハウジングファースト」とは?
2020/04/28:
新型コロナ下、大人数視察で性暴力少女らにセクハラ 自民党馳浩議員などが集団訪問の議員らは、ハウジングファースト研究会というところに所属していたそうです。
ハウジングというのは普通は住宅などの意味。なので、住宅最優先といった意味に見えます。直接的には虐待少女支援とは関係がない気がしたのですけど、居場所がない少女たちの支援を視察ということで、ハウジングファースト関連といった意味合いだったのかもしれません。
実際、ハウジングファーストはどういう意味なのかと、
実用日本語表現辞典を見ると、「路上生活者を支援する際、新たな住居の提供を最優先に行う手法、またはその理念のこと」との説明。従来やっていたように、段階的に新たな住居の所有を支援するのではなく、住まいを各人に提供し自立を促すことを最優先にするやり方です。
●ハウジングファーストは早く自立できて成功率が高く低コスト
ハウジングファーストの名前は覚えていませんでしたが、上記の説明を読んでわかりました。昔、政策研究の記事で読んだやり方です。当時の記事によれば、このやり方が良いのは、従来型の方法よりも目的である自立を達成しやすいということだとされていました。
また、自立が早いために、政策に使う税金も少なくて済むというのもメリット。当然、自立できるのですから、支援される側にもメリットでしょう。理想的な政策に見えました。なので、私はこれらを強調すべきだと思うんですが、
Wikipediaでは「理念ありき」といった感じで強調しすぎた説明に見えました。
<ハウジングファーストとは、「ホームレス状態にある人の困難にはまず安心できる住まいを得られるようにしよう。住まいは権利である」という理念を中心とする、主にホームレス支援を目的とする社会政策や社会支援の分野において比較的最近発明された枠組みである。
これまでのホームレス支援では、ホームレス状態にある人を「だんだんと独立した住居」に移転させてきた。例えば、路上から公的なシェルターへ、シェルターから一時的な住居へ、それから普通のアパートへというように移転させてきた。一方で、ハウジングファースト:「まず、住まいを」のプログラムのもとでは、ホームレス状態にある人は路上からすぐさまアパートに入居することになる。
ハウジングファーストの中心的な理念は、「ホームレスの状態にある人や家族が第一に必要としているのは安定した住居である。他の様々な困難は、それらが解決してからではなく、まず安定した住居が得られてから対処されるべきである」という考えである。ハウジングファーストとは対照的に、他の多くのプログラムでは「住むための準備が整った上で、住まいを提供する」というシステムを採用している>
●左翼・リベラルな政策ではない?アメリカで採用した政権は…
理念を強調すると、理念ありきで科学的根拠がないと誤解されかねません。また、右派的な人は、なぜか上記のような弱い人の支援を異常に嫌うので、批判が起きやすいという残念な問題もあります。ただ、Wikipediaによると、アメリカでは右派のブッシュ政権で行われており、本来はリベラルや左派的な政策ではなさそうです。最初にリンクした日本の
新型コロナ下、大人数視察で性暴力少女らにセクハラ 自民党馳浩議員などが集団訪問も右派の例ですよね。
一方で別の批判も出ていて、そのブッシュ政権のときに関する批判がWikipediaに載っていました。ニューヨーク大学ソーシャルワークスクールのVictoria Stanhope教授らによる批判です。ただ、保守的な組織では「エビデンス(証拠)に基づく政策には限界がある」といった感じで、ハウジングファーストそのものの批判ではないようにも見えますね。
「ハウジングファーストは、研究主導による政策立案の例であるが、保守的な管理組織の元で進歩的な政策が推進されている。エビデンスベースの政策提言は、エビデンスと価値を政策審議において統合することに失敗している」
●ハウジングファーストは左翼が失敗したやり方で逆効果だ!と批判
ただし、他にも批判があり、そちらがより気になるところ。例えば、コロンビア大学の教授で児童・貧困・ホームレス研究所のCEOであるRalph DaCosta Nunezさんは、「このような玉虫色なone-size-fits-allプログラムは、ニューヨーク市の統計が示すように、必ず失敗することになる」と批判していました。ただ、失敗の予言だけで、データ的な証拠はありません。
<ハウジングファーストは、他の貧困撲滅プログラムが資金不足に陥ったり一切取り消しになった後に残る出涸らしのようなものであると訴えた。つまり、ハウジングファーストとは、ホームレス問題に取り組むためにいくつかあるアプローチの最初の要素に過ぎないと主張している>
一方、社会政策の専門家でエコノミストであるSharam Kohanさんは、過去の事例を元に批判。これは良いのですけど、「ハウジングファーストは共産主義者の失敗したやり方だ」という政治理念ありきの批判っぽさのある主張をしています。また、すでに多数行われている最近の事例についての詳しい事後評価も不明でした。
<永続的かつ無条件の公的住宅を提供することによってホームレス状態にある人をなくそうとしていた元共産主義国のPaneläkとハウジングファーストモデルを比較し、「ハウジングファーストはPaneläkの失敗した哲学とアプローチに従っている」と批判しました。 Kohanは、ハウジングファーストプログラムを実施した地域社会からの苦情が増えていることを指摘している。このプログラムは、スラムやスラム街を創造していると言われている>
●依存症者を助けないと批判のハウジングファーストを調べてみると…
この他に<ハウジングファーストはより広いアウトカム、すなわち物質乱用に対処しなかったことで批判されている>ともありました。ただし、ハウジングファーストは、そもそもホームレス状態を終わらせることで薬物乱用を減らそうとするプログラムではなく、ズレた批判であることが指摘されていました。
さらに、最近の研究によると、本来の目的ではない依存症の減少という点においても、従来のアプローチよりも結果的に効果があるということが示されているとのこと。なので、むしろハウジングファーストは、依存症者を救う意味でも効果的であったとされているようです。
これらの中では一番可能性がありそうな批判が、共産主義者うんぬんが余計ですけど、「スラムを作って逆効果」という説でしょうか。ただ、批判側はみな圧倒的に証拠不足。一方で、ハウジングファーストの効果を示すデータや研究は多数ありますので、今のところ否定する根拠は薄いと感じました。もっと研究を進めてほしいです。
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