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なぜ投票率が低いのか?新聞が主張する政治不信ではない原因


 投票率に関する話をまとめ。<逆に投票率が上がったときは、政治への信認が高まったと言う?>、<選挙で投票するかどうかは、競馬で賭けるかどうかにそっくり!>、<飛び抜けて高い投票率の投票所があった!その秘密とは?>、<なぜ投票率が低いのか?新聞が主張する政治不信ではない原因>などをまとめています。

2023/07/31:
一部見直し


●政治不信・政党不信のせいで投票率が低い、読売新聞などが主張

2012/8/1:日経ビジネスオンラインでおもしろそうな政治関係の記事がありました。「政治不信が高まると投票率が低くなる」は本当か 第1回 詳細なデータ分析から浮かび上がる意外な事実(2012年6月6日 福元健太郎、堀内勇作)というものです。

 作者名が二人あってどちらの方かわからないのですが、作者はファクティバという世界中の新聞や雑誌の記事が膨大に蓄積されているデータベースを使って、「投票率」及び「不信」という2つのキーワードで過去2年間の記事を検索してみました。

 すると、「今回の統一選は、(中略)政党不信など様々な要因が投票率の低迷を招いたとみられる」(読売新聞・地域版、2011年4月26日)というように、投票率が低くなったことを政治不信のせいにしているような記事が多かったそうです。


●逆に投票率が上がったときは、政治への信認が高まったと言う?

 投票率と政治不信が関係あるのだとすれば、投票率が上がった際には、政治への信認が高まったとということです。当然そうした主張をする読売新聞なども、記事で書いていないと話が合いません。

 ところが、前回(2003年総選挙)に比べて7.7%ポイントも投票率が上がった、2005年9月11日の「郵政民営化解散総選挙」の投票日と、その前後一日の記事も検索してみても、「政治に対する信用が高まった」とか、「不信が解消された」というような記事は、全く無かったそうです。おかしいですね。

 <投票率が低くなれば「政治不信が高まった」と騒ぎ、投票率が高くなった時には政治に対する信用には一切言及しないというのは、全く筋が通らない議論だろう>と作者は書いていました。


●選挙で投票するかどうかは、競馬で賭けるかどうかにそっくり!

 マスコミ批判だけで終わると気持ち良いのでしょうが、実は有権者にとって耳が痛い話もあります。作者は、<投票率に関する膨大な数の統計的研究によれば、投票率が低いのは、かなり自己中心的な「有権者のせい」なのである>と指摘していました。

 実は、選挙で特定の候補者に投票するか否かという行動は、競馬で特定の馬に賭けるか否かという行動によく似ているとのこと。なぜ競馬?って思うでしょうが、以下のような説明です。

・競馬で特定の馬に賭ける時、いくら儲かると予想するかは、「賭けた馬が勝った時の賞金額(ステーク)」×「その馬が勝つ(と思う)確率」-「賭けた金額」。
・投票するか否かも、「自分が投票した候補者が当選した場合に得られる便益」×「自分が投票するか否かが、投票した候補者の当落を左右する(と思う)確率」-「投票するコスト」という値が0より大きいか否かで決まる。


●飛び抜けて高い投票率の投票所があった!その秘密とは?

 そして、"この「合理的選択モデル」で説明できる、日本の投票率に関する研究結果を紹介しよう"とあり、以下のような事例の紹介がありました。

・2004年7月実施の参議院議員選挙における、横浜市の投票率は55.7%であり、横浜市全域で635の投票所が使われた。その中に一つだけ75.7%という、他の634投票所の記録と比べても極端に投票率の高い所が見つかった。
・坂口准教授と和田教授が詳細に調べたところ、その投票所は、横浜市西区みなとみらい4丁目のMMタワーズという3棟あるマンションのミーティングルームに位置していることが分かった。
・この投票区における有権者は、同マンションの住民であり、3棟の真ん中にあるミーティングルームは、住民にとって極めて便利なところにあった。そのため、投票日当日の外出の際に、住民が簡単に投票することができたと考えられる。
・「合理的選択モデル」に基づいて解釈すれば、「投票するコスト」が極めて低いことで投票率が高くなったといえる。

 単に投票しやすいかどうかで、大きく投票率が変わるという話。政治不信どうこうよりこっちの方が大きそうです。


●なぜ投票率が低いのか?新聞が主張する政治不信ではない原因

 そして、さらにおもしろいのは、坂口准教授と和田教授がこの続報的な研究をしていることでした。

・2007年統一地方選挙において、この投票所は、約250メートル離れたパシフィコ横浜というコンベンションセンターのハーバーラウンジBに移された。
・結果、2004年7月の参議院選挙で635投票区中1位であった投票率が、2007年統一地方選挙では、639投票区中558位(投票率は44.1%)まで急落した。
・有権者の多くが、「ちょっと遠くなったから面倒くさい」といった程度の理由で、棄権したと予想される。

 この研究結果は、税金をさらに使う羽目になるものの、自治体側の努力でかなり投票率を上げられることを示唆している感じ。

 私は選挙へ行くことを呼びかける広告は、個人的に税金の無駄遣いじゃないか?と疑っているので、そんなことにお金を使うくらいなら投票所を増やす方が良いんじゃないかと思います。


●日本固有の文化?国政選挙より地方選挙の投票率が高い日本

 ただ、上記の例は投票場所がコロコロ変わっているわけではないため、全体的な投票率の変化としては使えない研究。飽くまで投票率と投票しやすさが関係しているという指摘だけ。もちろん重要な指摘なんですけどね。先程の競馬のたとえとも関係してくる全般的な話はこの次からです。

 作者によると、欧米の民主主義においては、国政選挙の方が地方選挙よりも投票率が高いことが「定説」となっている一方で日本は違います。日本の人口規模が小さい自治体(町村)では、衆議院議員選挙の投票率は70~80%である一方、町村議会議員選挙の投票率は80~90%。中には98%という記録もあるほど、地方選挙で投票率が高いのです。

 これは、「日本固有の文化」という説明が多いそう。小さい町村には伝統的な共同体意識が残っているため、みんなで一緒に投票するという文化がある、といった主張です。しかし、みんなで一緒に投票する文化があるのなら、国政選挙でも同じくらいの投票率になっていないとおかしいでしょう。これでは説明できません。


●選挙戦が接戦のときほど投票率が高くなる…は本当なのか?

 では、日本では国政選挙より地方選挙の投票率が高くなる本当の理由はなんでしょうか? 作者の一人である堀内勇作さんはこの現象について、「自分が投票するか否かが、投票した候補者の当落を左右する確率」の違いにあるとしていました。これが先の競馬理論での説明です。

・1つの自治体が1つの選挙区を構成し、10数人から100人近くの候補者の中から有権者が1人だけを選ぶという、日本の地方議会で採用されている選挙制度は、世界的にも稀。
・この選挙制度の下では、町村のように自治体の有権者数が少ないほど、候補者間の得票差も小さくなる。従って、「自分が投票するか否かが、投票した候補者の当落を左右する確率」が高くなる。
・「ステーク」×「確率」のうち、仮に前者は国政選挙の方が高くても、後者は地方選挙の方が高いのであれば、掛け算した結果は地方選挙の方が高くなる。だから小さな町村では、国政選挙よりも地方選挙の投票率が高くなる。
・筆者(堀内)は、このモデルを、国際比較データ、自治体ごとに集計された選挙結果データ、世論調査データ、更には佐賀県杵島郡北方町(現・武雄市の一部)における現地調査で検証。その結果、「自分の投票が、投票した候補者の当落を左右する確率」の差で、投票率の差をうまく説明できることが分かった。

 この考え方は筋が通っていて、かつマスコミでも一部似たような考え方を使って報道しています。「選挙戦が接戦のときほど投票率が高い」というやつです。これだけで説明しきれないものの、ある程度関係あるんでしょうね。ただ、マスコミの場合は前述のように一貫性がないわけですが…。


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