欧米にはなぜ、寝たきり老人がいないのか(2012年6月20日 ヨミドクター 宮本顕二)によれば、
ヨーロッパの福祉大国であるデンマークやスウェーデンには、いわゆる寝たきり老人はいないと、どの福祉関係の本にも書かれています。他の国ではどうなのかと思い、学会の招請講演で来日したイギリス、アメリカ、オーストラリアの医師をつかまえて聞くと、「自分の国でも寝たきり老人はほとんどいない」とのことでした。(中略)
今から5年前になりますが、(引用者注:スウェーデンで)認知症を専門にしている家内に引き連れられて、認知症専門医のアニカ・タクマン先生にストックホルム近郊の病院や老人介護施設を見学させていただきました。予想通り、寝たきり老人は1人もいませんでした。胃ろうの患者もいませんでした。
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のだそうです。
一方、日本ではどうかと言うと、
いわゆる老人病院には、一言も話せない、胃ろう(口を介さず、胃に栄養剤を直接入れるため、腹部に空けた穴)が作られた寝たきりの老人がたくさんいます。 |
といった状態です。
この違いはヨーロッパの医療水準が高く、日本の医療水準が低いせいでしょうか?
いいえ、違います。タイトルにしたとおり、ヨーロッパでは延命しないからです。
ブラックなジョークのようにショッキングな話ですが、寝たきりになる前に死なせているので寝たきり高齢者がいないのです。
これは国民・民族的な意識の問題で、どちらが残酷あるいはどちらが正しいとは、簡単には言えなそうです。
記事では以下のようにその考え方を書いています。
その理由は、高齢あるいは、がんなどで終末期を迎えたら、口から食べられなくなるのは当たり前で、胃ろうや点滴などの人工栄養で延命を図ることは非倫理的であると、国民みんなが認識しているからでした。逆に、そんなことをするのは老人虐待という考え方さえあるそうです。
ですから日本のように、高齢で口から食べられなくなったからといって胃ろうは作りませんし、点滴もしません。肺炎を起こしても抗生剤の注射もしません。内服投与のみです。したがって両手を拘束する必要もありません。つまり、多くの患者さんは、寝たきりになる前に亡くなっていました。寝たきり老人がいないのは当然でした。 |
記事では以上でしたが、私が気になったのが二つ。
一つはこういったヨーロッパから見れば非倫理的な行為が、長寿大国日本を支える一因になっているのかな?ということです。
延命治療が具体的にどれくらいの寿命を伸ばしているかわかりませんが、平均寿命のいくらかはヨーロッパにない方法で伸ばしているということは確実です。
そう思うと、長寿大国日本と言っても、複雑な気持ちになり、素直に喜べません。
日本人はちょっと長寿を神聖視しすぎているのかもしれません。
もう一つ、気になったのが医療費の問題です。
日本では健康保険制度に絡んで医療費の上昇が問題になっていますが、実はそれでも諸外国と比べると良い方らしいです。
しかし、前述のようにヨーロッパが終末医療をしていないとすれば、その部分には医療費はかかっていないはずです。
じゃあ、どこでそんなに医療費を食っているの?と不思議なのですけど、とりあえず、日本でも終末医療をやめた場合にはその分の負担は減るというのは確実なことでしょう。
ただ、これは「はい、明日から止めます」というわけには行かず、国民全体の意識が変わっていかなくてはいけません。
繰り返しますが、どちらが良い悪いとは簡単に決められませんしね。
とりあえず、選択肢の一つとして、福祉大国として崇められている国などを含むヨーロッパでは、このような認識をしているんだよという知識は、広めた方が良いだろうと思いました。
記事の作者の宮本顕二さんは、
家内と私は「将来、原因がなんであれ、終末期になり、口から食べられなくなったとき、胃ろうを含む人工栄養などの延命処置は一切希望しない」を書面にして、かつ、子供達にも、その旨しっかり伝えています |
と締めていました。
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