2012/8/15:
●ニトリの社名の由来、単純に創業者の苗字だった…
●似鳥社長のサプライズでへんてこインタビューに
●25期連続増収増益のニトリは不景気とリスクが好き
●リーマンショックに合わせて値下げ、業績がグアーッと上昇
●逆張り精神で台湾・ミャンマー・ベトナムに進出
2015/2/2:
●インフレ円安で苦戦の円高デフレ勝ち組…ニトリだけ数十年増収増益
●ニトリだけなぜインフレ円安でも強いのか?
●海外に工場を作るだけではニトリになれない!
2019/10/22:
●海外に工場を作っても無理…円安なのになぜニトリは安いのか?
●国内初の無人搬送ロボやロボット倉庫、自社専用通関までつくる非常識
●ニトリの社名の由来、単純に創業者の苗字だった…
2012/8/15:ニトリってずっと妙な名前の会社だなと思っていましたが、苗字そのままだったようです。社長のお名前は似鳥昭雄さんという肩でした。あんまり個人をプッシュすることはしたくないのですが、ちょっと変わった人だったので、今日紹介する
「ロマンとビジョン」で25期連続増収増益 ニトリホールディングスの似鳥昭雄社長に聞く(日経ビジネスオンライン 2012年7月4日 佐々木明子)から略歴をどうぞ。
似鳥 昭雄(にとり・あきお)氏
1944年樺太生まれ、68歳。66年北海学園大学経済学部卒業、67年似鳥家具店創業。72年似鳥家具卸センター設立、78年社名をニトリ家具に変更、86年社名をニトリに変更。2010年持ち株会社ニトリホールディングスに変更、代表取締役社長として現在に至る。カラオケ、スキューバダイビング、ゴルフ、旅行が趣味。
また、記事でのニトリの紹介は以下でした。
北海道の小さな家具店を、40年かけて連結売上高3310億円(2012年2月期)、270店舗以上を展開する巨大企業へと成長させた。しかも、25期連続で増収増益という、上場企業の中でも記録的な好業績を達成している。その背景には、似鳥社長の強力なリーダーシップがあると言われている。2013年2月期も連結売上高3600億円(前期比8.8%増)、同営業利益632億円(同9.1%増)を見込む。
●似鳥社長のサプライズでへんてこインタビューに
「人を喜ばせるのが大好き」という似鳥社長はインタビュアーの"佐々木さんのホームページを調べて、ラーメンがお好きだと書かれていたので"、"地元北海道のおいしいラーメンを取り寄せた"とのこと。このエピソードだけだと紹介する気なかったのですが、以下のような予想外の展開で紹介したくなりました。
招かれた社員食堂のテーブルを見ると、ラーメンが2種類もある。似鳥社長はいたずらっ子のような笑顔を浮かべて、「これはね、僕のお薦めのラーメンなんです。いろんな味を楽しめたほうがいいと思ってハーフサイズにしていますから両方食べてくださいね」
なんという心配り。しかも、ハーフサイズにして2つも…。ありがとうございます。
「僕ね、人を喜ばせるのが趣味なんですよ。その人のことを調べてその人が喜ぶことをしてあげるのが一番楽しいんです」
その姿勢は、ニトリの企業理念(引用者注:『ロマンとビジョン』?)にも通じるのだろうか。
「いや、だからね」。口にラーメンを頬張り、もぐもぐさせながら話し始めた。
「喜んでもらう姿を見ると本当に嬉しいんですよ。いつも、日本のみんなはこんなものがあったら喜ぶだろうなぁと、お客さんの喜ぶことを考えて会社を展開しているんだけれど、そうすると、売ろうと思ってなくても売れちゃうの。売り上げが上がっちゃうんですよ。利益を上げるんじゃなくて、上がっちゃう」
食べながらインタビューって、なかなかないでしょう。てっきりお土産に持って帰ってくださいって意味だと思ったのですが、料理済みで用意していたんですね
●25期連続増収増益のニトリは不景気とリスクが好き
もちろんインタビューでは、仕事の話もしていました。
―――25期連続で増収増益と右肩上がりの成長を続けてらっしゃって、これはすごいですね。数年前にはリーマンショックなど世界的な不景気がありましたよね。それでも増収増益とは、どういうふうに実現しているんですか。
似鳥:逆にね、不景気がチャンスっていうかね。景気良いときはみんなバーッと行くでしょ、投資とかね。うちは「逆張り」なんですよ。「景気が悪くなるのはいつか」って予測するんです。それで悪くなりそうだったらチャンスだと。準備をして、「景気が悪くなったぞ、それっ!」ってもんで投資を2倍、3倍にするんです。人もバーッと採用するんですよ。だから不景気っていうのはチャンスなんです。
「ピンチはチャンス」なんですね。なぜかといえば、大卒の定期採用も優秀な人をたくさん取れるじゃないですか。それから外部の人材のスカウトもしやすい。他社は社員を減らすからね、うちはそういう中から優秀な技術者をいただける。それから、みんな出店を抑えるから良い物件を取れるんですよ。
また、人が一番育ちます。景気がいい時は波に乗っているから、努力しなくてもパーッと伸びていけるじゃないですか。不景気な時に投資を倍にするとね、社員も「これは大変だ」ってことでね、そりゃあ頭使って創意工夫とかね、改善・改革をし始める。人はぐんぐんと伸びます。だから景気がいい時には、「不景気が来ますように」と。みんな景気がいいって言ったら僕は不景気だって。逆ですね。
確かに不景気には逆に言えば人を取りやすいという意味だとは思っていましたけど、頭で思うだけでなく実践してみせるというのはたいへんですよね。よくやります。
●リーマンショックに合わせて値下げ、業績がグアーッと上昇
不景気好きはマジだなというのが、リーマンショックのときのエピソード。3年前頃に兆しをつかんだので、2年間、社内業務改革を実施して120億円を用意。景気が悪化した時に値下げをしようという狙いです。値下げには1回10億円ほどかかるのを、全部で11回やったとのこと。そして実際、グアーッと業績が上がったそうです。まさに「逆境がチャンス」という話。
順番を入れ替えますが、関連してこんな話もしていました。
「『ブーメラン現象』って言っているんです。売り上げが上がったらお客さんに還元する。そうするとまたお客さんが喜んで買ってくれる。じゃあ今度は送料無料にしたり、値下げをしたりということに」
ただ、「それだと既存店の売り上げが悪化しませんか」の問いには、"値下げをしたことで一時は10%以上も伸びた"ものの、東日本大震災以降は"既存店はマイナス傾向"との回答でした。さすがに下がっているようです。値下げ勝負はどうしても限界があります。
●逆張り精神で台湾・ミャンマー・ベトナムに進出
ニトリの魅力は「製造小売りのみならず中間物流・配送まで自社による一貫体制」だと思いますが、海外での製造は積極的なようです。ここでも逆張り精神が発揮される話がありました。
―――ミャンマーにも生産拠点を作る可能性があるんですか。
似鳥:ですけどね、インフラがまだ遅れてるんですよ。電力がね。既に進出しているベトナムも電力が足りなくて、時々停電するんです。
―――そういうリスクを考えながら、どこに進出するかを考えていく?
似鳥:そう。でも、リスクがあるほうがチャンスがあるんです。みんな「安全、安全」というけど、僕らは安全じゃないほうがね、スリルとサスペンスの連続のほうがね、逆に利潤が入ってくるということですね。そういうリスクは“授業料”だからね、しょうがない。授業料を何度も払って、ドーンと報酬を得る。授業料払わないで利益は出ないですもん。失敗も力ですよ。
「健全な赤字部門」というのが必要なんです。チャレンジするって、最初は赤字でしょう。うちの場合、台湾がそうなんですよ。今、進出して3~4年目ですが、ようやく11店舗になりました。今年中には15店に届き、ようやく黒字になる見込みです。そして来年から黒字が大きくなっていく。何でもそうですね、石の上にも3年、風雪5年、苦節10年ってね(笑)。
チャレンジしてスパっとやめる、手を引くというのも大事で、Googleやユニクロのファーストリテイリングなんかは失敗の連続です。でも、どっちのやり方でも良いでしょうね。正解は一つではなく、信念のないどっちつかずの企業よりゃ良いです。
連続の増収増益は必ずどこかでストップするでしょうけど、どこまで伸びるか注目していきたいと思います。
●インフレ円安で苦戦の円高デフレ勝ち組…ニトリだけ数十年増収増益
2015/2/2:
社長が選ぶベスト社長ランキング 孫正義・柳井正らを抑えてトップなのは?でも好きだと書いたニトリの話をまた。
内需型でデフレ円高勝ち組企業では、トレンド変換した円安インフレ時にコケている企業が目立ちます。たとえば、マクドナルドやすき家です。生物の進化もそうなのですけど、特定の環境にマッチし過ぎると環境が変化したときに対応できずに全滅しやすくなります。最適化というのは、意外な弱点があります。
ニトリというのも円高にうまく適応してきた企業。過去にやったように、ニトリは逆境を好む企業であるとはいえ、さすがに今回はきついところもあるかもしれないと思っていました。ところが、ニトリは円安転換でも業績を伸ばしています。
東洋経済オンラインでは、
ニトリ、27連勝記録に黄信号なんて記事を書いていましたが、27期増収増益どころじゃありません。28期連続増益の見込みです。(2018年10月29日追記:今のところまだ途切れておらず、31期連続増益だそうです)
こういったところが、最初にリンクした
社長が選ぶベスト社長ランキング 孫正義・柳井正らを抑えてトップなのは?のように、他の社長らの尊敬を集める理由なのでしょう。
●ニトリだけなぜインフレ円安でも強いのか?
では、なぜ円安にも対応できたのでしょう? そこらへんの話が、
ニトリの工場が円安に負けない理由:日経ビジネスオンライン(馬場 燃 2015年1月13日)という記事にありました。
今まで紹介してきたニトリの話においてニトリの特徴だと感じていたのが、単なる小売ではなく製品開発・製造と、いわゆる川上から深く関わっているという点です。円安に負けない理由の一つは、この川上の強化をさらに進めたことでした。
ニトリの似鳥昭雄社長は、約2年前に商品を「7割入れ替える」として採算があわない商品の見直しをしています。これ自体は他社でもできる正攻法のやり方でしょうが、現在最も力を入れているベッドのマットレスやソファーの工場というのがすごいのです。
そのマットレスやソファーを作るため、工場に製造ラインを新設した。ウレタンやコイルを生産する設備だ。複数の化学薬品を混ぜ合わせ、まるで綿菓子のようなウレタンを製造している。鋼線は自動ラインで次々とコイルに変わる。これらはいずれもマットレスやソファーの原材料として使う。円安の逆風に打ち勝つため、いわば究極の「川上戦略」を展開しているのだ。
現地で生産しているニトリファニチャーの松倉重仁社長は「原材料を他社で調達するよりも最大5割のコスト削減につながる」と語る。ウレタン、コイル、綿、生地…。原材料や部品を幅広く内製化することでコストを削り、マットレスは昨年11月から「Nスリープ」の商品名で7種類販売している。
(中略)松倉社長は「部品を内製化したことで他社では実現できない品質が高い商品を提供している」と胸を張る。
●海外に工場を作るだけではニトリになれない!
私は「小売ではなく製品開発・製造が強いから」というこの一つ目の理由が、非常にニトリらしいと思って好きでしたが、もう一つ理由があります。
上記の工場はベトナムにありました。海外の工場という時点で人件費で有利ではあるものの、それに満足せず、現地工場において徹底して「生産性向上」を目指しているというのが、もうひとつの理由です。私は円安・円高といった為替の動きによって、海外に工場を作るか・日本に工場を作るかと右往左往している様子を冷ややかに見ています。どこに工場を作るかより、もっと大事なものがあるだろうと思うためです。
しかし、普通の会社はそこまで考えないでしょう。松倉社長が「他の日系メーカーも視察に来るが、皆に一生懸命働いていると驚かれる」と言っていたように、人件費が安く日本人とも国民性が異なる海外工場で効率化を追求する努力はあまりしてこなかったものと思われます。
日銀の施策のため円安はこれからも続く可能性があり、こういった対策もいつか限界を迎えて増収増益はストップするかもしれません。ただ、こういう努力を怠らないニトリの姿勢というのは、長いスパンで見て成長できる企業の資質を示していると思われます。
●海外に工場を作っても無理…円安なのになぜニトリは安いのか?
2019/10/22:大塚家具報道が盛んだったときに、ニトリは安くて低品質と叩いている人がいましたが、
ニトリのケタ違い品質、ものづくりで自動車メーカーホンダを超えるでやったように、むしろ品質には力を入れている感じ。人間は価値を正しく判断できないこと、特に価格に騙されることがわかっており、それがモロに出ていた感じです。
では、なぜニトリは品質を落とさず安くできているのか?という話。上記までで書いたように、品質を落としているからでも、単に海外で作られせているからでもありません。メーカーから買い取って売るのではなく、製品開発・製造から全部自分でやっているから安くできているというのが一番のポイント。大塚家具とは全くタイプの違う会社です。
この自前主義的なところとしては、物流も自分でやっているというのが特徴。角井亮一・イー・ロジット代表取締役社長によると、ユニクロのファーストリテイリングや無印良品の良品計画など「製造物流小売業」は他にもあるものの、物流機能まで自社で行っている例はほかには見当たらないといいます。自分でやろう主義が、徹底しているんですね。
(
32期増収増益の「ニトリ」がつくった物流でもうかる仕組み|日経BizGate 2019/10/18より)
家具・ホームファッションのニトリの場合、ユニクロや無印良品と比べて、購買頻度が低く、「在庫回転数」も低いと考えられます。ところが、角井社長が以前分析したところ、ニトリが「5.04」だったのに対し、ファーストリテイリングが「3.29」、良品計画は「2.30」という結果に。ニトリの方が逆に高いのです。
一貫物流による在庫管理を可能にしている独自の物流システム、自前の物流体制により、商品在庫の効率的な活用を進めているニトリの強さの一端が、この数値に表われているのではないか、という分析になっていました。
●国内初の無人搬送ロボやロボット倉庫、自社専用通関までつくる非常識
なお、2016年1月、ニトリホールディングスの物流子会社ホームロジスティクスが、川崎市にある通販発送センター内にノルウェー企業が開発したロボット倉庫「AutoStore」(オートストア)を導入。国内で初の試みでした。
オートストアは、物流センター内で最も作業量が多い「商品のピッキング作業」を省力化し、作業時間の大幅な短縮とピッキング精度の向上させるシステム。ピッキング作業での生産性は5倍以上向上し、想定より早い投資回収が見えてきている状況だとのこと。日本が苦手としている労働生産性を高めた形ですね。
また、2017年10月には、西日本通販発送センターに、日本初の無人搬送ロボット「Butler(バトラー)」も79台導入。こっちの話は初めて知りました。ピッキングする商品の棚までの移動距離を短くし、作業者の負担を軽減。ホワイトな労働にしているとも言えますね。
海外で驚いたのは、「申請・許可・承認・契約」に関わる作業は煩雑になりがちな海外の通関の対策として、「自社通関」の体制を整え、自社ですべての手続きを完了できるようにしたという話。大幅なコスト削減になったそうですけど、そんなことできるんですね。ここまでいろいろやっている企業は他になく、それが価格の差に現れてくるのだと思われます。
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