<海外企業を買収せよ!日本企業にとって日本はもう中心ではない>、<アップルやサムスンや現代自動車は大型M&A(買収)をしない>などの話をやっています。
●海外企業を買収せよ!日本企業にとって日本はもう中心ではない
2012/8/18:日本ゼネラル・エレクトリック(GE)の会長からLIXILグループに転じた藤森義明社長は日経ヴェリタスで、「キャッシュフローの使い方として、1番目はM&A、その次が配当」「(会社の持続的な経営を考えれば)のれん代が大きくなっても、買収をためらう時期ではない」と明かしていたそうです。
<経営者にとって、世界戦略の要はもう日本ではない。世界の経営資源を活用し、地球規模でプロセス革新と成長力を追い求めていくのが、当たり前のテーマ>との見方です。ただ、これを紹介した記事
アップルや現代が大型買収しないワケ 産業部次長 中山淳史(要登録 日経新聞 2012/7/18 7:00)では、別の見方も示していました。
一方で、<世界を見渡せば、景気低迷下でお金をつかっている企業は日本以外にも多い。だが、手元資金を豊富に持っていながら、その使い方が随分と違うところを、日本の企業も視野に入れておくべきではないか>としています。わかりづらいですけど、要するに買収以外の使い方があるのでは?ということみたいですね。
●お金があるなら買収すべき…というのは本当?あのアップルは…
例として出ていたのは、手元資金が邦貨換算で数兆円に達し、昨年は米政府の現金残高を上回るほどあるアップルという超成功企業。そういった資金についてアップルは「M&Aなどに備えている」と説明しているものの、"大きなディールに使われ、世界を驚かせたことはない"と書いていました。
ここで出てきたディールとは、「取引」くらいの意味だと思います。他に分配などの意味もあり、買収費用の支払い方の一種にディールという語が用いられることもあるようですが、ここでは単に取引という意味でしょう。アップルについては小さい買収はともかく、大型買収については確かに聞いた覚えがないです。
記事ではさらにサムスンの名も挙げ、"「10年後も中国企業の勢いには負けたくない」とする李健熙会長は今の半導体と携帯電話、テレビに偏る経営を変えようと巨額の投資戦略を打ち出しているが、「M&A」という言葉を口にしたことはめったにない"としていました。
ただ、サムスン関係では韓国の最大手の総合家電・電子部品・電子製品メーカーのサムスン電子について、
歩みを速めるサムスン、1年間に5社を買収(012年7月18日 08:45 (中央日報日本語版))という記事がありました。大型買収とみなすかで微妙なところですが、とりあえず、ここではスルーしておきます。
<サムスン電子は17日、「英国の半導体設計会社CSRのモバイル部門を買収する」と発表した。買収金額は3億1000万ドル。CSRはWi-Fi(無線LAN)、ブルートゥース、衛星利用測位システム(GPS)のような機能を使うのに必要な連結チップの核心製造技術を保有している。
サムスン電子システムLSI事業部のウ・ナムソン社長は、「今回の買収は1997年の通貨危機以後にサムスン電子が海外で行った買収で最大規模。今後スマート機器無線連結分野で多様な機能を提供できると期待する」と話した。
サムスン電子が外国企業を買収するのは今年に入ってからすでに3度目だ。(中略)
サムスン電子は買収合併と悪縁が深い。95年2月に当時世界のパソコン業界でシェア6位だった米国のASTリサーチを3億7500万ドルの大金をかけて買収したことがある。しかし買収した会社と化学的に結合できずに人材離脱が起こり、結局米国パソコン市場から撤退した苦い経験がある。その後サムスン電子は注目するほどの「ビッグディール」を成功させることはできなかった。2007年から昨年上半期までサムスン電子が買収した企業は年間1~2社程度にすぎなかった。業界では「サムスン電子が買収合併を忌避している」という評価が出てくるほどだった>
●アップルやサムスンや現代自動車は大型M&A(買収)をしない
この後、記事ではタイトルにあった現代自動車の例が登場。現代自動車は"研究開発は売上高の2%強と、トヨタ自動車や日産自動車(4~6%)の半分程度に抑え、M&Aもあまり"せず、"資金はむしろ工場の自動化投資やマーケティング、デザインなどに振り向けている"とのことです。
"鄭夢九会長によれば、「市場が拡大する今は先端技術や人材をゆったり育てている場合ではない」"と考えているそうです。"例えば、電気自動車は普及したとしても、数年から10年先。だとしたら今はそれほど研究開発にお金を使わないで、必要になった時に技術を買う"ということで、これはこれで一理あります。
"東大のある研究グループによれば、アップルや現代自動車は経営の規模や存在感の割に、企業買収をせず、自社で独自に積み上げた特許の数も少ない"ということです。ただ、Googleのモトローラ買収はアップルとの特許戦争を意識したものという分析を読んだことがあります。
さらに一歩進んでアップルから見ると新興で特許の少ないGoogleはアップルに狙われたという見方も読みました。本当に特許が少ないのか、特許が少なくて大丈夫なのかどうかは、ちょっとわからないですね。以前の
スティーブ・ジョブズの名言、成功、優れた点では、以下のような話がありました。
<アップルは比較的業歴が浅く、特許件数の保有が少ないグーグルの弱い部分を突く作戦を使っているという。IT分野の専門家の1人は、「その手法は“嫌らしい”ほど徹底している」と指摘していた。
そうしたアップルの動きに対抗して、グーグルはモトローラの一部を買収して特許権の保有件数を増やさざるを得なかったようだ。企業経営者であれば、有力ライバル企業の弱点を狙う作戦は当然なのだが、そうしたスタンスが露骨になりすぎると、社会から反感を買うことも考えられる。
以上のように、矛盾するように見える記事もちらほらあります。ただ、とりあえず、記事では、<成長資金は市場を奪うために必要な最小限の技術とマーケティングなどに集中させ、足りないものはクロスライセンスなどの手法も使いつつ、他の企業から取り込んでいく>というビジネスモデルだと結論づけていました。
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