2012/8/24:
●死亡率が高いのは管理職・専門職・事務職・労務職のどれ?
●管理職の死亡率が高い理由はストレス?自殺や病気増加
●海外では見られない日本特有の「名ばかり管理職問題」
2020/05/09:
●管理職と専門職の死亡率がやばい…日本はヨーロッパと違う傾向に
●韓国ではリーマン・ショック後に管理職・専門職の死亡率が増加!
●死亡率が高いのは管理職・専門職・事務職・労務職のどれ?
2012/8/24:
社長はストレスが少ないので部下より長生き 裁量権・選択の自由の研究は、トップと下層を比べたというもので、イギリスの調査でした。一方、今回はトップではなく、真ん中や下層の人の話。そして、日本での話です。
今日のタイトルは、「死亡率が高いのは管理職・専門職・事務職のどれ?ストレスが原因か」というクイズみたいなものにしましたが、引用する記事名を見るだけで答えがわかってしまいます。
管理職、専門職は命がけ バブル後に死亡率が急上昇(ダイヤモンド・オンライン 2012/7/30 井手ゆきえ [医学ライター],-週刊ダイヤモンド編集部-)というものでした。
英医師会雑誌「BMJ」に北里大学医学部公衆衛生学の和田耕治氏らの報告が掲載された。それによると、30~59歳の日本人男性の死亡率は1980年代を通じ改善されてきたが、管理職や医師等の専門職に限ると、90年代後半の5年間に7割近くも悪化したというのである。
同氏らは80~2005年の人口動態統計や国勢調査の結果を分析、30~59歳の男性の死亡率を管理職、専門職、その他事務・労務職に分け、比較した。その結果、95年から管理職と専門職のみが急上昇。2000年を境に、その他の職種の平均死亡率を一気に上回る結果となった。その後、専門職は下降気味だが、管理職は依然として上昇している。
●管理職の死亡率が高い理由はストレス?自殺や病気増加
この死亡原因を見ると、管理職の死亡率を押し上げているのは自殺だとわかりました。ただ、それだけではなく、"同時に、心血管疾患、脳卒中、がんの3大疾病と交通事故など不慮の事故死も上昇していた"そうです。
和田耕治さんらはこれを"景気低迷の影響で職場の労働環境や雇用形態が激変し、そのストレスが管理職を直撃したと考察している"ようです。交通事故がストレスで上昇ってのはわかりづらいですけどね。疲労の問題でしょうか。
これを紹介した作者の井手ゆきえさんは、比喩的な意味の「自殺」を使って、以下のように書いています。
"第一、日本は一般労働者より管理職の労働時間が長い、世にもまれな国なのだ。ストレス解消のための過食、アルコール多飲、運動不足や肥満は管理職を緩慢な自殺へ追い込んでいる"
●海外では見られない日本特有の「名ばかり管理職問題」
なお、"日本は一般労働者より管理職の労働時間が長い、世にもまれな国"ですが、これは本来おかしいことです。
管理職が働かなくていいというわけじゃないんですけど、管理職(厳密には管理監督者という別の概念らしいです)は本来長く働いて結果を出す仕事ではないわけで、そういう仕事をさせるのであれば残業代の出る給与体系で処遇しなくてはいけません。
これは法を会社側で都合の良いように解釈して、本来の業務に合わない働き方を求めているためです。名ばかり管理職というのが有名ですね。
また、記事によると、"医学的にいうなら疲労・ストレスの蓄積が致命的な疾患を引き起こす目安は月間残業時間が50時間前後。過労死認定でも月間45時間以上が一つの基準である"とのこと。日本の悪しき伝統、長時間労働問題です。これは当然管理職だけの話ではないでしょう。平社員もガンガン亡くなっています。
結局、これもまた日本のブラック企業問題が原因…というところにたどり着いてしまいました。
●管理職と専門職の死亡率がやばい…日本はヨーロッパと違う傾向に
2020/05/09:東大の小林廉毅教授(公衆衛生学)らのチームは日本、韓国と、デンマークやスイス、英国など欧州八カ国の三十五~六十四歳男性の死亡データを1990年から2015年まで集め、複数の職種を含んだグループ間で年齢構成の違いを取り除き、比較しました。
欧州は90年代から一貫して、経営者や中間管理職、医療職や教員らの「管理職と専門職」より「事務・サービス系」「工場や運輸など肉体労働系」の死亡率が高くなりました。例えばデンマークやスイスは、2010~2014年の肉体労働系の死亡率が、管理職と専門職の二倍強になっています。
ところが、日本では全然違う傾向が見えているというのが、興味深いところ。1990年代後半以降、管理職と専門職が他の2グループより高い状態。死亡している人の主な原因はがんと自殺だといいます。例えば、2015年では十万人当たり三百五十七人と、事務・サービス系の一・四倍となっていました。
幸い、2000年代以降は低下傾向にあるようです。ただし、専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」が安倍政権が強行成立させるなど、逆行する動きも見られることについては、記事で心配な点とされていました。
●韓国ではリーマン・ショック後に管理職・専門職の死亡率が増加!
あと、上記の東京新聞では、なぜか日本とヨーロッパの違いにしか触れられていなかったものの、実は韓国も日本と似た傾向だったみたいですね。なので、東アジアとヨーロッパの違いと言った方が良いかもしれません。このことは、
日韓の管理・専門職は短命? 男性の死亡率、欧州と比較:朝日新聞デジタルという記事で書かれていました。
こちらによると、東京大だけでなく、オランダのエラスムス大なども研究に参加していたとのこと。日本はバブル景気崩壊後の90年代後半、韓国はリーマン・ショック後の00年代後半に、それまで最も低かった管理職・専門職の死亡率が高まり、事務・サービス職などの死亡率と逆転したとされています。
今回、中国は調査に入っていないものの、このような国際調査では、日本は韓国あるいは中国と似た傾向になる…ということがよくありますね。職業における死亡率で、ヨーロッパとは異なる傾向を示したということは、東アジア固有の文化など、日本と韓国で何らかの共通点が影響した可能性を感じさせるものでした。
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