●負け知らず?マクドナルド原田泳幸会長兼社長の手腕と評価
2012/8/30:かつて日本マクドナルドの顔と言えば創業者の藤田田さんでしたが2002年に社長を辞任、今は2004年から社長になっている原田泳幸さんがマクドナルドの伝説を作っています。ちなみに現在の肩書きは代表取締役会長兼社長兼最高経営責任者 (CEO)というもの。いろいろ兼任しすぎで、カオス。とりあえず、すごそうな感じは伝わってきますが…。
この原田泳幸さんをよく評価する記事が、
【日本マクドナルドホールディングス】 増収維持し収益構造も激変させたどこまで続くか原田マジック(清水量介 ダイヤモンド・オンライン 2012/8/17 週刊ダイヤモンド編集部)というものでした。
<2003年、日本マクドナルドホールディングスの既存店売上高は7年連続で減少し、どん底にあった。しかし、04年に原田泳幸会長兼社長が就任すると急回復。以来、マクドナルドは8年連続で既存店売上高が前年を割ったことがない(中略)
客がカウンターで注文してから作り始めるシステム「メード・フォー・ユー」の全店への展開。質、サービス、清潔さの向上の徹底などを矢継ぎ早に実施。味や清潔さという、基本を忠実に磨くことで支持を獲得、既存店売上高を伸ばしてきたのだ。年々縮小している外食業界にあって、成長を続けていることは、驚異的といえる>
●実はマクドナルド全体の売上高は逆に下がり続けている謎
上記のように既存店売上高は上がっているのは事実。ただ、実は"有価証券報告書に記載されている売上高"は2008年がピークでその後は下がり続けています。"近年、マクドナルドは大胆な効率化策"として「直営比率の激減」を行なってきたため、このような不思議な現象が起きていたようです。
マクドナルド本社にとって、直営店ではないフランチャイズ方式の魅力は"土地、建物、人件費はフランチャイジーの側が負担する"ことで、"設備投資や人件費が減り、身軽な経営が可能となる"こと。"本部側は、ブランド使用によるロイヤルティ収入"を徴収するだけで済みます。
実は"海外のマクドナルドではフランチャイズ方式が8~9割という国が多い"のに、日本では"直営方式が7割と高かった"とのこと。日本は異端だったんですね。そこで"原田社長は08年から、直営比率を一気に下げ始め、11年までのわずか4年間で30%程度にまで縮小した"のです。
●マクドナルドの成長は見せかけか本物か?経常利益を見ると…
また、原田社長は"小規模オーナーとの契約を切り替えていき"、"10店舗以上を持つオーナー"を増やすということもしています。"小規模オーナーには、資金力がなく店舗改装の投資ができないなどのデメリット"があるためです。
これらを実施したため当然フランチャイズの割合や収入が増えたわけですが、注目すべきなのは経常利益です。全体の"売上高が1000億円減っているにもかかわらず、経常利益は182億円から276億円へと増加している"ということでしょう。
マクドナルド、原田社長へ市場からの注文(要登録 栗本優 日経新聞 2012/8/8 6:00)によると、"外食産業の平均で5%にすぎない売上高営業利益率"が日本マクドナルドでは8%もあるというからすごいです。
●常勝原田マクドナルドに死角あり?減益傾向が明らかに…
さて、快進撃を続けてきた原田マクドナルドですが、ずーっと上がり続けるというのは当然難しいことです。結果を出せば出すほど、より良い結果を出すことのハードルも上がっていきます。中には
25期連続増収増益のニトリのような企業もありますが、それでも連戦連勝はいつか止まるもの。そして、原田マクドナルドの場合、今年が試練の年のようです。
<日本マクドナルドホールディングスの2012年1~6月期(上期)の連結経常利益が前年同期比15%減の122億円と、上期では7年ぶりの経常減益になった。上期の下振れで、通期の業績予想達成に黄信号がともっている>(日経新聞)
"挽回策で手っ取り早いのは低価格戦略"と考えられていますが、マクドナルドは既に"4月末からコーヒーの値下げや100円、250円、500円のメニューを提供する「バリューキャンペーン」を実施"。これはそもそも原田泳幸社長が"就任する前の2000年代にマクドナルドが低迷した"理由である"低価格戦略"路線です。
"マクドナルドは「デフレの勝ち組」とのイメージがあるが、実際には過去8年で商品価格を25%引き上げて"おり、原田泳幸社長であれば"上期の低価格戦略はあくまで一時的な対策で、年間を通した低価格戦略は選びにくい"と見られています。
●原田泳幸社長が好むお家芸は「リストラ」で市場もそれを期待
では、どうするかと言うと、市場が期待しているのは原田泳幸社長のお得意の路線、一層の構造改革のようです。こちらの路線の方が原田泳幸社長は好きだし、得意なので、やってくれるのではないか?と期待されているということでした。
<とりわけ注目するのは店舗網の見直し。マクドナルドは2年前に全店舗の1割強の433店舗を一気に閉鎖するリストラを実行してきたが、まだ収益性の低い店舗が残っている。原田氏の社長就任1年後に全体の60%だった月商1000万円以下の店舗はまだ30%強残っている>
しかし、これは"思い切った店舗リストラは売上高の落ち込みにつながりかねず、成長が鈍化したイメージが強まるリスクと背中合わせ"という危険性もあるとのこと。原田泳幸社長自身も「(拡大を続けることで高めてきた)社員やフランチャイズチェーン(FC)のモチベーションにも影響しかねない」との懸念を持っているようです。おそらく以前の小規模オーナー切りでも反発が大きかったんじゃないかと思います。
さらに先のダイヤモンド・オンラインでも"マクドナルドのフランチャイズ運営には定評が"あるとフォローしつつも、以下のように不安な点を書いています。今年は原田泳幸社長にとって、正念場の年となりそうでした。
<直営方式を採用するライバルの大手外食企業の関係者からは「フランチャイズにしてしまうと、大きな方針転換に際し、オーナーを説得する必要があるなど、直営に比べてスピード感が落ちる可能性が高い」と、デメリットを指摘する声も聞こえてくる>
(2021/02/24追記:なお、マクドナルドはその後、メニュー廃止などの方針転換で店舗が混乱するなど、問題が続出し下降を続けて原田泳幸社長も退任。外国人社長で復活しました。現場の混乱では、直営店ではなくフランチャイズが多いためと言い訳していましたが、それを選択したのは原田泳幸社長自身でしたので、目先の利益にこだわったせいで長期的には失敗した感じです)
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