2012/9/6:
●大学卒の就職率の嘘デタラメ 9割の統計と6割の統計がある!
●同じ文科省調査なのに、9割の統計と6割の統計がある理由とは?
●進学者などを除いた就職率は8割、これが正しい就職率?
●進学者の中にも就職を希望していた人がいる…という問題も
●じゃあ9割の就職率が正しいかというとこれにもひどい捏造が…
●就職を諦めた人が多いほど就職率が上昇するというふざけた統計
●今ある不十分なデータから実際の就職率を想像してみると…
●大学卒の就職率の嘘デタラメ 9割の統計と6割の統計がある!
2012/9/6:文部科学省と厚生労働省が共同で行っている内定・就職状況に関する調査によれば、今年3月の大学卒の就職率は93.6%。おそらくこれくらいの就職率がよく見慣れた数字でしょう。これらの結果を元に、「毎年就職難と言われても結局9割前後となっている」といった指摘も目にしてきました。
ところが、
「どっちがホント?」 異なる就職率が併存する理由と弊害 文科省と厚労省の共同調査に潜む3つの由々しき問題点(日経ビジネスオンライン 2012年8月31日 上西充子)によると、"就職率として63.9%という数値"も報道されているようです。
同じ3と6と9ですので、誤表記か?とも一瞬思ってしまいましたが、どちらも官庁の統計による正式なデータ。何と63.9%は文部科学省の学校基本調査による就職率だそうです。93.6%は文科省と厚生労働省の共同調査でしたので、文科省はどっちにも関わっていることになります。30%も違うってえらい違いですよ。
●同じ文科省調査なのに、9割の統計と6割の統計がある理由とは?
さて、何でこんな妙ちくりんなことになっているかと言うと、ズバリ"就職率を算出する際の分母が異なっているから"す。
就職率が6割となっていた学校基本調査における2012年3月の大学(学部)卒業生の状況は以下の通り。
「就職者」63.9%、「大学院等への進学者」11.8%、「臨床研修医」1.6%、「専修学校・外国の学校等入学者」2.0%、「一時的な仕事に就いた者」3.5%、「左記以外の者」(報道発表資料では「進学も就職もしていない者」と表記)15.5%、「不詳・死亡の者」1.8%
「大学院等への進学者」などが入っているのでわかるように、就職率の計算式の分母は卒業者数なのです。一方、9割という高い数字を叩き出した就職内定状況調査の計算式は分母を就職希望者数としています。
●進学者などを除いた就職率は8割、これが正しい就職率?
単純に就職あるいは進学したという事実を示すものですので、これらの調査には嘘をつく意図はありません。ただ、きちんとした説明なく「就職率」などと言ってしまうと、誤解を招くことは確かです。
作者の上西充子さんは、就職率6割の学校基本調査は、大学院などへの進学者が1割以上含まれているので、「大卒者の約6割しか就職したくてもできないのか」と悲観的になるのは、誤った判断だとしていました。
では、大学院などへの進学者やほかの学校への入学者、臨床研修医を除いてみたらどうでしょう? 「就職者」を分子とし、「就職者」+「一時的な仕事に就いた者」+「進学も就職もしていない者」を分母として就職率を計算してみると、就職者の割合は77.1%となります。これでも9割と異なる値となりました。
この結果からすると、就職希望者を分母とした就職率は93.6%ではなく、77.1%が実態を反映した数値なのだろうか…というと、これまたそうではないとのこと。なぜなら、この計算で分母に入れた「進学も就職もしていない者」のうち、もともと就職を希望していた者がどれだけいたかは分からないため。
この後ズラズラと続きますが、長いので省略。とりあえず、かなりややこしいということだけは覚えておいてください。
●進学者の中にも就職を希望していた人がいる…という問題も
なお、ここで指摘されていませんでしたが、進学者の中にも就職を希望していた人がいる…という問題もあります。
少数でしょうけど、就職活動したものの実際に内定が取れなくて、大学院に切り替えるという人もいます。大学院は後期試験もありますので、そうなるとかなり遅い時期に受けられるのです。また、前期試験も春に何箇所か受けてからで間に合いますし、両睨みでも結構。内定取ったけど大学院なんて人もいましたが、これは贅沢ですね。
また、就職希望者の就職率の調査からは外す方が妥当かなとは思うものの、就職が厳しいので2年待とうと大学院に行くというパターンもあります。そういう人は私の大学では珍しくありませんでした。
まあ、実際には2年後でもあんまり状況は変わらないんですけどね。そういう選択をする人はもしかすると、大学院の方が就職率高い(本当?未調査です)という狙いの方が大きいかもしれません。
●じゃあ9割の就職率が正しいかというとこれにもひどい捏造が…
さて、先ほどの63.9%は就職希望者の就職率を見る場合には役に立ちませんでした。しかし、文部科学省と厚生労働省が共同で行っている内定・就職状況に関する調査の93.6%も実はまやかしの数字なのです。
作者上西充子さんの指摘する問題点は、第1に、内定率や就職率を算出する際の分母である就職希望者数が調査時点ごとに減少していき、結果として内定率や就職率が過大な数値となる点。これが最大の問題点です。
また、2点目は、調査の開始時点が4年生の10月1日であり、その時点で既に就職をあきらめていた者は最初から就職率算出の対象外であること。おまけに、サンプルの対象校に偏りがあり、「就職希望者」の細かな規定がない点も指摘されていました。
●就職を諦めた人が多いほど就職率が上昇するというふざけた統計
1つ目の問題点は非常にひどい話で、"就職内定率・就職率は10月1日59.9%→12月1日71.9 %→2月1日80.5%→4月1日93.6%というように上昇している"ため、10月1日に内定を貰っていなかった4割のうち3割以上が、4月1日には内定を取ったように見えます。
ところが、実際には"途中で就職をあきらめた人などは、それぞれの調査時点における就職希望者数からは除外されていく"ため、93.6%は大嘘なのです。
実際に調査を見ると、大学卒業予定者およそ55万人の中での"「就職希望者数」は42万5000人→41万6000人→40万6000人→38万1000人と減少している"ため、多くの人が就職を諦めていることが想像できます。
"仮に10月1日時点での就職希望者が本当はそのまま就職を希望し続けていると考え"た場合の内定率や就職率は、83.8%となるそうです。ただ、これも先の2番目の問題点"調査の開始時点が4年生の10月1日"のせいで、まだ過大な可能性を残します。上西充子さんは"調査の開始時点は3年生の3月ごろに設定するのが妥当ではないだろうか"としていました。
あと、3つ目の問題点、サンプル対象校の偏りにも驚かされます。"全国の大学全体に占める国立大学の比率は11%"であるのに、"調査対象校の33.9%が国立大学となっている"ということ。高めに出そう、出そうという姿勢があからさまですね。
●今ある不十分なデータから実際の就職率を想像してみると…
じゃあ、結局正しくは何%?と気になるでしょうけど、今の不十分な問題だらけの調査データでは把握するのは難しいため、算出できないということになってしまいます。
それでも一応、63.9%データから進学者などを除いた77.1%、93.6%データを10月1日時点での就職希望者で出した83.8%は、参考になるんじゃないかとは感じました。個人的な印象で言うなら、これらの辺りにある8割前後のところなのかな?と想像しています。
なお、上西充子さんが"同一調査時点の数値を比較して経年変化を見ることには意味がある"としているように、どちらも全く無意味な調査ということではありません。
ただし、数字を素直に信じて話をしてしまうと妙なことになりそうですので、その点は頭の片隅に入れておくと良いでしょう。
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