非常に不謹慎な感じはあるランキングなのですが、以前思いついてやろうと思っていた致死量ランキングです。実は結構真面目に役に立つんじゃないかと思うんですよ。致死量ランキングは、世の中の物質は「危険な物質」と「安全な物質」に分けることができる…といった誤解を解く助けとなるのではないかと思います。
●危険な物質と安全な物質という誤解…実は意外に身近にある猛毒物質
2012/9/12:引用元は
Wikipediaであり、そこには<"選定にあたっては、毒として著名であったり社会的な事件で話題になったもの、日常生活で接触する機会がある身近なもの、化学構造の差異による作用の相違を比較する意義があるものなどを考慮して行った>と書かれています。
つまり、意外と身近なものを集めてあるわけです。「致死量がある」と聞くとそれだけで恐ろしいような気がしますが、下位なんかは本当に普通に体内に入れているものも含まれます。「致死量」という言葉に騙されないようにするためにも、知っておいた方が良いと思いました。
これは、普通に体内に入れているものも摂取すぎれば死ぬというだけで、危険な物質だから絶対摂取してはいけないという意味ではありませんよ。また、逆にいかにも危険そうな物質でも、量が少なくれば全然問題なしということになります。問題は量や濃度といったところで、危険な物質と安全な物質でわかりやすく分かれているわけじゃないんですね。このことはきちんと理解しておいてほしいところです。
なお、前述のように「毒として著名であったり社会的な事件で話題になったもの、日常生活で接触する機会がある身近なもの」といった選出理由のため、危険な物質をすべて含んでいるというわけではないことに、気をつけてください。その他の注意事項、用語の説明などは下記の通りです。
半数致死量……ある物質をある状態の動物に与えた場合、その半数が死に至る量。
経口投与……基本的に経口投与による急性毒性のLD50 mg/kgで示している。腹腔内投与や静脈注射投与の場合は、より強く毒性が現れる傾向にある。
値に幅がある……文献、実験動物によって異なる。現在では正確な値を求めることに学術上の意義が無いと考えられ、概算値のみ求めている。順位はWikipediaに従った。
●致死量ランキング 半数致死量(mg/kg)表示 1~10位はダイオキシンなど
では、本題のランキングへ。
順位 名称 半数致死量(mg/kg) 含有するもの・用途 出典・備考等
1位 ボツリヌストキシン(A) 0.0000011~0.001 ボツリヌス菌 資料により非常に幅が大きい。
2位 テタヌストキシン 0.000002 破傷風菌
3位 マイトトキシン 0.00005 有毒渦鞭毛藻
4位 パリトキシン 0.00025 スナギンチャク類
5位 ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD) 0.0006~0.002 産業副産物 種による特異性などを含め緒論あり。
6位 ベロ毒素 0.001 病原性大腸菌・赤痢菌等
7位 テトロドトキシン 0.01 フグ他
8位 VX 0.02 化学兵器
9位 リシン 0.03 トウゴマ
10位 ミクロシスチン 0.05 藍藻類
1位のボツリヌストキシンは食中毒で知られるようです。別にピックアップしたいなとも考えていて、後に、a href="http://1000nichi.blog73.fc2.com/blog-entry-2404.html">最強の毒素ボツリヌス菌のボツリヌストキシン、0.5kgで全人類を滅ぼすで書きました。ボツリヌス菌は、「危険な物質」に対する複数の誤解を解くわかりやすい例だと思います。
身近と言うか、有名なのはダイオキシン。半数致死量にはかなり幅があり、緒論ありとも書かれていますが、私は毒性は未確認だと思っていましたので驚きました(昨年たばこの有毒性などを調べていて知りました)。私が昔Wikipediaを読んだときは、確実なのは赤ちゃんが奇形になる催奇性だけと書かれていた記憶があります。この催奇性のため、母親が極端に魚ばかり食べることは勧められていません。
ダイオキシン類の人の摂取は魚が代表的なんですけど、由来としては焼却処理過程だけでなく実は昔使っていた農薬由来のものもあります。そして、農薬由来のものは昔のものであるにも関わらず、なかなかなくなるものではないようです。ただし、結局、摂取量の問題です。先ほどの「致死量」という言葉に惑わされないでという類の心配はこういうところにもあります。
このダイオキシン類の後は有名な毒物が続々と登場し、ダイオキシンはそれより上に位置しているのは事実です。しかし、だからと言って魚が食べられないというわけではないということをわかってほしいです。…といった感じで、ダイオキシンでいっぱい書いちゃいましたが、身近なものではフグ毒で有名なテトロドトキシンも7位に入ってます。フグ毒と書きましたが、実はそれ以外の生物でも持っているものが結構います。
●半数致死量ランキング、タバコのニコチンは11位~20位で登場
順位 名称 半数致死量(mg/kg) 含有するもの・用途 出典・備考等
11位 アコニチン 0.05~0.1 トリカブト
12位 α-アマニチン 0.1 毒キノコ(ドクツルタケ等)
13位 モノフルオロ酢酸 0.1 殺鼠剤
14位 サリン 0.35 化学兵器
15位 d-ツボクラリン 0.6 クラーレ、矢毒
16位 コルヒチン 0.6 イヌサフラン他・医薬
17位 ストリキニーネ 0.6~2 マチン、殺鼠剤
18位 ニコチン 1~7 タバコ
19位 シアン化カリウム 3~7 試薬(いわゆる「青酸カリ」)
20位 亜砒酸ナトリウム 10 試薬(いわゆる「ヒ素」)
フグ毒に続いて、古今東西を問わない大物生物毒のトリカブトが11位。12位のα-アマニチンには毒キノコの話も出ていますけど、毒キノコの毒は複雑で不明なことが多いみたいですね。何かわけわからんけど死んでしまう…といった感じです。ここらへんは、動物やら植物やらが持っている毒です。
14位はサリンガス。知らなくていい言葉なのに、残念ながら新興宗教のオウム真理教のせいで有名になってしまったサリンガスです。17~20位にも有名ドコロが続きます。と言いつつも、ストリキニーネはちょっとマイナーかな?昔は推理小説でよく出てきたと思います。次の18位は知らない人はいないニコチン。たばこですね。
その下に19位青酸カリ、20位ヒ素と続きます。ニコチンよりこれらが下なのは妙な気がしますし、たばこは恐ろしいんだと思うでしょうが、繰り返すように濃度の問題。ただし、たばこを食べるのが非常に危険なのは確かですので、子どもや動物がいる人は気をつけてください。たばこにはニコチンだけでなく、多種多様な毒物が含まれています。
●致死量ランキング 半数致死量21~30位では毒物混入事件が複数
順位 名称 半数致死量(mg/kg) 含有するもの・用途 出典・備考等
21位 パラチオン 10 農薬(有機リン系)
22位 黄リン 10 試薬
23位 メタミドホス 10~30 農薬(有機リン系)
24位 塩化スキサメトニウム 10~50 筋弛緩剤
25位 酢酸タリウム 30~40 試薬
26位 アジ化ナトリウム 46 試薬
27位 DDT 110 農薬(有機塩素系)
28位 モルヒネ 120~500 ケシ、麻薬
29位 メタンフェタミン 135 覚醒剤
30位 カフェイン 200 茶・コーヒー等
23位のメタミドホスは確か中国の冷凍餃子に入っていたものですね。農薬として使われていますが、当時殺虫成分と報道されたように、そのような用途もあるようです。26位のアジ化ナトリウムも事件あったはずと思いましたが、"1998年夏から秋にかけて、新潟・三重・愛知・京都でポットの湯などにアジ化ナトリウムが混入される事件が相次いだ"というものでした。
モルヒネが28位。用途はWikipediaにあった「ケシ、麻薬」の他に、医療用としても用いられます。
日本では医師が毒薬を処方するので、患者は毒薬を飲まされている!で書いたと思いましたが、おもしろいことに毒と薬というのは昔から関連性があるんですよね。さっき書いた生物毒の中にも場所によっては薬とみなされていたというものがあります。
で、30位がカフェインです。これが普通に体内に入れているという代表例。ここまで来ると数字の桁数はかなり上がってきているんですが、致死量が算出できてしまうレベルの物質ではあります。「体に良い物質と身体に悪い物質がある」のではなく、「濃度・量が問題だよ」というのを実感していただければと思います。
●致死量ランキング 半数致死量31~41位にはビタミンC、にがり、食塩なども
順位 名称 半数致死量(mg/kg) 含有するもの・用途 出典・備考等
31位 トリフルオロ酢酸 200 試薬
32位 パラコート 250 除草剤(ピリジニウム系)
33位 マラチオン 250~600 農薬(有機リン系)
34位 2,4-D 375~666 除草剤(有機塩素系)
35位 アセチルサリチル酸 400 医薬(アスピリンなど)
36位 スコポラミン 1200 チョウセンアサガオ等・医薬
37位 ホウ酸 2000~4000 試薬・医薬
38位 塩化マグネシウム 2800~4700 にがりの主成分
39位 塩化ナトリウム 3000~3500 食塩
40位 エタノール 5000~14000 酒類 非常に個人差が大きい
41位 ビタミンC 12000 栄養素
38位の塩化マグネシウムはにがりの主成分だそうです。にがりはむしろ体に良いと言われて、にがり水が流行ったことがあります。しかし、当時は「飲み過ぎは危険」という警告も同時に出されていました。こういうこともあって、私は「~は体に良い」や「~が体に悪い」という極端な信仰は嫌いです。飲み過ぎちゃうんですよ。にがりは、実際に死者の例があるものです。
で、次の39位が食塩(塩化ナトリウム)。カフェインよりさらに数字が大きくなっているんですけど、無視できない危険性があります。mg/kgで表されているように体重が小さい場合は十分に死ねます。と言うか、死ななくて済んだとしてもいっぱい苦しむんですから、みんな上記の量までOKって意味じゃないですからね。
食いしん坊のペットが塩分を取りすぎて死んだというケースはあり、大人と比べて体が小さい子供なんかも死亡まで行くのはあり得ると思われます。ペットやお子さんがいる家庭では、塩分の強いものを放置しておくことは危険です。大人じゃないと取れないところに隠しておきましょう。
次の40位、酒に含まれるエタノールは身近であっても意外性に欠けますね。それよりおもしろかったのが、最後のビタミンC。食塩も体に必要なもので死ぬパターンでしたが、ビタミンCなんか基本「摂れ、摂れ」と言われるものですから致死量なんて言われるとびっくりします。食塩のさらに4倍であり、実際に危険な状態になることはほとんどないでしょうけど、何でも取り過ぎると危険なんだよという例としては象徴的だと思います。
●致死量ランキング8位だったVX、金正男氏暗殺に使用されてしまう…
2017/02/24:暗殺事件で名前が出てきたので追記。マレーシア警察は2017年2月24日、2月13日に殺害された北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)さんの遺体から猛毒VXが検出されたと発表しました。正男さんは13日午前にクアラルンプール国際空港で2人組の女に襲われています。正男さんは実行犯の女の手で顔を覆われ、その後に体調の不良を申し出て病院に搬送される途中で死亡していました。
(
金正男氏遺体から猛毒VX検出 マレーシア警察発表 (写真=AP) :日本経済新聞 2017/2/24 10:11より)
【本文中でリンクした投稿】
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