現状の日本の電力供給のやり方を何ら問題がないと言い切るのは無茶であり、何らかの対策が必要だとは思います。
ここらへんは関心があるところでいろいろな話を書いており、安易に変化を否定し、現状肯定に終わってしまうよりは、前向きな話に好意的です。
ところが、太陽光発電に関して言うとかなり懐疑的であり、否定的な材料の紹介が多く、今回もそんな話です。まずは、
日本の「お手本」ドイツで太陽光発電大きく後退 家庭用中心に電気料金高騰、供給に対する不安も(2012/9/ 8 13:00)から。
2000年に導入した再生可能エネルギー法を12年6月末に改定し、太陽光発電の買い取り価格の20~30%の引き下げと、太陽光発電の累計設備容量が5200万キロワットに達した後は太陽光発電の買い取りを中止することを決めた。
(中略)
これまでは全量を20年間、固定した価格で買い取ってきた。太陽光発電の設備投資には補助金も出され、それを追い風に太陽光発電の設備容量は2005年以降、世界第1位だ。
ところが、発電電力量に占める割合は電力全体の3.3%に過ぎない。さらには電気料金が高騰し、国民負担が大きくなってきた。
ドイツではFITを導入した2000年以降、電気料金は上昇傾向にあり、家庭用は2000年時点に比べて1.8倍以上も上昇した。
ドイツの電力事情に詳しいNPO法人国際環境経済研究所の竹内純子・主席研究員は、「(中略)繊維業界が先日、再生可能エネルギー法が憲法違反であるとして訴訟を起こしました。さらに脱原発に伴い、電気料金が上昇すること、また供給に対する不安が出ています。ある大手銅メーカーは10分の1の停電でも生産ラインが停止してしまうとし、停電の少ないドイツに生産拠点を置くメリットが失われつつあることに懸念を表明しています」と説明する。
また、供給が不安定な太陽光発電をバックアップする発電所として火力発電所を維持する、「二重の設備投資」を強いられ、そのコストも電気料金にのしかかる。(中略)
石油や石炭・褐炭への依存度が上がれば、CO2排出量も上がるのだから、何のために再生可能エネルギー法を施行し、FITを導入したのかもわからなくなっている。
まだある。ドイツの太陽光発電メーカーは、中国メーカーによるダンピング競争に巻き込まれ、一時は世界のトップメーカーだったQセルズまでも破たん。産業育成にも結びつかず、補助金もバラマキに終わった。
なぜ、ドイツの太陽光発電はこれほどまでに後退しているのだろう――。前出の竹内氏は「ドイツでは太陽光発電の稼働率が10%程度であることなどはわかっていたはずですが、再生可能エネルギーの導入による負担上昇や、産業政策上では中国との価格競争について見誤ったといえます。また、太陽光発電事業者の政治的ロビーイングが激しかったことは大きく影響しているでしょう」とみている。
竹内氏は、「ただ、こうした状況はいまの日本にそのまま当てはまります」とも指摘する。
最後の懸念は再生可能エネルギー全量買取制度のシリーズでさんざん書いてきたものです。制度の検討していた段階から変化した部分が大きく、現在の制度の目的は不純な可能性があります。
太陽光発電と原発をセットで捉えることには反対しますが、途中で出てきた脱原発については
原発のコスト計算とドイツの脱原発決定の根拠などを書いています。
今読み直すと私がわかりづらい書き方していて伝わらなそうですが、ドイツの脱原発にはあまり根拠ある検討をしていたようには見えず、脱原発ありきの政治的な決定のようでした。
ただ、それに国民が納得し、電気料金が上がっても構わないというのであればそれで良い、日本人にはその覚悟が足りないという風にも思いました。
しかし、今回の記事を読むと、太陽光発電に関しては不満の声が聞かれるようですね。
とは言っても、今更原発推進には戻らないでしょうから、火力発電所増設でどうにかするしかなさそうです。
あと、
国際専門機関からも「意味無いからヤメレ」と突っ込まれたドイツの太陽光発電政策(2011年7月12日 08:39【ネタ倉庫】ライトニング・ストレージ)は古いものですが、
・IEAは07年のドイツに関する国別レビューの中で、特に太陽光に関して「高値のFITは費用効果的ではないので、これ以外の政策の採用」を勧告。
・同じレビューで原子力発電のフェーズアウトの見直しも勧告。
・ドイツの最大の問題点は高い買い取り価格を20年間固定することで極めて巨額な補助金が累積すること。
・エコでもない。(ここらへん理由付けはいろいろできそうですが、詳細は不明)
・太陽光発電は今後の発展開発性能向上余地を考えれば面白いが、今の時点で大量投入すると痛い目にあうのは必至。
といったことが書かれていました。
3つ目の"ドイツの最大の問題点は高い買い取り価格を20年間固定することで極めて巨額な補助金が累積すること"ですが、日本の制度も累積型のはずです。
以前私の書いた記事に累積を否定するようなコメントが来ましたが、再反論がないのでそういう理解で良いと思います。
また、最後の"今の時点で大量投入すると痛い目にあう"も以前、FITより研究費に投入しては?といった話を書きました。
国際エネルギー機関 (IEA:International Energy Agency)の方が、論理的で説得力のある考え方をしています。
関連
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ドイツの太陽光発電は成功例でなく失敗例? ■
その他の政治(全般)について書いた記事
Appendix
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