尖閣諸島の他、日本のメタンハイドレート、レアアース、レアメタルなど天然資源に関する話をまとめ。<中国が尖閣諸島を狙っているのは石油などの資源のためって本当?>、<尖閣沖の資源開発認められず…日本政府は棚上げで40年も放置状態に>、<尖閣諸島は資源の宝庫 石油・天然ガス、さらにレアメタル・メタンハイドレートも?>などの話をやっています。
●中国が尖閣諸島を狙っているのは石油などの資源のためって本当?
2012/9/18:日本近海の資源に関しては、過去に
日本の南鳥島沖レアアース数百年分 加藤泰浩教授、「数千年分」と過去には発言というのをやっています。また、
もう既に日本は資源大国 メタンハイドレートやレアアース以前の問題も関連です。
一方、今回は話題の尖閣諸島に絞った話です。実はそもそも中国が尖閣諸島を狙っているのは、資源であるなどと言われています。例えば、
Wikipediaでは、<中国と台湾が領有権を主張し始めたのは、1968年(昭和43年)に尖閣諸島付近海底調査で石油や天然ガスなどの大量地下資源埋蔵の可能性が確認されて以降である>とされていました。
では、この資源とは具体的にはどれくらいあるのでしょう。
尖閣沖は原油や天然ガスの「宝庫」 でも、試掘権の申請は40年近く棚上げ(2012/9/16 10:03 J-CAST)という記事には、そこらへんの話が記載されていました。
●尖閣沖の資源開発認められず…日本政府は棚上げで40年も放置状態に
記事によると、まず、尖閣沖の資源開発をめぐっては、最初に開発する権利である「先願権」を、大手商社の双日が72.2%を出資する「うるま資源開発」が握っているという話があります。ただし、実際には全く開発は進んでいません。
<先願権は取得後3年以内に政府の認可を得て試掘権に切り替え、商業化しないと権利を失うことがある。尖閣沖では、うるま資源開発が鉱業法に基づく試掘権の申請前の段階で、中国が突然領有権を主張しはじめたため、以後40年近くにわたり試掘権の認可が棚上げされた>
"うるま資源開発の設立が1973年11月"だそうですので、「試掘権の認可が棚上げ」も1973年11月頃のことでしょう。「40年近く棚上げ」もそういう計算です。それにしても、ずいぶん長い間放置されました。記事ではこの後佐藤栄作という名前も出ていますから、本当に昔だなぁという感じがします。
●800兆円もの原油が眠っている世界的な産油地域だとの調査結果
さて、肝心の資源の量について。尖閣沖に膨大な資源があるとわかったのは1968年、自民党の第3次佐藤栄作内閣のときだそうです。国連・アジア極東経済委員会(ECAFE) の協力で東シナ海で海底調査が行われ、以下のようなことがわかりました。
<尖閣諸島周辺の海域には1095億バレルの原油埋蔵量があり、「世界的な産油地域となるであろうと期待される」と、石油の有望な埋蔵地域と評価された。
1000億バレルの埋蔵量は、世界一の原油埋蔵量のサウジアラビア(2667億バレル)には及ばないが、イラク(1150億バレル)やクェート(1040億バレル、いずれも2009年10月の公表値)に匹敵する>
原油価格1バレルで約100ドルで計算すると、1000億バレルは10兆ドル分で、1ドル80円換算で800兆円にのぼる原油が眠っていることになります。ものすごい金額ですね。
●開発する権利を持つ双日「何がどのくらいあるのか把握できていない」
ところが、この莫大な金額の数値はその後覆されてしまいます。当時の調査方法はスパーカ震源(おそらくSparker)による地震探査法と呼ばれる、海中放電(スパーク)による衝撃を震源とする簡易調査法だったのです。飽くまで簡易的な調査だったので、精度の低い数値だったんでしょうね。
その後のより精度の高い調査をもとに経済産業省石油審議会が1994年に試算したところよると、尖閣沖周辺の原油埋蔵量は約32.6億バレル(天然ガスを含む原油換算、5.18億キロリットル)になるとされ、ECAFEによる調査時のおよそ30分の1にまで減ります。それでも、金額換算では約27兆円ですからすごいですけどね。
ただし、この減った数値でも夢見がちな、まだまだかなり甘い算定かもしれません。上記のような記載がありつつも、記事冒頭では「何がどのくらいあるのか、正確には把握できていない」(双日)ともあり、不確実性が高いと考えられます。以前紹介した南鳥島沖レアアースの数字も、いい加減でした。
●尖閣諸島は資源の宝庫 石油・天然ガス、さらにレアメタル・メタンハイドレートも?
さらに、この後はもっともっと怪しくなってきます。独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMC)によると、熱水中に含まれる銅やレアメタル(希少金属)が積もってできる「海底熱水鉱床」が石垣島周辺で見つかったことで、尖閣沖周辺にも新たな鉱床が見つかる可能性がないとはいえない、としています。
石垣島とあるので、最初にリンクした
日本の南鳥島沖レアアース数百年分 加藤泰浩教授、「数千年分」と過去には発言とは別件ですかね? 内容は似ているんですけど…。
これ以外に、日本近海に多数あるとされるメタンハイドレートについても話が出ていないかと思って検索してみました。言及しているものは多く、中国の本当の狙いは石油などではなくメタンハイドレートだという断言も多いです。
ただし、いずれもブログや掲示板の記述。排他的経済水域のことを考えると可能性としては十分だとは予想しますが、確証は持てませんでした。
…といった感じで不明確な点が多いものの、莫大な資源が眠っていることは事実みたいです。ただ、それゆえに今後ともこの問題で日中台(台は台湾)が揉めることになるのは間違いないとも考えられます。
●世界初!日本が海底からメタンハイドレート採取に成功
2013/3/14: 「日本が海底からメタンハイドレート採取に成功」というニュース。私としてはこれで浮かれずに…という以前と同じ考え方のままですけど、技術があれば選択肢も増えますし、ともかくまずは喜ばしいことです。(以前からの考え方というのは、
日本は資源大国であるって本当?、
オランダ病と資源の呪い、資源大国は不幸な国?といった投稿のこと)
NHKによると、資源エネルギー庁は、将来の国産天然ガスの資源として期待されている「メタンハイドレート」について、愛知県と三重県の沖合で世界で初めて海底からのガスの採取に成功したと発表しました。
(海底からメタンハイドレート採取に成功 3月12日 11時51分 NHKより)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130312/k10013138431000.html
「世界で初めて」ですって。気持ちいいですね。嬉しいのでもう1回書いておきます。"世界で初めて海底からのガスの採取に成功"です!
<発表によりますと、12日午前9時半ごろ、愛知県と三重県の沖合で、国の委託を受けた独立行政法人のJOGMEC=石油天然ガス・金属鉱物資源機構が中心に進めているメタンハイドレートの試験開発で、海底より数百メートルの深さの地層から天然ガスの採取に成功しました。
資源エネルギー庁によりますと、海底にあるメタンハイドレートからの天然ガスの採取は世界でも初めてということです>
埋蔵量については、今回の海底には日本の天然ガス使用量の14年分に相当するメタンハイドレートの埋蔵が見込まれているとしていました。また、資源エネルギー庁は、5年後をめどに商業化に向けた技術を確立したいとしていたとのことです。
●日本のメタンハイドレートは100年分の消費量
しかも、メタンハイドレートがあるのは、愛知県と三重県だけじゃありません。新潟県の上越沖や北海道の網走沖、日本海の秋田県から山形県にかけての沖合などで実際にメタンハイドレートが確認されているほか、紀伊半島から四国、九州にかけての太平洋沿岸でも埋蔵の可能性が指摘されています。
そのため、日本近海の埋蔵量を合わせれば、日本の天然ガス消費量の100年分に相当するという試算もあるとのこと。政府内には「商業生産が実現すればエネルギーの輸入依存体質を大きく変えられる」といった見方もあり、開発にはこれまで588億円が投じられているといいます。
ガスと水が結びついたシャーベット状のメタンハイドレートから、天然ガスを採取するには高い技術が求められますが、日本はこの技術面で世界をリード。世界で初めて内陸部のメタンハイドレートからガスが採取されたカナダ北西部の内陸部での試験開発も、実は日本政府が中心になって進めたものだったというのです。
●でも「5年で商業化」は大嘘か?「絵に描いた餅」感がすごい
ただし、課題も実際にはあります。通常の天然ガスは、埋蔵している地層にパイプを通せばガスが出てくるのに対し、メタンハイドレートは、シャーベット状の固体からガスだけを取り出す必要があります。このため、今回の試験採取については、アメリカで生産が増加しているシェールガスと比べても、コストは17倍になっているという試算もあるとのこと。
また、一般的なガス田に比べると、メタンハイドレートからガスを採取する効率は10分の1程度とされ、効率の悪さも課題です。じゃあ、5年で商業化ってまた官僚の「絵に描いた餅」じゃね?という気がしなくもないですが、NHKも"コストの圧縮や、効率の向上が大きな課題となりそうです"としておりネガティブです。
あと、電力会社やガス会社も、今回のガス採取について期待感をもっているものの、商業生産に向けてはまだ多くの技術的な課題があるとして、今後の開発状況を見極めたいとしており、信用されていません。電力会社が出てくるとまたお得意の陰謀論が飛び交いそうですが、ガス会社も含まれていますからね。ちょっと前に書いたシェールガスの話で出てきたスイッチングコストというやつも関係あるかもしれません。
とは言え、シェールガス・シェールオイルというのもちょっと前まで使いものにならないシロモノでしたし、石油の枯渇年数が伸び続けたのも技術のブレイクスルーが連続したというのが理由の一つです。ここらへんの技術は飛躍的な発展を遂げる可能性も十分にあると思います。
(そのためメタンハイドレートの埋蔵量も技術次第で前後するんですけど、NHKの100年が今の技術を前提としたものかどうかは書き方を見てもよくわかりません)
あと、気になるのは尖閣諸島の件ですね。同じページにまとめた上記の<尖閣諸島は資源の宝庫 石油・天然ガス、さらにレアメタル・メタンハイドレートも?>で見たように、現状尖閣諸島についてメタンハイドレートと絡ませた記事はあまりないんですけど、悪い方向に影響がないように…と願います。
●5年で商業化目指す2度目の実験がそもそも4年後…という遅さ
2017/05/16:最初のNHKニュースが2013年3月12日ですから、「5年で商業化」まであと1年と迫りました。しかし、課題があると書いていたように、案の定難航しているようです。
今回の第2回メタンハイドレート海洋産出試験は、JOGMECが2017年4月7日より、渥美半島~志摩半島沖(第二渥美海丘)において、準備作業を進めていました。そして、5月4日にメタンハイドレート層からの分解ガスとみられるメタンガスの産出を確認し、ガス生産を開始することに成功しています。
(
第2回メタンハイドレート海洋産出試験 配信元:PR TIMES 2017年5月8日より)
ところが、これが早くも15日に中断と発表されました。ガスを取り出すために海底の地層を掘削した井戸に大量の砂が混入したためだとしています。今回の実験は当初、商業化のための技術確立に向けて3~4週間連続でガス生産することを目指していたため、2週間も持たずに中断というのは良くない結果です。
(
海底メタン、生産中断=大量の砂混入―愛知・三重沖 時事通信 / 2017年5月15日 19時51分より)
そもそも5年で商業化を目指しているのに、2度目の実験が4年後というのは、遅すぎでしょう。この時点で計画が大幅に遅れているのでは?と思ってしまいます。ただ、これで中止というわけではなく、経産省は今後、別の方法で砂混入の防止策を講じたもう1本の井戸でガス生産を試みる方針とのこと。
やっぱりできもないことを大げさに言っていたのでは?と思うところもありますが、PR TIMESでは、異なる出砂対策を施した2本の生産用坑井を用いてという説明でしたので、もう1本の対策の方が効果的という可能性はありそうです。
●2018年に商業化向けの技術確立 → 2030年代でも厳しいかも…
2018/05/24:別件で2016年に発売のものがまだ発売されておらず「詐欺では?」と言われているのを見て、そういえばメタンハイドレートはどうなった?と気になりました。
「5年後をめどに商業化に向けた技術を確立」が2013年3月12日で報じられものですから、もうすでに5年を突破していますね。しかし、実用化のめどが立ったというニュースはなさげでした。そもそも最近はニュースにもなっていません。
直近の記事となると1年前のものばかりなのですけど、例えば、
メタンハイドレート、商業化に壁 技術の確立に課題/採算合うか未知数:朝日新聞デジタル(2017年6月27日05時00分)なんかはタイトルからしてもうダメとわかるものです。有料会員限定記事でほとんど内容がわからないものの、無料部分だけでもダメダメ感が伝わってきました。
記事では、"経済産業省は2030年代の商業化を目指すが、生産技術の確立や開発費用の高さなどと課題はまだ多く、日本単独での開発は見直しを迫られている"としており、「2030年代の商業化」と大きく遅れているのにそれすら難しいという説明。「5年後をめどに商業化に向けた技術を確立」という説明とあまりにも違いすぎます。詐欺っぽいですね。
朝日新聞は反日だから!って思う人もいるかもしれませんけど、産経新聞も
愛知沖のメタンハイドレート、23万立方メートルを生産 商業化はなお課題 - 産経WEST(2017.6.29 17:36)というのを出しています。政府は商業化に意欲を示しているものの、米国で安価なシェールガスが供給されるようになり、コスト面で実現は厳しくなったとみられているとして、産経新聞なのに安倍政権の願望をあっさり否定していました。
【本文中でリンクした投稿】
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