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手厚い社会保障制度・生活保護の問題点 不満と暴動は止まらない


 手厚い社会保障制度・生活保護の問題点 経済格差は縮まらず固定化するの続きです。

 手厚い社会保障であるかどうかは前回書いたとおり異論があるかもしれませんけど、そういった前提で書いていきます。

 2011年の暴動はカウンシルフラットで暮らす若者の不満を原因としたものかもしれません。

 しかし、イギリス暴動の裏にある鬱屈と絶望について(はてな匿名ダイアリー 2011-08-16)によると、不満を持っているのは彼らだけではないということです。
カウンシルフラットの子供達が鬱屈しているならば、イギリスの納税者達は絶望している。イギリスの税金は高い。(中略)そういう辛い家計をやりくりしながら、やたら高い家賃を払って暮らしている家のすぐ隣で、無職の人が昼間からぷらぷらしていたりするわけだ(カウンシルフラットは本当にあちこちにあるので)。

それでも、ブレアが政権を取った1997年以降、イギリス人は低所得層との格差を縮めるために税金を投入する政策を支持してきた。(中略)

にも関わらず、今回の暴動だ。これを「先進国とは思えない、途上国の光景のようだ」と思った人はイギリスにも少なくない。ブレア政権の教育改革がスタートしたのは99年前後だから、今回の暴徒の大半は改革された教育制度の下で育ってきた子供達である。(中略)これに絶望せずにいられるのは、やはりよほど心の強い人間だけだろう。

 実はイギリスの社会保障の削減は"暴動前から進行して"いたようです。

 しかし、これから起こるであろうこととして、"(1) 警察力の強化"とともに作者は"(2) 社会保障制度の見直し"を挙げ、以下のように社会保障の削減が暴動の原因であることを否定しています。
(2) 社会保障制度の見直し。これは実のところ暴動前から進行している。上で書いたincapacity benefitだが、悪用して海外旅行まで楽しむ輩が多く出た上、一度受給者になると死ぬまでもらえるので、就労意欲がゼロになる。以前から批判が絶えず、キャメロン政権は廃止を決めた(別制度で代替)。ただし、これらの社会保障の削減が暴動の理由ではないというのはマスコミでも一致した見解だ(まだ削減は殆ど始まっていない上、暴徒の大半は親元で暮らしているのでそもそも受給していない)。

上でも書いてきたように、手厚い社会保障制度それ自体が受給者と、その子供や孫の未来までをも奪ってきたという側面がある。そして、この制度は格差の縮小どころか、治安維持という最低限の目的すら達成できなかった。何より、イギリス経済はこれ以上の負担にはもはや耐えられない。ならば、社会保障は削減しつつ、彼らに可能な限り働いてもらうしかない。(中略)

(3) 納税者の復讐。(中略)具体的には、暴動に参加した子供がいる家庭に対する社会保障給付の停止。カウンシルフラットからも追い出す。少なくとも感情的には、そして理屈の上でも、そうすべき理由はたくさんある。それが更なる悪循環を招くとしても、あそこまでやられてしまっては納税者の側も収まらない(中略)。鬱屈した子供の暴発を「社会の歪み」を理由に肯定する人は、絶望した納税者の復讐も肯定せねば片手落ちであろうと思う。

 そのまんまその後ろまで続けて引用しましたが、手厚い社会保障制度は前回でも見たように経済格差を固定化します。

 「今の金額では少ないんだ、もっと増やせ」と言ってさらに増やし、遊んだり贅沢するのに十分なお金を与えたとき、これは解決するでしょうか?

 楽観的に考えると、好きなものを買うお金があれば親は働く理由がなくなり、子供たちに時間をかけることができるかもしれません。

 しかし、そんな状態で育った子供たちが将来働くという選択をするとは考えづらく、他の人達だってそうなりたいと願うでしょう(実際、既に人気だそうですし)。これは経済格差を固定するだけでなく、受給者層を拡大します。

 それは当初の目的と異なりますし、そもそもそんな潤沢な資金がどこから出てくるか?という問題があります。


 私は必ずしもベーシックインカムを全否定しているわけじゃありませんが、ベーシックインカムの一つポイントとして価格設定ということを挙げています。

 典型的なベーシックインカム批判に「働かなくなる」というものがあり、やはり気をつけなくちゃいけない点だと思います。

 関連
  ■ベーシックインカムの問題点・批判 ~財源など~
  ■ベーシックインカム批判への反論 山崎元編


 そして、もう一つまさにこのイギリス暴動が起こったように、手厚い社会保障制度は暴動を抑止することすらできなかったという問題があります。

 前回も引用した英国暴動、実態は「荒くれフーリガン」 政治不信より深刻なのは「英国的価値観の崩壊」(要登録 日経ビジネスオンライン 2011年8月19日 大竹 剛)では、"暴力と略奪だけを目的にした"、"暴徒の動機は、単なる強欲だ"、"模倣犯は、盗みを働く機会に乗じているだけ"、"家電店やドラッグストアなど一般商店を略奪目的で襲っており"といった言葉が並んでおり、倫理観の崩壊といった方がふさわしい感じです。


 じゃあ、どうするの?というとお手上げ状態なわけですが、個人的な感想としては、問題なのは「教育」かな?と思います。

 "暴動の原因を経済や教育、移民といった紋切り型の問題だけに帰することはできないようだ"と日経ビジネスオンラインにあったのですが、それでも「教育」だと思いました。

 ただ、普通思い浮かべるような学校教育ではなく、家庭の教育の方です。


 前回の手厚い社会保障制度・生活保護の問題点 経済格差は縮まらず固定化するを見る限り、経済格差固定化の根本的な原因は家庭側の方が大きそうです。

 紹介した日本の生活保護の記事も同情を誘うものとして捉える見方もあるでしょうが、違う人が見れば生活保護世帯の環境を全否定しているようにも見えてしまう内容でした。

 全否定ってのは、「私が」じゃないですよ。記事がそういった面を強調するものになってしまっていたのです。詳しくは手厚い社会保障制度・生活保護の問題点 経済格差は縮まらず固定化するを参考にしてください。

 とにかくそういった前提になってしまうと、パターナリズム的であり、個人・家庭の領域に踏み込むものですが、親元から離して別の価値観を持った人のところで暮らさないと解決できないのでは?と思ってしまいました。不本意ですけどね。


 とはいえ、このような考え方は到底受け入れられないものでしょうし、私も現実味のある提案だとは思いません。

 とりあえず、「手厚い社会保障制度もまた現実的な解ではないんだ」という理解が増えることだけでも一歩前進、まずはそこからです。


 関連
  ■手厚い社会保障制度・生活保護の問題点 経済格差は縮まらず固定化する
  ■ベーシックインカムの問題点・批判 ~財源など~
  ■年金などの社会保障問題1 ~子供たちの未来を奪っているのは老人世代~
  ■ベーシックインカム批判への反論 山崎元編
  ■スウェーデンの社会保障 年金は破綻?
  ■その他の政治(全般)について書いた記事

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