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ムハンマド冒涜ビデオ「イノセンス・オブ・ムスリム」の内容と製作者の経歴 アラブの春の立役者SNS、今度はテロの火種に


 ムハンマド冒涜映像関係でいくつか。


 まず、9・11、11年目に対立激化 ネットが煽る「憎しみの構図」(要登録 日経ビジネスオンライン 2012年9月19日 津山恵子)から。
 一昨年の2010年は、9・11で倒壊した世界貿易センタービル跡(グラウンドゼロ)の近くに、イスラム教のモスク建設計画が浮上。「グラウンドゼロ近くにモスクを作ることは許せない」とする市民の反対派と、「宗教の自由だ」とする賛成派がデモを展開してにらみ合い、9・11犠牲者の追悼はそっちのけで、醜い事態となった。

 しかし、今年の9・11はもっと深刻なことになりました。
 リビアのベンガジにある米領事館は11周年を迎えた9・11の当日、武装した暴徒に襲われ、リビア人警備員との撃ち合いの後、炎に包まれた。スティーブンス大使は意識不明のまま、警備員らに病院に運び込まれた後、死亡が確認された。

 このデモに繋がったとされるのが、ムハンマド冒涜映像です。
 米メディアの報道によると、「イノセンス・オブ・ムスリム」は当初は6月か7月にYouTubeに投稿されたが、反響もなく見過ごされていた。ところが、9・11を前に、アラビア語に訳され、2回投稿されると、100万回も視聴されたほか、エジプトの地元テレビでも繰り返し放送され、デモの隆起につながった。

(中略)

 米メディアは13日午後、捜査当局が制作者はナコウラ・バッセリー・ナコウラ氏(55歳)と特定したと伝えた。ウォール・ストリート・ジャーナルなどによると、ナコウラ氏は現在5年間の保護観察付きの釈放中だ。他人の情報を利用して銀行口座を開き、偽小切手で資金を得ていたという罪で、1年9カ月収監されていた。従って、保護観察中、再び不正を働かないために、コンピューターやインターネットの利用を裁判所に禁止されている人物だ。YouTubeへの投稿が証明されれば、再び収監される可能性がある。

 ビデオの内容は、筆者もYouTubeでチェックしたが、かなりお粗末なものだ。冒頭は、エジプトでは少数派のキリスト教徒の家が、イスラム教徒に襲われ、家財を強奪されるのを、エジプト警察が黙って見ているところから始まる。そこから、場面が一転し、映像化してはならないとされているイスラム教の予言者ムハマドが、女好きで同性愛者で残虐な人物だったという、無茶苦茶な内容の半生を描く。

 ニューヨーク・タイムズはまた、出演した女優が「だまされた」と証言していることも伝えた。女優やほかの出演者は、制作者から「砂漠の戦士」という映画を作ると説明された。女優が制作者に抗議すると、「イスラム教徒が無実の人々を殺しているのにうんざりした」と言い返したという。

 つまり、問題のビデオは、詐欺罪で保護観察中の人物が、出演者をだまして制作し、違法にインターネットを使ってYouTubeにアップロードしたものだ。アラビア語に訳され、9・11前に再度投稿された経緯は不明だが、意図的なものを感じないでもない。

 このビデオはもちろん政府は無関係です。それは強調して良いでしょう。ただ、アメリカ米大使館も言葉の選び方に問題があったかもしれません。
カイロの米大使館は11 日、ツイッターで以下のメッセージを発信した。

「施設への侵入も、怒りに満ちたメッセージも、いかなるものも、私たちが言論の自由を守り、敵対感情を批判することをやめさせることはできません」

 米政府は、在外公館がツイッターで情報を発信することを奨励している。しかし、米メディアによると、このつぶやきの「言論の自由を守る」という部分が、問題ビデオを擁護しているように解釈され、さらにエジプト市民の感情を逆なでした。

 これらから認められるのは、次のようなものだと津山恵子さんは指摘しています。
 YouTubeなどソーシャルメディアによって、情報が増幅し、デモを煽った(中略)。それはまるで、ツイッター革命と呼ばれた「アラブの春」とは逆に、ソーシャルメディアが「負」の働きをしてしまうことを浮き彫りにした。

(中略)

 こうした状況をみると、あまり質のよくない意図的なビデオがYouTubeで拡散し、さらにツイッターによる情報発信のつもりが、火に油を注いだという状況だ。それが、テロのない世界を願う9・11の当日に、複数の人の命を奪うきっかけとなった。リビアの米領事館襲撃事件については、米政府筋は「テロの可能性もある」とさえ指摘している。これまでも指摘されているが、ソーシャルメディアの危うさを感じさせる事実だ。

 ビデオについては以下のようなものもありました。

 しかし、名前が違っています。先の記事によれば赤の他人が報道されるなど、なかなか判明しなかったとされています。だから、最初は違う人かな?と思いましたが、どうやら偽名の一つのようです。
イスラム批判の政治的映画=イスラエル系米男性が制作

 【ワシントン時事】米紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどによると、リビアとエジプトの米公館襲撃の引き金となった映画を制作したのは、米カリフォルニア州の不動産開発業者サム・バシル氏だった。同氏は米メディアに「イスラムはがん」と言ってはばからないイスラエル系米国人。イスラム教の偽善に耳目を集めるという政治目的から映画を制作したとしている。

 同氏が米メディアに語ったところでは、映画は全2時間。13分のアラビア語字幕の予告編が動画サイトに掲載され、騒ぎとなった。製作費は500万ドルで、100人以上のユダヤ人から資金提供を受けた。今年に入り、ロサンゼルス・ハリウッドの映画館で一度だけ上映されたという。(2012/09/13-01:30)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201209/2012091300029&g=int


『イノセンス・オブ・ムスリム』(Innocence of Muslims。ただし撮影中は『砂漠の戦士』とされ、2012年6月の上映では『イノセンス・オブ・ビン・ラーディン』というタイトルであった)は2012年の反イスラムの低予算映画。日本では、「無邪気なイスラム教徒」と訳して呼ばれることもある。台本・制作・監督はエジプト系アメリカ人でコプト正教会のナクーラ・バスリー・ナクーラ("アラン・ロバーツ"や"サム・バシル"の偽名を使用)で、予算は彼のエジプトに住む家族によって賄われた。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%A0

 進行中の出来事ではありますが、Wikipediaでは既にかなりまとまっていますので、現時点のものをもう少し引用します。

制作者

当初、この自主映画は「イスラエルのユダヤ人」を名乗る56歳の不動産開発業者サム・バシル(英語版)によって制作・監督されたと報道された。 その"バシル"によると、彼はイスラム教の"偽善"と呼ぶべきものに注意を促すために映画を製作した。 "バシル"の主張によれば、彼は映画の資金調達のために100人以上のユダヤ人の寄付者から500万ドルを調達した。 しかしハリウッド・リポーターは、これはアマチュア作品のような出来栄えだとしてこの主張に疑念を投げかけていた。

イスラエル政府の発表によると、イスラエルの市民権を持つ50歳前後でカリフォルニアに住んでいて不動産の資格を有したり映画産業と関わりのある"バシル"なる人物は存在しないことが判明している。 イスラエル外務省報道官は米紙に"サム・バシル"を知る者は誰もいないとし、多くの米メディアは監督の自己紹介の信ぴょう性を疑問視。AP通信は9月12日、米捜査当局が「ナクーラ・バスリー・ナクーラ」という55歳のキリスト教コプト教徒を監督と特定したと報じた。彼はエジプト生まれでアメリカに移民し市民権を得ているが、詐欺罪などで司法当局の保護観察中で、過去に何度も脱税などの問題を起こしている。 当局によると、ナクーラは息子の Abanob Basseley と一緒に映画の資金調達のためにエジプトに住む、彼の妻の家族から $50,000~$60,000 を集めたと警察に話した。

(中略)

プロット

映画の最初は現在のエジプトでイスラム教徒がキリスト教徒の家々を略奪・放火しているのをエジプトの治安部隊が何も制止せずに見守っている場面から始まる。なぜこのような事が起きるのかと問われ、次の場面でムハンマドの時代にまで遡って理由が示される。映画にはムハンマドの妻ハディージャ・ビント・フワイリドが旧約聖書と新約聖書の節を混ぜ合わせて作り出した偽りの聖典がコーランであり、このようにイスラム教が成立したかのような描写もある。ムハンマドの追随者は"残酷で富に飢え、女性や子供たちの殺戮に熱中している凶暴な殺人者"として描かれており予告編の映像では学校の時代劇のような衣装を身に着けたムハンマドは「この動物が最初のイスラム教徒となる」と雄のロバを指して語り、このシーンがエジプトの Al-Nas で放送された。タイム誌は、ムハンマドは"ロバと常軌を逸した同性愛的で一方的な会話"をしていると報道している。他にも仲間たちに戦闘で略奪した子供や女性たちをレイプして良いと告げるシーンもある。最後にグレープジュースで"血まみれ"になった剣と衣装を帯びた彼は「イスラム教徒でない者は全て異端者だ!」と叫び火の玉に包まれる。

(中略)

予告編のYouTube公開

2012年7月に、英語音声の映画から14分の予告編がYouTubeに投稿された。9月までに映画はアラビア語に吹き替えされ、コプト教徒のブロガーによりアラブ世界で注目を引いた。イスラム教徒の指導者は映画におけるムハンマドの描写を批判している。

デイリー・テレグラフ紙は、映画はムハンマドが小児性愛と同性愛者の擁護者で、性行為のシーンも描いていると報道している。

予告編では、ムハンマドを演じる俳優はロバを"最初のイスラム教徒の動物"と呼んだ。


プロモーション

映画はフロリダ州の牧師テリー・ジョーンズによって宣伝された。ジョーンズは過去にも、コーラン焼却のパフォーマンスなど物議を醸す運動を行っており、これが世界中で死者を出す暴動にもつながったとメディアは報道している。ジョーンズは2012年9月11日に、彼が主宰するフロリダ州ゲインズビルの教会ダヴ・ワールド・アウトリーチ・センター)で13分の予告編を上映するように計画していると述べた。"これはアメリカ製の映画で、イスラム教徒を攻撃する意図は無いが、イスラムの破壊的なイデオロギーを示すためのものである"と彼は声明で述べた。"さらにこの映画は風刺的な方法でムハンマドの生活を描いていることを明らかにした"とも述べた。

この映像の存在は、ワシントンに住むキリスト教コプト派のエジプト人であるモリス・サデク氏が世に広めた。同氏は9月6日、世界中の数百人のジャーナリスト宛てにテリー・ジョーンズ牧師が9月11日に開催するイベントを紹介する電子メールを送った。その際、YouTubeの「イノセンス・オブ・ムスリムズ」へのリンクを張った。エジプトのジャーナリストが映像の一部にアラビア語の翻訳を付け全国放送のテレビで放映したためエジプト中に広がり、それをきっかけに抗議デモが起きた。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%A0

 テリー・ジョーンズは聞き覚えがあり、コーラン焼却の人というのも覚えていました。こういった対立を煽る人物は繰り返し行動を起こすのかもしれませんが、今回の主役はコプト教徒たちです。

(下書き時には忘れていたんですが、国旗を燃やす韓国とコーラン焼却のアメリカを書いていました。ここでは「アメリカの敵を殺せ」という演説に大はしゃぎするアメリカ人の話も出しています)

 背景にはエジプトでのイスラム教とコプト教の対立があると思われます。

 映像描写に"エジプトでは少数派のキリスト教徒の家が、イスラム教徒に襲われ、家財を強奪されるのを、エジプト警察が黙って見ているところから始まる"とありますが、こういった意識がコプト教徒にはあります。

 確か昨年コプト教徒が戦車に潰されるということがあったと思い、記事を検索してみました。

エジプトのコプト教徒デモ弾圧、25人死亡で軍への怒り強まる
2011年 10月 11日 10:12 JST

 [カイロ 10日 ロイター] エジプトの首都カイロで9日夜に治安部隊とキリスト教の一派コプト教徒らのデモ隊が衝突し、25人が死亡する事態に至ったことを受け、コプト教徒らの軍に対する怒りが増幅している。

 衝突はカイロの国営テレビ近くで発生し、軍は戦車をデモ隊に突進させるなどして弾圧。インターネット上に投稿されたビデオでは、損傷の激しい遺体が映し出された。活動家らの話によると、車輪で押しつぶされた人もいたという。

 エジプトではイスラム教徒とコプト教徒の間の緊張が長年続いていたが、ムバラク前大統領が退陣に追い込まれた政変以降、緊張がさらに高まっている。政権崩壊で、前大統領が抑圧してきたイスラム原理主義組織などの活動の自由が拡大したことも要因とみられている。

(中略)

 コプト教徒の1人は「ムスリム同胞団などが抗議デモを行った際、(軍は)なぜ同じことをしなかったのか。ここはもう私の国ではない」と怒りをぶつけた。

(略)

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23559520111011

 なお、ここで出たムスリム同胞団は2011年、"他の諸勢力と連合して政党「自由と公正党」を結成し"、"副党首のひとりにはコプト教徒のラフィーク・ハビーブ"さんが就いています。

 その他、コプト教との関係は以下です。
ムスリム同胞団はイスラーム法(シャリーア)の実施を主張している。これを機械的に適用した場合は、エジプト内のコプト教徒はズィンミーとして厳しい差別と抑圧に苦しまざるを得ない。実際にムスリム同胞団が国内のコプト教徒に対してジズヤ(人頭税)の支払いを求めたこともあった。ゆえにコプト教徒の中にはムスリム同胞団を敵視している者もいる。ただし、ムスリム同胞団は、エジプト内にあるコプト教徒のジェノサイドや追放も辞さないジハード団などの過激な組織に対しては批判的である。また、コプトとの融和に向けた動きも行っているほか、クリスマスにコプト教会を守る活動を行うとしている。また、2011年から2012年にかけて行われている人民議会選挙において、一部のコプトの司祭などが同胞団系の「自由と公正党」に投票したことを明言した。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%A0%E5%90%8C%E8%83%9E%E5%9B%A3

 軽くやるつもりでしたが、時間がかかりました。

 日本でも中韓との関係が危うい時期ですが、ムハンマド侮辱映像は意図して引き起こされた憎しみの連鎖で死者まで出すことに成功(彼らにしてみれば成功でしょう)してしまった痛ましい事例です。


(なお、中国人では既に死者が出てしまっています。

デモで死傷者か=「理不尽な犠牲」に怒り-中国・西安(2012/09/16-22:20)

 【北京時事】中国陝西省西安市で15日に行われた大規模な反日デモで、西安理工大学の男子学生(21)が雑踏の中で踏みつけられて死亡したとの情報が16日、ミニブログ「微博」で流れた。また、デモ参加者が破壊した日本車に乗っていた男性が重傷を負ったという情報もある。

 いずれも地元メディアは報道していないが、ネット上では理不尽な犠牲に怒りの声が上がった。微博で学生の死亡を告発した人物は「一人息子を失った両親は悲しむしかない」と書き込み、冷静で理性的な行動を訴えた。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012091600275)

 関連
  ■イスラム教の偶像崇拝禁止がムハンマド侮辱映像への怒りを増しているのでは?
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