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尖閣諸島を国有化でなく東京都購入だったら反日デモは問題化しなかったのか?


 尖閣諸島問題は一旦落ち着いた感じがあり、ここらへんである程度ストックを出しきっておきたいです。(でも、まだ少し別に書きたいことがあるんですが)

 いくつか言及があったため、国有化と東京都購入のどっちが良かったの?という話を、一応今日のテーマ的なものとしました。

 しかし、この話はただでさえ議論百出な上に、前述のとおり今回は在庫放出ですので、かなり雑多な内容となります。

 興味なさそうなタイトルのところはサクッと飛ばして、かいつまんで読むくらいで気楽に読んでください。


 それではどうぞ。

2012年9月21日
加藤嘉一 [国際コラムニスト]

野田首相は国有化の真の意味を世界に伝えよ
今後40年は両国民の「心の正常化」を目指せ
――国際コラムニスト 加藤嘉一氏


「大変なことになった。対外関係において我が国の核心的利益が直接的に損なわれた。人民は日本が再度侵略してきたと思っている。両国間で適切なコミュニケーションを取り、共に沈静化に向けて動かなければ、中国社会の日本に対する対抗措置は全面化していくだけだ――」

 中国共産党内で対外関係を管轄する幹部は、私にこう打ち明けた。

 日本の野田政権による尖閣諸島の国有化は、野田佳彦首相も含め、日本国民からすれば「所有者が変わるだけ」の国内的手続きとクールに認識できるだろうが、中国側、特に尖閣諸島をめぐる実情を知らされていない中国人民からすれば「侵略」と映り、政府は近年メディアを賑わしている「核心的利益」を侵されたと認識する。

(中略)

 先日、私が現在所属するハーバード大学の学部生たちと昨今の日中関係を巡って議論をしたが、彼らが日本政府のハンドリングに関して一番驚き、興味津々な様子で質問してきた内容は、「安全保障や外交に関する問題で、日本では首相よりも地方の首長のほうが権力を持つのか? なぜ野田首相は石原都知事を説得できないのか? 仮に石原都知事の発言がなければ、野田内閣はこのタイミングで国有化していたか?」であった。

 学部生だからこそ出てくる新鮮、且つ的を射た質問である。この背景にあるのは、日本の国政が、制度的にも、実質的にも疲弊し、地盤沈下しているという現実だ。野田政権は政局を処理するのに精一杯で、外交政策を地に足をつけ、大局観と戦略性を持って政策を考え、施行し、評価する余裕も時間もなくなっているということだ。

 今回の件で国際的信用力を失ったのは中国だけではない。日本だって失ったのだ。私が毎日、大学の図書館で閲覧しているニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ウォールストリートジャーナルを含め、アメリカの主要メディアは完全に「日中間に領土問題が存在する」ことを前提に報道しているし、有識者たちも「日本にはなぜいつもこういう不可解な出来事が起こるんだ」という冷めた視線を向けている。

(中略)

「反日デモで主張されていることは尖閣問題だけではなく、毛沢東の肖像画が掲げられていたりもする。“反日”というよりは、現体制への不満の現れである」
「中国で広がる格差問題等の人民の鬱積した不満が、尖閣問題をきっかけに一気に吹き出したのが実情だ」
「18党大会を目前に控え、中国共産党上層部の権力闘争が反日デモという形を持って激化している」

 これらの分析は、私から見ても、それぞれ現状を反映していると思うし、3つを足せば、一連のデモを裏付けるエッセンスの、かなりの部分を占めることになると思う。(中略)

 私が一般の中国人民に話を聞いたところ、「国有化によって、日本は尖閣諸島に一方的に灯台を建てたり、自衛隊が駐在したりする」と思っている人がほとんどだった。

(中略)

 私は、野田首相が日本国内で使う「国有化」という言葉を、外交でもそのまま持ちだしてきたことは致命的、且つ避けられたミスハンドリングだと考えている。中国に対してだけではない。アメリカを含めた国際社会だって、ただ「国有化」(Nationalization)と言われても何が何だか分からない。「とにかく、ものすごくでかい、現状を一方的に変えてしまうような無謀なアクションに出た」という印象しか残らない。

(中略)

「我が国固有の領土である尖閣諸島周辺の平和と安定を引き続き維持するために、東京都ではなく、国家が責任を持って向き合い、管理することに決定いたしました。中国サイドとも密に協議し、地域の平和と繁栄に、より一層の努力をして参る所存であります」

 私が仮に中国首脳、或いは人民だったら、この文言を聞けば納得できる。

(中略)

 私は今からでも決して遅くはないと考えている。一触即発の危機を回避するために、野田首相は緊急会見を開き、日本人ジャーナリストだけでなく、中国人を含めた外国人ジャーナリストに対しても、上記で私が述べた文言をメッセージとして中国側に投げるべきだ。

http://diamond.jp/articles/-/25191

 「国有化」という言葉のニュアンスは他でも指摘されていましたが、気になるのは中国人が東京都の購入をどうやって理解していたのか?です。

 国が乗り出す前は石原都知事が批判されていたんだから、東京都が絡むことも知っていたはずです。どういう風に伝わっていたのか不思議でしたが、この後読んだ記事にはそこらへんの話がありましたので下で紹介します。


 あと、「この文言を聞けば納得できる」は「私が仮に中国首脳、或いは人民だったら」であり、単なる希望的な観測でしょうね。

 説得はチャレンジして良いと思いますが、私には中国が納得するとは到底思えません。


 それから、「地方の首長のほうが権力を持つ」はちょっと変な話で、国以外の個人と自治体による国内の土地の売買であるから、本来無関係なことです。

 ただ、「地方を説得できない」はそういやそうですね。

 石原都知事はハナから政府批判による支持率低下や自己のパフォーマンスが目的なので、説得に応じないのは当然ですが、傍(はた)から見れば不思議に違いありません。(まあ、オバマ大統領が大嫌いな共和党の州知事を、オバマさんが説得すると考えると難しいのはわかりそうですが)

 が、ここらへんの別の見方もまた後で出てきます。


 あとは中国について。
 中国側にもやるべきことがある。

 日本政府の決定に、これだけ多くの人が怒り、暴徒化する背景には、中国政府がこれまで中国人民に尖閣諸島をめぐる事実関係をきっちり伝えていないということがある。

 そもそも中国では、「釣魚島は古来、中国固有の領土である」という政府の再三にわたる主張だけが世論に覆いかぶさっており、「日本が実効支配している」という事実は伝わっていない。だからこそ、日本政府が島を買うと言ったとき、中国政府には説明の余地が残されない。言い換えれば、「退路がない」ということだ。

 中国人民が「日本が実効支配しているのは事実で、この点は中国政府も承知している」ことを知っていれば、人民にだって考える余地が生まれる。

 中国人民が敬愛する周恩来氏や改革開放にかじを切った鄧小平氏が、日中国交正常化や日中平和友好条約の締結を推進する際、「日本の実効支配を認めた上で、両国関係を推進するために、問題を棚上げした」ことを引用して、事実を伝えればいい。

 しかし、中国政府は現状ではそれができていない。だからこそ、中国政府はただ一方的に日本を批判し、何も知らない人民は「愛国無罪」という言葉を掲げ、街に繰り出し、暴徒化する。仮にそれで昨今の中国政府が社会の安定を維持できない、国際信用力が下がるといって苦労するのであれば、それは自業自得というものである。

 中国の反日デモの本質 現状への不満・鬱憤と政府・共産党への批判でちらっと日本が中国を追い詰めるって話を書きましたが、思った以上に追い込んでしまいました。これはたいへんマズかったですね。

 「政府は甘い、もっと強気に」って声が多いですが、既に他でも書いたとおり、逆に強引すぎたんじゃないかと感じます。


 国有化の是非の話はありませんが、この流れで政府批判を一つ。

傷口広げた稚拙な日本外交 中国反日デモ
日経新聞  2012/9/19 2:06

 (略)日本の損失も大きい。破壊による実害はもちろんのこと、日中に尖閣諸島の「領有権争い」が存在することも世界に知れ渡ってしまった。対中戦略の失敗といわざるを得ない。

 原因はさまざまだが、ひとつは中国の出方の読みあやまりだ。

 「政府が買うのはきちんと管理するためだ」。尖閣諸島の購入計画が浮上した7月ごろから、政府は中国側と接触を繰り返し、こう説明してきた。そのときの反応も踏まえて、米政府にも「『日中で意思疎通はできている』と伝えていた」(日米関係筋)。

 だが、中国内の反日デモが政府の予想以上だったことは、玄葉光一郎外相が豪州の外遊を切り上げ、あわてて帰国したことからも明らかだ。

 一因は日中のパイプの乏しさにある。権力闘争が続く中国では、従来の外務省や共産党のルートに頼るだけでは、相手の出方を読み切れない。

(略)

 もっとも、そうしたパイプを整えるだけでは、中国の対日強硬がやむことはないだろう。日中の国力が逆転しつつあるなか、中国は「もう日本に配慮しなくてもいい」と思い始めているからだ。これを解決するには領土の警備を固め、国力を回復するしかないが、すぐにはめどが立たない。

 ならば日本は米国や他の友好国とも組み、中国の強硬路線に歯止めをかけていくことが肝心だ。

 尖閣国有化に際しても、日本への明確な支持を得られるよう、最低限、米側には入念に根回ししておくべきだった。だが、それも十分だったとはいえない。17日に来日したパネッタ米国防長官は「尖閣の帰属については中立」との立場を崩さなかった。

 (略)日中パイプの裾野を広げ、米国や友好国と対中戦略でがっちり組む――。まずこの2つに早急に取りかからないと、外交危機は治療できない。(編集委員 秋田浩之)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1802X_Y2A910C1MM8000/

 アメリカが中立なのは本来全く不自然なことではないんですが、ここらへんは見方自体が別れており、むしろ日本寄りの態度をはっきり示したという記事もかなりありました。(中枢の発言と周辺の発言で使い分けているという見方など)


 民主党政権の人的なパイプの無さや交渉力の無さは、外交に限らず広範に見られます。(以前書いたように、尖閣購入に関しては、東京都を上回ったんですけどね)

 脱官僚から官僚追従に大きく揺れ動いた官僚との極端な距離の取り方を見ても、人と人との付き合い方という根本的なところができていないんじゃないかと思います。

 この辺りは改めるべきだと思いますが、尖閣諸島購入に関しては日中のパイプ以上にタイミングが悪かった気がします。

 私としてはもっとそっちを責めてほしいのですが、日中パイプ論にしても、タイミング論にしても、「拙速」という言葉がぴったりの政府対応でした。


 また、民主党のポピュリズムな点も出たのかなと思います。

 民主党は中国に歓迎されているとか、民主党は中国に媚びているとか言っていた人が多い(こんな状態になってもまだあります)ですが、中国は民主党を自民党と変わらない保守的な政党とみなしていた上、いくつかの部分では自民党以上に警戒していました。

 その一つがポピュリズム的な側面です。

 つまり、自民党のように中国に配慮せず、安易な中国叩きに走るのではと、中国共産党は考えていたようです。

 今回は中国叩きよりも、石原都知事が購入するとなると批判を受けるといった動機がありそうな感じで、そこの方がポピュリズム的かなと思いますが、ある程度中国の推測が当たっていたようにも見えました。


 一つ挟みましたが、さっき書いた石原都知事に関する見方、中国での見方についてです。
棚上げ論はもう限界、日本がなすべきことは? 国際社会を日本の味方に引き込む(要登録 日経ビジネスオンライン 2012年9月26日 福島香織)

 一部の親中派の言論人の中には、?小平(引用者注:鄧小平)の提示した「棚上げ論」継続がベストだという主張がある。今の緊張を作ったのは、30年以上にわたり続いていた「棚上げ」の約束を一方的に破った野田政権(あるいは東京都)であり、中国さまの本気の怒りを招いた、というわけである。なので、中国側に本当の国有化の意図(つまり野田政権としては東京都が購入して上陸調査や建造物建設すること阻止するための国有化である)をきちんと伝え、棚上げ論の継続を図るのが一番いい、という意見だ。これはできるかもしれないし、できないかもしれない。

 ちなみに、中国側の一部の学者は、石原都知事の米国での電撃島購入発表自体が、国有化を実現するために野田政権と米国ネオコン勢力が仕組んだシナリオ、と信じている。清華大学国際関係研究所の劉江永教授は「石原が野田政権の島購入に反対しないということは、事実上、その目標が国有化にあるということだ。野田は石原を利用して、島の国有化を実現する。石原の偽りの攻撃はある種の意味において、一種の“支持”なのだ」とメディアに語っている。

 (中略)ちなみに野田首相は中国では「右翼政治家」と呼ばれている。

 これは全然さっきと違いますね。間違っているわけですが、中国では今回、石原都知事は野田首相のコマに過ぎないのです。


 続き。

 今さら言っても遅いのだが、日本は本当に、東京都の島購入を実効支配強化に利用すればよかったのに、と思う。石原都知事の暴走にてこずっているふりをしながら、中国の反応を見つつ、米国や周辺への根回しを整えつつ、都の上陸などをなし崩しに認める形で、実効支配の既成事実を積み重ねるという方法もあっただろうに。国有化すれば中国が騒ぎ、ひょっとすると武力行使も辞さない姿勢を見せることは容易に想像できるのだから、国有化の前にそれを封じ込められるだけの国際環境を整える時間稼ぎと目くらましに、都と政府の対立劇が利用できたのではないか。国有化の閣議決定までした以上は、もう引き返せないので、本当に今さら言っても遅いのだが。

 石原都知事を利用する……というのは、今回も一応そういう形になっています。稚拙で失敗したんですけどね。

 時間を掛ければ可能だったかもしれず、私が拙速と表現した理由の一つです。


 ただ、国有化反対論で不思議なのは東京都が買ったって、中国は反発するでしょう?ということです。

 こちらも同時に防がなくちゃならないので政府には時間的余裕がなかったというところは、多少仕方なかったのかなと思う点です。

 でも、まあ、結果論としては柳条湖事件の時期くらい避けりゃ良かったのに……というのはしつこく思い続けています。


 さらに続きで、状況の変化した今、「棚上げ」が妥当かという話。

 さて、「棚上げ」継続論だが、仮に一時的に中国がそれに応じたとしても、それは多少の時間的猶予をもたらすだけで、解決ではない。中国にとっては島を奪えるだけの軍事力・国力をつけるまでの時間稼ぎだ。2010年秋の海上保安庁巡視船と中国漁船の接触事件で棚上げもそろそろ限界であることを日本人も思い知ったことだろう。今、棚上げがなんとか継続できても、数年もたてば、また同じことが起きる。その頃の中国の軍事力・国力は今より強くなっているのではないか。棚上げを継続して得するのはむしろ中国の方ではないか。日本にとって、棚上げ論の行きつく先は、最善の結果で「共同開発」だろう。

 では、いっそ、尖閣諸島は係争地域であると認めてしまって国際法廷に提訴するか。人民解放軍の理論派、羅援少将は意外なことに「国際法廷への提訴」も支持している。多くの日本人は国際法廷で絶対勝てると思っているかもしれない。私も日本側の主張の方に理があると思っている。だが、世界は腹黒く、正義は欺瞞に満ちている。100パーセント、必ず勝つ保障はない。正直、外交力や国際社会における存在感や影響力で結果が変わることはあるのではないかと思う。

(中略)単純に対中報復姿勢を唱える言論については、私は慎重になるべきだと思っている。それは今、中国国内の戦争支持世論をうけて解放軍がかなりやる気に見えるからだ。中国は1949年以降、インド、ソ連、ベトナム相手に領土紛争を起こしている。いずれも相手から挑発したというのが中国の言い分だ。対外的な小さな紛争は国民の団結や民族意識を高め、国内の不都合な問題から国民の気をそらすこともできる。

(中略) 

 結局、日本政府が今できることは限られている。中国は政治経済社会の全方位的圧力を日本にかけてくるだろうが、その圧力に右往左往しない。当面は忍耐をもって、これをしのぐしかない。同時に中国の反日デモの本質はあくまで中国内政に原因があると国内外に訴えることだ。抗議すべきは抗議し、損害賠償請求を行うとしても、日本国内の中国企業や中国人への報復は百害あって一利なしだろう。

 日中関係が冬の時代に入り、今以上に重要になってくるのは、国際社会を味方につけるための表裏両面の外交と情報発信や外国メディア対策。次に国内世論の整理だろう。相変わらず国内には軍事アレルギーの人が多いが、せめて外交の場でジョーカー(引用者注:軍事カード)を持っているふりくらいはできるようにしておかないと、これからの国際社会を渡っていけないのではないか。

(略)

 以前の尖閣諸島問題も要注意!中国の外交政策のうまさと買収できる国カンボジアは、「国際社会を味方につけるための表裏両面の外交」といったところを意識して書きました。


 あと、7月18日というかなり早い時期の記事。

2012年7月18日
田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

かつてなく盛り上がる尖閣諸島購入議論の不安要素
中国や台湾に対して失敗できない「外交上の手立て」


 土地を購入すること自体は、国内法制度に従えば何ら問題はないが、結果としての外交安全保障問題について責任を持つのは、都ではあり得ない。したがって、来年3月以降も万全を期した管理が行なわれるよう、国が直接購入することが必須である。

http://diamond.jp/articles/-/21653

 これは国が購入するのが道理という意見。

 石原都知事が問題を引き起こしても、彼は中国と交渉して解決する能力を有していないですし、その気もないわけで、たとえ死人が出たとしても知らんということに成りかねません。

 こっちの方が筋が通っていると感じるんですけどね。


 もう一つ国が買った方が良いという意見。

ダイヤモンド・オンライン
2012年9月28日
瀧口範子 [ジャーナリスト]

中国は“1930年代の日本”への意識を引きずっている
東京都の購入を防いだ「尖閣国有化」は正しい判断だ
――ジョセフ・ナイ元米国防次官補(現ハーバード大学教授)に聞く


(略)日中関係の悪化に対してアメリカは、キャンベル国務次官補が尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象であることを明言しつつも、日中の領有権問題についてはいずれの側にもつかないことを明確にしている。こうした立場を保つアメリカは、今回の日中両国間での領有権問題をどう捉えているのか。また、今後の日中関係については、どのような展開を望んでいるのか。カーター、クリントンら米国の歴代民主党政権で国務次官補や国防次官補などの要職を歴任し、オバマ政権の対アジア外交にいまだ隠然たる影響力を持っているといわれるジョセフ・ナイ氏(現ハーバード大学教授)に聞いた。


――領有権問題で日中両国間の緊張が高まっている中、日本政府は尖閣諸島を個人地主から買い上げて国有化した。この動きをどう評価するか。

 今、日本にとって重要なのは中国のナショナリズム(国粋主義)を刺激しないことだ。その意味で、日本政府は適切に行動していると考える。中国は年内の政権移行を控えており、この時期には政治指導者間の権力闘争が増して、とかくナショナリズムが高まる傾向がある。自分たちの方がより国家を護っていると、それぞれが誇示しようとするからだ。したがってこの時期は、日本が穏健で抑制がきいた対応をするのが賢明だ。尖閣諸島を購入した野田政権の判断は正しい。そうすることによって、石原慎太郎東京都知事のような人物が中国を激怒させることが防げたからだ。国有化ついて、私は批判的ではない。

――政府が買い上げるのと、東京都が買い上げるのとでは大きな違いがあるということか。

 日本政府が買い上げたことによって、この問題をコントロールするのは政府であることを野田政権はアピールした。国内の一知事が自分の政治目的のために利用するのを阻止したことは正しい。

――しかし、中国を刺激しないという意味で言えば、あのままにしておけなかったのだろうか。

 それについての回答は持ち合わせていない。地主が何を望んでいたのか、あるいは別の地主希望者が出てきたからなのか、そうしたことも不明だ。

http://diamond.jp/articles/-/25528

 ラストの話は棚上げ論ですね。


 このジョセフ・ナイさんへのインタビューは、尖閣諸島以外のこともありました。

 日中問題が中心ですが、さらに中国がらみですらない話まで混じっています。

 と言うのも、ジョセフ・ナイさんが以前アーミテージ・ナイ報告という日米に関する報告書を出していた関係もあると思われます。

 インタビュー以外にこっちの話も参考のために載せておきたいんですが、本当に尖閣諸島問題とは関係なくなっちゃうので、よほど興味ある方を除いて飛ばすことを推奨します。

日本は「一流国家」であり続けるのか、それとも「二流国家」に甘んじるのか
米国が突きつける質問~アーミテージ・ナイ報告を読む
小谷 哲男 日経ビジネスオンライン
2012年8月29日(水)

 リチャード・アーミテージ元米国務副長官とジョセフ・ナイ ハーバード大学特別功労教授らアメリカの超党派有識者グループが、日米関係に関する報告書を発表した。(中略)

 今回の報告書は、日本が「一流国家」であり続けるのか、それとも「二流国家」に甘んじるのかという問いかけで始まる。ここでいう「一流国家」とは、経済力、軍事力、グローバルな視野、そして国際社会における指導力に裏づけられた国家の力のことだ。

 世界第3位の経済大国である日本が「一流国家」であり続けることは十分可能だ、と報告書は指摘する。なぜなら、日本の消費セクターは中国の2倍の大きさがあり、女性労働力の拡大などの改革と競争を進めることで、その潜在力をまだまだ生かすことができるからだ。(中略)

 この報告書を読んだ読者の間で最も論争を引き起こす提言は、原子力に関するものだろう。報告書は野田政権が関西電力大飯原子力発電所を慎重に再稼働させたことを評価している。日本経済が潜在力を発揮し、「一流国家」であり続けるためには、これからも原子力発電を継続することが望ましいということだ。(中略)

 もう一つ論争の的となりそうなのが、日米韓、3カ国による協力強化に関する提言だ。報告書は、北朝鮮の核問題や中国の「再興」(同報告書は中国は19世紀と20世紀を除いて常に地域大国だったためこのように表現している)に対応するには、日米韓3カ国の同盟関係が不可欠と指摘している。(中略)

 アーミテージ、ナイ両氏は、韓国との関係を敢えて取り上げたのは、それがいかに難しいかを理解しているからだという。だが、この日米韓に関するこの提言は、李明博大統領の竹島訪問と天皇に対する一方的な謝罪要求の後では虚しく響く。他の提言と比べて、実現性が低いと言わざるを得ない。

(中略)

他に注目すべき提言は、イランが核問題にからめてホルムズ海峡を封鎖する場合、日本が単独でも掃海艇を派遣すべきというものだ。過去2回の報告書は、中東問題に関してほとん言及していない。(中略)

 報告書は他にも、TPPや、日本とNAFTA加盟国間との包括的な自由貿易協定の締結、防衛産業間の協力、サイバー防衛での協力など、経済上も軍事上も重要な提言を列挙している。アメリカ人がこのような提言をするのは、「強い日本」がアメリカにとって国益だからだ。

 だが、「強い日本」は、何よりも日本にとって国益だ。(略)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120827/236020/?mlp

 多少関係あるのは、"朝鮮の核問題や中国の「再興」"への対応といったところです。

 そして、そのためにも日本には軍事力を含めた「一流国家」であってほしいという考えです。

 これを踏まえて先のインタビューの他の部分です。

――政権移行が完了すれば収まるのか。

 そう望みたいが、まだ移行のあり方がはっきりはわからない。だからこそ、権力闘争が起こっているのだ。だが次期国家主席の習近平は、この状態が続くと中国にとっての損失があまりに大きくなるとわかるだろう。1970年代、鄧小平は「島嶼問題は自分たちの世代で解決するには難しすぎる。ずっと後の世代に託すしかない」と語り、中国はこれまでこれに沿って行動してきた。中国がその政策に戻るよう希望している。

(中略)

――先頃中国は空母を配備した。これは何を意味するのか。

 これは日本だけではなく、ベトナムやフィリピンなど南シナ海沿岸諸国にも向けた軍事力の誇示だ。しかしクリントン国務長官がかつて明言し、最近キャンベル国務次官補も繰り返したように、尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象だ。アメリカは、19世紀から由来する尖閣諸島問題について、究極的な持ち主が誰であるかについて日中いずれの側にもつかないことを明確にしている。だが、安全保障の観点においてはアメリカがカバーする。そのため、中国が日本に対して軍事力を行使することはないだろう。ただし、南シナ海については多少の影響があるかも知れない。

(中略)

――中国は多方面で領有権紛争を起こしているが、領有権について何らかの一貫した政策があると見るか。

 南シナ海では、「9つの破線」で囲まれた島嶼地域を中国のものとして主張し、これが中国を難しい立場に陥れているのだが、今さら足が抜けないという苦しい状況になっている。近隣諸国との関係悪化を生む愚かな外交政策であるにもかかわらず、ここであきらめるとナショナリストのグループから弱腰と大きな非難を浴びることになる。

(中略)

――そのレポートの中に「日本は国家防衛のために、積極的な責任を果たさなければならない」という一節がある。この積極的な責任というのは何を示すのか、そして日中関係では何を意味するのか。

 日本が1930年代のような攻撃的な立ち位置に戻るべきだと言っているのではない。集団的自衛に関わる力を備えた国家という意味だ。日本は好戦的でもないし、攻撃的になる危険性もないと見ているが、一方で普通の国として振る舞いながら集団的な自衛に参加できるはずだということだ。

――自衛隊の活動をさらに拡大せよということか。

 いい例が中東やペルシャ湾で自衛隊が行っている海賊対処行動だ。中国との関係で言えば、沿岸警備能力の中で領有権問題のある地域についてはモニター活動を行い、防衛するということだ。ただし、日中間の紛争を引き起こすようなことだけは避けなければならない。

――領有権問題を別にすれば、日本は対中政策をうまく舵取りしてきたと思うか。

 道理にかなった方法で対処してきたと考える。安全保障上、日本にとっての目前の脅威は北朝鮮だ。中国は、日米安全保障条約があるかぎり日本に向かって軍事行動を起こすことはないと見ている。したがって長期的には、日米両国の目標は中国と分をわきまえた関係を持続させ、日米、日中、米中間の良好な関係を持続していくことだ。その三角形の関係の安定が、東アジア地域の平和と繁栄のための基礎だ。中国に対して敵意を抱くことは、日米両国がやってはならないことだろう。つまり、中国との関係は、長期的な前向きの関係を築いていくことだ。他方、北朝鮮との関係は、不安定な政権が発する軍事行動のとばっちりを受けないようにすることだ。

――日米安全保障条約がある限り中国は日本を攻撃しないということだが、日本の一部には、アメリカの地政学的戦略の駒にされて犠牲を払ってきたという意識もある。日本は、日米中という三角形の関係を離れて、どの程度二国間関係として中国に向き合うことができると思うか。

 日米両国が、非常に多くの利益を共有していることは確かだ。日本が自国の安全保障において持つオプションは何かというと、ひとつは中立になって国連だけに頼ることだろうが、これはあまり保障にならない。ふたつめは中国の同盟国になることだが、これは中国が日本に対して強硬になりすぎる危険性をはらんでいる。3つめは、日本が一方的な核兵器開発を行い、核政策よって中国に対する抑止力を備えることだが、これはかなり危険だ。そして4つめのオプションが、日本がアメリカとの同盟関係を保ち、中国が責任感のある一国家となるように図っていくことだ。そうした意味で、日米は似た目標を共有しており、アメリカが日本を操作しているとは思わない。

(中略)

――アメリカから見て、中国は日本をどう捉えていると思うか。

 残念なことに、中国は1930年代当時の日本への意識を引きずっている。決して健康的なことではないが、それが事実だ。それがなければ、日中両国の間にこれまでもっと協力関係があっただろうし、尖閣諸島問題のような緊張も起こらなかった。これまで何度もそうした機会を逃してきたが、たとえば国連の平和活動やエネルギー問題、気候温暖化などの課題で協力関係を築けるはずだ。

――中国の政権移行期を含む今後数年間、日本は中国に対してどういった態度で臨むべきか。

 むやみに挑発的に見える行動は抑えて良好な関係を保ちつつ、自国の利益が冒されそうになった際には毅然と向かい合って、それを護ることだ。

 "日本の一部には、アメリカの地政学的戦略の駒にされて犠牲を払ってきたという意識もある"ですが、多少高すぎる費用は払わされているというのならわかります。

 ただ、日米同盟が役立っているのは確か(ジョセフ・ナイさんの見解は過大評価の節が見られますが)であり、日本がアメリカを利用するくらいの気持ちでいた方が良いと思います。

 日米同盟不要論を訴える人もいますけど、それを訴えるなら軍拡とセットです。片方だけと言うのはペテン師か、夢想家かのどちらかなんじゃないかと。


 あとはちゃんと尖閣諸島問題ですが、本当に余り物です。

「反日、常識通じない」邦人消えた日本料理店街
(2012年9月23日08時57分 読売新聞)

 【蘇州(中国江蘇省)=関泰晴】反日デモが暴徒化し、多くの被害が出た江蘇省蘇州では22日、暴動の発生から1週間が過ぎ、日系スーパーや一部の日本料理店が営業を再開した。

 市街地は平静を取り戻しつつあるが、反日デモの再発を懸念する声も出ている。

 「日本人を襲撃しようと狙う中国人が出没しているようだ。日本料理店が集中する場所に行かないように指示を出した」

 日系企業500社以上が集まる蘇州高新区で22日、日本人駐在員が打ち明けた。立ち入りを禁じる現場となっているのは、飲食店など計50店余が並ぶ蘇州高新区の「商業街」。15日の暴動以降、日本人の姿は消えた。

 目立つのは、入り口周辺にベニヤ板を張り巡らせて補修中の店舗。ほとんどが中国国旗や毛沢東の肖像を掲げ、今後も断続的に予測される反日抗議の標的となるのを避けようとしている。

(略)

 柳条湖事件(1931年)の発生日にあたる18日には、一部の日系工場で反日デモに便乗し、待遇改善を強硬に求めるストライキも発生。従業員が反日スローガンを叫び、これまで順調だったという労使関係に影響も出ている。

 「蘇州は、進出した日系企業が地元経済を支え、対日感情は比較的良好だった」(日中関係筋)。だが、日系メーカーの駐在員は「これまでの常識は通じず、どこであっても中国では反日感情が暴発する危険がある」と警戒を強めている。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120923-OYT1T00162.htm

 これは以前の中国の反日デモは官製デモ?尖閣諸島問題の政治的手段、ガス抜き、覇権争いなど、反日デモの多面性で書いた多面性や、中国の反日デモの本質 現状への不満・鬱憤と政府・共産党への批判で書いた本質的な不満に関係ありそうな話です。

 上記記事ではなぜか"日系工場で反日デモに便乗し、待遇改善を強硬に求めるストライキ"が発生していますが、反日デモで顕在化した不満が日本と関係ない工場にまで飛び火しているのではとも言われています。

iPhone5に暴動飛び火 中国の委託先、生産停止
2012/9/25 0:00 日本経済新聞 電子版

 【太原(山西省)=多部田俊輔】中国山西省太原市の工場で大規模な暴動が起き、米アップルの新型スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)「iPhone(アイフォーン)5」の受託生産が止まった。混乱が長引けば製品供給に影響が及ぶ恐れがある。反日デモをきっかけに労働者の反発が高まっていることもうかがえる。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2406E_U2A920C1EA1000/?dg=1

 もう何でもアリなんだなという状況です。


 最後は以前一部使った中国、韓国の「過剰な愛国心の叫び」が招くもの(要登録 ダイヤモンド・オンライン 2012/9/20 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授])で、使い切れなかったものを。
 集団化し組織化した愛国心は双刃の剣のようなもの。指導者の役割は、まずもって愛国心の暴走にブレーキをかけること。愛国心に便乗したかのような韓国の大統領の言動は指導者の資質を備えていないと言われても仕方がない。

 過剰な愛国的行動が破滅を招くことは歴史が繰り返し警告している。愛国心は、本来攻撃ではなく、防御にまわったときに真価を発揮して大きく輝くものだ。ヒットラードイツから猛烈な空爆を受けても屈しなかったチャーチル指導のイギリスが、愛国とは何かを明確に示している。

 過剰な愛国心の叫びが逆に禍いを招いている韓国や中国ばかりの話ではなく、われわれも他山の石とすべきだろう。

 いざとなれば、愛国的な行動をいとわない人は、むしろ日頃むやみに愛国心を語らないもの。それを肝に銘じておきたい。

 "愛国的な行動をいとわない人は、むしろ日頃むやみに愛国心を語らないもの"という見方は、どういう根拠があるのか知りませんがおもしろいですね。

 中国の反日デモは官製デモ?尖閣諸島問題の政治的手段、ガス抜き、覇権争いなど、反日デモの多面性では、過激な行動に走る中国人や韓国人とあまり変わりない日本人の話もちょっと入れましたけど、同じレベルになる必要はないと思います。


 追加
  ■尖閣諸島問題も要注意!中国の外交政策のうまさと買収できる国カンボジア

 関連
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