本来こういう話は先にやっておくべきなんですけど、日本の立場や中国の主張のわかる尖閣諸島の歴史的な経緯を示す年表を紹介します。
記事は複数使いますが、まず
竹島・尖閣なぜもめる 一から分かる日中韓の主張 (要登録 日経新聞 2012/8/31 2:06)から。
これはタイトルを見てわかる通り、韓国との竹島問題もあるんですけど、こちらはまた別に分けてやります。今回はネタの豊富だった尖閣諸島だけです。
年表は日経新聞のままではなく、補足や追加など手を加えています。
尖閣諸島問題 年表
1560年前後【中】「籌海図編」や「日本一鑑」に尖閣諸島が福建省や台湾の一部と読み取れる記述があるとする
中国は「すでに明(1368~1644年)の時代に中国の台湾に付属する諸島だった」と強調する。根拠の一つは1560年前後に中国で刊行された「籌海図編」や「日本一鑑」。尖閣諸島が福建省や台湾の一部と読み取れる記述があるとする。清華大学の劉江永教授は、日本が発見する500年以上前から中国は尖閣諸島の存在を認識していたとの見方を示す。
中国は「台湾に付属する島しょ」と位置付ける。第2次世界大戦後の日本の敗戦処理で、日本が主権を残す地域と放棄すべき地域を区別。対日平和条約では「台湾及び澎湖諸島の権利放棄」を明記した。中国側はこの「台湾」に尖閣諸島も含まれると解釈する。ただ中国側は1970年代まで、尖閣諸島の領有権に公的に言及しなかった。
1895年 【日】1月の閣議決定で尖閣諸島を領土に編入。4月の日清講和条約で台湾などの割譲を受けた(尖閣諸島は含まれず)
1884年ごろから沖縄県在住の実業家、古賀辰四郎氏が尖閣で漁業などに携わっていた。古賀氏は島の利用許可を明治政府に申請。96年に認められ、島に移民を送ってかつお節や缶詰の製造、サンゴの採集などを進めた。政府の許可を受けた個人が事業活動を展開した事実がある。
85年に現地調査を始めた政府は清(現在の中国)の支配が及んでいないことを確認し、95年に日本の領土に編入する閣議決定をした。
1920年 【中】漁民救助で「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島」と表現
中華民国は1920年、前年に尖閣沖で遭難した中国漁民を救助した日本人に贈った感謝状で、漁民の漂着場所を「沖縄県八重山郡尖閣列島」と明記した。中国が33年に発行した「中華民国新地図」は尖閣を日本に属する形で記載している。
1951年 サンフランシスコ講和条約が締結。日本は台湾などの権利を放棄、尖閣諸島は米国の施政権下に
1969年 東シナ海に石油埋蔵の可能性が明らかに
1970年代 【中】尖閣諸島の領有権を主張し始める
確認できる最初の公式文書は、中国外務省が71年12月に発表した声明だ。「釣魚島などは台湾付属の島しょだ。台湾と同じく古くから中国の不可分の領土だ」と主張する。
引き金となったのは、その前に作成された報告書だ。国連アジア極東経済委員会は69年、尖閣諸島周辺を含む東シナ海大陸棚に豊富な石油・天然ガス資源が埋蔵されている可能性があると分析した。
1971年 【日】沖縄返還協定締結。尖閣諸島の施政権も米国が返還
1972年 日中国交正常化
1978年 【中】来日したトウ小平氏が「次の世代は我々より賢くなる」と尖閣問題の棚上げを主張
2010年 【中】漁船が海上保安庁の巡視船に衝突、船長は逮捕
1912年
4月 【日】東京都の石原知事が尖閣諸島の土地購入を表明
8月 【中】香港の団体メンバーらが尖閣諸島に上陸し、逮捕
【日】地方議員らが尖閣諸島上陸
日本の理解としては、一貫して1970年代になって突然中国に絡まれるようになったというものです。
これは以前
尖閣諸島は資源の宝庫 石油・天然ガス、さらにレアメタル・メタンハイドレートも?でも書いたように、石油などの資源の問題だと見られています。
中国が領有権にこだわる理由は豊富な漁業資源や石油・天然ガス資源の存在に加え、安全保障上の理由も大きいようだ。周辺海域は中国艦隊の太平洋への出口となる。日本から監視を受ける範囲を減らしたいとの思惑もあるとみられる。
日経新聞ではさらに漁業資源、安全保障というところも含めています。
ただ、1970年代からというのは石油資源の存在の判明時期と符合しますので、少なくとも当時はこちらが主体だったのでしょう。
もう一つ、
尖閣諸島を国有化でなく東京都購入だったら反日デモは問題化しなかったのか?で用いた
棚上げ論はもう限界、日本がなすべきことは? 国際社会を日本の味方に引き込む(要登録 日経ビジネスオンライン 2012年9月26日 福島香織)では、中国側の主張を紹介しています。
ところで、中国の釣魚島(尖閣諸島)領有権主張の論拠を日本人はきちんと知っているだろうか。簡単におさらいしておくと。
・1582年(明朝)から島は中国の版図にはいり福建省管轄となり清朝末まで島の領有権は明確であった。日本海防論者の林子平が1785年の「三国通覧図説」で中国大陸の一部として色分けしている。
・1879年に日本が琉球を併呑したさい、琉球諸島は36の島があると中日双方で確認したが、釣魚島は含まれていない。
・1885年日本が釣魚島を拡張目標とし、清朝が反対するも効果なく、1894年の甲午海戦(日清戦争)で清朝が敗北。1895年に島は強行占領された。不平等な馬関条約(下関条約)で台湾とその付属島嶼を日本に割譲される。
・1900年に日本政府が釣魚島を尖閣諸島と改名。
・1945年に日本敗戦、台湾島が祖国に戻り、台湾および周辺島嶼が中国に返還される。このとき釣魚島は含まれなかった。
・1951年のサンフランシスコ平和条約で、日本政府は主権を取り戻すが、釣魚島を含む沖縄は米国の戦略的管理下におかれた。このため釣魚島は米軍の射撃場として管理される。
・1971年、沖縄返還協定。この時、釣魚島も日本に「与えられる」。中国は抗議声明を出し、台湾愛国青年および海外華人が釣魚島防衛運動を展開。米国は釣魚島の行政管轄権は日本に委譲するが、これは主権と関係ない、紛争は当事者で解決したまえ、というあいまいな態度を貫いた。
・1972年、中日国交正常化の際、島の領有問題について、時期が熟した時に解決するとの一点で合意。
・1978年、中日平和友好条約締結の際、?小平(引用者注:鄧小平)氏が、棚上げ論を提唱。子孫に解決を託す。
・1992年、日本青年社の灯台建設(1990年)を受け、島領有問題が再燃。中国は「領海及び隣接区法」を制定、釣魚島は中国に属すると宣言。
という流れになる。中国に言わせれば、清朝末期のどさくさにまぎれて日本が島を盗んだ。そして第二次大戦の敗戦処理過程で米国がどさくさに紛れて尖閣諸島を日本に「与えた」。
ちなみに、カイロ宣言のとき、蒋介石がルーズベルトに沖縄を管理しないかといわれて断ったというエピソードが2008年1月以降、中国のメディアで何度も紹介されている。
こうやって歴史をたどると、尖閣問題は米国が恣意的に日中間に残した対立と見えなくもないし、実際中国メディアには、今に至るまでの尖閣問題は米国が黒幕という論評も散見する。羅少将は、国際法廷の相手は「日米2国」としている。日本が国際法廷で確実に勝つには、米国の真意や国際世論の行方を見極める必要はある。
沖縄の話もちょっとどこかでしましたね。
中国は沖縄にまで色気を出していますが、日本は尖閣諸島のみしか話をしていません。「次々と侵略される」という被害妄想が一般の中国人にあるようですが、それは中国政府のつくり話であり、侵略を狙っているのは中国だけです。中国といっしょにしないで欲しいです。
あともう一つ日経新聞から、中国の主張がわかるところを引用します。
尖閣問題、中国はなぜ歴史問題に論点(Q&A)
29日で国交正常化40年
2012/9/29 3:30 日経新聞
(略)27日の国連総会で尖閣諸島(沖縄県)の国有化を巡って激しい応酬を交わした。日本が国際法に基づく対応を訴えているのに対し、中国は「歴史問題」に論点をそらして各国の共感を得る作戦。両国の論戦はかみ合っていない。
Q 中国の楊潔●(ち)外相はなぜ国連の一般討論演説で「カイロ宣言」や「ポツダム宣言」を持ち出したのか。
A 中国は日本が主張する「法の支配」に基づく問題解決には乗らず「歴史問題」で国際世論を取り込もうとしている。島根県の竹島を巡る領有権問題を「日本の植民地支配への原点」とみなす韓国と共闘し、植民地から独立した他のアジア・アフリカ諸国の共感を呼ぶ思惑もある。一方、「世界の反ファシズム戦争の勝利への否定」との主張は、第2次大戦の戦勝国で国連安全保障理事会常任理事国の米英仏ロに訴える戦略だ。
Q 楊氏は日本が日清戦争で尖閣を「盗んだ」と批判した。
A 尖閣は日清戦争の結果奪取したとはいえない。日本は1885年以降、清(現在の中国)の支配が及んでいないことを慎重に確認し、95年1月に沖縄県に編入する閣議決定をした。国際法では、どの国にも属さない土地を先に支配してその意思を示すことを「先占」と呼び、政府はその法理に合致した経緯としている。清がその後、日清戦争の講和条約である95年4月の下関条約で日本に割譲した「台湾および澎湖諸島」に尖閣は含まれていない。
(略)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2804K_Y2A920C1EA2000/ なお、2つ目の年表の記事で作者の福島香織さんは、先の中国の主張年表を紹介する前に、以下のように書いていました。
多くの日本人は国際法廷で絶対勝てると思っているかもしれない。私も日本側の主張の方に理があると思っている。だが、世界は腹黒く、正義は欺瞞に満ちている。100パーセント、必ず勝つ保障はない。正直、外交力や国際社会における存在感や影響力で結果が変わることはあるのではないかと思う。
また、先に引用した部分では、「日本が国際法廷で確実に勝つには、米国の真意や国際世論の行方を見極める必要はある」とも書いています。
尖閣諸島問題も要注意!中国の外交政策のうまさと買収できる国カンボジアで書いたように、中国はASEANにおいて議長国カンボジアを買収して日米を負かしています。
汚い手だろうが何だろうが中国はお構いなしですし、外交はもともとそういう一面を持っています。
つまり、正論をひっくり返すということは可能なわけで、楽観論は危険であり、下手をするとみすみす中国に献上する羽目に成りかねません。
追加
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