Wikipediaによれば、チャイナリスクの意味は以下の通りです。
チャイナリスクとは、中国(中華人民共和国)のかかえるカントリーリスクである。つまり、中国国内で外国企業が経済活動を行う際もしくは中国人を雇い入れる際のリスク(不確実性)、特にダウンサイドリスクだけを取り出したもの。
(中略)
リスクの内容
・偽ブランド品の商標登録問題
・知的財産権の保護、模倣品問題(カーゴ・カルト的)
・技術・ノウハウの流出
これについて、ジェームズ・マックグレゴールは、著書「中国ビジネス最前線で学ぶ教訓」で以下のように述べている。
やむを得ない場合を除いて間違っても国営企業と合弁を組むな。合弁の結果、中国側は貴社の技術、ノウハウ、カネのすべてを手に入れ、企業をコントロールする
・現地人による過度の安全性の軽視と品質の低下
・一般に値段と安全・信頼性をはかりに掛けると前者を重視する
・不透明な市場の流れにより半ば横行している株式のインサイダー取引。
・中国バブル崩壊論
・中国の経済発展はバブルであり、2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博の前後に崩壊するのでは無いかといった予測がしばしば日本の経済専門家の間で指摘される。
・官僚の絶大な権力による法令の朝令暮改。
・行政手続きの不透明性
例えば日経ビジネスオンラインでは、許可申請を少し変更したら、認可が下りるまでに4年かかった王子製紙のコメントのあとで以下のとおり結んでいる。 王子製紙の篠田和久社長は今回の経験について、こう語る。
日本でも規則は変わるが、まず話し合いがあってのことだ。…… 中国では、それが予告なしに起こる。もっと透明性が必要だ
(中略)
・対日本企業特有のもの
・反日感情による暴動や不買運動
・中国のビジネスリスク
・中国の独特な環境のために起こるビジネスリスクで、特に近年、人件費の上昇、価格下落、代金回収問題、人民元切り上げ問題、中国の環境問題、中国の水危機の問題、中国製品の安全性問題、中国産食品の安全性の問題、電力危機、反日感情にまつわる不買・労働放棄の問題などが取り上げられる。
下記内容のいくらかは、中国脅威論と共通する部分が多い。
・政治の腐敗による贈収賄
・特有の社会主義による労働運動、労働慣行
・ 情報・人権に関する制限の問題 (日中記者交換協定も参照のこと)
・しばしば諸外国から不公正であると指摘される裁判制度
・軍事力の増大とナショナリズムによる周辺諸国との摩擦
・中国軍事脅威論に関連して、軍事転用可能なハイテク技術においては、日本から中国国内への移転ができないといった制限がある。
(略)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF 過去の
日本への旅行者は韓国人が1位、海外旅行先は中国が1位 竹島・尖閣諸島問題の影響は?や
中国で反日デモ最大級 それでも日本製品が人気、不買運動・ボイコットは影響なしって本当?で書いたときには使わなかった単語ですが、内容的にはチャイナリスクという表現がぴったりでした。
Wikipediaでは一方でこのチャイナリスクを避ける動きがあるとしています。
影響
中国でビジネスを行う企業にとってのチャイナリスクの問題は、主にリスクマネジメントなどの企業防衛の観点から、経営戦略上も決して無視することができない要素となっている。
特に日系企業の間ではタイやベトナム、インド、ロシアなど他の新興国にも生産拠点を分散させたり、日本国内での生産に回帰する動きが広がっている。下記チャイナプラスワンも参照。同様に、一般的な商取引においても日本企業と中国企業の間にタイ・ベトナム・台湾などの関連企業や商社を介在させるといった手法で、中国との間にワンクッション以上挟みこむことで、若干のコスト上昇というマイナスよりもひと度トラブルが勃発すれば巨額の経済的損失や知的財産の流出を発生させかねないリスクやチャイナ・ハラスメントの低減を優先させる動きもある。
知的財産権に対する認識の低さ、知的財産である先端技術の流出や模倣、中国産製品にまつわる品質面の諸問題なども軽視はできるものではないことから、これを警戒して、中国での製造は先端技術を用いないローエンドモデルの製品に限定したり、あるいは一部のパーツや組立用部材のみの製造にとどめ、日本国内や他の新興国の拠点でその後の最終組立を行っている企業や、先端技術を用いる最新機能を持つ製品やハイエンドモデルは知的財産の漏洩防止措置が配された日本国内の拠点で製造するという企業も存在している。また、ハイエンド製品ではなくとも、より高い信頼性を要求される業務用向けなどの製品については中国以外の製造ラインを使用するという企業もある。
パソコン業界でも、ローエンド帯の製品を主力商品としているオンキヨー(旧ソーテック)やMCJ系のマウスコンピューター・ユニットコムなどは、一時期「MADE IN CHINA」というイメージが根強かった大手家電メーカーのローエンド製品と暗示的に比較する形で、日本国内の工場での製造であるという『安心感』を主要なセールスポイントの1つとして謳っている。現在ではノートパソコンを中心に富士通など一部の大手家電メーカーも日本国内でのマザーボード製造・本体組立に回帰する傾向を見せている。
また、原材料・部品や鉱物資源・レアアースの輸入においても、中国政府の姿勢や中国の国内情勢そのものをリスク要因と捉えて、中国国内への一極集中の依存から脱却し、中国以外の国からも安定的な入手が可能になる様に入手経路の構築を図ったり、レアアースの使用量減・不使用や代替品の可能性を模索し開発・研究を行うなど、「中国離れ」の動きも各所で見られる様になっている。
チャイナプラスワン
チャイナリスクを回避するためのリスクマネジメントの手法の1つにチャイナ・プラス・ワン(China plus one)、あるいは中国プラス1がある。これは中国への投資を行いつつもあえて中国一国に集中させず、平行して他の国においても一定規模の投資を行い、リスクの分散化と低減を図る企業動向である。
中国以外の他国の候補地としては、インドやベトナムなど他のアジア諸国が多い。中国の製造業への投資が近年鈍化傾向となった要因の一つとして指摘されている。
しかい、実際探してみるとわかりますが、どれを見ても中国製ばかりという製品ジャンルは全く珍しくありません。
ここらへんが韓国と違って、不買運動の呼びかけが全く広がらない理由の一つだと思われます。(中国の場合下請けが多く、韓国企業とは異なって対象を明確に捉えづらいというのもありそうですが)
すっかり読み忘れていたものですが、ちょうどそんな感じのタイトルの記事がありましたので、今読みながら気になったところを引用していきます。
2012年9月18日
真壁昭夫 [信州大学教授]
韓国はまだしも中国との関係悪化は経済的な損失に!
振り上げた拳を下ろさせる「したたか外交」の要諦
中国、韓国とわが国の経済関係について整理すると、それぞれの国との関係悪化の影響がわかりやすい。
まず、中国は世界第二位の経済大国であり、影響のマグ二チュードはかなり大きい。わが国企業は、同国に多くの生産拠点を持っている。
また、最近所得水準の上昇に伴って、中国はわが国企業がつくる製品群の重要な消費地になりつつある。そのため、中国国民の対日感情が悪化することは、わが国の経済に大きなマイナスの影響を与える可能性がある。
一方、韓国は中国ほど大きな経済規模ではない。貿易収支はわが国の黒字、韓国の赤字という状況だ。わが国から韓国に対する主な輸出品は、機械などの資本財や部品などの中間品が多い。それらの品目は、基本的に国民感情などによって相対的に影響を受けにくいだろう。
また、わが国企業は、韓国にそれほど大きな生産拠点などを持っていない。むしろ、IT関連製品ではライバル関係にある。そうしたことを総合的に考えると、韓国との関係悪化が、すぐにわが国経済に重大な影響を与える可能性は低い。
http://diamond.jp/articles/-/24860 単純に規模だけじゃなくて、中間品といった分析はなるほどですね。
もう少し中国の重要性について。
実際問題として、わが国企業は中国に多くの生産拠点を持っている。中国の対日感情が一段と悪化すると、わが国の中国生産拠点の運営が難しくなるだろう。
さらに懸念されるのは、国民感情が悪化することによって、日本製品に対する購買意欲が低下する可能性だ。すでに、韓国におけるわが国自動車の販売台数は落ちているが、もともと販売総数はそれほど大きくはないため、深刻な影響はないだろう。
しかし、中国に関してはそうはいかない。今後、中国の所得水準の上昇に伴い、わが国企業のミドルからハイエンドまでの製品に対する需要の増加が見込まれる。それは、わが国企業にとって大きなビジネスチャンスだ。そのビジネスチャンスが、領土問題の余波でマイナスの影響を受けるようだと、その機会損失はかなり大きい。
記事ではだからこそ政治が……という内容でしたが、この記事は日本は政治がダメだからと言いつつ、その政治に期待してしまっている内容です。
企業でもよくあるスーパーマン待望論ですが、今まで出てこなかったのにいきなりそういう人が現れることを願うのは非現実的な気もします。
いっそのこと政治に期待するのはやめて、最大限チャイナリスクを見積もった上で行動した方が良いかもしれません。
そして、そうした検討を行った上で中国撤退となれば、それまでです。
私は安易かつ感情的に中国を敵視する人たちを軽蔑しますが、リスクが軽減するどころか拡大しているのでは?という状態の現状では、日本企業の中国依存の進展はマイナスでしかありません。
政治にしても多くの日本企業や日本人を人質に取られた状態では、どうしたって分が悪くなります。今の政権に限らず、過度な期待は禁物でしょう。
(なお、これは中国がならず者的な態度をとるせいというのが大きく、条件が違いすぎるためです。そのため、戦略の一つとして、中国を誠実な態度をとる国家の仲間に引きずり込もうというものがあるようです)
また、中国の魅力は今回の反日デモで明らかに薄れました。
それはチャイナリスクの増大……という一言で表せるものの、個々の問題としては保険料の高騰というのも考えられます。
中国の話ではないものの、先月23日にとても気になるニュースがありました。
有料記事でこの先は読んでいませんが、中国の今回の反日デモでも似たような状況に陥る可能性があります。
保険は当然ながら保険会社が儲けるように設計できなくては、成立しません。
ハリケーンがあまりに起こりやすいアメリカのある地域では、ハリケーン保険が何度も破綻しており、一部の人からは事業化は不可能とまで言われています。
中国の反日デモもこれまでのリスク評価が甘かったと保険会社が考える可能性は十分あり、少なくとも納める保険料は高騰するのではないかと予想されます。
すると、案の定そういったニュースがいくつか入ってきました。
大手損保、中国暴動特約を停止 保険料上げ検討
進出企業に影響
2012/10/5 2:00 日本経済新聞 電子版
大手損害保険各社が中国での暴動被害を補償する保険の新規契約を中止したことがわかった。9月の反日デモで日本企業の商業施設や工場が従来の想定を超える被害を受け、保険金の支払いリスクが増している。損保各社は今後契約更新を迎える企業も含めて保険料の引き上げを検討する。新たに進出する企業が当面、暴動に対し「無保険状態」となるため、日系企業に影響が及びそうだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF0400K_U2A001C1MM8000/反日デモで被害受けた日系企業 損保各社保険料値上げ可能性
2012.10.02 16:01 週刊ポスト2012年10月12日号
9月に吹き荒れた中国の反日デモで日系企業は大きなダメージを被った。中国に進出している大企業のほとんどがデモ被害などが含まれる保険の特約に加入しているというが、今回は被害規模が大きいため、満額の保険金支払いは難しいのではないかと見られている。今後、「大手損保が保険料の値上げに転じる可能性もある」(保険評論家の大地一成氏)という。
昨年のタイ大洪水では保険金の支払いが日本の損保26社で総額約5000億円にも上ったため、保険の更新時に水害を対象外にするケースが現在相次いでいる。反日デモでも同様の対応を取られれば、中国進出企業はいよいよ中国を避けることになり、それは現地の雇用にも響いている。
反日デモは巡り巡って自分たちを苦しめることを、中国人は知るべきだろう。
http://www.news-postseven.com/archives/20121002_146564.html こうなってくると、中国での事業を改めて評価し直す必要があるかもしれません。
たとえば、以前問題のあったレアアースについては、希望的観測が入っていない?と思うものの以下のような記事がありました。
レアアース「もっと調達して」中国業者懇願 2年前と状況変化
2012.10.5 07:03
産経新聞上海支局長 河崎真澄 フジサンケイビジネスアイ
中国の“世論”が日本に対する経済制裁措置としてレアアース(希土類)の輸出規制に乗り出すよう政府に迫っている。中国メディアは、2010年9月の中国漁船衝突事件後の輸出規制で日本の産業界が右往左往した経緯を挙げ、あおっている。
だが、ことレアアースに関して輸出規制に踏み出せるかどうか微妙な情勢だ。状況が2年前とは一変しているからだ。
安価な中国産レアアースに頼り切っていた日本の産業界だったが、2年前のチャイナリスクへの反省から足腰を鍛えた。対中依存度を引き下げようと日本企業は、レアアースを使わない製品やレアアースのリサイクル技術を続々と開発した。この結果、中国の対日レアアース輸出量は11年に前年比34%減となり、今年も大幅な減少傾向にある。日本企業も「やればできる」ことを証明した。しかもオーストラリアなどからの供給が本格化し、中国産の需要はますます減っている。
国際社会の監視も厳しい。世界貿易機関(WTO)は、中国のレアアース輸出制限措置をめぐる日米欧の提訴を受け、8月に調査の開始を決定。直後に訪中したメルケル独首相に温家宝首相は、レアアースの輸出抑制は行わないと言明している。
中国は今年のレアアース輸出枠を昨年比横ばいの3万966トンに設定したが、業界関係者は「輸出量は枠に達しない可能性もある」とみる。(中略)輸出不振に加え、国内での過剰生産と在庫増大によるレアアースの価格下落も、中国にとっては大きな“誤算”だった。
(中略)
中国国内の業者は在庫を解消しようと、減産や生産停止に追い込まれている。(中略)業界関係者によると、中国の業者は「日本企業にもっとレアアースを調達してもらいたい」などと取引拡大を懇願してきているという。
こうした状況下で中国政府が対日経済制裁として輸出規制に踏み切れば、日本を有力な輸出先とする中国企業が逆に打撃を被る。(略)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121005/biz12100507100003-n1.htm 先にあったチャイナプラスワンという緩やかな形を通してでも良いので、脱中国依存というものを一度本気で考えてみても良いと思います。
追加
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