さっと読んだだけでしたが、私も見た「世界初iPS細胞(人工多能性幹細胞)による臨床応用」が、どうやら読売新聞の誤報だったようです。
この件については朝日新聞が張り切っています。
なぜかと言うと、
ということで、自分のところは事前チェック機能が働いていたため、痛くも痒くもないわけです。
でも、まあ、追求しなければしないで「大マスコミによる慣れ合いだ」なんて言われますので、ライバル紙を遠慮無く叩くのもの悪くないでしょう。
朝日新聞がやらかしたときには、今度は読売新聞に頑張ってもらえば良いのです。
ということで、朝日新聞の気合の入った記事をどうぞ。
2012年10月13日12時30分
肩書き、大学に確認せず iPS誤報で読売新聞
「世界初」とされたiPS細胞(人工多能性幹細胞)による臨床応用のニュースは、一転して誤報とわかった。(中略)
「肩書は(中略)ハーバード大に確認していれば、否定されていただろう」
13日付朝刊に検証記事を掲載した読売新聞は、iPS細胞を使った手術をしたと主張する日本人研究者、森口尚史(ひさし)氏(48)の「客員講師」という肩書について、大学側に確認しないまま記事にしたことなど経緯を説明。「振り返れば、取材の過程で何度か、森口氏の虚偽に気づく機会はあった」などとした。
1ページ全面を使った検証記事によると、読売新聞の記者に対し、森口氏から取材の働きかけがあったのは9月19日。その後、論文草稿や細胞移植手術の動画などが電子メールで送られてきたという。記者は今月4日、東大医学部付属病院で6時間ほど取材したが、当時は「特に疑わしい点はなかった」としている。
検証記事は、(1)前提となる動物実験の論文が確認できない(2)倫理委員会で承認された確証がない――といった点を重ねて取材していれば、「誤報は避けられただろう」と指摘している。
http://www.asahi.com/national/update/1013/TKY201210130153.html 13日の昼に読売新聞のサイトを見ましたが、この記事はまだオンライン化していないのか、目立つところにおいていないのかで、見つかりませんし、ランキングにも入っていません。
こっそり謝罪系なのかなぁ?(投稿時にも見ましたが、森口さんの嘘の話は大きく載っていますが、誤報した謝罪記事はどこ?という状態です)
また、朝日新聞は他の新聞社などの名前もいっぱい挙げています。
笑っちゃいますが、それだけ今回の朝日新聞の対応は特異だったのかもしれません。
読売の報道を追いかけた共同通信も検証記事を配信。配信を受けた東京新聞や中日新聞、西日本新聞、京都新聞、神戸新聞などもこの記事や「おわび」を掲載した。検証記事によると、共同通信は読売が報道した11日早朝から取材を始め、米国滞在中の森口氏から話を聞き、同日午前9時半に夕刊用に記事を配信した。「通信社として速報を重視するあまり、専門知識が必要とされる科学分野での確認がしっかりできないまま報じてしまった」という。
日本テレビは13日昼のニュースで、森口氏の論文の共同執筆者全員が「直接的な関与を否定した」と報じたうえで、キャスターが「一昨日の放送の中で、森口氏の言い分を断定的に報じましたが、ハーバード大学や病院への裏付けが不十分で不適切でした。おわびします」と述べた。
また、朝日新聞が過去に別記事を掲載していたるように、他紙でも何度も森口尚史さんの記事が出ていたことも書かれていました。
朝日新聞は今のところこれを問題なしとしているようですが、毎日新聞はそれらもすべて検証し直すとしています。
それから、日本テレビの"森口氏の論文の共同執筆者全員が「直接的な関与を否定した」"に関連して、共同執筆者の1人に関する記事をどうぞ。(この後は朝日新聞以外です)
iPS臨床問題:「勝手に名前使われた」…杏林大講師
毎日新聞 2012年10月13日 11時54分 【岡田英】
(略)森口氏が発表するとしていた論文の共著者に名前が挙げられた杏林大学の講師は「勝手に名前を使われた」と関与を否定した。同大が13日、毎日新聞の電話取材に明らかにした。
杏林大によると、関与を否定しているのは公衆衛生学が専門の上村隆元(うえむら・たかもと)講師(51)。森口氏とは97年に米ハーバード大で開かれた1週間の短期講座で知り合い、帰国後の02〜06年に公衆衛生に関する研究を共同で行ったが、最近3年以上は連絡をとっていなかったという。上村講師は、共著者として名前が挙げられていたことを今回の問題後に知ったといい、同大に「森口氏から事前連絡はなく、勝手に名前を使われた」と話しているという。
http://mainichi.jp/select/news/20121013k0000e040192000c.html ただし、共同執筆者としての名前の使用を許したことを認め、謝罪している方もいます。
共同執筆者 “検証不十分だった”
10月12日 20時45分 NHK
(略)
問題となっている日本人研究員、森口尚史氏の発表で、共同執筆者の1人となっている東京医科歯科大学の佐藤千史教授が12日、記者会見しました。
この中で佐藤教授は「ことしの8月か9月に学会で発表する内容を簡単に記した抄録がメールで送られてきた。正しい研究の進め方だと判断し、共同執筆者として了承した。今思えば検証が不十分だった。ハーバード大学の正式な講師と考え、全く疑っていなかった。責任を感じている」と説明しました。
また、森口氏が、おととし大学のグループと共にiPS細胞を使ってC型肝炎の治療薬の効果的な組み合わせを見つけたと報道されたことについても、共同執筆者になっている佐藤教授は「確認が不十分で不明を恥じている」と述べました。
(略)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121012/k10015709843000.html あと、順番が後になっていまいましたが、ハーバード大学などの否定について。
「iPS臨床応用」日本人表明で混乱 米大学は否定
2012/10/12 11:34 (2012/10/12 13:23更新)
【ニューヨーク=共同】「体を構成する様々な細胞になるiPS細胞から心筋を作り、患者の心臓に移植する初の臨床応用をした」と米ハーバード大客員講師を名乗る森口尚史氏が米国での学会で発表しようとしたが、森口氏が治療をしたとするマサチューセッツ総合病院とハーバード大は11日、声明を発表し、正規の手続きを経た臨床応用が行われたことを否定した。声明は「森口氏に関連した治験が承認されたことはない。現在、両機関とも森口氏と関係はない」としている。
森口氏は共同通信の電話取材に「ハーバード大に所属している。証明書類は日本に置いてある」と説明した。
森口氏は同日までにロックフェラー大で開かれているトランスレーショナル幹細胞学会で治療の内容をポスターで掲示した。だが、学会は「内容に疑義がある」としてポスターを撤去。12日は森口氏本人がポスターの前で参加者らに説明する機会も設けられていたが、予定の時間を過ぎても会場に姿を現さなかった。
(略)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1200P_S2A011C1CR0000/ 最後に朝日新聞の2つ目の記事で出ていた"大石泰彦・青山学院大教授(メディア倫理)の話"を載せます。
大石泰彦教授は"最先端の科学研究の報道には、本当に実現可能なのか、どのような問題が生じるかなど多面的な取材が求められる"としていました。
ただ、それを新聞記者に求めるのはなかなか酷だとも感じます。私は過去にNHKの解説委員の素人っぷりを指摘したところ猛烈に叩かれましたが、実際彼らは専門知識に欠けています。(NHKの解説委員の場合は度が過ぎていましたが)
大石泰彦教授がいいなと思ったのは、"記者は科学者と同じ知識をもつ必要はない"として次のようにアドバイスしていることです。
信頼できるアドバイザー的な科学者のネットワークを通じ、真偽や評価を確認しないといけない。科学報道について、各報道機関が取材方法や人材育成のあり方を見直す時期にきているのではないか。
従来型の新聞記者は様々な報道をするために、大抵専門家にはなれません。
記者というか特にジャーナリストと名乗る方にはそうじゃない報道が多いなと痛感していますが、前述の事実を謙虚に受け止めた上で、もう少し専門的に見れる方の助力を得られるように努力するのが良いと思います。
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