ネイバーまとめの"「気が狂う」と言われる小説7選"と、その反応であった「それよりこっちの方が怖くない?」というオススメを加えた10冊の紹介。残酷さというのもポイントになっています。(2012/10/24)
2017/12/07追記:
サイコキラーについて書かれた『我が一家全員死刑』『黒い看護婦』
一見普通に見える人が犯罪を行うのも怖い
●狂気の小説といえばやっぱり日本三大奇書
2012/10/24:
読むのは危険?「気が狂う」と言われる小説7選(ネイバーまとめ)のコンセプトがおもしろいなぁと思いました。
タイトルを見て真っ先に思いついたのが、ブログ初期に
精神に異常を来たす…推理小説の日本三大奇書と四大奇書 ドグラ・マグラ、黒死館殺人事件、虚無への供物などを書いている日本三大奇書の『ドグラ・マグラ』。ネイバーまとめでは3番目の登場でした。
★『ドグラ・マグラ』作者:夢野久作
"精神病科の病室で目覚めた記憶喪失の青年が、「ドグラ・マグラ」という書物(この作品のこと?)を見つけ、「これはある精神病者が書いたものだ」と説明される。本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来す」という触れ込みが有名な作品"
夢野久作『ドグラ・マグラ』の表紙を描いた米倉斉加年とは何者なのか?でやっているように、米倉斉加年さんの絵もすてきです。
他の日本三大奇書も入っていました。
★『虚無への供物』 作者:中井英夫
"とある一家を舞台に繰り広げられる奇妙な殺人事件。現場に居合わせた主人公たちが推理合戦を交わすが、推理はどんどん混沌としたものへと陥っていく。いろいろな推理が入り混じり、混沌とした内容になって頭がこじれてきます"
★『黒死館殺人事件』作者:小栗虫太郎
"黒死館という中世キリスト教文化とオカルティスムの集大成のような建物の当主が自殺後、連続殺人事件が住人襲う。探偵から出てくる怒涛のウンチク(あまり事件に関係なさそう)と、普通にそれに応対する刑事たちとのやり取りが、意味不明すぎて頭が疲弊してきます"
●漫画版もある『家畜人ヤプー』
では、引用元のトップは何だったのか?というと、『家畜人ヤプー』でした。
★『家畜人ヤプー』作者:沼正三
"1956年から連載された、長編SF・SM小説。本人青年とドイツ人女性のカップルが未来世界にタイムスリップして見たものは、「人間」である白人と「奴隷」の黒人、そして日本人は「家畜」としてさまざまなおぞましい肉体改造を施されている世界だった"
漫画版を古本屋かどこかで覗いたことがあり、軽く内容は知っていましたが、すごく嫌になる話だと思っていました。以下のうち、江川達也さんのものは打ち切りになったそうです。
●ネットでは不評な『悪魔の飽食』の選出
本来の順番の二番目のものは『悪魔の飽食』。日本語訳した人が殺害されたイスラム教の話かと思ったんですが、あれは「悪魔の詩」でした。でも、「悪魔の飽食」もタイトルは聞いた覚えあります。
★『悪魔の飽食』作者:森村誠一
"戦時中の日本陸軍が生んだ悪魔の部隊、731部隊の人体実験を描いた実話。(中略)3,000人以上の捕虜を対象に行われた非人道的な生体実験の数々が、あまりのおぞましさで読んでいて気が狂いそうになります"
まとめでも「捏造された内容もありとのこと」と書いていたのですが、捏造疑惑、そもそも論争になる戦時中の話ということで、この選出はかなり不評でした。ただ、関係者の証言がありますので、すべての実験が捏造ということには、残念ながらならないと思われます。
●残り2つは、村上龍と「かまいたちの夜」の原作者
あとは、順番通り。未だに村上春樹さんと混ざる村上龍さん。こちらはタイトルも聞いたことありません。
★『イビサ』作者:村上龍
"精神病院を退院した女性の、自分と向かい合う旅の話。途中連れの男性を殺したり、ドラックに溺れたり、自分の中の別人格と話したり、超能力に目覚めたりと、破天荒で破滅的なストーリー"
次は作者名すら全然聞いたことありません。ただ、「かまいたちの夜」の原作者ということなので、そちらは聞いたことがあります。
★『殺戮にいたる病』作者:我孫子武丸
"でもある我孫子武丸著の猟奇サイコホラー作品。(中略)残虐すぎる殺人描写の連続が、だんだん精神を麻痺させてきます"
日本人作家縛りなんですかね、全部日本人でしたね。
●心の底から不愉快な傑作『隣の家の少女』
さて、これだけだと何ですので、いくつか追加してキリ良く10個にしてみようと思います。
はてなブックマークを見れば、他の推薦があるだろうと覗くと概ね不評でした。
takam0
この手のまとめに毎回ドグラマグラ入っているけどそんなに気が狂う内容ではないかと思う。江戸川乱歩の世界に似た狂気は感じるけども。 2012/10/18
「読んでも気が狂わなかった」って書いている人がちょくちょくいたんですが、そりゃそうでしょ。そんなこと言われたら、反応に困ります。マジで狂っちゃった人も、「読んでも気が狂わなかった」って言うでしょうしね。
さて、そんな中でオススメを書いていた人…なんですが、2冊しかなかったので、
newvo1も見てました。まず、はてなブックマークで名前が出ていたのが、『隣の家の少女』。海外の人の作品です。(紹介とレビューはアマゾンより)
★『隣の家の少女』作者:ジャック ケッチャム
"1958年の夏。当時、12歳のわたし(デイヴィッド)は、隣の家に引っ越して来た美しい少女メグと出会い、一瞬にして、心を奪われる。メグと妹のスーザンは両親を交通事故で亡くし、隣のルース・チャンドラーに引き取られて来たのだった。隣家の少女に心躍らせるわたしはある日、ルースが姉妹を折檻している場面に出会いショックを受けるが、ただ傍観しているだけだった。ルースの虐待は日に日にひどくなり、やがてメグは地下室に監禁されさらに残酷な暴行を―"
"文章も展開もすばらしい。小説として必要なすべてを兼ね備えた、実力派の一作といえるだろう。
しかし、この作者の作品は読者を選ぶ。不向きな人が読んでしまったら、これはもう、言いようもなく不幸で惨めな気分になる。
その意味で、私にとってはこの作品は完全に不向きで、心の底から不愉快で、二度と手にとりたくないものの一つだった。読み終えた本を手元に置くのさえ不快で、慌てて売ってしまったほどだが、それでも記憶の中になまなましく残る内容は、決して消えることはないだろう。そこまでの印象を残す作品として、やはり高く評価されるべきだろうとは思う。だが公平に判断しても、決して青少年に読んでほしくない小説であることは間違いがない。
小説としての筆力は評価されるべきだが、個人の感情としては誰にもすすめたくない本だというより他にない"
映像作品もありました。
●日本人の罪の意識を描いた『海と毒薬』
次のものは『悪魔の飽食』系のものとして、紹介されていました。
★『海と毒薬』作者:遠藤 周作
"良心的で小心な医学部の助手が、何故、生体解剖というショッキングな事件の現場に立ち会うことになったのか?彼の置かれた条件と過去を照らし、人間の意志、良心を押し流す運命を描く――。日本人にとって神とは何か、罪とは何かを根源的に追究した問題長編"
"暗くてどんよりとした海。流れてはひいて、ただ同じ営みを永遠に繰り返すような、その捕らえどころのない海・・・。捕らえどころのない日本人の罪の意識。確固とした神を持たないことで、はっきりと姿を現すことのない罪のかたち、その不気味さ。作者はそれをこの小説にて絶妙に描き出している。(中略)
自分の精神の原点に立ち返り、今一度自分を見つめてみたとき、そこに知らない、底知れぬ黒い穴を見つけてしまったような、すっと背筋が冷たくなる不気味さがある。見知らぬ自分が、そこには居る。
自分について、日本人について、深く考えざるを得ない、とても興味深い一冊。"
●日本で本当にあった残虐すぎる連続監禁殺人事件を描く『消された一家』
次のものも他とはテイストが違い、実話を描いたもの。"「消された一家」とか「我が一家全員死刑」とか「黒い看護婦」とかのほうが怖いような気がする。怖いからどれも読んでないけど"(quix_que)というコメントであったものです。
現在、尼崎市の死体遺棄事件がちょうど話題になっていますが、フィクション顔負けの残虐事件は日本でも何度も起こっています。
★『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件』作者:豊田 正義
" 捜査員も震え上がった“史上最悪”の密室監禁事件に迫る衝撃的ノンフィクション作品。
マンションの一室、七人監禁、絶え間ない通電、厳しい食事制限……「天才殺人者」松永太は、妻・緒方純子の家族を完全なる支配下に置いた。やがて彼は、殺す者と殺される者を指示し、家族は言われるがままに「殺し合い」を繰り広げた。ついに妻一人を残し、家族は消滅した――"
"とにかくフィクションとしてもあり得ないほどの残虐さにまず驚愕させられる。
特に幼い子供にまで容赦なく電気拷問を浴びせる所には涙を禁じ得なかった。
松永のサディズムにはもはや人間性を感じさせるものは一片もなく、
血の通っていないサディズムモンスターとしか思えなかった"
紹介を見ているだけで憂鬱な気分になってきましたが、テーマがテーマだけに仕方ありません。やっぱりこういうのはちょっと勘弁…って方は、
おすすめ無料WEB漫画リンク集 41~60などでもどうぞ。
●サイコキラーについて書かれた『我が一家全員死刑』『黒い看護婦』
2017/12/07追記:体裁を全体に変更。なんてこと無いと思ったのに、時間がかかってたいへんでした。
まあ、それは良いとして、修正ついでに少し追記。最後の人の推薦は3つ名前が挙がっていて、1つしか紹介していなかったので、他二つも同じスタイルで書いておきます。
★『我が一家全員死刑 福岡県大牟田市4人殺害事件「死刑囚」獄中手記』作者: 鈴木 智彦
"2004年9月に発生した本事件は容疑者が親子4人だったことに加え逮捕後もショッキングな場面が続き、世間の耳目を集めた。(中略)死刑囚が生々しい事件の真相を綴った戦慄の獄中手記"
"死刑囚が書いた手記だと分かって読みましたが、ここまで開き直って
全てを曝け出しているものも珍しいのではないでしょうか。
暖房の効いた部屋で読んでましたが読み進める内に鳥肌が立って
寒気がしてきました。読み通すのに覚悟が必要です"
★『黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人』作者: 森 功
"悪女〈ワル〉──同じ看護学校を出た看護婦仲間。一見、平凡な中年女性たちは、身近な人々を次々に脅し、騙し、そして医療知識を駆使した殺人にまで手を染めていた。何が、女たちをかくも冷酷な犯罪へと走らせたのか。事件の背後には、四人組の特殊な人間関係、なかでも他の三人から「吉田様」と呼ばれ、女王然と振舞う吉田和子の特異な個性があった"
"人を操る詐欺師というのは自分だけに関心が向くようにターゲットを孤立させる。宗教の勧誘と同じだ。貴方を守っているのは私だけだ、貴方の周りの人間は貴方の敵なのだ…と
親友や親族と仲たがいするように工作し、それを第三者の顔をして助ける そして徐々に信頼を積んでいき取り込んでいく
犯罪者の典型的な資質を備えるこの女はサイコパスの王道を生きた"
●凶悪事件は「家庭のしつけ」が原因?
上記の実話の殺人事件3作品では、最初と最後のもので親の教育に問題があったのではないか?という感想がありました。ただ、これはわかりやすい原因を求めてしまう悪い癖です。
実は家庭のしつけによる性格の影響は絶大ではないことが、すでに研究でわかっています。なぜかと言うと、学校や友達のところに行っている時間がかなり長く、子どもが家庭で過ごす時間がそう長くはないためです。勉強やスポーツと比べると影響は弱いのですが、もちろん遺伝の影響もあるでしょう。この影響は家庭のしつけと混同されそうなところです。
また、性格への影響が比較的強いものとしては、友人関係というものがありますが、友人関係も家族の影響を受ける場合がありますので、これもまた混同されそうなところ。家庭のしつけの話が出ていなかった真ん中の話の家族は、実を言うとヤクザさん一家であり、すべての要素で悪かっただろうと予想される例でした。
●一見普通に見える人が犯罪を行うのも怖い
それから、遺伝子の組み合わせで特殊な性格の人や病気の人が生まれてしまうパターン、さらに、一見普通の人が信じられない罪を犯すパターンもあり、単一要因ですらなく複合的な理由、また原因を特定できないといったことも多いでしょう。家庭のしつけ問題で単純化するのはそういう意味でも悪いです。感想を読んだ感じ、『隣の家の少女』『海と毒薬』あたりは、ひょっとしたら「普通の人が」というテーマもあるかもしれないというものでした。
「普通の人が」関連で実際にあった話としては、
普通の若者がイスラム国に参加する理由・普通の人が虐殺する理由というのも書いています。また、残虐なものではないのですが、
性善説と性悪説、どちらも人間は悪という前提 間違った意味が浸透でも、一見普通に見える人が罪を重ねることについて研究している人の話が出てきます。
それから、
ミルグラム実験とスタンフォード監獄実験 ネットリンチと正義の暴走なんかも、これらの話に関係しそうな実験についてのもの。特別な人の問題だと単純化するのは、良くないことも多くあります。
こういう一見普通に見える人が狂気に飲み込まれていく…というのも怖いですね。
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