2020/01/15:
●大企業がもれなくすべてカバーできない限り中小企業は必要!
●ネットの本屋にない価値を持つ町の本屋は絶対守るべき?
●中心市街地が商店街からイオンになった!だから中小企業が必要?
●中小企業不要論への反論というテーマありきでこじつけすぎ!
●労働生産性の低い中小企業淘汰論・不要論に反論!保護すべき
●大企業がもれなくすべてカバーできない限り中小企業は必要!
2020/01/15:私は中小企業を積極的に潰すべきだと思っているわけではないものの、業績の悪い中小企業をわざわざ税金をかけて守っていくべきなのかは疑問に思っています。で、中小企業擁護的なタイトルの
釧路発、「中小企業が消えた街」がたどった40年:日経ビジネス電子版(神田 啓晴 日経ビジネス記者 2019年11月13日)という記事が気になったために読んでみました。
ただ、初っ端から論理のすり替えでがっくり。中小企業を積極的に保護する必要があるのか?を考えるべきなのに、いきなり中小企業がやっていたすべての仕事を大企業がカバーしないと中小企業を潰してはならないといった話になっています。こんな高いハードルなら当然中小企業が必要という結論になるに決まっているでしょう。
<日本経済の先行きに不透明感が強まる中、注目を集め始めた中小企業の「淘汰論」や「不要論」。この大胆な理論を実行に移すとすれば、社会の混乱を防ぐために少なくとも次の2つの条件をクリアすることが欠かせない。
①消滅する中小企業が生み出している付加価値を、残された企業(大企業中心)でカバーする。
②消滅する中小企業が生み出している雇用を、残された企業(大企業中心)でカバーする>
●ネットの本屋にない価値を持つ町の本屋は絶対守るべき?
倒産が多いお店の代表格である本屋さんで考えてみましょう。日本では人口が減少している地域が多いです。人口が減るとお客さんが減るというお店が当然多く、これまた当然潰れそうになるお店が多くなります。本屋さんもやはり倒産しそうになるでしょう。
本屋さんが特に苦しいというのはネットで本が簡単に買える時代になったというのもあります。しかし、お年寄りなどネットで本を買えない人というのもいます。また、ネットの本屋さんではタイムラグがあるために、その日すぐ買うということはできません。さらにリアル書店のように、その場で見ながら買うということもできないでしょう。
大きい需要ではありませんが、このような特殊な需要がごく一部にあるために、町の本屋を絶対に潰してはいけない、税金をかけて守っていかなければならない…記事が言う「消滅する中小企業が生み出している付加価値を、残された企業でカバーすることが、中小企業をなくせる絶対条件」というのはそういう話です。かなり無理があります。
●中心市街地が商店街からイオンになった!だから中小企業が必要?
スタート地点から怪しい記事ですけど、私が気になったのは、タイトルになっていた中小企業が消えた釧路市の話でした。釧路市は有名なのでわかる人が多いでしょうけど、北海道にある地方都市。北海道の中ではベスト5に入るような人口が多い方の都市ですね。
記事によると、釧路市は、中心市街地の空洞化が全国に先駆けて進みました。まず最初は、イトーヨーカドー、長崎屋とダイエーと大手の大型スーパーが次々と進出。この時点ですでに、客を奪われ、店が潰れかねない、商店街で吸収していた雇用はどうなるのかと中小企業は猛反対していました。実際、中小商店はすぐ潰れたとのこと。ただ、大手により、消費と雇用は確保されます。商店街そのものはむしろ活気にあふれたとされていました。
ただし、ジャスコ(現イオン)の北海道1号店として2000年9月にオープンしたイオンモール釧路昭和には、大手スーパーも惨敗。客を奪われ、長崎屋とダイエーが撤退し、商店街は衰退。後にイトーヨーカドーも閉店したそうです。ということで、記事としては、商店街の中小企業を守らなかったことで、商店街が寂れてしまった、問題だ!ということのようでした。
ただ、これ、中小企業を守らなくちゃいけないという話とは全然違うでしょう。地域そのもの衰退がそもそも先にあるという可能性もあり、イオンが生み出した消費や雇用と比較するだけでは不十分なのですけど、この記事ではそれすらしていません。この理論だと町の中心地が変わるだけでダメということになります。東京都内での中心地が変化していくのも、かつての中心地が衰退したってことダメになりまるからね、この理論だと…。
●中小企業不要論への反論というテーマありきでこじつけすぎ!
コメント欄でも無理がありすぎだというものばかり。地元を知る人なのかな?という人のコメントも、普通に記事に批判的でした。思った以上にひどい記事で驚いてしまいます。まさかここまで低レベルな内容だとは思いもしませんでした。
<郊外への商業圏の移転は釧路圏内での移動なんだから釧路圏内の衰退ではなくて中心地の移転でしかない。
旧市街地に買い物難民が生まれた一方で新興地区ではかつての買い物難民が減っている。
衰退の最も大きい原因は漁業や炭鉱などの衰退によるものと社会構造の変化だ>
<その地域の人々しか利用しないような商業施設を大企業が集約しようとしまいと人口流出が続いていれば衰退していくのでは?
それを引き合いにして中小企業不要論がどうのと論じるのはこじ付け過ぎではないでしょうか>
<中小企業不要論と地方都市の衰退をむやみに結び付けている。それぞれ違う観点から論じられるべきと思う>
<中小企業不要論への反論というテーマありきで、それに使えそうなエピソードを引っ張ってきたら、いささか無理筋だった、という感がありますね…>
●労働生産性の低い中小企業淘汰論・不要論に反論!保護すべき
中小企業を守る必要性を訴えるのであれば、経済規模や経済の成長度などが似ている都市において、中小企業保護政策あるいは淘汰政策の違いによって、どのような違いが生まれたか、などを見なくてはいけません。一般的に個別事例で自説を正当化するというのは問題ある主張なのですけど、この記事はそのレベルですらありませんね。ちょっと驚きです。
あと、この記事は、どうもデービッド・アトキンソンさんの生産性の低い中小企業の淘汰論への反論みたいでした。ただ、デービッド・アトキンソンさんは中小企業を全部潰せと言っているわけではなく、飽くまで「生産性の低い中小企業」だけ。中小企業を全部潰せ!ならどうかと思いますが、生産性が低い企業だけという話ですから、むしろ正論のようにすら聞こえます。
逆に言うと、この記事の主張は、「中小企業の中でも特に生産性の低い中小企業を潰さずに優先して守れ!」というものだとも考えられそうです。このような無理のありすぎる主張を正当化するには、相当強い証拠が必要になるのですけど、それとはあまりにも程遠い弱い証拠にすらならない記事でした。
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