北朝鮮のミサイル(ロケット)関係で、人工衛星を打ち上げたい!と思ったら準備することについて。それから、その他の国のロケット事情についてをやっていました。(2009/3/21)
その後、低コスト・天候不問・飛ばしやすいと、一見メリットだらけに見える飛行機からロケットを打ち上げるという方法について追記しています。(2017/09/26)
●人工衛星搭載のロケットを打ち上げたい!と思ったら準備すること
2009/3/21:北朝鮮の「人工衛星」打ち上げ問題が非難されていました。そういった記事を読んでいてふと思ったんですけど、そもそも他の国はどうしているのか?という話。これが、朝鮮日報の
”衛星打ち上げ時は国際機関への通告が義務”という記事に書かれていました。
当たり前ですけど、人工衛星を打ち上げたい!と思ったら、外国に向けていろいろな根回しが必要みたいです。急に思いたったからって、勝手に打ち上げられると迷惑なんですね。
(1) 国際電気通信連合(ITU)と少なくとも1年前に協議する。(地上との交信のための周波数の割り当てのため。計画はお早目に)
(2) 国際民間航空機関(ICAO)に打ち上げ時期や軌道を通告する。(飛行機にぶつかったらたいへん)
(3) 国際海事機関(IMO)に関連情報を提供する。(海に落っこちてもたいへん)
(4) 国際連合宇宙局(OOSA)に、人工衛星・ロケットの関連情報を公開する。(宇宙条約で決まってるそう、宇宙憲章とも言うらしいです、なんかかっこいい)
(5) 自国に駐在する外国大使館に直接、関連情報を通告する。(弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範{HCOC}の発射前通告{PLN}規定によるそう)
ただし、記事では「『ならず者国家』である北朝鮮がこうした措置を行ったため『意外』と受け取られている」と初めの方に書いてあいたので、”北朝鮮はこれらの手順を踏んでいる”というように読み取れます。きちんと報告をしていたようです。
とはいえ、今回に関して言えば、たとえ上記の手順を踏んでいても、「国連安保理決議」違反という見解を日米韓で示しているので北朝鮮に非なしとはならないと思われます。
●ロケットを打ち上げしやすい国としづらい国がある
海に落ちることについてですが、失敗して落ちなくても途中で切り離す部分が落ちるので、日本が衛星を飛ばすときには、警戒を呼びかけたり、侵入を禁止したりしているそうです。
中国なんかは内陸で打ち上げているので、残骸が民家を直撃といった悲惨なこともあるみたいです。内陸の国は他国に土地を借りない限り、まず安全に飛ばすことは無理そうですね。
因みに打ち上げの方向は、地球の自転に合わせて東向きがベストらしいです。これは自転の力を利用するためで、「真西に打ち上げる場合の人工衛星の重量は、真東に打ち上げる時のほぼ2分の1の物しか打ち上げられない」(
JAXAのFAQより)というので、大きな差です。
でも、イスラエルの場合には東に関係が良好ではないイスラム教国のヨルダンがあって、そっちに飛ばしちゃうとたいへんなことになるので、西の海に向かって飛ばしているそうです。
あともう一つ疑問に思ったのが、軍事衛星は基本内緒だと思うんですけど、安全対策ってどうしているんでしょう?「何があるかは言えないけど、とりあえず危ないです」って伝えるんでしょうか?
2017/09/26:ロケット発射自体はかなり目立つので簡単にバレそうですから、軍事目的という目的だけ偽って「普通の衛星です」と言って、きちんと手順を踏んで飛ばすというのはできそうですね。
●飛行機からロケットを打ち上げる理由 低コスト・天候不問・飛ばしやすいとメリットだらけ
2017/09/26:そんな大胆な方法があったなんて!と感心したのが、
宇宙ロケットなぜ空中発射? 専用の巨大飛行機を用意してまで実現する理由とは 乗りものニュース | ライフ・美容 | 2017年09月26日の話です。しかも、新しい手法ではなく、以前から実用化されている方法なんだそうとのこと。
にも関わらず、あまり聞いたことがない理由は後述しますが、とりあえず、以下のようなメリットだけ見ていると素晴らしすぎる計画に思えます。
(1)母機が離着陸する滑走路さえあれば発射が可能。発射場などの地上設備が不要で、コスト面で優位性がある。
(2)地上からロケットを打ち上げる場合は気象条件が重要となるが、天候が安定している成層圏からの発射は母機が離陸さえできれば可能。
(3)高高度では大気の密度や気圧が低くなるため、同出力のエンジンでも地上発射と比べてより重い機体を発射することが可能。
●メリットだらけなのに全く普及していない理由
一方でデメリットがあるわけですが、その前にこのロケットの空中発射のルーツについて。記事では、第二次世界大戦中にドイツで開発されたHs293のような航空機から発射するロケット噴射のミサイルの技術が元になっているとされていました。これは、地上の弾道ミサイル発射基地が攻撃された場合の反撃措置として研究されていました。
ところが、その後ミサイル発射基地の防御能力が向上したことや、航空機では地上基地や艦船に比べて必然的に搭載量が少なくなるため、研究開発は中止となってしまいました。現実的ではなかったのです。
では、空中発射ロケットの場合、何が問題だったのでしょう? 打ち上げ総数42回のうち37回で成功し、人工衛星打ち上げ用ロケットとして実用化された、アメリカのOSC(オービタル・サイエンシズ)社が開発した空中発射ロケット「ペガサス」の場合は、なんとメリットであったはずのコスト面で失敗しました。
見込みでは打ち上げコストが安くなるはずだったのですが、発射回数に関わらず母機の維持費は固定のため打ち上げ回数が増えないと、1回あたりの発射コストが高くなるというデメリットがありました。要するに受注が少ないとダメなのです。そして、「ペガサス」は受注数が少なすぎて、高コストになってしまったという話。ただ、技術的な問題ではないというのは、克服できそうな感じがするところなんですけどね。
この方式に、今度はアメリカの宇宙ベンチャー企業ストラトローンチ・システムズがチャレンジ。長さ117mと世界最大の翼幅をもつ持つロケットを搭載し空中で発射するための航空機「ストラトローンチ」を既に公開しました。最近はロケットの打ち上げが増えていますし、今度こそ行けませんかね? わくわくするような話ですので、是非成功してほしいです。
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