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詭弁のガイドライン風である誤謬(ごびゅう)の分類と意味


 誤謬(ごびゅう)という言葉は難しいのであんまり使われませんが、たまーに出てきてその度に「何て読むんだっけ?」と迷います。

 意味はWikipediaによれば、

論理学における誤謬(ごびゅう、英: logical fallacy)は、論証の過程に論理的または形式的な明らかな瑕疵があり、その論証が全体として妥当でないこと。論証において、誤謬には「形式的」なものと「非形式的」なものがある。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%A4%E8%AC%AC

 ですが、また「瑕疵(かし)」(欠陥)などという難しい言葉での説明です。

 もっと平易に……ということで、大辞林 第三版 (三省堂)での説明をどうぞ。

ごびゅう[誤謬]

( 名 ) スル
①まちがえること。また,そのまちがい。 「 -を犯す」 「一言以て是非を-することあり/花柳春話 純一郎」
②〔fallacy〕 一見正しくみえるが誤っている推理。推理の形式に違背したり,用いる言語の意義が曖昧(あいまい)であったり,推理の前提が不正確であることから生ずる。詭弁(きべん)。論過。虚偽。

http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/?search=%E8%AA%A4%E8%AC%AC&match=beginswith&itemid=DJR_gobyuu_-010

 カッコつけないで言うと、単に「間違い」ですね。こう言ってしまうとありがたみがないですが。

 あと、ズバリ「詭弁」という説明も載せてありましたが、今日のテーマは誤謬と詭弁です。

 私はWikipediaを見て、まるで詭弁のガイドラインのようだ……と思ったのが書こうと思ったきっかけなんですが、この説明を見るとそう思ったのももっともなことかもしれません。

 詭弁のガイドラインはこちらをどうぞ
  ■詭弁の特徴(詭弁のガイドライン)


 さて、その誤謬のWikipedia、既にあったように「形式的」なものと「非形式的」なものがあります。
推論パターンが常にまたはほとんどの場合に間違っているものをいう。これは論証の構造そのものに瑕疵があるために、論証全体として妥当性がなくなることを意味する。一方、非形式的誤謬は形式的には妥当だが、前提が偽であるために全体として偽となるものをいう。

(中略)演繹(引用者注:えんえき、一般的原理から特殊な原理や事実を導くこと)における非形式的誤謬は一見して妥当に見え、その主張自体は健全に見えるが、隠された前提に間違いがある。


 まず、「形式的」なもの=どうやったって間違いというものから。

形式的誤謬の例

・後件肯定

 「もし P ならば Q である。Q である、従って P である」という形式の推論。「もし魚ならひれがある。この生物にはひれがある。従って魚である」という推論で、クジラなどの存在によって誤謬となる。


・前件否定

 「もし P ならば Q である。P でない、従って Q でない」という形式の推論。「もし人間ならば脊椎動物である。この生物は人間でない、従って脊椎動物でない」という推論である。


・選言肯定

 「A または B である。A である、従って B ではない」という形式の推論。「ゴッホは天才または狂人である。ゴッホは天才である、従ってゴッホは狂人ではない」という形式で、天才と狂人が同時に成り立ちうる可能性を無視している。


・間違ったジレンマ

 選択肢をいくつか提示し、それ以外に選択肢がないという前提で議論を進めること。例えば、多重債務者の「このまま借金取りに悩まされる人生を送るか、自殺するか、二つに一つだ」という思考(自己破産という選択肢を除外している)。


・4個概念の誤謬

 三段論法には通常3つの(論理形式に関わらない)語句が出現するが、4つめの語句を導入することで誤謬となる。例えば、「魚にはひれがある。人間は脊椎動物である。魚は脊椎動物である、従って人間にはひれがある」は明らかな誤謬。通常、二枚舌 (equivocation) との組合せで巧妙化する。


・媒概念不周延の誤謬

 三段論法において媒概念が周延的でない。「全ての Z は B である。Y は B である。従って、Y は Z である」の場合、媒概念 B が周延的でない。「すべての魚は脊椎動物である。人間は脊椎動物である。よって、人間は魚である」。

 形式的誤謬は数も少なくて、わかりやすくスッキリです。

 ところが、次の非形式的誤謬はたくさんある上に、ややっこしいです。

 ただ、「一見して妥当」に見えるといった性質から、注意が必要なのはこちらでしょう。
非形式的誤謬の例

・間違った類推

 条件の相異や例外の存在を考慮に入れずに類推し、その類推を大前提として論旨を組み立てること。「判例によれば2人までの殺人では死刑にならない。君は2人しか殺していないということなので死刑にはならないだろう。」判例変更の可能性を考慮していない。また推論の前提となる事実(君は2人しか殺していない)が間違っている可能性を考慮していない。


・早まった一般化

 十分な論拠がない状態で演繹的な一般化を行うこと。「1, 2, 3, 4, 5, 6はいずれも120の約数だ。よってすべての整数は120の約数である」。


・例外の撲滅

 例外を無視した一般化を元に論旨を展開すること。「ナイフで人に傷をつけるのは犯罪だ。外科医はナイフで人に傷をつける。従って、外科医は犯罪者だ」。


・偏りのある標本

 母集団から見て偏った例(標本)だけから結論を導くこと。「(日本在住の人が)周囲には黄色人種しかいない。よって世界には黄色人種しかいない」。


・相関関係と因果関係の混同 (擬似相関)

 相関関係があるものを短絡的に因果関係があるものとして扱う。「撲滅された病気の数とテレビの普及には相関関係がある。よってテレビが普及すれば病気が撲滅される」(両者は時間の経過により独立に進んだだけだが、数値上は両者に相関ができてしまうので、因果関係があるかのような勘違いをしてしまった)。


・前後即因果の誤謬 (羅:post hoc ergo propter hoc)

 A が起きてから B が起きたという事実を捉えて、A が B の原因であると早合点すること。呪術と病気の治癒は因果関係ではなく前後関係である。


・滑り坂論法

 「風が吹けば桶屋が儲かる」的な論法で、何らかの事物の危険性を主張すること。ドミノ理論。必ずしも誤謬とは限らない。「風が吹けば桶屋が儲かる」は誤謬といってもよいが、「第一次世界大戦でロシア軍が連戦連敗だとコーカサスバイソンが絶滅する」は現実に起こった事態である。(引用者注:後述します)


・因果関係の逆転

 因果関係を逆転させて主張する。例えば「車椅子は危険である。なぜなら、車椅子に乗っている人は事故に遭ったことがあるから」。「バスケットボールの選手は身長が高い。よってバスケットボールをすると背が伸びる」(バスケットボールをしたから背が伸びたとは限らない。もともと背の高い人を選手として採用している可能性もある)。


・テキサスの狙撃兵の誤謬

 本来相関のないものを相関があるとして扱う。クラスター錯覚ともいう。
 上官が狙撃兵に腕前を問うたところ、遠くにある壁の標的の真中に命中しているのを指し示したため腕前に感心したが、実は壁の銃痕にあとから標的を描いただけだった、というテキサスのジョークから。サイコロ賭博で「丁」(偶数の目)が6回連続したから次は「半」(奇数の目)だ、と考えるのはこの誤謬である。


・論点先取

 結論を前提の一部として明示的または暗黙のうちに使った論証。形式的には間違っていないが、結論が前提の一部となっているため、全体として真であるとは言えない。「彼は正直者なんだから、ウソを言うわけないじゃないか」。


・曖昧語法 (amphibology)

 文法的に曖昧な文形で主張をすること。「十代の若者に自動車を運転させるべきではない。それを許すのは非常に危険だ」という文章では、若者が危険な目にあうと言っているのか、若者が他者を危険にさらすと言っているのか曖昧である。


・多義語の誤謬 (equivocation)

 複数の意味をもつ語を使って三段論法を組み立てること。例えば、「羽は軽い(light)。明るいもの(light)は暗くない。したがって、羽は暗くない。」(媒概念曖昧の虚偽も参照)


・連言錯誤

 ある前提について A という推論と A & B という推論を提示したとき、A だけの方が可能性が高いにも関わらず A & B の方を尤もらしいと感じてしまうこと。「K氏が関西弁をしゃべるとき、彼が大阪出身である確率と、大阪出身で阪神ファンである確率はどちらが高いか」。


・連続性の虚偽

 術語の曖昧性により常識的な認識とのズレが生じる誤謬。「砂山のパラドックス」、「テセウスの船」とも。「砂山から砂粒を一つ取り出しても、砂山のままである。さらにもう一粒取り出しても砂山である。したがって砂山からいくら砂粒を取り出しても砂山は砂山である」。


・多重質問の誤謬

 質問の前提に証明されていない事柄が含まれており、「はい」と答えても「いいえ」と答えてもその前提を認めたことになるという質問形式。「君はまだ天動説を信じてるのかね?」という質問は、「はい」でも「いいえ」でも「過去に天動説を信じていた」という暗黙の前提を認めたことになる。


 残りは誤謬の話とは関係ないんですが、途中で出てきた

・滑り坂論法

 「風が吹けば桶屋が儲かる」的な論法で、何らかの事物の危険性を主張すること。ドミノ理論。必ずしも誤謬とは限らない。「風が吹けば桶屋が儲かる」は誤謬といってもよいが、「第一次世界大戦でロシア軍が連戦連敗だとコーカサスバイソンが絶滅する」は現実に起こった事態である。

 のコーカサスバイソンがおもしろかったので、その話を。

 コーカサスは地名で、カフカース(コーカサス)地方に生息していたそうです。

 で、バイソンは牛の一種ですね。私は「強そうな牛」というイメージです。


↓強そう!


 このコーカサスバイソンさんが絶滅してしまった経緯はこちらです。

19世紀初頭、コーカサスバイソンはヨーロッパバイソン Bison bonasus bonasus とともに、ロシア皇帝アレクサンドル1世によって生息地を保護区に指定された。密猟対策として近隣住民を追放するほどの厳重な保護の甲斐あって、コーカサスバイソンの個体数は1914年には737頭にまで回復した。しかし、ロシア革命が勃発して保護がなくなると、住民や反乱軍によるバイソン猟が横行し、数は急速に減っていった。1921年に野生の最後の一頭が射殺された。1925年2月26日に、動物商ハーゲンベックに飼われていた「コーカサス」という名のオスが死んで、コーカサスバイソンは絶滅した。ある意味、皇帝がとってきた保護策の妥当性・必要性を証明する結果となった。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%83%B3

 おもしろい事実ですけど、このスタイルの話が全部本当ってわけじゃないですからね。

 詭弁を弄される方は堪ったものじゃないですので、勘弁してもらいたいです。


 関連
  ■詭弁の特徴(詭弁のガイドライン)
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