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中国の尖閣諸島問題における反日デモで襲われた企業と襲われなかった企業


 とりあえず今ある中国尖閣諸島問題は中国反日デモとチャイナリスク 今後の展望と日本企業の針路で出し尽くしたつもりでしたが、同じ企業関連というテーマで書きかけだったのものが出てきました。

 仕方ないのでもう一回。

反日デモ、パナソニックはなぜ襲撃されたのか
2012/10/29 7:00 日経新聞

 警官隊は続々と集まったデモ隊を手際よくさばく。デモのスタート地点は警察が決めていた。(中略)道路がのびる4つの方向にバリケードを張って交差点に「カゴ」をつくり、最大100人程度のグループごとに順番に招き入れていく。

 「現場の警察の指示に従ってください」「法律に基づいて愛国に対する熱意を表現してください」――。総領事館に通じる道のバリケードにはこんな文字が踊る。ここから先はペットボトルの持ち込みは禁止。5分から10分おきにグループを総領事館方向に誘導していく。

 まるでコンサート会場に観客を誘導するかのような光景だった。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2603J_W2A021C1000000/

 確か上海はもともと落ち着いてたって言われていたと思いますが、整然としたデモだったみたいです。びっくりですね。

 前回の中国反日デモとチャイナリスク 今後の展望と日本企業の針路では緊迫した感じの話がありましたし、やはり場所による差が大きいんでしょうか?
 デモに参加した30歳代の中国人女性から話を聞いた。

 上海市内の日系企業に勤めるこの女性は好奇心から100人規模のデモの隊列に加わった。周りはほとんどが20歳代の男性。「工友会から誘われて来たんだ」。隣にいた黒色のTシャツを着た男性が楽しそうに話しかけてきた。

 工友会とは職場の垣根を越えて同郷の者同士が集うサークルのような組織。普段は酒を酌み交わしたり、仕事の情報を交換したりする。四川省出身のこの男性は上海郊外の工場で働いており、工友会に顔を出しているという。

(略)

 彼女たちのグループもいよいよ領事館の正門前に来た。デモのボルテージは最高潮に達するはず。しかし、そんな彼女の予想を覆し、デモ隊は正門前を素通りしてしまった。

 ええっ?という話。

 何でそうなるの?という変な行動で、予想せずに読んでいたの驚きました。


 この解釈は人によって変わると思われますが、この女性は

・本来、抗議の矛先を向けるはずの場所を認識していない。

・彼らは日本政府への抗議ではなく、ただ単に騒ぎたいだけだった。

 と考えたそうです。

 警察当局が周到に練った治安維持策が効いて、上海ではひどい暴動には発展しなかった。警察のコントロールが効いていたためだ。ただ、標的もあいまいな集団だけに、警察の管理が甘ければ、制御不能になる危うさも感じさせる。

 ということで、上海は成功例ではあったようです。

 ちょっと読んだ記事を忘れちゃいましたけど、そういえば「ここに抗議してください」と誘導していたという報道もあったはずです。

 その記事は確かこれを証拠として「反日デモは官製デモ」といった説明をしていたものだったと思いますが、抗議する対象を教えないとわからない、どこで爆発するかわからないという心配もあるのかもしれません。

 実際、公的機関に抗議が行った……という中国としては避けたい事態は、今回のデモでもあったと思います(これも記事を忘れました)。

 この場合にも下部の機関であり、中央政府への批判でないから許容範囲という説明がつきますが、本来の中国政府の優先順位としては「日本企業>地方の下部組織」だったでしょうから、やはり望ましくない事態です。


 記事のメインテーマである襲われた企業・襲われない企業の差については、以降に説明があります。

 「あのパナソニックさえ襲撃されるとは……」

 (中略)中国政府の要請にこたえ、日本企業として1989年にいち早く中国に工場進出し、雇用創出と技術移転に貢献したパナソニック。中国のためにリスクを顧みなかった同社の決断を知る関係者が受けたショックは大きい。

 中国の歴代政権も「井戸を掘った人を忘れない」とパナソニックを評価してきた。(中略)

 尖閣棚上げがコインの裏とすると表はパナソニックの誘致。トウ小平はこの訪問の際、大阪府のパナソニックテレビ工場を訪ねて松下幸之助に中国進出を要請し、幸之助から確約を得た。幸之助は翌年に訪中して北京事務所を開設。89年6月初めには北京にブラウン管工場を建設して生産を開始した。その直後に天安門事件が発生したが、中国側の要請を受け入れて本格生産に移行した経緯がある。

 今回、反日デモが過激になったのは日本が尖閣諸島を国有化することで「棚上げ論を否定した」との中国側の憤りが背景にあるという。パナソニック襲撃は、当時の約束が反故(ほご)にされたのだから「井戸を掘った」パナソニックも特別扱いしないという意思表示ともとれる。

 その予兆はあった。当初は順調に事業を拡大したパナソニックだが、(中略)友好のシンボルだった北京のブラウン管工場は経営不振に陥り、2009年には中国側の合弁相手に持ち株を譲渡して撤退した。当時、リストラを巡って労働争議も起きたとされる。

 「トウ小平時代は完全に終わった。暴徒の中にはパナソニックが中国経済に貢献した経緯を知らない人も多いだろう」ということで、今回中国への過去の貢献度は関係しませんでした。


 このパナソニック襲撃には他にも様々な見方があり、

"パナソニックの工場があった山東省青島黄島区は(中略)中国全体から見ても被害が深刻だった"

「山東省はもともと政治的に北京に従順な土地柄。『日本に徹底抗議せよ』という指示に忠実に従った結果だろう」

「青島の黄島区は地方からの出稼ぎ労働者や大学生が多く、デモが過熱しやすい土壌がある。当局も制御しきれなかった」

 といったものもあります。


 さらに「従業員のデモが発生するのは電機の工場ばかり」(日本人経営コンサルタント)であり、近隣の自動車工場(トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの合弁工場はデモなし)との賃金格差で特に不満が溜まっているというものもありました。

 ここから成功例に移っていきますが、電機系でありながら"被害を最小限に食い止めた"コニカミノルタという例も存在します。

 9月18日は朝から落ち着かない雰囲気だったという。6000人の従業員たちの多くは携帯電話のショートメッセージなどを通じて、工場前の大通りをデモ隊が昼ごろに行進することを知っていたからだ。(中略)

 「すぐに全員を帰宅させよう」。従業員を大型バスに次々に乗せて、寮に送り届け、デモ隊との合流を未然に防いだ。即決したのは中国人の工場幹部だ。

 前日の17日。「対応は我々に任せてください」。同工場トップの董事長である渥美浩三ら日本人幹部に対し、2005年の工場稼働以来ここで働く中国人幹部が訴えた。30歳代後半の彼らは人事総務部の副部長など要職に就いており、工場運営の中枢を担っていた。この工場でキャリアを積んできた彼らの「工場を守る」意識は強かった。渥美らは彼らの意見を採用した。

 「デモに参加したいと言ってきたらどうするか」

 「無理に行くなとは言えない」

 「仮に行ったとしてもとがめないようにしよう」

 中国人幹部は盛り上がる「反日」を前に、無理に止めても従業員を刺激するだけで得策ではないと割り切った。その上で、日本人幹部と情報を共有し、地元警察や政府関係者と連携を取り「デモが発生したら、すぐに操業を止め、従業員を帰宅させる」という基本方針と手順を決めて臨み、混乱を回避した。

 もう一方のコニカミノルタ(中略)工場。ここでも知恵を絞ったのは中国人幹部だった。

 昼休み、周辺で強まるシュプレヒコールに呼応し、工場と食堂を隔てる公道で何人かの従業員が「釣魚島は中国のものだ」などと叫び出すと、瞬く間に人が膨れあがった。止めようとする中国人幹部社員に「おまえは日本人の犬か」と罵声を浴びせ、数百人規模に増えた従業員のデモ隊は街中へ繰り出していった。

 この状態が毎日続けば工場は機能しなくなる。どうやって従業員に冷静さを保ってもらうか。

 「早上好(おはよう)」。20日、工場のすぐそばにある従業員寮の前、中国人管理職が総出で出勤する従業員一人ひとりに声をかけていた。同日の昼休みも工場と食堂を結ぶ公道上に管理職が立ち、自分の部下を引き連れては一緒に食堂に入る。15人前後の部下と食事を共にするグループリーダーたち。密なコミュニケーションを取り戻したことによって、若い従業員たちは職場へと戻っていった。「反日を叫ぶデモの前で、日本人は前線で指揮を執ることはできない。中国人幹部が若い従業員とうまく対話できたから、難局を乗り切れた」。(中略)両工場を指揮する渥美は言う。

 日本人が出て行っても火に油を注ぐだけですが、中国人だったとしても工夫が必要なようです。(インドの例ですが現地の従業員が殺されています。むしろ同族の上司だけに妬みで……ということも十分考えられます。暴動ではありませんが、日本方式で仕事をさせる場合、中国人上司は日本人上司より恨まれやすいという話も聞いたことがあります。外国人なら仕方ないと思えないからという理由だそうです)

 完全な解決策とはなっていませんが、日経新聞では最後にこうまとめていました。
 企業への襲撃は完全な無差別攻撃とはいえない。工場の立地、資本構成、中国人幹部の存在、賃金水準……それぞれの日系企業が抱える条件は様々だが、「襲われる理由」をつぶしていかなければ、不安は消すことはできない。

 そこまでして中国に進出する価値があるか?というのはありますが、長期的視野での決定や既に中国に進出してしまっている場合はこういったことを考えざるを得ないようです。


 追加
  ■中国外交文書、1950年に尖閣諸島は沖縄(琉球)の一部という認識 石油資源判明まで76年間異議唱えず

 関連
  ■中国反日デモとチャイナリスク 今後の展望と日本企業の針路
  ■尖閣諸島問題と台湾の重要性 中国の主張は台湾統一なしでは成立しない
  ■尖閣諸島・竹島問題での世界の反応 海外メディアはナショナリズム・右傾化を懸念
  ■在日韓国人は竹島問題をどう思う?日本の主張への反対意見や戸惑いの声
  ■その他の政治(時事)について書いた記事

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