うちでも犬を飼っているので、他人事ではなく心配なのですが、飼い犬が配達業者の人など他人を怪我させてしまう…ということが考えられます。これ自体が防ぐべきことであり、お金の問題ではないのですが、損害賠償・慰謝料の金額も驚くほど大きくなるために、金額の算定事例を知ると事の重大性を認識しやすくなると思われます。
また、こうした事件を起こした飼い犬は殺処分されることがあり、愛犬のためにも未然に事故を防ぐことが大事とも言えるでしょう。
2012/11/23:
●おとなしい性格の人懐っこい犬だからと放し飼い状態に
●飼い犬が配達業者の人を噛んだ!後遺障害が残るほどの怪我に
●法律でも規定!飼い主には飼い犬の管理義務があるとされている
●お金の問題ではないが、損害賠償・慰謝料の金額の大きさに驚き
●飼い主は犯罪者…飼い犬のためにも管理が必要な理由とは?
●管理不足な飼い犬を殺されても飼い主は文句をいうことができない
2020/07/23:
●散歩中のミニチュアダックスで転倒した男性が訴訟、賠償金額は?
●おとなしい性格の人懐っこい犬だからと放し飼い状態に
2012/11/23:実家でも犬を飼っていて、気をつけなくちゃいけないなぁ、怖いなぁというのが、ペットによる人や他人のものへの被害です。これは常々思っていたことですので、
愛犬が配達人を咬み全治3ヵ月の怪我 飼い主が取るべき行動と法的責任とは(2012年11月14日 ダイヤモンド・オンライン 弁護士・好川久治、協力:弁護士ドットコム)という記事を読んでみました。
東京都内にある一戸建ての自宅で、3歳になる中型犬を飼っていたある人のケース。この犬は獰猛な性格でも、人嫌いでもなく、むしろ逆。もともとおとなしい性格の人懐っこい犬だったそうです。そういった油断もあり、健康のために屋内と庭先では放し飼いにしていたとのことでした。
ただ、臆病だからこそ攻撃するということはあるんですよね。この犬も知らない人と出くわしたり、驚いたりすると、人に向かって吠えたり、飛び掛かったりすることが何度かあったとのこと。明らかに危ないです。
ところが、「念のため、首輪をつけて、つないでおいた方がいいのだろう」と思いつつ、人に吠えることはたまにあったにせよ、人を傷つけるようなことは一度もなかったため、首輪を常時つけておくということはしなかったそうです。
●飼い犬が配達業者の人を噛んだ!後遺障害が残るほどの怪我に
ところが、終末に自宅のテラスの窓を開けて、庭いじりをしていたときに事件が起きました。玄関先で犬の吠える声、そして、直後に女性の悲鳴。慌てて玄関へ駆けつけると、興奮状態の犬が普段見せることのない形相で吠え続け、唸り声を上げていました。そして、悲鳴の主である女性は、腕から血を流して倒れこんでいたといいます。
女性は宅配便の配達の方で、門を開けて玄関扉にあるインターホンを押そうとした瞬間、犬が飛びかかってきて、腕に噛みいたとのこと。また、悪いことにその拍子に転倒し、衝撃で右腕が上がらなくなってしまいました。
飼い主は、左腕の前腕部に裂傷ができており、かなり深くえぐれていたことを確認しています。すぐに救急車を呼び、病院へ急ぎました。しかし、病院での治療の結果、右上腕骨骨折、左前腕犬咬傷、臀部打撲で全治3ヵ月。2週間入院し、退院後も4ヵ月間の通院が必要。しかも、骨折のせいか、完治した後も、右腕が思い通りに動かないという後遺障害が残ってしまいました。
うちの犬は庭では放し飼いにしていないですが、室内では自由ですので、やはり怖いと感じる話です。
●法律でも規定!飼い主には飼い犬の管理義務があるとされている
倫理的にもそうですが、法律的にも当然、飼い犬が人に怪我をさせた場合、飼い主には怪我をした人が被った損害を賠償する責任があるとされています。これは別に意外ではなく、そりゃそうであろうという話でしょう。
民法718条では、「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りではない」と規定。飼い主には、飼い犬が人に怪我をさせたり、迷惑を及ぼしたりしないように注意すべき義務があり、人に損害を与えた場合には不法行為責任を負うことになるとのことです。
<相当の注意をもってその管理をしたときは>とあるものの、この証明はほぼ無理と言って良いほど難しい感じ。上記の例では、放し飼いですのでそれ以前の問題でしょう。放し飼いである時点で、もちろん十分な管理はできていないと考えられます。
●お金の問題ではないが、損害賠償・慰謝料の金額の大きさに驚き
お金がかかるから…という問題じゃなく、人を怪我させてしまうということ自体が問題。ただ、今回の条件で被害者を30歳兼業主婦とした場合の損害金額の試算もありました。すごい金額ですよ。金額の問題じゃないとしても、こうやって見た方が重大性を認識しやすいでしょう。
<治療費> 約100万円
<休業損害> 約70万円 (入院期間100%労働能力喪失、通院期間50%喪失)
<入通院慰謝料> 約110万円
<後遺障害> 約224万円(1上肢の1関節機能の障害12級)
<逸失利益> 約809万円
<交通費> 約5万円
<物損> 約5万円
<入院雑費> 約2万1000円 (2週間)
合計 約1325万1000円
●飼い主は犯罪者…飼い犬のためにも管理が必要な理由とは?
記事では書かれていませんでしたが、当然怪我の度合いや相手の年齢などでさらに増えることもあります。また、"民事の損害賠償だけに止まら"ず、"刑事でも、重(過失)致死傷罪(刑法209条、210条、211条1項後段)に問われたりすることもある"そうです。
その他、"行政から必要な措置命令、例えば施設内飼育の命令や口輪の装着命令、場合によっては殺処分などが課せられたりすることもある"とのこと。前述の飼い主は「犬のため」と放し飼い維持を優先したようですけど、本当は犬のためにもきちんと管理する必要があるのです。
以前も書きましたが、私の身近でも人を噛んで殺処分されたワンちゃんがいます。ソフトバンクのCMで有名な北海道犬でした。北海道犬は結構気の荒い犬種です。
なお、記事では万一人に損害を与えた場合に備え、損害賠償責任保険に加入しておくことを推奨していました。これは飼い主本人ばかりでなく、被害者のためにも求められているとしています。十分に償わなくてはいけないからですね。
●管理不足な飼い犬を殺されても飼い主は文句をいうことができない
また、
犬に噛まれた場合の損害賠償 | 損害賠償・慰謝料 - 法、納得!どっとこむでは、あり得るのになかなか思いつかないであろう事例もありました。
質問者は、犬の攻撃を防ぐために、持っていたかばんで払いのけたところ、そばの電柱に犬が激突して死んでしまったとのこと。質問者は被害者なのですけど、飼い犬むしろ損害を賠償しろと言ってきて困っている…という質問でした。
しかし、前述の通り、飼い主は飼い犬を管理する義務があります。回答では、このような場合、犬が飛び出してきたのは飼い犬の管理上の不注意が原因であり、あなたは自分の身を守ろうとしたのですから、正当防衛が成立します(民法720条1項)としていました。
したがって、犬が死んだことに関する損害を賠償する必要はありません。さらに、この場合、刑事上の責任(動物傷害罪;刑法261条)も負うことない(刑法36条)、とのことでした。先の殺処分の話と同様に、愛犬のためにも未然に不幸な事故を防ぐことはとても大切なのです。
●散歩中のミニチュアダックスで転倒した男性が訴訟、賠償金額は?
2020/07/23:賠償金の事例を追加。最初に書いていたのとは違い、噛んですらいない事例であり、より飼い主の注意が必要という事例と言えるかもしれませんね。タイトルで賠償金額もわかる
小型犬飛び出して転倒、飼い主側に1200万円賠償命令:朝日新聞デジタル(2018年3月23日 20時34分)という記事が出ていました。
訴訟は、飛び出してきた犬を避けようとして転び、けがを負ったとして大阪府高槻市の40代の男性が、飼い主と保険会社に3948万円の損害賠償を求めたもの。ランニング中、前方から飛び出してきたミニチュアダックスフントを避けようとして転倒しています。
男性は骨折し、しかも、右手首が曲がりにくいなど後遺症が残ってしまいました。飼い主は当時、犬にリードをつけて散歩させていたのですが、犬が突然走り出し、手を離してしまったようです。大阪地裁は判決で、散歩の際はつないでおく義務があると指摘。本来得られたはずの収入との差額867万円や治療費などを含めて1284万円の支払いを命じました。
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