私のいた会社もそうだったんですが、有給休暇を取るには必要で、しかもその理由ももっともらしいこと(?)を書かないと都合が悪いみたいで書き直しを要求されます。残念ながら「違法」とまでは行かないようですが、こういった要求は本当は間違いなんだそうです。
2022/03/11まとめ:
●有給休暇(有休)取得のたびにボーナスが減る会社…は違法か?合法か?
●実は有給休暇に理由は必要ない会社側が労働者に理由を聞くと違法?
2012/11/26;
Wikipediaの年次有給休暇で「理由」という言葉が最初に出てくるのは、<年次有給休暇の請求・取得>という部分。理由はいらないということが明記されています。ただ、残念なことに「理由を聞くのが違法」とまでは書かれていません。
<使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季(法文上「時期」ではなく「時季」)に与えなければならないのが原則である(労働基準法第39条第5項)>
<年次有給休暇は労働基準法により労働者の権利として認められているものであり、またその
理由(利用目的)は労働基準法の関知するところではなく労働者の自由である(最判昭和48年3月2日)ことから、労働者は有給休暇を取得する旨を事前に使用者に伝える必要はあっても、その
理由までを使用者に伝える義務はない。所属する事業所に対するストライキが目的でない限り、
有給休暇は「理由なし」も含めて理由の如何にかかわらず取得できるものであり、使用者は労働者に対しその
理由をもとに有給休暇の取得を制限することはできない(最判昭和62年7月10日)>
お互い様ですので、常識的に考えて繁忙期に有給休暇ぶつけられたら困るよというのは、会社側からしてもあって良いと思います。たとえば、お餅を作る会社で正月に備えた餅作りの真っ最中に有給休暇を申請されると、ブチ切れたくなるのもわかります。
しかし、実際には会社側が一方的に強い状態で、社員側の権利が強いように読み取れる上記とは全く違う光景が日本各地で繰り広げられていることと思います。まるであべこべであり、到底「お互い様」などとは言えない状況。Wikipediaの文章は現実とは遠く離れた別世界の物語のようです。
●有給休暇に理由は必要ない むしろ理由がいるのは取得を拒む会社側
ということで、意外なことに有給休暇を取る際に理由は必要なし。しかも、Wikipediaで「理由」というキーワードが出てくる部分を読んでみると、理由が必要なのはむしろ会社側のようですね。これは、<時季変更権>という項目に説明で登場します。まず、この時季変更権の説明から。以下のようなものだそうです。
<使用者は、労働者の請求通りに有給休暇を与えると事業の正常な運営を妨げる場合に限り、例外的に他の時季にこれを与えることができる(労働基準法第39条第5項但書)>
ところが、この時季変更権の行使すら会社側は簡単にはできないんだとのこと。有給休暇の取得を拒否することもできないといいます。この場合、理由を聞くのとは違って、明確に「違法」であるようです。しかし、残念なことに、「飽くまで法律上は…」というのが、現在の日本の悲しい現実なんですけどね。
<時季変更権の行使要件は「事業の正常な運営を妨げる場合」であり、
単に業務多忙という理由では行使はできない。代替勤務者の確保や勤務割を変更するなどの努力せずして時季変更権の行使は許されない(最判昭和62年9月22日)>
<使用者に与えられている時季変更権は、文字通り有給休暇を与える時季を変更することができる権利であって、労働者からの
有給休暇の取得請求そのものを拒否できる権利ではない。ストライキの例外を除き、使用者には一切の拒否権がないので、労働者に対する有給休暇の付与を拒否することはできず、労働者の請求により発生した与えるべき有給休暇を後から取り消す余地も当然にない>
●2010年から適用された国のガイドラインでやっと一歩前進したが…
おそらく会社が上記の条件を満たして有給休暇の申請を拒めるというケースは、「ほぼない」と言ってしまってよいでしょう。現在拒否しているものは、100%近く違法だと思われます。
なので、上記をそのまんま適用すると「会社側に厳し過ぎない?」といった感じに。ただ、前述の通り現在厳しすぎる扱いを受けているのは会社側ではなく社員側。全く逆になっています。次の<低い有給休暇取得率の原因と対策>という部分からもその現状がわかるでしょう。
<厚生労働省の「平成16年就労条件総合調査の概況」によれば、1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除いたもの)は、労働者1人当たり平均18.0日であるが、そのうち実際に労働者が取得した数はその半分にも満たない8.5日であった。この要因としては、日本では休暇消化を容易にするための人員構成が「経営効率化や人材育成の面で無駄が多い」として導入に反対している経営者が多いうえ、労働者の側にも有給休暇の取得をためらわせる様々な事情が絡んでいるためではないか、と言われている>
2010年から適用された国のガイドラインでは、有給休暇の取得を事業主に促進する方向性のものであり、やっと一歩前進。とはいえ、これは強制的なものではないために、続けて改善が必要だったのですけど、その後の状態を見てわかるように、この後は続かなかったようです。
<厚生労働省は日本の労働者における有給休暇の取得率の低さを問題視し、うつ病や過労死、過労自殺に繋がる大きな要因であると危惧しており、労働時間の短縮や有給休暇の取得を事業主に促進する取り組みを定めている「労働時間等の見直しガイドライン」の改正を公示し、2010年4月1日から適用された。ただしこれは努力義務のみ定めたもので強制力はない>
●事実上の圧力!日本政府は理由を聞くのを禁止にした方が良い
先にも書いたように、<ただし、使用者が労働者に対し有給休暇の理由を聞くことを禁止・制限する法律はない>ということで、有給休暇の理由を聞くことそのものは禁止ではないようです。
しかし、この「理由を聞く」ということ自体が、有給休暇取得阻止に大きな力を発揮している可能性があります。
2012-10-23 会社は、社員に休暇の理由なんて尋ねるな 脱社畜ブログではそこらへんを鋭く批判していました。(作者は"元会社経営者で、現在は一応会社員"とのこと)
<会社が従業員に休暇の理由を尋ねるのはナンセンスだ。(中略)
こういうことをいうと、「上司としては、部下がなぜ休んでいるのかも把握しておく必要がある」とかなんとか、よくわからないことを言う人がいる。部下が休んでいる理由を知らないことで、何か仕事上の不利益が発生することが果たしてあるんだろうか。(中略)
また、理由を尋ねるというのは、「明確な目的が無いのに会社を休むのはおかしい」といった考えが裏にあるようで嫌な気持ちがする。(中略)「免許の更新」とか、「荷物受け取り」とか、「家族旅行」とか、そういった理由がないんだったら会社に来いというのは乱暴な話だと思う。(中略)
理由を尋ねることで、「こんな理由で休むのはよくないかな」と思ってしまって、
有給取得が萎縮されることは十分に考えられる。有給の取得理由を会社が尋ねるのは、暗にこの効果を狙っているのではないかと邪推してしまう。>
途中でも書いたように私はこのまんま厳密にやると、会社側がかわいそうかなという気もしています。ただ、しつこく書いているように現実はまるで正反対となっており、今のところは会社側に同情するところはありません。最低でもお互い様…というところまで持って行かないといけませんね。
●ゆとり新人社員に呆れた…「ゲーム発売日に有給休暇」は非常識?
2017/04/28:有給休暇に関しては、その後、
ペットが死んで休むと批判が出る日本でユニ・チャームが忌引を新設といった話をやっています。また、有給休暇とは異なるものの、「むしろ理由がいるのは取得を拒む会社側」と似た感じで、雇用者側の怠慢が見えたのが、
ブラックバイト!セブンイレブンが風邪で休んだバイトに罰金1万円という話もやりました。
今回はこれらとは別で、
「ゲーム発売日に有休」はモンスター社員なのか? 日刊SPA! / 2017年4月27日 15時56分という話。2ちゃんねるのひろゆきさんが書いたものですけど、彼はたまにもっともなことも言います。
転職サイト(2019/12/24追記:@type系の「typeメンバーズパーク」というサイトだった模様)が実施した「出没注意!? モンスター新人について」というアンケート結果が、今回の話の発端。アンケートのコメントで、「ゲームの発売日に有休」というものがあり、これにネット上では、「何が問題?」「別に新人に限ったことじゃないだろ」など、否定的な意見が目立ったのだそうです。
これについて、ひろゆきさんは、"有休を取るときに理由を説明する義務はないですし、他人が有休を何に使うかってのを聞くと腹が立つんだったら、有休の理由なんて聞かなければいい"としていました。
"「ゲーム発売日なんで有休取ります」って言う社員を「モンスター社員」って呼んでしまうような人たちは、「自分は我慢してるのにお前はルール通りやるのか!」っていう根性論的なものとか、「本当は有休を取りたいのに周りに変な理由で有休取る人だと思われたくない」っていうところからくる嫉妬があったりするんじゃないかと思"うとのこと。
ただ、そもそもほとんどの人が有給休暇に理由がいらないことを知らないと思うんですよ。しかも、かなり多くの人が、休むに値するもっともな理由がないと休んではいけないと信じているのだと思います。私が勤めていた会社で理由の書き直しを命じられた…というものそういう理由でしょう。
これらは、たとえ「法的にそうなっている」という勘違いまでがなかったとしても、「常識としてはそうだ」と考えていれば、それが正しいものとしてまかり通ってしまいます。実際には常識がないのは、本当は彼らなんですけどね。
●誰も有給休暇を取らない会社…有休取得のたびにボーナスが減るため
2015/11/5:有給休暇関連ということで、<有給休暇(有休)取得のたびにボーナスが減る会社…は違法か?合法か?>というタイトルで書いていた話をこちらにまとめ。会社側は何とかして社員へあげる利益を減らそうと一生懸命ですね。そんなことより会社の利益増やすことを考えろよと思うのですが…。
さて、今回の元ネタは、「有休を1日消化するたびに、ボーナスが1万円減らされる」という会社の話題。
有休取ったら「ボーナス減らす」 これって違法じゃないんですか?(キャリコネニュース 2014年08月11日 22:00)という記事で出ていた話です。
この会社では消化する人がほとんどいないとのことで、この社員さんは、"これは実質的に有休を取らせないしくみではないかと人事に問い合わせた"そうです。私も問題を感じます。ひょっとしたら違法ってところまで行っている可能性すら感じますね。とはいえ、一応人事の言い分も聞いてみましょう。
人事は「うちの会社の場合、ボーナスは言ってみれば皆勤手当みたいなものなんです。休んだ人のペナルティで給与を減らしているのではなく、皆勤してくれる人を奨励しているだけなのですよ」という説明だったとのこと。いや、それなら最初から皆勤手当を出せば良いでしょうという話。理屈になっていません。
●有給休暇(有休)取得のたびにボーナスが減る会社…は違法か?合法か?
記事で出ていたアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士は「有給休暇を事実上取得しづらい会社って、多いですよね」と最初に言っており、ヒヤッとしましたが、「有休は労働法で認められた労働者の権利。会社制度の不当性をしっかり主張しましょう」との説明。法律的には以下がポイントとなりそうです。
<労基法136条では、有休は労働者にとって重要な制度であるため、「使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、賃金その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならない」とも定められています。
裁判所は、有休取得を一般的に抑制する趣旨での不利益取扱いや、有休取得の結果生じる不利益の大きさのゆえに有休取得を事実上抑止する効果をもつ場合は、無効と判断します。
実際の裁判例でも、有休取得日を昇給上の要件たる出勤率の算定にあたり欠勤日として扱ったケースや、賞与の算出における有休取得日の欠勤日扱いをしたケースなどは無効と判断しました>
今回の件、有給休暇ってのがまた大きいと思われます。「有給休暇を取る奴がいると仕事に影響する!」と、会社や社畜は言いますが、前半の内容を読んでわかるように、本来は休む人もが出ても仕事に影響ないようにするのが会社の役割。ただ、現実の日本では全然そんなことになっていませんけどね…。
なお、"過去の判例では、タクシー会社における同様の訴訟で、労働者が敗訴したこと"もあるそうです。ただ、これはタクシー会社という特殊な業界であることや、金額の小ささなどが影響した模様。今回の例のような1万円なら十分に高い金額では?と、岩沙好幸弁護士は予想されていました。
繁忙期だろうが何だろうが平気で有給休暇取りまくり!という労働者に優しい理想の社会にまで行かなくても、せめてもう少し労働者側に有利にならないもんですかね? 日本は経営者にあまりにも有利すぎて、ひどすぎ…。これは、経営者と癒着した政党ばっかり人気だからかもしれませんけど…。
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