2012/11/27:
●報酬制度を見れば企業がわかる?そこには企業の理念が表れる!
●カヤックの場合は上司の評価よりチーム全体からの評価を重視する
●食べログの評価方式は人事評価精度にも良い?カヤックの評価制度
●「チームワークを大切にする会社」という理念が見える評価制度
●公平性があるとされる360度評価には、デメリットも指摘されている
●食べログ方式では、信頼できる評価者とそうじゃない人を区別する!
●そもそも上司が「正しい評価」をするという証拠はあるのか?
●カヤックはむしろ積極的に離職率を高めようとしている変な会社
2013/11/12:
●ページランクアルゴリズムで人事評価を サイバーエージェントの実験
●「すごい人がすごいと思う人はさらにすごい」という思想を持つ制度
●結局、素人の評価であることは360度評価系の弱点となってしまう
●360度評価のデメリット「談合」はページランクアルゴリズムでも可能
●評価を公開してしまうことはデメリットの方が大きいのでは?
●360度評価系のデメリット談合不正、対策は可能なのか?
●ページランクアルゴリズム評価によるボーナスは過去に実施例あり
●報酬制度を見れば企業がわかる?そこには企業の理念が表れる!
2012/11/27:タイトルに惹かれて、株式会社カヤックの人事評価方式について読んでみました。
社員の実力は「食べログ」の得点方式で分かります(柳澤 大輔 日経ビジネスオンライン 2012年11月14日(水))というものです。
カヤックの柳澤大輔さんは、「実は、僕は報酬制度こそが、その会社の理念や考え方を一番あらわしているものなのではないかと思います」としていました。報酬制度には、その会社の報酬に対する考え方、どんな人材を高く評価するか、何を大切にしているかなどが見えるためとのこと。
逆に言うと、経営者はそこに真剣に取り組まないといけないと思うし、そこを人任せにしてはならない、ともしていました。大企業になると大胆なものは難しいとも言っていますが、わからなくはない話。採用もそうですが、何を評価して何を評価しないかは、会社の哲学が現れる部分でしょう。
●カヤックの場合は上司の評価よりチーム全体からの評価を重視する
では、カヤックの哲学を表すカヤックの報酬制度はどのようになっているのか?という話がこの後あります。カヤックは実力主義を取っているのですが、特徴となるのは直属の上司の評価ではなく、チームメンバー全員の評価の総和を見るというところ。具体的には、以下のような感じだそうです。
<自分が所属するチームのメンバーに対して、お互いに全員に点数を付け合い、実力ランキングを算出します。これが報酬を決定する際のもっとも参考になる資料となります(最終的には現在は役員がそれをもとに最終決定しています)。
チームメンバーの総意を反映している意図は、軍隊型組織のように直属の上司の評価に評価されればよいのではなく、チーム全体からの評価がを重視する、チームで働く組織としたいためです。点数をつける人間には、上司もいれば、部下もいる、同僚もいる。もちろんそれぞれの評価の点数に対する重みづけは違いますが(上司の方が重みは上になる)、みんなの総意が自分の評価になります>
●食べログの評価方式は人事評価精度にも良い?カヤックの評価制度
全員に評価をするように求めると困る人もいると思われますが、評価基準は主観だそうです。
<採点の基準については、何をもって実力とするか、どういった面を見てくださいというヒントは示していますが、基本的にはチームの中における相対論で、各自の主観でよいと言い切っています。いくら、厳密に定義された評価項目を設けたとしても、どうせ主観になるのです>
たとえ主観であっても、みんなの主観が集めれば、結果として、実はその総意は、意外とチームにおける実力順は正当になると考えているから…とのこと。また、これをタイトルにあった「食べログ」の得点方式と説明しているようです。
<この仕組みは、例えて言うならば「食べログ」の点数や、「Yahoo!映画」の口コミの点数のようなものです。食べ物や映画などといった極めて個人の主観によって本来、評価がかわっちゃうようなものでも、ある程度みんなの総意が集まれば、信頼のおける点数になる。そういった思想を反映した評価システムとなっています>
●「チームワークを大切にする会社」という理念が見える評価制度
本当にこの評価基準が正確だと言えるかどうかは不明ですけど、とりあえず、企業の理念が見えるところではあります。以下のような話もされていました。
<それに、もともと報酬というものは、チームに与えられた原資であり、それを貢献に応じて分配するにすぎない。となるとみんなの総意で分配率が決まるというのはチームワークを大切にする会社においては良いことだと思っています>
また、他社にとって良い評価制度であるかも不明。カヤックの柳澤大輔さんも「これはカヤックがwebクリエイター90%という職種を絞った集団だから機能するのだと思います」としていました。ランキングをつけあうチームは、プログラマー、デザイナー、ディレクターなど同じ職種のもの同士であるという特殊性があるためです。
●公平性があるとされる360度評価には、デメリットも指摘されている
本文では出ていませんでしたが、この話を読んで、いわゆる360度評価と似たようなものじゃないかと思いました。明記していないということは違うのかもしれませんが、360度評価であれば他にも実施している会社が存在します。
h人材マネジメント用語集の解説によると、360度評価とは、上司や部下・同僚や仕事上で関連する他部署の人など各方面の人が被評価者を評価する手法。この場合は、職種の違う人も評価します。部下を除き、上司や同僚を入れた場合は180度評価とも言うようです。
この360度評価の導入の目的としては、複数の評価者が評価することで客観性・公平性を実現することがあるとのこと。本当に客観性・公平性があるかは研究が必要だと思いますけど、メリットと言えそうな部分です。
ところが、すでにデメリットが多いこともわかっているようでした。例えば、評価者が部下で、被評価者が上司である場合には上司が部下へ媚びたり、同僚同士であれば談合が行われたりするリスクを指摘。私も評価者同士の話し合いによるインチキの可能性は真っ先に思いつきました。こうなると、到底公平性があるといは言えなくなります。
●食べログ方式では、信頼できる評価者とそうじゃない人を区別する!
また、評価者が評価者しての教育を受けていない場合は適切な評価になりにくいケースもあるとされていました。カヤックの場合は前述の通り、これを完全に無視して、たとえ主観であっても良いとしていました。これを食べログ方式と言っているわけですね。
ただし、カヤックの場合は、上司の方が重みは上になるとしていますので、評価者によって反映具合を調整しています。そして、実は食べログも
口コミサイトのやらせ投稿 ヤフー知恵袋と食べログで対応が真逆の件で評価制度を改めて、評価者による重みを調整しています。
おそらく作者の柳澤大輔さんはこれは意識していないものと思いますが、こういうところも食べログ方式っぽいかなとちょっと思いました。確かアマゾンはそういったことをやっていないのですが、信頼できる評価者とそうじゃない評価者で、重要性を変えているというのは、評価の精度を高める良い考え方だと思われます。
●そもそも上司が「正しい評価」をするという証拠はあるのか?
私は年功序列制度に疑問を持ちながらも、実力主義を支持しきれていません。それは「正しい評価」というのが難しいため。前述のような上司重視という工夫をしたカヤックの場合にも、この評価制度が公平だとは言い切れないのではないかと考えます。
職種によっては実力を評価しづらいものがあり、上司だからと言って評価が正確だとは到底思えません。実際、ある上司のもとで評価されていた人が別の上司には冷遇される…といった風に、上司によって部下の評価が変わるというよくある話は、評価が到底一定とはならないことを示しています。
ただ、上司が正しいとは限らないという観点であっても、その上司について「重みをつける」程度にとどめて、多くの人の評価を参考にしているカヤックのやり方はバランスが良い…ととらえることも可能かもしれません。上司だけ評価するという制度よりは、マシな可能性があります。
●カヤックはむしろ積極的に離職率を高めようとしている変な会社
評価基準とは関係ないのですが、おもしろかったのが離職率の話。カヤックは変化を大切にしていため、離職率はある程度高い組織でよいと思っているとのこと。逆に、人事部には一定の離職率を保つような目標があるといいます。むしろ積極手に離職率を高めようというのは、非常にユニークです。
現役ブラック企業社長が特徴と手口を披露 長時間労働や叱りで社畜化で出てきた会社も社員を辞めさせることを重視していました。ただ、そのやり方だと会社は維持止まりで成長まではできないと説明されており、停滞企業じゃないカヤックではそれとは違うのでしょうね。
退職して終わりではなく、その後も繋がりを保つ退職に積極的で、退職者で人材ネットワークを拡大するという戦略の会社もありました。確かリクルートだったと思います。ちょっと検索すると若いときの退職金が良いとか、定年退職がいないとか、今は見限り退職も多いとかという記事があったのでたぶんリクルートで合っているんじゃないかと思います。
ここらへんのむしろ積極的に離職率を高めようとしている…といったところなんかも、まさに企業理念が現れている部分と言って良いでしょうね。
●ページランクアルゴリズムで人事評価を サイバーエージェントの実験
2013/11/12:もともと別の投稿だったですが、上のカヤックの話とといっしょに見た方が良いと思っていたので、同じページに統合しました。今回見たのは、
PageRankアルゴリズムを使った人事評価についての実験 | 株式会社サイバーエージェントというページ。ここで出てくるPageRankアルゴリズムというのは、要するにグーグルの検索順位を決める考え方のことです。
このPageRankアルゴリズムを相互評価の結果に適用し、評価されるべき人材の抽出の材料として利用できるか実験を行ったという話。これは、現状の専門職に対する評価にはデメリットがあるという問題意識から始まっているようです。以下のようなことが書かれていました。
<専門技術職の評価者と被評価者(以下メンバーと記載する)による方法ではビジネススキル・技術スキルを多面的に判断・評価することができない。
技術スキルはビジネススキルを前提としており、且つビジネススキルだけでは専門職としてパフォーマンスを出すことができないからである。
つまり、どちらか片方だけ高いスキルを持っていても「専門職」としては高い評価を得られない(得られるべきではない)>
●「すごい人がすごいと思う人はさらにすごい」という思想を持つ制度
これは「すでに実験をしましたよ」という話で、結果がわかっています。その結果を見ると、時期によって評価にばらつきが見られており、開発の段階でよく働いている人が評価される傾向にあります。これ自体はむしろ健全だと考えられるものでしょう。
また、「すごい人がすごいと思う人はさらにすごい」理論で縁の下の力持ち的な業務の担当者を評価を見えるようにする"という狙いを持っていたようですが、そのメンバーが他メンバーに対しても評価をしているため3番目以降の活躍しているメンバーも浮き彫りになっている"の考察もありました。
最初に紹介しているカヤックの場合は、360度評価しつつも、評価者に重みをつけることで差をつけています。ページランク制度による「すごい人がすごいと思う人はさらにすごい」というのも、別の考え方による重みづけだと考えられそうです。
●結局、素人の評価であることは360度評価系の弱点となってしまう
これに対する
はてなブックマークの反応を最初に見たときは、肯定的なものばかり評価されていたのですが、後から見直すといつの間にかネガティブなものばかりスターを集めていました。例えば、以下のようなコメントが人気になっています。
<ちっとも定性評価じゃなかった。純然な人の好き嫌いだけによる評価システム。PageRankなら評価の指標を明確にしないとフェアじゃない>2013/11/06
この問題点は前述の360度評価のデメリットと重なる話でしょう。理解できます。ただ、これは「ちっとも定量的評価じゃなかった」と言った方がより良いかもしれませんね。
また、ページランクアルゴリズムの考え方としては、ひょっとしたらたとえ一つ一つの評価が曖昧な評価であっても、ある程度問題ないかもしれません。検索結果の場合は、数を集めることで精度を上げられる…といった考え方がされているためです。ただし、逆に言うと、数が少ないと精度が悪いのではないかとも思う話。普通の人事評価は検索よりずっと評価者が少ないため、偏見で歪められる危険性は高いかもしれません。
●360度評価のデメリット「談合」はページランクアルゴリズムでも可能
また、絶対出るだろうなと思った指摘は以下。前述の360度評価のデメリットで「談合」と表現されていたものです。
<「評価してくれたからお礼に評価返しますね」「俺を評価してくれたら大量の評価ジュース流しますよ、何せうちは高評価なんでね」・・・なんてことになるのか>2013/11/07
<一部の社員同士で結託してリンクファームを作って欲しい>2013/11/06
リンクファームってのは、
Wikipediaによると、ハイパーリンクによってページを相互にかつ大量にリンクしているウェブサイト群のこと。リンクファームは検索エンジンスパムの一種とされており、不正だと考えられているみたいですね。ちゃんとした意味のあるリンクの仕方をしているサイトは、リンクファームとは呼ばれないそうです。
●評価を公開してしまうことはデメリットの方が大きいのでは?
私がサイバーエージェントのやり方で一番納得行かなかったのは、実を言うと、別の部分。評価を「全て公開する」とされていたこと。ただ、はてなブックマークでは、全然問題視されていませんでした。公開する理由について、サイバーエージェントは、<「誰が誰を評価しているか」というのもその人の評価基準になり得るため>としています。ただ、評価情報が公開されることは、多くの問題を引き起こすと考えられます。
実際、サイバーエージェントにおいても、<公開することによって個人に振りかかるネガティブ要素についてはマネジメントで解決する>としていましたので、問題が起きることは想定していたみたいです。その上で、以下のように前向きに捉えていました。
<約半年間、このPageRank評価を使って、実際にマネジメントに利用したが全て評価結果を公開していることから評価者、メンバーともに異論を唱える余地はなく、定性評価を行う上での材料としては非常に参考になったと感じた。
定性評価について、もし異論がある場合は定量評価を元に異論を唱えることができるため、評価をする上でお互いに客観的に議論ができるのではないだろうか。
例えば、メンバーは異論がある場合は「PageRankが高いのになぜ最終評価が低いのか」という議論を行ったり、評価者も「PageRankが低いので最終評価も高くできなかった」という透明な説明ができる>
ただ、「誰が誰を評価しているか」がわかることで、グループ内の力関係が評価にも強く影響していることを私は懸念していました。「異論を唱えることができる」のを良いことのように書いていますけど、これはむしろ力関係に左右されてしまうというデメリットになりそうなものです。
先輩後輩の上下関係は日本だけの文化?海外の上司部下でも注意!で書いたように先輩・後輩の力関係の差が大きい日本では、特にこれが響きそうです。
●360度評価系のデメリット談合不正、対策は可能なのか?
評価が非公開ならそれはそれで不正がしやすいという考え方もわからなくもないのですが、公開されていたとしても前述のように訂正できるかはわかりませんし、そもそも可視化したところでその評価が不正なのか不正でないのかわからないのではないかと思います。
どうせ実験をやるのであれば、わざと不正をしてもらって、どのグループが不正をしたか、あるいは、どの期間に不正があったかを本当に見抜けるかやってみたらおもしいんじゃないかとも思いました。
私は不当な人事評価は定量的にやらない限り必ずされる可能性があると思っていますので、昔ながらの上司による人事評価が望ましいと思っているわけでもありません。おそらく今でも不正はあるでしょう。ただ、公開するという今回のやり方にもすっきりしないものを感じました。
●ページランクアルゴリズム評価によるボーナスは過去に実施例あり
あと、ページランクによる人事評価には先行者がいたようです。<もの凄いデジャブ.........><はてなの方が8年早い>といった反応がありました。ここでリンクされていた
社員どうしでボーナスを計算する - jkondoのはてなブログ(2005-12-12)では、以下のような話がありました。
<2005年秋に、はてなではボーナスの支給額を決めるのに少し変わった取り組みを行いました。14人の社員がそれぞれ自分を含めた全社員を点数で評価し、さらにその点数を元に集計を行って支給額を算出しました。(中略)
単純に平均値を取ったりするのではなく、「高い評価の人からの評価ほど意味がある」という風に重み付けを行いました。つまり、評価の高い人が行った判断ほど価値が大きくなるような計算を行ったのですが、これはちょうど「価値の高いウェブページからのリンクがあるページは価値が高い」というGoogleのPageRankアルゴリズムのようなものです。
こうして算出された値を元に、ボーナスの総支給額を配分して各社員に支給したわけですが、結果は概ね全員の感覚と一致していると思われるものであり、各社員がお互いのことをどのように評価している事も分かってとても良かったと感じています>
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