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月は地球に衝突していた!月の起源を語るジャイアント・インパクト説


 月が落ちてきて地球に衝突するという筋の物語がときどきありますが、実は既に月は地球に衝突したことがあるのです。

 この話はあんまり知られていないんじゃないかと勝手に思っていて、おもしろいでしょ?と今回紹介してみることにしました。今は教科書に載っていたりしますかね? 少なくとも私の頃にはなかった話です。(2012/12/13)

 なお、現在の月は地球に落ちる心配はなく、むしろ月は地球から遠ざかり続けています。
(関連:なぜ月は地球から遠ざかっているのか人工衛星が落下しない理由)


2017/08/02追加:ジャイアントインパクト、実はなかった? 従来の説に矛盾


●月には、親子説・兄弟説・他人説があった

2012/12/13:かつて月の起源については以下の3説が有力だったそうです。

・親子説(分裂説・出産説・娘説) 自転による遠心力で、地球の一部が飛び出して月になったとする説。
・兄弟説(双子集積説・共成長説) 月と地球は同じガスの塊から、同時に作られたとする説。
・他人説(捕獲説・配偶者説) 別の場所で形成された月と地球が偶然接近した際、月が地球の引力に捉えられたとする説。
(月 - Wikipediaより。以降は
ジャイアント・インパクト説 - Wikipediaも参考)

 しかし、"いずれの説も現在の月の力学的・物質的な特徴を矛盾なく説明することができなかった"そうです。問題はいろいろあったようですが、大体以下のような感じです。

・親子説(分裂説)では、本当に分裂が起こるほどの力学的なエネルギーがあったのかという点に疑問がある。
・他人説(捕獲説)では、広い宇宙空間を行く月が、地球から丁度良い距離に接近して引力に捉えられる可能性が低い。
・兄弟説(双子説)や他人説(捕獲説)では、地球のマントルと月の化学組成が似ていることの説明ができない。

 "1970年代中頃にはどの説も行き詰まってしまい、困惑した天文学者のアーウィン・シャピーロ (Irwin Shapiro) は、「もはや満足できる(自然に思える)説明は無い。最善の説明は、月が見えるのは目の錯覚だと考える事である。」という冗談を言うほどであった"そうです。


●月は地球に衝突していた!月の起源を語るジャイアント・インパクト説

 こういった行き詰まりの中で登場したのが、月が地球に衝突した!というジャイアント・インパクト説(巨大衝突説)でした。

 これは"35億年前までは小天体の衝突が多発していたこと"、月はそれより前の"約45億5000万年前に誕生し"ていたといったことが書かれていましたので、月も地球に衝突していたんじゃね?といった感じで出てきたんだと想像します。

 一見荒唐無稽のトンデモ説に思えるこの「月が地球に衝突」説、これが意外なことに結構うまく説明できるようなのです。

 先ほどの問題点は、それぞれ以下のような感じで説明できると思われます。(Wikipediaで直接書いていないところは、勝手に書き足しました)

・本当に分裂が起こるほどの力学的なエネルギーがあったのかという点→分裂ではなく衝突なので問題ない。月と地球の全角運動量が現在程度でも不思議はない。
・広い宇宙空間を行く月が、地球から丁度良い距離に接近して引力に捉えられる可能性が低い→ちょうど接近ではなく衝突。小天体の衝突が多発していた時期なので、衝突なら特に不思議ではない。
・地球のマントルと月の化学組成が似ていることの説明ができない→月が主に地球のマントルの破片からできたため。

 
●月の「製作期間」はわずかに1ヶ月

 その他、ジャイアント・インパクト説の概要やポイントとしては以下のようになっています。

・月は地球と他の天体との衝突によって飛散した物質が、地球周回軌道上で集積してできた。地球がほぼ現在の大きさになった頃、火星程の大きさの天体が斜めに地球へ衝突。その衝撃で蒸発・飛散した両天体のマントル物質の一部が、地球周回軌道上で集積して月が形成された。衝突から1ヶ月程度で現在の月が形成されたと考えられている。

・月の比重 (3.34) が地球の大陸地殻を構成する花崗岩(比重1.7 - 2.8)よりも大きく、海洋地殻を構成する玄武岩(比重2.9 - 3.2)に近いこと、地球と比べて揮発性元素が欠乏していること、地球やテイアのマントルを中心とする軽い物質が集積した月のコアが小さいこと、月の石の酸素同位体比が地球とほとんど同一であること、月の質量が現在程度になることも説明できる。


●ジャイアント・インパクト説なんかトンデモだ!?

 ジャイアント・インパクト説が月形成理論として最も有力な説となったのは1980年代中頃だそうですから、それほど昔のことではありません。まだ30年くらいですね。

 思い切った、それこそ"インパクト"のある説ですので、その間にもいろいろ疑問は提示されていました。

・火星ほどの大きさの天体が、地球を完全に破壊してしまわないような正確な角度で衝突し、衝突で自転軸の傾きを生じさせ(季節を生み出す)、地球で活発なプレート・テクトニクスが起こるようにした(炭素循環のために不可欠)、というようなことが起こる確率は低いのでは?

・分裂説と同様に、月の軌道平面(白道面)が地球の赤道面と約5度傾いているのを説明できないのでは?

 これらについては解説が難しくてよくわからなかったのですが、とりあえずどちらも説明できそうな段階になっているようでした。


●冥王星の衛星カロンなども同様の形成過程か?

 さらに、以下のように他の惑星においても同じような現象が起きているとされています。地球と月の関係だけじゃないんですね。
2005年に発表されたロビン・キャヌプ(Robin Canup)によるシミュレーションでは、冥王星の衛星であるカロンも、地球の月と同様に約45億年前に大衝突によって誕生したということが示唆された。シミュレーションによると、冥王星の場合には、直径が1600kmから2000kmほどある他のエッジワース・カイパーベルト天体が、秒速1kmほどで衝突したとされた。キャヌプは、このような衛星形成の過程は初期の太陽系では一般的だった可能性があると推測している。

また、太陽系外惑星の形成シミュレーションによって、地球型惑星が形成される際には、3個か4個に1個程度の割合で、ジャイアント・インパクトのような大衝突を経験し、月のような衛星を持つ可能性が指摘されている。このことから、他の恒星を回る惑星にも、地球と同じような形成過程を経た月を持ったものがあるかもしれないと考えられている。

●月が地球に衝突ではなく、月のベースとなった天体が地球に衝突

 さて、ここまでずっと「月が地球に衝突していた」という説明の仕方をしてきたんですが、実は正確な言い方とは言えません。

 Wikipediaでは慎重に「火星ほどの大きさの天体」などといった言い方がされていましたが、「月(と地球のごく一部)のベースとなった天体が地球に衝突していた」といった言い方の方が良いです。

 「人間の先祖が猿」じゃなくて、「今の猿と人間の先祖が同じ」なんだという説明の仕方に私が以前こだわった話を思い出しました(「ヒトの祖先がサル」は正しいのか?)。


●月の女神セレネの母の名前をとってテイアと呼ぶ

 で、この月のベースとなった天体にもちゃんと名前がついていて、テイア (Theia) と言います。

 なぜテイアなのか?と言うと、ギリシア神話の月の女神セレネ(ローマ神話ではルナ。ルナは英語で馴染みありますね)のお母さんがテイアだからです。テイアからセレネ=月が生まれた…ということで、きれいな命名です。

 こういうのちょっとおもしろいですよね。

 ちなみに「じゃあ、地球はお父さんか?」と言うと、こちらはうまく行きません。木星はユピテル、じゃあ地球は?のときに調べてみて、結局よくわからなかったところなのですが、おそらく無理やり地球に当てるとすれば大地の神様テルスだと思われます。

 セレネの父は太陽神ヒュペリオンですし、それ以前にテルスは女神です。何しろ大地の神様っていうのは、洋の東西を問わず大体女性です。地母神であり、母なる大地であり…ですからね。

 さすがにそこまではうまく行きませんでした。ちょっと残念です。


●ジャイアントインパクト、実はなかった? 従来の説に矛盾

2017/08/02:月の起源、「巨大衝突」ではなかった? 定説覆す論文発表:AFPBB News(2017年01月10日 06:15)によると、定説である「巨大衝突説」は大きな矛盾を抱えていたといいます。月の成分の5分の1は地球派生で、残る5分の4は衝突した天体の物質となるはずなのに、実際には、地球と月の成分構成はほぼ同一だという矛盾です。

 イスラエル・ワイツマン科学研究のラルカ・ルフさんらがネイチャー・ジオサイエンスに発表した論文は、その矛盾を解消するもの。1回の大規模衝突ではなく小さな衝突が繰り返されたと考えれば、より自然に説明できるのだそうです。

 ルフさんらのチームは、従来考えられていた火星サイズの天体ではなく、より小さい「微惑星」と呼ばれる天体と原始地球との衝突を再現したコンピューターシミュレーションを約1000パターン作成。こうすると、微惑星が衝突するごとに原始地球の周囲に残骸の輪が形成され、その後それらが合体して「小衛星」が形成されることがわかりました。

 そして、この「小衛星」がの数々が最終的に、月を形成したという説明。月の形成にはこうした衝突が約20回必要だったと考えられるそうです。

 なお、当初書いていた話で出てきたように、月ができた当時は小天体の衝突が多発していた時期でしたので、この点に関しては特に無理がなさそうな説明でした。


【本文中でリンクした投稿】
  ■なぜ月は地球から遠ざかっているのか
  ■人工衛星が落下しない理由
  ■木星はユピテル、じゃあ地球は?
  ■「ヒトの祖先がサル」は正しいのか?

【その他関連投稿】
  ■アポロ11号の月面着陸はなかったという疑惑(副島隆彦説)
  ■科学・疑似科学についての投稿まとめ

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