アメリカでは、銃乱射事件による銃規制発表で銃がバカ売れして価格が高騰したという話。アメリカの銃推進派は、銃規制派を共産主義者(日本で言う「左翼」認定)だと決めつけているそうで、銃規制を言い出すだけで叩かれまくるようです。また、右派政治家では「学校の銃乱射事件は捏造」とも言っている人がいて、かなりきついですね…。
2021/04/04:
●アメリカの右派政治家「学校の銃乱射事件は捏造」「911テロは嘘」 【NEW】
●「学校での銃乱射事件の数々は仕組まれたもの」主張の議員が慌てて撤回 【NEW】
●アメリカ、銃乱射事件による銃規制発表で銃がバカ売れして高騰
2012/12/25:
銃乱射事件で銃規制なんて冗談じゃない!だからこそ銃が必要…という推進派の論理(<全米ライフル協会(NRA)やトランプ「銃乱射事件はゲームのせい」>にタイトル変更)の続編的なものです。
オバマが銃規制プラン発表→ウォルマートで銃完売(2012.12.21 13:00 ギズモード satomi(Jesus Diaz 原文))によると、コネティカット小学校乱射事件を受けてオバマ大統領が戦闘用武器販売に制限を加えるプランを発表したら、なんと規制対象となる銃器がウォルマートで飛ぶように売れ、5州においてものの数時間で売り切れになってしまったといいます。
この銃は、なるべく速く、なるべく大量に殺せるようゼロから開発した軍用兵器なのですが、銃業界ではこれを「スポーツ用ライフル」と言います。そして、ウォルマート側は今後も、このスポーツライフルの販売を停止する予定はないと話していました。
このバカ売れで相場は高騰。誰が誰に何を売ろうがほぼ無規制のeBayでは、今回の乱射で使われた武器である、自動拳銃グロックの弾倉の相場が小学校乱射が起こる前の倍の値段に跳ね上がります。同じく今回の銃乱射事件で使用されたAR-15も4000ドルという高値になってしまいました。
●右派には左翼に見える? 銃規制派は左翼!とアメリカの銃推進派
ウォルマートが売りまくっていた一方で、銃取扱店の中には今回ニュータウンで児童大量殺戮に使用された軍用M16ライフルの民間版・ブッシュマスターAR-15を含む自動ライフルの販売を自主規制したところもあります。この対応も銃の高騰に繋がったものと思われます。例えば、ディックス・スポーティンググッズというお店は、「犠牲者・遺族の心情に配慮し」全米511店舗の棚から取り下げたとのことでした。
ただ、銃推進派は「銃反対派=共産主義者」というレッテル貼りをよくするそうなので、銃規制をしただけで「共産主義者」と叩かれるかもしれません。日本の保守派がすぐ「左翼」とレッテル貼りするようなものですね。ただ、日本の場合、保守派でもアメリカの銃の氾濫はおかしいと思う人が多いと思われます。彼らもアメリカから見たら「アカ」なんですね。
記事では、「以上、世界の終わりのように銃が売れまくるアメリカからの報告でした」と締めていたのですが、日本から見ると狂っているように見えてしまう世界です。ここらへんは
銃乱射事件で銃規制なんて冗談じゃない!だからこそ銃が必要…という推進派の論理で書いた通り、複雑な事情というのはわからなくもないですけど…。
●法規制に反対!全米ライフル協会(NRA)は銃規制にブーイング
また、やはり前回書いた賛成派・反対派の意見についての補足として、
NRA、一切の銃規制反対を改めて表明 各方面から批判相次ぐ 2012.12.24 Mon posted at 12:08 JST CNNを。NRA(全米ライフル協会)は欲望に忠実すぎて、すてきです。
米コネティカット州の小学校で起きた銃乱射事件を受けて銃規制が論議される中、米有力ロビー団体、全米ライフル協会(NRA)の幹部が23日、NBCテレビの番組に出演し、銃に対する一切の法規制に反対する姿勢を改めて明確にした。
NRA最高責任者のウェイン・ラピエール氏は番組の中で、「この町が銃規制について論議したがっているのは知っているが、うまくいくとは思わない」と強調。(中略)
与党民主党の議員が提案している銃規制法案をめぐっては、殺傷力の高い銃器の禁止措置を復活させたとしても、子どもたちの安全対策は強化できないと一蹴。1度に撃てる銃弾の数を制限するため大容量の弾倉の販売を禁止する法案についても、今回の事件を起こしたような人物が大量殺人を実行できる方法はいくらでもあると主張して、反対を表明した。
さらに、現在ある銃規制法の大部分は執行されておらず、新しい規制は一切支持しないと言明し、「メディアは何か起きるたびに銃のせいにしたがる」と不満をぶつけた。一方、心の問題への対応を強化する取り組みは支持するとした。
●政治家からNRAの発表に非難が出るもNRAの主張に賛成する人も
NRAの発表に対しては、各方面から批判の声が高まっていたとのこと。政治家の反応が出ています。ただし、全米ライフル協会(NRA)の主張の方に賛成している政治家も一部います。
無所属のジョー・リーバーマン上院議員(コネティカット州選出)はCNNの取材に対し、「NRAの発表には本当に失望した。子どもたちが大量に殺害された事件についての理解を反映しているとは思えない」と語った。
リーバーマン議員はさらに、「NRAは、銃犯罪の原因となり得るすべての要因について対策を講じることに前向きだが、銃は例外という姿勢だ。軍が使うような殺傷力の高い武器も含めて銃が簡単に入手できてしまうことが要因としてあるのは紛れもない事実なのに、そのことは論議するなという。私はNRAがすべてを論議の対象にすると表明してくれることを期待していた」と話している。
また、「この国が直面している危機に対する恥ずべき回避策」(マイケル・ブルームバーグ・ニューヨーク市長)、「非常に恐ろしく、非常に不穏だ」(共和党全国委員会のマイケル・スティール前委員長)といった非難の声も相次いだ。
一方、共和党議員を中心に、ピエール氏に賛同する意見もある。テキサス州のリック・ペリー知事は、学校への武装警備員配置や、教員の武器携行を支持する姿勢を示した。
前回出たブルームバーグさん以外の人の話も聞けました。ジョー・リーバーマンさんは民主党で副大統領候補や大統領候補を争った方。こちらは民主党なので普通。
マイケル・スティールさんは初めて聞く名前ですが、共和党だそうな。Wikipediaを読むと実行力に欠けるものの「死刑制度には反対の意思を表明している」そうで、ちょっと中道よりでしょうか?
一方、リック・ペリー知事は共和党らしい発言。大統領候補選挙に出ていますし、おそらく次も出ると思われます。「トルコはイスラム教のテロリストに統治された国」といったティーパーティーのような共和党保守派にウケそうな暴言を吐かれている方です。
(関連:
アイン・ランド ティーパーティーの母・20世紀アメリカで聖書の次に影響力を持った小説)
●身元調査システムの強化も有力な規制方法か?
もう一つ別記事
ウォール・ストリート・ジャーナル 2012年 12月 24日 11:46 JST 米議会、銃規制めぐる意見相違が鮮明にを。
リンジー・グレアム上院議員(共和、サウスカロライナ州)は23日、NBCの「ミート・ザ・プレス」番組で、自宅に攻撃型ライフルの「AR-15」を一丁所有していると述べ、解決策はこれを取り上げることではなく、銃暴力をなくすための方策として学校の安全を確保し、精神医療に力を注ぐことだと語った。同議員は「AR-15を購入する権利をわたしからはく奪するのは、うまくいかないと思う」と述べた。
(中略)全米ライフル協会(中略)NRAのウェイン・ラピエール副会長は23日、同じく「ミート・ザ・プレス」番組で、新たな規制に断固反対すると述べ、連邦当局が既存の法律を十分に活用していないと批判した。同副会長は「2万の法律に1つ加えても、全く効果はない」と強調した。
同じ番組にその後出演したチャールズ・シューマー上院議員(民主、ニューヨーク州)は、米国は火器と弾薬に対するアクセスを検討することなしに銃暴力を減らせないと述べ、それは「たばこについて話すことなしに肺がんを予防をしようと努めるのと似たようなものだ」と語った。
インタビューに応じた銃規制論者たちは、たとえ議会が行動しなくても、オバマ大統領には特定の銃へのアクセスを取り締まり、身元調査システムを強化する権限があると述べた。
まだできることがあるだろうというのは、一応正論であるとは言えます。
オバマ大統領が盛り込むことのできる他の措置には、銃購入に用いられる身元調査システムの強化がある。このシステムは、ある者が身元調査で合格しなかった場合、地元の法執行当局に通知するものだ。
この措置は以前、広範囲な支持を得たことがある。バージニア州リッチモンドで1990年代に創設された連邦プログラムは他の連邦検察当局が模倣するモデルになった。「プロジェクト・エグザイル」と呼ぶこのプログラムは、銃犯罪の訴追を厳しくし、リッチモンドでの暴力犯罪率を低下させたと広く評価されている。
既にうまく行っているところもあるんですね。とりあえず、やれることをやっておくべきでしょう。
●銃推進派も賛成できる?銃購入の待機期間導入だけで死亡者は減少する
2017/10/25:銃規制に関わる話があったので、全体に見直してから追加。
銃購入の待機期間、年間750人の死亡を回避 米研究 〈AFPBB News〉|AERA dot. (2017.10.18 10:26)という記事です。
米科学アカデミー紀要(PNAS)に16日に掲載された、米ハーバード大学(Harvard University)の研究チームの論文によると、拳銃の購入に待機期間を設けることを義務づけるだけで、銃器関連の死亡数がかなり変わるそうです。驚くべき話ですね。
実を言うと、銃の購入希望者に対して、実際に銃器を入手できるまでの待機期間を設けることを義務付ける法律がある州は既にあります。研究チームは、この法律がある州とない州で比較することによって、待機期間の効果を調べました。
結果、「待機期間は、銃による死亡者数が平均的な州で、銃による殺人事件の年間発生件数約36件の減少に関連していた」とわかりました。驚くべきことと書いたものの、これは理解できる話。誰かを殺したいと思って銃を購入しようと思っても、手に入るのに時間がかかることで、殺意が低下しやすくなります。
よりわかりやすいかもしれないのが、同様に「銃による自殺の年間約22~35件の減少」することもわかったという話。実は、アメリカって銃による自殺がすごく多いんですよ。
自殺は確固たる決意によってなされるという誤解がありますが、実際にはそうではなく心が揺れ動いて何かの拍子に死にたくなるということが多いため、時間を置くだけで自殺を防ぐ効果があるのです。というか、「よりわかりやすいかもしれない」とつい書いてしまったものの、自殺への誤解が多いのですから、むしろ納得できない例だったかもしれません。
(関連:
医療関係者にすらある「自殺未遂者は本当は死ぬ気はない」という誤解)
以上のように待機期間だけで効果があるのですが、「銃による殺人の発生率が17%減少する」ということでしたから、やはり多くの銃犯罪は防げません。とはいえ、既に導入されているところがあるように、比較的銃規制反対派にも受け入れられそうな対策であり、まずこの待機期間導入を目指すというのが良さそうです。
●アメリカの右派政治家「学校の銃乱射事件は捏造」「911テロは嘘」
2021/04/04:米共和党のミッチ・マコネル上院院内総務が、物議を醸している同じ共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員について、共和党ブランドを傷つける「がん」になぞらえ、痛烈に批判していました。グリーン下院議員が911同時多発テロや学校銃撃事件などについて陰謀論を唱えていたたためです。
「(2001年米同時多発テロが起きた)9月11日に米国防総省に飛行機は突入しなかったとか、恐ろしい学校での銃乱射事件の数々は仕組まれたもの(引用者注:Wikipediaによると「捏造」と主張したとのこと)だとか、ジョン・F・ケネディ・ジュニア氏の自家用機を墜落させたのはクリントン家だと言う人物は、現実を生きていない」
グリーン下院議員は、米極右陰謀論「Qアノン」の信奉者で、大統領選で不正があったとするドナルド・トランプ前大統領の根拠のない主張にも同調しているという人だともいいます。また、ソーシャルメディア上で活発に活動し、自らの動画の中で学校銃乱射事件の生存者を侮辱したり、ナンシー・ペロシ下院議長ら複数の民主党議員の殺害を示唆する投稿に「いいね」を付けたりもしていました。
このグリーン下院議員は、2020年の連邦議会選挙でジョージア州から初選出された方。こういう人を選んじゃう国民もこれまたまずいと言えるでしょう。日本でもバイデン陣営が不正をしたという多数のデマを信じている右派がかなりいることを考えると、日本にとっても頭が痛い問題だと言えそうです。
●「学校での銃乱射事件の数々は仕組まれたもの」主張の議員が慌てて撤回
上記を伝えた
Qアノン信奉議員は「共和党のがん」、同党上院トップが痛烈批判:時事ドットコム(2021年02月02日)によると、グリーン議員は、この批判に即座に反応し、ツイッターに「共和党の本当のがんは、潔く負ける方法しか知らない弱い共和党員だ」と投稿。「こんなことだから、わが党は国を(動かす力を)失いつつあるのだ」とも書いており、たいへん勇ましかったです。これぞトランプ支持者といった感じでした。
ところが、2021.02.05の
CNN.co.jp : 米下院、グリーン議員を所属委員会から除名 陰謀論に傾倒 という記事を読むと、勇ましかった彼女の態度が一変していて、これはこれで驚き。所属委員会から除名されそうになって慌てたみたいです。ここらへんはミニトランプらしくありません。
<グリーン氏は(引用者注:除名を決議する)議決に先立ち下院議場で演説し、以前傾倒していた陰謀論「Qアノン」からの距離を置こうと試みた。「問題は私が真実ではないものを信じるようになってしまったこと」であり、後悔しているとも述べた。さらに今は「9.11(米同時多発テロ)は本当にあった」「学校の銃撃事件も本当にあったし、子どもの命も失われた。家族は悲しんでいる」と認識しているとも述べた。また「こうした発言は過去のもので、(今の)私を表すものではない。私の地区や私の価値観を表すものでもない」と発言した>
除名決議は共和党が主導するように…と民主党が求めたものの、共和党はこれを拒絶。結局、民主党が中心となって進めたのですが、共和党内から造反が出たために、余裕で過半数は超えて除名する決議案が賛成多数で可決されました。ただ、過半数なら余裕とはいえ、共和党内で賛成した人に限って言えばそれほど多くなく、陰謀論路線を許容する右派議員はまだまだ多いものと思われます。
<米下院は4日、共和党の新人マージョリー・テイラー・グリーン下院議員を所属する委員会から除名する決議案を230対199の賛成多数で可決した。グリーン氏は陰謀論に傾倒し扇動的で暴力的な過去の発言が問題視されている。採決では共和党議員11人も賛成に加わった>
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