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保護貿易主義と中国のレアアース輸出制限の失敗 フィリピンバナナの輸入禁止、オイルショック、アメリカの大豆禁輸の結果は?


 保護貿易主義・輸出制限などの話をまとめ。<自滅した中国…保護貿易主義と中国のレアアース輸出制限の失敗>、<日本に輸出規制しちゃだめだ!オイルショックで産油国が失敗>、<EU離脱でイギリス離脱に…国内工場建設計画をとりやめて国外に>、<EUとイギリスの輸出入が激減 一方であの国との貿易が増えてしまう>などをまとめています。

2022/12/02まとめ:
●EU離脱でイギリス離脱に…国内工場建設計画をとりやめて国外に 【NEW
●EUとイギリスの輸出入が激減 一方であの国との貿易が増えてしまう 【NEW】


●中国によるレアアースの輸出制限、世界貿易機関(WTO)の見解は?

2012/12/28:レアアースでの中国の自滅的に敗北についてはいろんなところで書いていたので今更なぁと思っていましたが、この前やったTPP反対者はマルクス経済学者?重商主義・保護貿易主義で栄えた国など一つもないで気になった保護貿易主義の例についていくつか載っている記事を見つけましたので合わせた形で紹介します。
(2021/02/22追記:その後すっかり流れが変わってしまい、今では信じられないのですが、民主党政権時代にTPP反対論が強かったころの流れで書いた投稿です)

 その前にまず、中国のレアアース制限がそもそも保護貿易主義的であるかについて。WTO、中国のレアアース制限に言及 保護貿易報告 日経新聞 2010/11/5 0:58という記事が出ていました。「WTOは定期的に報告書を発表しているが、レアアース問題を取り上げたのは今回が初めて」だとされています。

<世界貿易機関(WTO)は4日発表した20カ国・地域(G20)の保護貿易措置に関する報告書で、中国によるレアアース(希土類)の輸出制限を取り上げた。中国が輸出枠を2万8417トンから7976トンに減らしたことに言及。鉱物資源や農産物で輸出制限の動きが広がっていることに懸念を示した>

 なお、報告書では、G20は計54件の保護貿易措置を導入したと指摘し、各国・地域に自制を求めており、レアアース以外にもいろいろと指摘。記事では、「競争で優位に立つための通貨の押し下げは貿易の安定性を大きく損なう」と訴え、通貨安競争を問題視したことも紹介しています。

 これに関しては、"通貨安競争が「新たなリスク要因として浮上してきた」と分析"した報告書が提出されるともあります。"G20が2010年4~6月期に受け入れた外国からの直接投資額は1~3月期に比べ36%落ち込んだ"とあり、どうもこれを通貨安競争のせいとしているみたいですね。通貨安政策は悪いことではないと訴える人が多い中で、それに反する視点となっています。


●自滅した中国…保護貿易主義と中国のレアアース輸出制限の失敗

 さて、本題のレアアースの話。レアアース・バナナ…中国が仕掛けた経済戦争の行方 編集委員 後藤康浩 2012/12/9 7:00 日経新聞という記事では、「奪い合うように買っていた中国産レアアースがなぜ売れなくなったのか?」と書いています。

<内モンゴル自治区や江西省のレアアース鉱山は生産停止に追い込まれていた。世界のハイテク産業で不可欠といわれていたレアアースの需要が激減、在庫の山となっていたからだ。(中略)2010年9月の尖閣諸島での中国漁船衝突事件をめぐってレアアースの対日供給を絞り、一時は日本企業が青ざめ、奪い合うように買っていた中国産レアアースがなぜ売れなくなったのか?>

 その答えは、<日本や韓国などの需要国が「脱中国」を着実に進めたからだ>としていました。輸出を制限した中国政府の政策が失敗。中国の自滅的な敗北となったという見方です。


●日本に輸出規制しちゃだめだ!オイルショックで産油国が失敗

 似たような失敗例を後藤康浩さんはいくつも出しています。一つは、日本でも大騒ぎになった「オイルショック(石油危機)」でした。

<サウジアラビア、リビアなどアラブ石油輸出国機構(OAPEC)はイスラエルを支援する米国とオランダに対し、石油全面禁輸を宣言、さらにイスラエル友好国への供給削減に踏み切った。日本向けの原油供給の減少は一時的なものだったが、日本は国を挙げて「脱石油」に動いた。原子力、液化天然ガス(LNG)の利用拡大、石炭の見直しなどに加え、省エネを強力に推進した。結果的に日本の石油消費は横ばいから減少に転じ、世界の石油需要も伸び悩んだ。
 一方、産油国は原油の値上がりで増産に走り、1986年前半、原油価格の大暴落が起きた。「逆オイルショック」だ。その後、原油価格は03年まで15年以上も低迷した。いったん減った需要、代替物に逃げた需要を再び増やすのはきわめて難しい>

 オイルショックは「各国が協調できなかったため失敗した」と言っている人もいましたけどね。中国のレアアースも実は完全にはコントロールできずに、密掘(と言うのかな?)がはびこっていました。ただ、代替物ができてしまえば需要を失うというのはその通りであり、「協調できなかったため」説では説明が不十分な気がします。石油に関しては以下のようなコピペもありました。


25 名前:名無しのひみつ[sage] 投稿日:2012/12/14(金) 11:21:21.83 ID:zvNcvPxe
産油国「日本に過度の輸出規制はしちゃだめだ!そんなことをしたら、やつらは石油なしで走る車を作ってしまう!」

27 名前:エラ通信! ◆0/aze39TU2 [sage] 投稿日:2012/12/14(金) 13:11:20.65 ID:sq8eNq2I
>>25
それほぼ実話。

OPECが一バーレル100ドル超えさせないように増産決めたときの
サウジ代表の発言(大意

目先の値段は我々にとって恩恵をもたらす。しかし、過度の値上げは技術革新が怖い。
我々の生活をよりよいものにしている先進国の技術革新が我々の宝を、
ただの臭いドロに戻してしまうかもしれない。私はそれを恐れるものだ。
(日本に過度の輸出規制はしちゃだめだ! : 2chコピペ保存道場より)


●フィリピンバナナの輸入禁止、アメリカの大豆禁輸の結果は?

 もう少し失敗としてわかりやすそうだったのが、「アメリカの大豆の禁輸」です。私がTPP反対者はマルクス経済学者?重商主義・保護貿易主義で栄えた国など一つもないで気にしたアメリカの保護貿易主義の例であったことも、ありがたいですね。

<73年、米ニクソン政権は大豆の禁輸に踏み切り、主要な輸入国だった日本は豆腐、納豆の原料不足に直面した。だが、日本は官民あげてブラジルでの大豆栽培を促した。その後、米国は禁輸を解除したが、日本向けの供給は限定的となった。さらに、米国は今や圧倒的な大豆輸入国である中国市場をブラジルと分け合うことになった。米国の禁輸がブラジルを育てたのだ>

 もう一つまた中国絡みの例で、「中国のフィリピンバナナの輸入差し止め」というものがありました。ただ、これはまだ結果が出ていません。なおかつ他とは逆方向、生産国が輸出を制限するのではなく、使用する国が輸入を制限するもので、ちょっと異なりますね。

<中国税関は今年夏前からフィリピン産バナナの輸入を差し止め、中国に向かっていたバナナが日本やその他の市場にあふれている。その代わり、中国では味の落ちる海南島などのバナナが流通しているという。背景は中国とフィリピンが対立する西沙諸島のスカボロー礁の領有問題。中国の海軍艦船が占拠し、長らく周辺海域で漁をしていたフィリピン人漁民は出漁できない状況だ。中国はさらにバナナ農民を追い詰める狙いでフィリピンバナナの輸入を止めている>
 
 あと、記事では軽くしか触れていませんが、これは中国とフィリピンとの領土問題が絡んでいます。ただし、このフィリピンとの問題は別記事によると回復の兆しだそうです。…と書いていたら、実際、バナナ問題も改善した模様。2019年11月07日には、中国が重量ベースでフィリピンバナナ最大輸入国に、日本と韓国とは関税撤廃で交渉(フィリピン) | ビジネス短信 - ジェトロという記事も出ており、むしろ仲良しな感じでした。(最後だけ2021/02/22追記)


●EU離脱でイギリス離脱に…国内工場建設計画をとりやめて国外に

2022/12/02まとめ:EU離脱で書いた話がこちらのテーマにも合うので転載。EU離脱派がバラ色の未来を誇張した一方で、「離脱でイギリスは終わる」という主張もありました。私は「良くも悪くも大きくは変わらない」という可能性も考えていて、今回読んだ記事であった<EU規則をそっくりそのまま複製したイギリスの新しい国内規制に対応を余儀なくされている>というのがそういう話です。

 ただし、<EU規則をそっくりそのまま複製したイギリスの新しい国内規制に対応を余儀なくされている>企業である化学企業ロビンソンズのエイドリアン・ハンラハンさんは、「慣れろと、政府は我々にそう言っている。とんでもない話だ」として、「変わらない」ではなく「悪化した」という考えのようでした。

 化粧箱メーカーのカレン・ロウエンさんは、今では欧州よりもアメリカやオーストラリアに製品を供給する方が安上がりだと説明。欧州で商売が成立しづらくなったということなので、これもやはりマイナスの話でしょう。このためなのか、別の企業はイギリス国内での工場建設をやめて、ポーランドに工場を建設するそうです。

<環境にやさしい最先端のラジエーターを製造している企業は、(引用者注:イギリスの工業都市である)バーミンガムで拡大する予定だった工場をポーランドに移すと言う。別の参加者は、150年続いたビジネスを続けるために闘っているのだと話しながら、声を詰まらせた>


●EUとイギリスの輸出入が激減 一方であの国との貿易が増えてしまう

 これらの話があったのは、【解説】 ブレグジットから1年、イギリス企業はどんな影響を受けたのか - BBCニュース(2022年1月1日 ファイサル・イスラム、経済編集長)という記事でした。新型コロナウイルスの流行を受けたロックダウンの影響を除いても、データから以下のようなものが見えるとまとめていました。

・ブリテン島は、英仏海峡間の通商が止まり、多大な社会的・経済的困難が生じるとされた「合理的な最悪のシナリオ」は回避した
・ブレグジット後の2カ月間は特に、輸出入の双方に、非常に大きな物質的なダメージがあった
・イギリスの輸出はその後の数カ月で回復したが、完全というわけではなく、衣料や食品などの業界はなお困難に直面している
・英・EU間貿易(輸出入双方)全体が、2021年の世界的な貿易回復の波に乗れず、2020年のパンデミックの低水準にとどまっている
・北アイルランドではアイルランドとの貿易が拡大したが、ブリテン島では落ち込んだ

 他の地域と比較しているのは説得力がありますね。2021年は新型コロナウイルス問題の反動でEUの貿易が回復した年でしたが、大きく増えた貿易相手はアメリカと中国だけでイギリスは2%の微増。今のところ、イギリスのEU離脱は、EUがイギリスから離れて、アメリカと中国との関係を深める結果になっています。

 同様にEUからの輸入も激減。<ブレグジットで新たに追加された検査は主にEUへの輸出品を対象にしており、イギリスへの輸入に対するものではない>のに減っているため、記事では「意外な結果」としています。とりあえず、EUとイギリスが疎遠になるということで、方向性としては一致していますね。

 このイギリスの輸入量でも、アメリカ・中国と関係強化という点は同じ。EUからイギリスへの輸入で「全体の30%減」と影響が大きかったのは自動車でした。一方、同じ時期の非EU加盟国からの自動車輸入は16%拡大しており、これはアメリカや中国からのテスラ車の輸入が影響しているとのことです。

 これ、アメリカはともかく、中国はどうなんでしょうね。中国への警戒感はリベラルも強いですが、より警戒感が強いことが多いのは一般的には右派の方です。EU離脱に積極的だったのも右派が多かったので、右派の選択が右派が嫌う中国との関係を深めてしまった…という皮肉な結果になったように見えます。

 こうなると、今度は「EU離脱」ではなく、脱中国!みたいな話も出てくるかもしれませんが、わざわざ自分で関係を深めておいて断絶をはかるので、そうでない場合と比べて難しい上に、関係を深める前以上に国内経済に大きな影響が出ることは確実でしょう。行き当たりばったりで、迷走している感じがします。


【本文中でリンクした投稿】
  ■TPP反対者はマルクス経済学者?重商主義・保護貿易主義で栄えた国など一つもない

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