2020/01/23:
●かつてはすべての天体が球面上にのっていると考えられていた
●太陽も星も月も音楽を奏でている…ケプラーも天球の音楽を利用
●天球の音楽が聞こえない理由は、大きすぎて常に鳴ってるから???
●かつてはすべての天体が球面上にのっていると考えられていた
2020/01/23:真面目に主張しだすと、ニセ科学なのですけど、ファンタジー的な感じでおもしろかったのが、
天球の音楽 | 現代美術用語辞典ver.2.0の話です。ただ、先に「天球」というものについての説明が必要でしょう。
「天球」というのは一般的に「観測者を中心とする半径無限大の仮想の球面」と説明されます。しかし、これではさっぱり意味がわかりません。私なりにわかりやすく言うと、地動説が信じられていなかった頃に、見た感じのの天体の位置を模型化したものといった感じですかね。
コトバンクのデジタル大辞泉の解説では、「地球上の観測者を中心とする半径無限大の仮想の球面。すべての天体がこの球面上にのっていると考える」としていました。また、世界大百科事典 第2版では、以下のように書いています。
<天体はきわめて遠方にあるのでその距離は実感されず,すべての天体は観測者を中心とする巨大な球面の上にのっているように見える。このように,すべての天体をのせた仮想の球面を天球という>
●太陽も星も月も音楽を奏でている…ケプラーも天球の音楽を利用
さて、「天球の音楽」の話です。おもしろかったというのは、上記のような天体の位置の話ではなく、天体が音楽と関連しているという考え方でした。古代ギリシャより、天体の運行が音を発し、宇宙全体が和声を奏でているという発想があったんだそうな。これはかなりユニークですてきです。これを「天球の音楽」と呼んでいたといいます。
こうした発想の根底には宇宙が数の原理に基づき、音楽はこの原理を体現するという西洋の伝統的思想があるとのこと。天球の音楽を着想したのはピタゴラスとされており、プラトンなどの多くの思想家がこの発想を受け継いだといいます。彼らは音楽を以下の3種類に分けて考え、また、これらの3つは段階をもちながら調和していると考えました。
「ムーシカ・ムーンダーナ(宇宙の音楽:天球が発する音楽)」
「ムーシカ・フマーナ(人間の音楽:人体が発する聞こえない音楽)」
「ムーシカ・インストルメンターリス(器楽の音楽:人間がつくる聞こえる音楽)」
かなり天体学に関して研究した功績者であるケプラーですら、自身の理論を天球の音楽に結びつけたというので驚き。
ニュートンは科学者ではなく魔術師 錬金術とキリスト教研究に夢中というのをやっているように、まだまだ科学とそれ以外がごっちゃになっていた時代だったんでしょうね。
●天球の音楽が聞こえない理由は、大きすぎて常に鳴ってるから???
ただし、彼らも実際に天球の音楽を聞いたわけではありません。むしろ聞こえないと考えていました。聞こえないくせになぜあると主張するのか?という話なのですけど、この考え方がまたおもしろいですね。その響きはきわめて大きいが、常に鳴り続けているため人間の耳には気づかれないとされていたそうです。
常に鳴っているから聞こえないという理屈はおかしいように感じるでしょう。ただ、匂いに関してなら知られている現象。
自分の匂いが気になるのにわからない理由 スメルハラスメントの危険性でやっているように、動物は自分の匂いに気づきづらいようにできています。また、一定範囲内の音波しか動物は音として感じられませんので、聞こえない「音」というのもあるにはあると言えそうな感じ。「大きすぎて」ではなく、「低すぎて」「高すぎて」ですけどね。
あと、老子を思い出させるフレーズでもありますね。有名な「大器晩成」という言葉は、『老子』四十一章の「大方無隅、大器晩成、大音希聲、大象無形」が元ネタ。書き下し文だと「大方は隅無く、大器は晩成し、大音は希声にして、大象は無形なり」となります。(
大器晩成:意味・原文・書き下し文・注釈 - Web漢文大系より)
この文章の大体の意味としては、「大きな四角というものは、大きすぎて角が見えない。大きな器というものは遅くできあがるので、その大きさがわからない。大きな音は大きすぎて、聞き取ることができない。大きな形は大きすぎて、形として認識できない」といった感じ。これは老子思想で重要な「道」を人間が認識できないことを示した説明なのですが、それは別にしても感じるところがある言葉です。
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