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蜃気楼の伝説 幻獣蜃は大ハマグリとも竜の一種とも


 蜃気楼の話ですが、現象そのものではなく、それにまつわる伝説的なところを。

蜃気楼と見られる記述が初めて登場したのは、紀元前100年頃のインドの「大智度論」第六まで遡る。この書物の中に蜃気楼を示す「乾闥婆城」という記述がある。また、中国では『史記』天官書の中に、蜃気楼の語源ともなる「蜃(あるいは蛟)の気(吐き出す息)によって楼(高い建物)が形づくられる」という記述がある。日本語の「貝やぐら」は、蜃楼の蜃を「かい」、楼を「やぐら」と訓読みにしたことばである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9C%83%E6%B0%97%E6%A5%BC

 私が気になっていたのは、この中の中国の「蜃」についてです。

蜃(しん)とは、蜃気楼を作り出すといわれる伝説の生物。古代の中国と日本で伝承されており、巨大なハマグリとする説と、竜の一種とする説がある。蜃気楼の名は「蜃」が「気」を吐いて「楼」閣を出現させると考えられたことに由来する。霊獣の一種とされることもある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9C%83

 "竜の一種とする説がある"とありましたけど、最初のWikipediaの「蜃(あるいは蛟)の気(吐き出す息)」のうちの蛟(みずち)も竜の一種です。


 まず、ハマグリ説。
中国の古書『彙苑』では、ハマグリの別名を蜃といい、春や夏に海中から気を吐いて楼台を作り出すとある。この伝承は日本にも広く伝わっており、江戸時代の鳥山石燕による妖怪画集『今昔百鬼拾遺』でも、「蜃気楼」の名で大ハマグリが気を吐いて楼閣を作り出す姿が描かれており、解説文で中国の『史記』を引用し、「蜃とは大蛤なり」と述べている。

 私はハマグリ説しか記憶にありませんでした。

 しかし、Wikipediaの記載はむしろ竜の方が長いです。

一方で竜とする説は、中国の本草書『本草綱目』にあり、ハマグリではなく蛟竜(竜の一種)に属する蜃が気を吐いて蜃気楼を作るとある。この蜃とはヘビに似たもので、角、赤いひげ・鬣〔たてがみ〕をもち、腰下の下半身は逆鱗であるとされている。蜃の脂を混ぜて作ったろうそくを灯しても幻の楼閣が見られるとある。さらにこの蜃の発生について、ヘビがキジと交わって卵を産み、それが地下数丈に入ってヘビとなり、さらに数百年後に天に昇って蜃になるとしている。宋の百科辞典『卑雅』の著者である陸佃も同様、蜃はヘビとキジの間に生まれるものと述べている。また『礼記』にはキジが大水の中に入ると蜃になるとあり、この発想は日本にも伝わっている。

 ただ、同じ『礼記』には以下のように書いているそうです。

『礼記』の「月令」では、蜃にハマグリと竜の2通りの説があるのは、ハマグリの蜃が竜族の蜃と同名であるために、両者が混同されたためと述べられている。

 この書き方からすると、ハマグリが正解なんでしょうね。

 ただ、龍族でも蜃がいるのですね。ややこしい。


 また、日本での蜃について。

日本において蜃を竜の一種とする説は、宝永年間の本草書である『大和本草』に記述されている。また江戸時代の百科辞典『和漢三才図会』には、竜類に属する蜃が蜃気楼を起こすという記述、大型のハマグリである車螯(わたりがい)が蜃気楼を起こすという記述の2種類があり、車螯は別名を蜃ともいうが、竜類の蜃とは別種のものとされている。


 それから、蛟との関係性。

虫という漢字の由来は、ヘビをかたどった象形文字で、本来はヘビ、特にマムシに代表される毒を持ったヘビを指した。読みは「キ」であって、「蟲」とは明確に異なる文字であった。

蟲という漢字は、元は「生物全般」を示す文字であり、こちらが本来「チュウ」と読む文字である。古文書においては「羽蟲」(鳥)・「毛蟲」(獣)・「鱗蟲」(魚および爬虫類)・「介蟲」(カメ、甲殻類および貝類)・「裸蟲」(ヒト)などという表現が見られる。しかし、かなり早い時期から画数の多い「蟲」の略字として「虫」が使われるようになり、本来別字源の「虫」と混用される過程で「蟲」本来の生物全般を指す意味合いは失われていき、発音ももっぱら「チュウ」とされるようになり、意味合いも本来の「虫」と混化してヘビ類ないしそれよりも小さい小動物に対して用いる文字へと変化していった。

貝の種類を表す漢字には虫偏のものが多い(「蛤」など)。

架空の神獣である「竜(龍)」に関しても虫偏を用いる漢字が散見される。「蛟」(ミズチ、水中に住まうとされる竜、蛟竜(こうりゅう)、水霊(みずち)とも呼ばれる)、蜃(シン)(同じく水中に住まうとされる竜、「蜃気楼」は「蜃」の吐く息が昇華してできる現象だと考えられていた)、虹(コウ、にじ、「虹」は天に舞う竜の化身だと考えられていた、虹蛇(こうだ、にじへび)という表現も用いられる)などといった標記が代表的なものである。ただ、竜(龍)に関する文字については、架空の「生物」として「蟲」の意を付与した虫偏を用いているのか、「ヘビの神獣化」として「虫」の意を付与した虫偏を用いているのかには賛否が分かれる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%99%AB

 もともと竜と貝は見分けづらいようですね。

 同じく漢字に関してですけど、「辰」の字。

 これは竜のイメージがありますけど、十二支は後付であり、本来動物と対応していたわけでありません。

 そして、歴史的に見ると、「辰」の字は本来「竜」よりも「貝」に関係があったように思える記載がありました。

その字源については『説文解字』では陰陽説から三月に陽気が動きはじめて雷が震動し、民が農作業を始める時期であり、芽が出る「乙」と変化の「匕」、声符の「厂」で構成される形声文字とする。しかしながら、甲骨文を見ると、三角状のものから丸と長く伸びる毛のようなもので描かれており、貝殻を開いて足を出した二枚貝に象る象形文字であり、「蜃」の本字と考えられている。辰が農作業と関わる意味が生じたのは貝殻を農具に用いたことからとも、磨製石器の形が貝に似ることからとも考えられる。

偏旁の意符としては農作業に関することを示す。また声符としてはシンといった音を表す(唇・震・晨・振・娠…)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%B0%E9%83%A8

 ここにも"「蜃」の本字と考えられている"ことから、やはり竜ではなくハマグリと考えた方が自然なように感じます。


 関連
  ■龍に関連する動物たち
  ■中国の麒麟のおもしろい特徴
  ■神話・伝承におけるカラス
  ■四季を司る神様
  ■吸血鬼の弱点の考察(流水など)
  ■その他の神話・伝承・不思議な話などについて書いた記事

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