2019/03/28:
●一流企業の7割が実施 でも本当は怖いM&A、東芝は巨額減損で凋落
●向かう所敵なしに見えた好調RIZAP、のれん代で急激に業績悪化
●「負ののれん」で儲かっているように見せていたRIZAP
●業績の悪い企業を買って改善、自信満々だったRIZAP社長
2020/06/26:
●RIZAP、頼みの綱だったスポーツジムの入会者数が94%減で崩壊
●松本晃・元カルビー会長兼CEOが来て、買いすぎM&Aを中止
●瀬戸健RIZAP社長、赤字なら辞任と啖呵を切った結果は…?
●一流企業の7割が実施 でも本当は怖いM&A、東芝は巨額減損で凋落
2019/03/28:過去に
日本人は企業買収が得意?M&Aは買う方が負けで売る方が勝ちだったという話をやっています。企業買収というのは、実はたいへん難しいようです。
最近の失敗例として有名なのが東芝。買った企業の業績が振るわず、巨額の「減損」に追い込まれてしまいました。
国策企業東芝の倒産危機は国に責任 原発推進でWH買収に圧力かけて高値買いなどで書いたように、東芝は国の圧力があって買収したという事情もあるのですけど、ともかく結果としては大失敗でした。
一方で、日本企業では最近買収が増えている模様。東証1部上場企業を代表する大企業で、日経平均株価を構成する225社について、朝日新聞と会計の専門家は、買収した企業の「見えない価値」を資産として計上する「のれん」代について集計しました。
その結果、7割にあたる約150社がのれんを計上していたことが判明。こののれんの総額は5年前の13年3月期(総額15兆円)に比べ約9兆円増加した24兆円に。5年で1・6倍になった計算です。
(
企業買収活況、のれん代膨張 ソフトバンクは4.3兆円:朝日新聞デジタル 座小田英史、松浦新 2018年11月24日11時14分より)
金額が膨らんだ理由としては、積極的な企業買収だけでなく、競合による買収価格のつり上がりが背景にあると見られています。これは、
日本人は企業買収が得意?M&Aは買う方が負けで売る方が勝ちだったでやった、実際の企業の価値よりも割高に買わざるを得ないという企業買収の宿命でもあるでしょう。
●向かう所敵なしに見えた好調RIZAP、のれん代で急激に業績悪化
もともと紹介したかった記事は別で、
RIZAP、下方修正の背後に「負ののれん」:日経ビジネス電子版(小宮 一慶 小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO 2019年2月1日)というもの。
飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長していたRIZAP(ライザップ)グループですが、急激に業績が悪化。2019年3月期の連結業績予想を下方修正し、営業損益が230億円の黒字から33億円の赤字に転落しました。急激に悪化した原因は、「M&A経営」とその会計処理にあるとのこと。
まず、RIZAPは特にここ1~2年、急ピッチでM&Aを進め、次々と企業を買収。17年3月期は前年同期比61.6%増の415億円。18年3月期は同50.8%増の625億円。19年は74.3%増の1091億円と、売上がものすごい増え方をしていました。
ただ、売上だけ見ていても仕方ありません。営業利益は17年3月期こそ、同325.5%増の63億円の黒字を計上したものの、18年は同22.0%減の49億円。そしてついに19年は88億円の赤字に転落しています。
●「負ののれん」で儲かっているように見せていたRIZAP
RIZAPは業績の振るわない企業も強気で買収。例えば、シャンプーなどを販売するジャパンゲートウェイは4~9月期だけで20億円の赤字を計上。結局この会社は売却することになり、19年3月期に8億円の売却損を計上する見込みだそうです。
この話はわかりやすいのですけど、わかりづらいのが、実は「負ののれん」によって、買収によって利益を増していた時期もあったということ。会社の帳簿上の価値は純資産額を上回る金額で企業を買った場合、差額は「のれん」として貸借対照表の資産の部に計上し、償却あるいは、場合によっては減損する必要があるのですが、逆に安く買うというパターンもあるそうなんです。
この場合は「負ののれん」となり、純資産額より低い金額で買収した分を利益として計上します。RIZAPはなんと、利益の多くをこの負ののれんが占めていました。どうもこの負ののれんでごまかしていたのをやめたために、一気に数字が悪くなったみたいです。
●業績の悪い企業を買って改善、自信満々だったRIZAP社長
また、もともと「負ののれん」を計上できるような叩き売りされている企業は、業績の悪い企業ですので、改善が難しい企業だとも言えます。イケイケだった頃のRIZAPの社長は、この改善に自信を見せていましたが、結局、前述のような赤字を出す結果に。
さらに本業である「美容・ヘルスケア」も19億円の赤字。これも買収の影響がありそうで、RIZAP本体は黒字だと説明(金額は未公表)されているものの、意外ですね。ひょっとしたら絶好調RIZAP…という認識自体が間違っていた可能性もあります。
それでも、小宮 一慶さんによると、「手元流動性」などの数字を見る限り、すぐさま経営危機に陥ることはないとのこと。ただ、このまま苦しい状況が続けば、銀行などからも見放される可能性があり、ずっと安泰とまでは言えないようでした。
●RIZAP、頼みの綱だったスポーツジムの入会者数が94%減で崩壊
2020/06/26:RIZAPはいよいよもって本業までがやばくなってきた感じですね。2020年3月期連結決算(国際会計基準)は、不採算事業の見直しで業績が持ち直して5億円の黒字だったのが一転、60億円の赤字(19年同期は194億円の赤字)という大赤字になりました。新型コロナウイルスが直撃して、2年連続の赤字となっています。
中核子会社RIZAP(ライザップ)が運営するスポーツジムの入会者数は年明けの1月は前年同月を8%上回っていました。しかし、2020年2月に各地のジムで新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が発生、スポーツジムは3密(密閉・密集・密接)の典型的な業種だと判明するという、業界にとって大きな出来事が起きました。
当然のことながら2月以降、入会者数が急減。2月は12%減、3月は57%減。緊急事態宣言が出た4月はなんと89%減。5月は驚いたことにこれよりさらにひどくなり、94%減まで落ち込んだといいます。次の営業の柱と考えていたゴルフスクールの会員数も、3月から減少に転じて、4月は87%減、5月は95%減と激減しました。
(
ライザップ、入会者94%減で経営危機…瀬戸社長“赤字なら辞任”の約束を反故、信頼低下 2020.06.25 06:00より)
●松本晃・元カルビー会長兼CEOが来て、買いすぎM&Aを中止
他の子会社も新型コロナウイルスの影響を受けている様子。傘下のジーンズ専門店、ジーンズメイト(RIZAPグループが57%出資)が消費税増税とコロナ禍のダブルパンチ。CD販売のワンダーコーポレーション(75%出資)ではライブイベントの中止が響き、集客力が落ちました。
このように買い漁っていたグループ内の企業はボロクソ。ただ、やりすぎM&A路線は変更していたようですね。RIZAPグループ子会社群は一時期、80社を超えていたのですけど、18年6月、RIZAP瀬戸健社長は指南役として元カルビー会長兼CEOの松本晃さんが取締役として来てから、これを改めています。
<松本氏は、新規のM&Aを進めようとする瀬戸氏に待ったをかけ、18年に凍結。20~30代の女性をターゲットにした婦人服・服飾雑貨を企画・製造・販売するアパレルSPAの三鈴(東京・品川区)の身売りやフリーペーパーを発行するサンケイリビング新聞社(東京・千代田区)の一部事業の譲渡などにより黒字化を目指した>
●瀬戸健RIZAP社長、赤字なら辞任と啖呵を切った結果は…?
ただし、その松本さんはわずか1年でRIZAPグループを去り、19年6月、中井戸信英さんと望月愛子さんが社外取締役に就任。ところが、この2人も2020年3月、社外取締役を辞任という混乱ぶり。RIZAP瀬戸健社長が封印されたM&Aを再開させようとして、意見が食い違ったのではないかと予想されていました。
RIZAP瀬戸健社長は、19年6月の株主総会で、「今期(20年3月期)の赤字は絶対にありえないという自信と確信を持っている。黒字にならなかったら、この場にいない」と啖呵を切っていました。新型コロナウイルスという特殊事情があったとはいえ、その「コミットメント」を、あっさりと破った形です。
瀬戸社長はウェブ上の決算説明会で「創業者として、こうした時期だからこそ覚悟を決めて、しっかり乗り越え、強い会社として生まれ変わって成長していく」などと語っていた模様。「~だったら辞める」と威勢のいいことを言っておきながら言い訳して辞めない…というのは、政治家でもありますね。
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