日経新聞の記事を読んでいると、気になる広告がありました。「地球上に存在する金は五十メートルプール何杯分?」という東京工業品取引所(TOCOM)、先物取引の宣伝です。気になって思わずクリックしてしまいましたが、これがなかなかおもしろかったです。
その話をやる前に、この先物取引の宣伝をベースにして作ったクイズの問いを書いておきます。(2013/1/12)
【クイズ】これまでに発掘された金の産出量と埋蔵量は50メートルプール何杯分でしょう?
2017/12/27追記:『ホビット 竜に奪われた王国』で出てきた金の量が多すぎる
●金が使われ始めたのはなんと紀元前3000年代
2013/1/12:回答の前にその宣伝ページの他のおもしろかったことを…と思いました。ただ、回答のあたりだけおもしろくて後は本当に宣伝的なもの。
私は
FX(外為)で大損退場となる前に FXをやめられるコピペなど、基本的に投資を止める話は書きますが、勧める話は書きません。ということで間を開けるために、別の話を書くことにします。
おそらく
Wikipediaのおもしろいところをつまみ食いしているだけで十分だろうと思うので、そちらから。
金は紀元前3000年代に使われ始めた。最古の金属貨幣は紀元前7 - 6世紀にリディアでつくられたエレクトロン貨で、天然の金銀合金に動物や人物を打刻している。金は中国で商時代に已に装飾品として使われ、春秋戦国時代には貨幣や象嵌材料として使用された。
日本では福岡県志賀島にて発見された漢委奴国王印がある。古墳時代には奈良県東大寺山古墳出土の「中平」銘鉄剣や埼玉県稲荷山古墳出土の「辛亥」銘鉄剣など、鉄地に線を彫って金線を埋め込んだ金象嵌がある。(中略)
古代エジプトのヒエログリフでは、紀元前2600年頃から金についての記述が見られる。ミタンニの王トゥシュラッタが、通常は粒として請求をしている。エジプトとヌビアは、史上でも有数の金産出地域である。
古いですね。キラキラしてきれいというのもありますが、"熱、湿気、酸素、その他ほとんどの化学的腐食に対して非常に強い"、"展性・延性に優れ、最も薄くのばすことができる金属"など優れた性質を持つことも関係ありそうです。
次の説明部分にもそういった理由が書かれていました。
金は金属としては非常に軟らかい物質であり、通常は銅や銀、その他の金属と鍛錬されて用いられる。金とその他の金属の合金は、その見栄えの良さや化学的特性を利用して指輪などの装飾品として、また美術工芸品や宗教用具等の材料として利用されてきた。さらに貨幣、または貨幣的を代替する品物として用いられてきた。
●金産出国ランキングの1位は中国!
あとは、金産出国ランキングなんてものも。
2009年の金産出国ランキング上位10カ国 数値は産出量(トン)、世界シェア(出典: 二宮書店『地理統計要覧 2012年版』)
1位 中華人民共和国 320 (13.1 %)
2位 アメリカ合衆国 223 (9.1 %)
3位 オーストラリア 222 (9.1 %)
4位 南アフリカ共和国 198 (8.1 %)
5位 ロシア 191 (7.8 %)
6位 ペルー 182 (7.4 %)
7位 インドネシア 130 (5.3 %)
8位 カナダ 97 (4.0 %)
9位 ウズベキスタン 90 (3.7 %)
10位 ガーナ 86 (3.5 %)
世界合計 2,450トン
●【回答】これまでに発掘された金の産出量は50メートルプール何杯分でしょう?
量の話が出てきちゃいましたが、クイズの答えです。
【クイズ】これまでに発掘された金の産出量と埋蔵量は50メートルプール何杯分でしょう?
金投資について知りたい!|TOCOM
これまで人類が採掘・精製し、地上に存在するものが約166,600トン(僅かオリンピックプール約3杯分)、今後採掘可能な金(経済的に生産可能な部分)が約51,000トンと推定されており(略)
http://www.tocom.or.jp/jp/tocom_gold/about.html
オリンピックプールとありますが、僅かに3杯分だそうです。信じられません。
●本当にそんなに少ないの? 計算してみる
ウィキペディアによると、オリンピックの競泳用プール(25 × 50 × 2 m)で2 500 m3 。これは容積でした。
ということで、密度は以下の値を用いて検算してみます。
密度 (室温付近) 19.30 g·cm-3 = 19.30×10^-3 kg/cm3
1 m3 = 10^6 cm3ですので、密度はさらに以下のように表せます。
19.30×10^-3 kg/cm3 × 10^6 m3/cm3 = 19.30×10^3 kg/m3
166,600 トン = 166,600×10^3 kgですので、これを密度で割ります。
166,600×10^3 kg ÷ 19.30×10^3 kg/m3 ≒ 8,632 m3
オリンピックの競泳用プールの容量は2,500 m3ですので、
8,632 m3 ÷ 2,500 m3 ≒ 3.45
3杯分というよりは3.5杯分と言いたい数字になってしまいましたが、プールに用いた値が異なるのかもしれません。まあ、大体3杯といったところになりました。
●埋蔵量の方は50メートルプール何杯分?
では、同様に"今後採掘可能な金(経済的に生産可能な部分)が約51,000トン"の方は?と言うと、
約51,000トン ÷ 19.30×10^3 kg/m3 = 約51,000×10^3 kg ÷ 19.30×10^3 kg/m3 ≒ 2,642 m3
ほぼちょっきりプール1杯分しかありません。衝撃的!
一応「経済的に生産可能な部分」とあるように、これは技術が伸びれば増えるものではあります。
石油なんかは何度かブレイクスルーを繰り返して埋蔵量が増え続けてきましたし、最近話題となったシェールガスは進展していなかった技術が近年一気に伸びたものです。
(参考:
シェールガス革命を成し遂げた3つの技術、
枯渇の問題じゃない!石油生産の減少、あの機関がついに認める)
金ではそういうのあるんですかね?あんまり聞きませんけど…。
●日本は金の保有量だと世界の上位
最後にWikipediaから金の地上在庫というのも。金の地上在庫とはこれまでに採掘され精製加工された金の総量のこと。そして、イギリスの GFMS の統計によれば2009年末時点で総量は165,600トンだそうです。
<主要各国の保有量>
アメリカ合衆国:8134トン(外貨準備に占める割合は78.2 %)
ドイツ:3413トン(同66.3 %)
フランス:2541トン(同59.4 %)
イタリア:2452トン(同68.1 %)
スイス:1064トン(同39.8 %)
オランダ:621トン(同61.2 %)
日本:765トン(同2.1 %)
中国:600トン(同1 %)
インド:358トン(同3.3 %)
これで見ると日本はよく金を持っている国に入るのです。さらにいわゆる都市鉱山というやつだと、もっと持っているようです。
日本初EEZ内でレアアースの泥発見(南鳥島)などで出てきました。
ウィキペディアでは、"2008年1月現在、日本に「地上資源」ないし「都市鉱山」として存在する金は約6800トンで、これは全世界の金の現有埋蔵量の約16 %にも及ぶ量である"と説明しています。日本はこういうのをうまく生かしていけたらいいですね。
●『ホビット 竜に奪われた王国』で出てきた金の量が多すぎる
2017/12/27追記:『ホビット 竜に奪われた王国』というファンタジー・冒険映画があるそうです。この映画ではたくさん金が出てきて、なおかつ重要な役割を果たしたとのこと。
思い切りネタバレなわけですが、
ウィキペディアのあらすじから、背景がわかるところとクライマックスの部分を抜き出します。
邪悪なドラゴン、スマウグに王国エレボールを奪われたドワーフの王子トーリンはスマウグを退治し、王国を奪い返そうと13人の仲間と、灰色の魔術師ガンダルフ、そしてホビットのビルボ・バギンズらとエレボールを目指して旅を続けている。(中略)
苦難を乗り越え、入り口と鍵穴を発見し、エレボールに到着した一行。ビルボはドワーフの秘宝である「アーケン石」を求めて一人エレボール内部に侵入するが、金銀財宝の溢れた宮殿の中で、邪悪な竜が眠りから目を覚まし、ビルボの前に巨大な姿を現す。ビルボはスマウグから「アーケン石」を奪い逃げようとするが、追い詰められてしまう。そこにトーリンたちが助けに現れるが、巨大なスマウグに太刀打ちできず危機に陥る。しかし、トーリンの機転でエレボールの炉に火を入れ、溶かした黄金でスマウグを固めようと思い付く。作戦は成功したかに思えたが、スマウグは固まる前に脱出し、ドワーフ一行に協力したエスガロスを滅ぼすことを告げ、エレボールから飛び立った。
そもそもファンタジーなんで別に批判しているわけじゃないと思うのですが、ここで使われた金の量というのがものすごいんだそうな。
なお、「人類がこれまでに採掘した金は9万t、地中の埋蔵量は推定6万t」というのは、うちでもともと書いていたものとかなり違う数字。
東京工業品取引所では、人類がこれまでに採掘した金は16.7万トン、今後採掘可能な金(経済的に生産可能な部分)が5.1万トンとしていました。この場合、ホビットの世界の7570万トンは、7570÷(16.7+5.1)で、およそ350倍となります。
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