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日本でもすでに起きていた製造業のリショアリング・国内回帰


2013/1/17:
●2012年、アメリカは製造業が国内回帰!と盛り上がっていた…
●海外生産が低コストというのは嘘でむしろ高コスト
●国内回帰を代表する新工場が生んだ新規雇用者数に驚き!
●米国企業が中国に進出したことで100万人の雇用が失われた?
●多額の補助金で実現!日本でもすでに起きていたリショアリング
2021/02/03:
●アメリカに製造業を取り戻せ!と重視していた業界から逆に大批判 【NEW】


●2012年、アメリカは製造業が国内回帰!と盛り上がっていた…

2013/1/17:"アメリカもチャイナリスクで脱中国 アップルやGEが国内回帰で日本もそれにならう?"(脱中国で製造業回帰…スティーブ・ジョブズ氏は全否定していたにタイトル変更)を書いた直後に米国製造業の「国内回帰」は虚構にすぎない――これも明日は我が身の問題(大前研一の「産業突然死」時代の人生論 nikkei BPnet 2012年05月28日 )という記事を見つけました。異なる意見ですので、こちらも紹介します。あと、書くと決めてから私が警戒している大前研一さんのものだったというのにも気づいてしまいましたけど、仕方ないですわ。

 企業が生産拠点を海外へ移す「オフショアリング」に対して、海外の生産拠点を再び自国に戻すことを「リショアリング」といいます。記事によると、2012年当時、リショアリング(生産拠点の再上陸)によって米国の製造業が国内回帰していると報じられていたそうです。

 例えば、米国のミシガン州キャントンでは、エレメント・エレクトロニクスのテレビ製造ラインが稼働し始めたことについて、2012年5月11日付の英フィナンシャル・タイムズ紙が「生産拠点、米国内に回帰」と題する記事を掲載。現在、リショアリングが米国で熱い支持を得ていると紹介していました。


●海外生産が低コストというのは嘘でむしろ高コスト

 しかし、「米国製造業の国内回帰が起きている」というのは虚構と言ってもいいだろうと、大前研一さんは見ていました。製造業のアメリカへの国内回帰の動きは本物ではないというのです。

 まず、中国がダメになったからといって、まっすぐ米国に帰るわけではなく、米国に帰る前に寄っていく場所がたくさん存在するとしています。それはたとえば、中国よりも生産コストが安いバングラデシュやインド、インドネシア、タイ、カンボジア、ベトナムであり、中南米やトルコ、さらにはアフリカでも良いとしています。さらに、以下のような指摘がありました。

・米国の製造業は組合や年金などで苦労した
・株主総会などで経営陣が質問の矢面に立たされるのは、「いつまで米国でつくっているのか?」「中国やベトナムでの生産を考えたのか?」といったオフショアリングの催促

 ただし、前回の脱中国で製造業回帰…スティーブ・ジョブズ氏は全否定していたでは、海外生産が低コストというのは嘘でむしろ高コストだといった説が出ており、上記の説明を全部否定していました。実はアメリカで作る方が儲かるのだそうです。


●国内回帰を代表する新工場が生んだ新規雇用者数に驚き!

 しかし、国内回帰している最近の事例を見ても、いずれも雇用創出効果が薄いという指摘が今回ありました。これについては、前回のものでも特に打ち消していなかったと思います。むしろ前回の主張でもそれを匂わせるところがあったため、前回は私が「国内回帰による雇用回復の効果は薄いということを示している」と付け足していました。

 雇用効果の低さですけど、前述のフィナンシャル・タイムズが国内回帰の代表例として紹介したエレメント・エレクトロニクスのテレビ製造ラインは、なんと新規雇用はわずか100人。1000人じゃありませんよ、わずか100人です。基幹部品はすべてアジアで生産し、それを米国に運んで「組み立て」ているだけのため。これでアメリカの国内回帰が進んでいる代表例とするのは無理があります。

 また、米国のリショアリング事例として注目されることが多い建設機械のキャタピラーですら、油圧ショベル新工場が新規雇用は500人、道路グレーダー(整地などに使われる特殊車両)の新工場が600人といった程度。大前さんは、記事で挙げたリショアリングによって米国内で創出された雇用者数は約3000人しかいないとしていました。


●米国企業が中国に進出したことで100万人の雇用が失われた?

 ただ、大前さんの以下のあたりはだいぶ変な説明。海外に工場を作ることで国内の雇用を奪っている…という誤解もあるのですけど、そういった勘違いがあるのかもしれません。
 一方、中国での米国企業の雇用者数は、1999年の29万人から2009年には144万人に増加している(中略)。つまり、オフショアリングによって米国企業が中国で創出した雇用は、この10年で115万人にも上るのだ。

(中略)キャタピラーがわずか500人の雇用を米国に戻しただけでも、オバマ大統領が「ついにキャタピラーが戻ってきた」とパフォーマンスすれば、大きな記事が掲載される。失われた100万人規模の雇用には目をつぶって、500人の新規雇用で大騒ぎするのは「木を見て森を見ず」の典型例だろう。

 「100万人規模」というのは、「もし中国で作った仕事を全部アメリカでやれば」という前提ですけど、「失われた」と言うとアメリカでの労働者を100万人規模で解雇して中国に生産拠点を移したかのように思ってしまいます。これは事実ではありません。

 なお、その後読んだ話によると、海外に進出する企業ほど、海外に進出しない企業より国内の雇用を増やしていることが研究でわかっているそうです。意外なことに、海外に工場を作る企業の方が、むしろ国内の雇用創出に貢献しているんですね。(ここだけ2019/04/07追記)


●多額の補助金で実現!日本でもすでに起きていたリショアリング

 記事では、日本の話もありました。日本でもすでにエレクトロニクスでは部品の多くが中国の広東省や「グレーター上海」(上海を中心とする巨大経済圏)にオフショアリングしてしまい、国内で最終組み立てをしようにもジャストインタイムとはいかなくなっているとのこと。

 シャープが三重県や亀山市から多額の補助金をもらって「亀山モデル」を標榜したのは2009年からでしたが、ご存知の通りこれも大失敗。わずか数年で破綻し、堺工場に集約。さらに2012年には主力であるはずの堺工場を運営する子会社の過半数の株も鴻海精密工業に譲渡されるといったことが起きていました。

 つまり、亀山モデルは日本版「リショアリング」の幻だと大前さんは書いていました。アメリカの国内回帰は幻か否か?どちらの言い分が正しいんでしょうね?

2019/04/07追記:と書いていたのですけど、その後、日本でもアメリカでもリショアリングによって大きく雇用を創出…なんてことは起きませんでした。アメリカの場合は、「アメリカに製造業を取り戻せ」と主張するトランプ大統領が誕生していますので、国内回帰が起きなかったことが非常にわかりやすくなっていますね。


●アメリカに製造業を取り戻せ!と重視していた業界から逆に大批判

2021/02/03:アメリカでは、トランプ大統領の演説に集まった支持者らが議会に侵入し占拠するという、事実上のテロ行為・クーデター未遂事件が起きました。これを受けて、全米製造業協会(NAM)のティモンズ会長は、憲法修正第25条を用いてトランプ大統領の即時免職を検討するよう政権幹部に要請したそうです。

 全米製造業協会、トランプ大統領の即時免職の検討を政権幹部に要請 | ロイター(2021年1月7日)によると、ティモンズ会長は、トランプ大統領は「権力を保持するために暴力をあおった」と指摘。「選出された指導者の中でトランプ氏を擁護している人々は憲法への誓いを破り、無政府状態を支持して民主主義を否定しているだ」とかなり強く批判していました。

 全米製造業協会(NAM)は、エクソン・モービルやファイザー、トヨタ自動車など、1万4000社の製造業者を代表する主要業界団体。全米商工会議所なども発言していますが、前述の全米製造業協会の発言ほど踏み込んだ発言はしていません。トランプ大統領が重視していたはずの製造業から最も強く批判された…というのは、興味深いところです。

 なお、トランプ政権においてもやはりアメリカにどんどん製造業に戻ってくる…ということはなかった感じ。トランプ政権は中国いじめをしたために、中国関連の輸入は確かに減ったそうですが、別の国からの輸入に置き換わっただけという指摘記事を読んだことがあります。そもそもアメリカは過去に輸出が多い日本をいじめて潰すことに成功したものの、今度は中国が台頭してきた…という経緯がありますからね。輸出の多い国をいじめることは、根本的な解決策にはならないのでしょう。


【本文中でリンクした投稿】
  ■脱中国で製造業回帰…スティーブ・ジョブズ氏は全否定していた

【関連投稿】
  ■円安で製造業国内回帰という幻想 トヨタ自動車は否定、キヤノンは無人工場の現実
  ■高機能なら売れるは間違い 新たな市場を作って差別化し棲み分けを狙う方が良い
  ■日本の製造業は労働生産性の低い仕事ばかり 国も海外委託を推奨、工場国内回帰信仰は間違いだった
  ■日本代表が下町ボブスレー不採用の理由 要望無視、人の心がない
  ■ビジネス・仕事・就活・経済についての投稿まとめ

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