またスティーブ・ジョブズさんネタがありました。
日本でiPhoneが生まれなかったワケ 専門家に聞く
日本経済新聞 2012/12/2 7:00 大西智也 日経産業新聞2012年11月28日付
日本の電機メーカーが世界で競争力を失うのを尻目に、米アップルは株式時価総額で世界1位に上り詰めた。最大の原動力はスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の「iPhone(アイフォーン)」だ。「ウォークマン」の音楽再生機能と「iモード」のインターネット接続機能を持ち、日本製部品を多く使う製品がなぜ日本で生まれなかったのか。関連する分野の専門家に見方を聞いた。
キヤノン電子社長・酒巻久氏
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD26010_W2A121C1X11000/ 今までの再確認という話が多いですけど、まあ、一貫性があるというのは良いことです。
話の関係で順番を変更して、まずこれ。
――ジョブズ氏の製品開発手法でほかに注目すべきところは。
「これも論語の言葉で『温故知新』だ。ジョブズ氏の画期的な製品はアイデアとしては既にあったもの。私はネクストの取締役だった90年頃、IT(情報技術)ベンチャーの米ゴーが手掛けていたペン操作のコンピューター開発に協力していた。タブレット(多機能携帯端末)の原型だ。ジョブズ氏は『絶対に失敗する』と冷ややかだった。なぜだと聞くと『時代が早すぎる』と。実際、CPU(中央演算処理装置)の速度が遅く、メモリーも高価で成功しなかった」
「ジョブズ氏は機が熟したら自分で作ろうと考えていたはず。それが20年後にiPadになった。(中略)アップルのパソコンで一般的になったアイコンも元は米ゼロックスのパロアルト研究所の開発。古い物に種を見つけ命を吹き込んで現代に応用する。それが成功の要因だろう」
アップルに独自の技術はほとんどないなんて言われますけど、技術があっても使えなければ宝の持ち腐れです。パクリだろうが何だろうが、スティーブ・ジョブズさんは使いどころにセンスがありました。
もう一つ、見落とされがちで重要なのは『時代が早すぎる』と『失敗する』というもの。今、みんなが欲しいと思えるものじゃなくてはいけません。これも何度か出てきた話です。
前もアップルの話でリンクしたんですが、
バルミューダの優しい風の扇風機GreenFan2、市場に革命を起こすのバルミューダが最初に失敗した理由や、
アップルVS日本の特許訴訟 イーパーセル、Googleに勝利の元の会社が失敗したという例があります。
キヤノンのNAVIというパソコンの失敗の話もありました。
――キヤノン時代の1988年に開発したパソコン「NAVI」はアップルを追われてネクスト・コンピューターを設立していたスティーブ・ジョブズ氏に絶賛された。
「NAVIはパソコンとワープロと電話とファクスを1台にまとめた。当時では先進的なタッチパネルを採用し、画面のアイコンを触れば電話をかけられた。残念ながら売れなかったが、米国では『こんな画期的な製品がなぜ日本で先に生まれたのか』と言われた。ジョブズ氏も驚いており、キヤノンが89年にネクストに出資した際は『NAVIを発展させた新しいコンピューターを一緒に作ろう』と話していた」
――NAVIの画面には『元に戻る』ボタンが付いていた。「iPhone」の正面のボタンと同じ発想だ。
「あのボタンはNAVIが最初に搭載した。当時のパソコンはソフトウエアが暴走すると専門家でなければ元の状態に戻せなかったので素人が使えるようにボタンを付けた。その後iPhoneが採用した。(中略)」
「iPhoneの登場まで日本メーカーはそうした発想を取り入れなかった。技術開発で一番大切なのは、孔子が論語で説いた『恕(じょ)』の精神だと思う。相手の立場に立って行動することだ。ジョブズ氏は米国で発売前だったiPhoneを私に2台送ってくれた。あのボタンを見て成功を確信した。iPhoneには使う人のことを考えた優しさがある。日本の携帯電話は説明書も分厚く過剰品質、過剰サービスと言える代物で、本質的でない部分に入り込んでいた」
上記を読むとNAVIは日本型の悪い多機能性志向も見えますが、タッチパネルなどの簡便性は良いセンスです。
ただ、しかし、やはり「残念ながら売れなかった」のです。
検索して見つけたブログでは下記のように書いていました。
キヤノン NAVI - がけっぷち人生向上ブログ
2012/2/5(日) 午後 8:20
当時のキヤノン販売は、国内規格のAX規格にも参加していたのもあり、
またApple製品の国内販売、数年後にはNeXT製品の国内販売を行なっていたこと、(2足、3足の草鞋)
さらには日本国内は圧倒的にNECのPC-9800シリーズが市場を押さえていた中で、
80286を採用していた事、モノクロ表示、FAX機能など多機能なゆえの高価格など色々な原因が重なり、
販売成績は振るわなかったのだと思います。
http://blogs.yahoo.co.jp/fffgc060/30180750.html 普及していない最初の頃は業務用で高額なものも結構ある気がしますが、それにしてもいろいろつけすぎたんじゃないかと思います。爆発的に売れるような製品ではありません。
あとは、私が何度も書いている「新興企業イジメをするな」「従来産業を保護しても日本は復活できない」の味方となるような話。
――日本メーカーはiPhoneを創り出せなかった。
「大企業から新しいものは生まれにくい。大企業の社内ベンチャーも最終決定者が古い世代であることが多い。古い世代は短い時間軸では物事を判断できず、技術があっても海外勢に置いていかれる」
私はやはり早く失敗・小さく失敗みたいな形が好みです。
チャレンジするのはいいんですけど、いきなり社運をかけてしまった挙句、見事に外したシャープみたいなことしてちゃどうしようもありません。
大いに失敗すべきですけど、小さく失敗しないと。
アップルも以前は失敗していてました。あれは割と洒落にならん失敗の類のような気もしなくはないですが、それでも早い時期だったのは幸いでした。
酒巻氏は大学教育のあり方に加え、教養の大切さも説く。「技術屋であっても地理や歴史の素養は必要。専門知識しかない人間が実社会で成功するのは難しい」と手厳しい。「幅広い知識があれば他の分野に応用できるため可能性が広がる」とみるからだ。
これもやはりスティーブ・ジョブズさんの話に持っていくことができます。スティーブ・ジョブズさんは一見関係ない分野を勉強していたけど、パソコン作りで役に立ったという話がありました。
また、ここは三鷹光器の中村義一さんの話も思い出しました。
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三鷹光器 中村義一会長4 ~「専門家」ではいけない~ 最初に書いたように、以前のおさらいみたいになりました。
ただ、それだけ普遍的で本質的なことなんだと、考えてもらえればいいかなぁと思います。
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