メルカリの話をまとめ。<メルカリ新卒採用9割外国人、2ちゃんねるでは意外に好意的>、<外国人ばかり…頭が悪い日本人はいらないということなのか?>、<中国人のパフォーマンスは低いから採用しないという日本人も…>、<「日本人がいらない」というよりは「日本人がいない」状態?>、<日本は世界で一番「ハイコンテクスト」…これは長所・短所どっち?>などをまとめています。
2023/06/05追記:
●日本は世界で一番「ハイコンテクスト」…これは長所・短所どっち? 【NEW】
メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間

●メルカリ新卒採用9割外国人、2ちゃんねるでは意外に好意的
2018/10/04:フリーマーケットアプリ最大手のメルカリが、10月1日付で入社した中途採用や新卒社員向けの説明会を東京都内で開きました。新卒は50人のうち44人が外国籍ということで、およそ9割が外国人。特にインド出身が32人で多いですね。6割以上です。
(
メルカリ、新卒9割が外国籍=インド名門大出身も|10月1日(月)16時29分 時事通信より)
「10月1日付で入社」ってのは、中途採用だけじゃなくて新卒社員もそうなんですかね? ひょっとしたら秋採用の他に春採用があって、そっちに日本人が多いのかもしれない、とも思いました。
ただ、本当に年間通しての採用で外国人ばかり…であった場合、日本人としては心穏やかではないでしょう。ところが、意外なことに、まとめサイトで見た2ちゃんねるの反応は好意的。「優秀だから仕方ない」といったものや、さらに「日本の若者より良い」といったものもありました。
一方で、やっぱり2ちゃんねるらしい反応もあり、「インド人は責任感が無い」「インド人は臭い」といった内容のコメントも少数ながらありました。後者に関しては、露骨に差別的なヘイトスピーチになっています。
●世界最高の大学・インド工科大学からメルカリに来る不思議
台湾や中国、米国の出身者も採り、海外展開の強化を狙うとメルカリは説明していたそうです。ただ、他にメルカリにそんなにIT人材が必要?といった反応もありました。あと、私は優秀なインド人がメルカリのような企業に来るというのが、不思議な気もしました。大企業でなくても、もっとやりがいのありそうな企業がありそうな気がします。
時事通信によると、メルカリは昨年、同国でIT技術を競うイベントを開催し、知名度が向上。今回の採用者には、インドの名門、インド工科大学(IIT)卒業生も含まれており、こうした採用に結び付いたと説明されていました。
インド系IT社長・有名人 マサチューセッツ工科大すら滑り止め扱いでハイレベル人材が豊富で書いたように、インド人的には、マサチューセッツ工科大よりインド工科大学が上で、世界最高峰という感じ。そんな人が日本の企業、しかも、メルカリに来るというのは意外でした。
●外国人ばかり…頭が悪い日本人はいらないということなのか?
2ちゃんねるでは、今の日本人は仕事ができないから…といったものがありました。若い人限定の言い方をしているものがあり、2ちゃんねるユーザーに中高齢者が多いことを考えると、「自分たちは優秀だったけど」という若者バッシング的なところもあるかもしれません。
ただ、日本人が特別頭が悪いということではないでしょう。メルカリの場合、海外展開向けという特殊事情があったものの、普通に最高の人材を国籍に関係なく集めたとしたら、外国人が増えて当然です。単純に世界には日本人より日本人ではない人の方が多くいるのですから、分け隔てなく選ぶと外国人が多くなるケースは出てきます。
また、予想と違ってそういった反応はなかったのですけど、「外国人に仕事が取られる!」的な不安を持つ人もいるでしょう。アメリカでトランプさんが人気ある理由の一つのは、外国人においしいところを奪われているという被害者意識があるためです。この関係では、
高齢者・移民・女性が若者の仕事を奪うというよくある誤解「労働塊の誤謬」という投稿をしていますので、参考にしてください。
●中国人のパフォーマンスは低いから採用しないという日本人も…
2020/07/26:最後に日本人が特別頭が悪いということではない…という話を書いていたのですけど、これとほぼ真逆といった感じで、中国人は頭が悪いので採用しない…といった日本人経営者の主張がその後問題になりました。こちらも同じくちょっと考えれば「あり得ない」とわかる頭が悪い主張です。
東京大学特任准教授だというAI企業の代表の男性は、「弊社では中国人は採用しません。そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします」とツイート。「約200人の雇用データをAIで分析した結果、中国人のパフォーマンスが低いことが統計的に明らかになった」「差別的な意図はまったくない」などと主張していました。
(
中国人は採用しない―暴論投稿の東大准教授あきれた言い訳「中国人はあのくらいでは傷つかない」: J-CAST テレビウオッチ 2019年11月27日11時35分より)
ただ、人間は個人差が大きい生き物。冷静に考えて、日本で一番仕事ができない人が、中国に行くと一番仕事ができる人になって大スターになる…なんてことはあり得ません。仕事ができる人・できない人の差は人種間での差より大きいので、人種に関係なく、「普通に仕事ができる人を選ぶ」というのが、最も良い選考なのです。
●優秀なインド人が日本のメルカリを選んだ理由が全然わからん
2021/11/06追記:その後、メルカリのインド人技術者はどうなっているのか?と検索したのですが、そういった話はなし。
「知名度ゼロ」だったメルカリ、インド最難関大から一挙採用 海外IT人材つかむコツ:朝日新聞GLOBE+(2021.07.09 目黒隆行)という新しい記事はあったものの、採用時の話みたいですね。とりあえず、これを読んでみます。
<採用に先立つ17年10月には、社員ら約15人が1週間近くインドに滞在し、IITなど難関大の学生を対象にしたハッカソン(プログラム開発のアイデアや技術を競うイベント)を開くなどしてアピールした。ハッカソンには最終的にIIT全23校や、他の難関大学からもエントリーがあり、想定以上の好感触をつかんだという。企業のグッズやTシャツなどを使った地道なPRにも力を入れ、12月に始まった学生の採用面接では、一部企業にしか認められない採用面接解禁日の面接枠を、米マイクロソフトやゴールドマンサックスなどと並び獲得。優秀な学生の採用に成功した。
採用活動はこれで終わりではなかった。スムーズに日本での生活を始められるよう、日本語の研修を2カ月インドで受けられるようにしたり、家族の絆を重視するお国柄を重んじ、インドで内定者の家族も招いた歓迎会を開いて親の不安をなくしたり。住まい探しから銀行口座の開設、携帯電話の契約まで、会社が丁寧にサポートする体制も整えたという>
小見出しに「インド学生の心つかんだハッカソン」とあったものの、具体的にこのハッカソンの何が良かったのかは不明。また、マイクロソフトなどにしか認められない枠をメルカリがもらえた理由も不明。権威付け効果が大きそうな後者の方がより重要だった可能性もあるのですが、とにかくよくわかりませんね。
●「日本人がいらない」というよりは「日本人がいない」状態?
知りたかった外国人社員の入社後の話に関しては、メルカリではいま、東京オフィスで働くエンジニアの約半数を外国人が占めている…という話がありました。となると、今のメルカリのサービスはすでにもう外国人社員の力が大きいと言えそうな感じがします。すでに定着して力を発揮していると考えて良いんでしょうね。
また、当初ちらっと書いていた「日本人はいらない?」に関して言うと、関連しそうな「日本ではIT人材は慢性的な人手不足に陥っている」という話がありました。以下のように、そもそも日本ではその仕事を担うSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)分野を学ぶ人材が少ないそうです。「日本人がいらない」というよりは、「日本人がいない」といった感じですね。
<ユネスコの統計によると、18年にSTEM分野で学位を取得した人数を国別に見ると、最多は中国で約37%。インドが約21%、米国が約5%と続く。日本は約1.6%だ。
また、経産省が19年に公表した「IT人材需給に関する調査」によると、30年には国内のIT人材は約45万人不足すると試算されている>
●たまたま採用で驚いてインド人にハマる「技術もコミュ力も高い」
記事はメルカリだけの話ではなかったようで、工場の自動化に欠かせない独シーメンス社製の制御盤の扱いが得意な亀山電機(長崎市)の話もありました。ウェブ制作やソフトウェア開発なども手がけ、約80人の従業員の1割が外国人。当初から外国人狙いだったわけではなく、使ってみたら良すぎてびっくり!という流れだそうです。
<コロナ禍に多くの企業が苦しめられる中、亀山電機では外国人社員が活路を切り開いた。国をまたいだ移動が難しくなり、日本やアジア各地の工場に、輸入機器を扱うことのできる欧州の技術者が来られなくなった。そこで、日本にいる外国人社員が得意の英語力と高い技術力を武器に、その操作を代行して乗り切った。(中略)
会長の北口功幸さん(55)は、もともとインド人だから採用したわけではない、という。県内の大学で日本語を学んでいたインドからの学生がいて、数年前に1人採用したのが初めてだった。だが、その後も続けてインド人を採用し、「インド人は高い技術を持ち、コミュニケーション能力が高い」と驚いたという>
●企業が外国人や大学の留学生を幹部に受け入れ…なぜ日本人じゃない?
2023/01/08まとめ:別の投稿で書いていた外国人採用重視の話がこちらにも関係するので転載しておきます。、
留学生育て世界市場開拓 ものづくり企業、幹部に積極起用: 日本経済新聞(2013年11月25日 0:48)という記事の話でした。記事タイトルと異なり、留学生だけでなく、外国人全般の内容です。
記事冒頭によれば、以前から、国内の大企業がグローバル人材として積極的な採用に動いていたとのこと。ただ、記事で取り上げれていたのは、中堅・中小のものづくり企業の間で、外国人留学生を活用し海外事業の拡大に成功するケースが出てきたというものでした。たぶん今までになかったことなんでしょうね。例えば、以下のような例が出ていました。
<留学生の採用に注力してきたせっけん製造のサラヤ(大阪市、更家悠介社長)は現在、国内事業所で21人の外国人が働く。国籍は中国、インド、米国やロシアなど多岐にわたる。開発や海外事業など主要部門に配置。同社の海外売上高は10年前は年10億円を上回る規模だった。最近は前年比4割増のペースで拡大しており、来年は年50億円規模になる見通しだ>
海外売上高が増えいているから外国人を…ではなく、外国人が海外売上高を増やしているという側面があるみたいですね。ウクライナ人の海外営業部長は、海外事業拡大の立役者の一人とされていました。日本語と英語を巧みにあやり、東南アジアなど新興国の他、ロシアなど、次々と海外市場を開拓。「意思決定のスピード感が抜群だ」と常務は目を細めます。
せっけんや洗剤などの衛生用品では現地の法規制に合わせた商品開発が必要。立ち上げには2~3年かかるとのこと。一方、この部長のように現地事情に通じる人材がいれば、短期間で参入し現地企業と取引できる…とされていました。ただ、部長はウクライナ人ですから、東南アジアの成功では現地事情より管理職として優秀だったからと考えた方が良いかもしれません。
●外国人留学生を「退社OK」で採用 中途採用の外国人重視の企業も
年間売上高が約25億円の中堅産業用ポンプメーカーの本多機工(龍造寺健介社長)も「海外顧客との商談などが容易になった」というのがメリット。ここは、「日本で就職した留学生が母国で事業ができるように独立も支援」することで優秀な人材を獲得。ただ、「退社OK」は日本企業の伝統的な価値観と違うので、保守的な企業には真似しづらいでしょうね。
私が探していた企業というのはアタゴ(雨宮秀行社長)だったのですが、ここは海外で強い企業なのでわかりやすいでしょう。食品の糖度などを計測する「屈折計」で3割の世界シェアを持ち、150カ国・地域で製品を販売。05年から日本で留学などの経験がある外国人の中途採用を開始、現在は5カ国語を話すエジプト人ら5人が活躍しているそうです。
2012年12月期の売上高は約22億円で、海外比率が6割に増えたのは、こうした外国人採用のおかげだとのこと。ただ、こちらの場合は記事タイトルと違って外国人留学生ではないですね。雨宮秀行社長は「中途採用の外国人は即戦力として期待できる」と語っており、外国人留学生ではなく中途採用の外国人が魅力というものでした。
●日本は世界で一番「ハイコンテクスト」…これは長所・短所どっち?
2023/06/05追記:以前、「ハイコンテクスト」と「ローコンテクスト」とは何?と思って検索したときに読んだページでは、メルカリが登場していました。
「ハイコンテクスト」・「ローコンテクスト」とは?メルカリの事例から考える | 株式会社イマジナというページです。
こちらによると、ハイコンテクストとは、暗黙の了解(前提となる、知識やカルチャー)が多く、行間を読むようなコミュニケーション方法。逆にローコンテクストとは、前提となる、知識やカルチャーの理解がなくても、分かるよう、シンプルで明快なコミュニケーション方法です。
そして、メイヤー・エリンさんの著書、『異文化理解力』によると、日本のコミュニケーションは世界で一番「ハイコンテクスト」。日本はほぼ単一民族国家で、海外と比較して考え方が似た人が多いとよく言われるんですよね。このため、わざわざ言わなくても伝わることが多いとの説明。これはこれで便利ではあります。
「空気を読む」ことも要求され、まさに行間を読むようなコミュニケーション方法。ただ、逆に言えば、空気を読めない人はさっぱりコミュニケーションできません。海外の人は特に困るでしょう。少子化で人口減少が進み、グローバル人材が必要となる日本企業にとってはデメリット。それを変革している例がメルカリだとされていました。
<(引用者注:メルカリは、)もともと、比較的似た経歴のメンバーが集まり、暗黙知も非常に高いレベルで共有していたため、「ハイコンテクスト」なコミュニケーションで全く問題がなかった。
しかし、現在は従業員数が40か国の国籍の1800人で構成され、多彩なバックグラウンドを経験してきた人がいる。この多様化された従業員が効果的に働くため、形式知の共有やガイドラインの提示、わかりやすい仕組みづくりが重要であった。(中略、引用者注:このローコンテクスト化の仕組みづくりにより、)組織が一体となり増収増益を維持し続けている>
メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間

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