6時間労働の実験をやったら失敗に終わった…みたいな反応がネットで多かった記事がありました。ただ、実際に記事を読んでみると、実験の中身はもう少し複雑。すべてにおいてうまくいくわけではないというだけで、良さそうな部分も見えています。また、その記事を読んでいて、8時間労働でも長すぎる説があったよねと思いだしたので、後半にそちらの話を紹介しています。
2017/2/14:
●6時間労働の実験は失敗って本当?仕事の生産性は85%も向上
●どう見ても成功しているように見えるのは失敗とされた理由とは?
●6時間労働を実際にやってみた企業、不評のためわずか1ヵ月で終了
●6時間労働が有効な組織とそうでない組織がある可能性は高い
●信じられない「労働時間が長ければ長いほど生産性が上がる」説
●実は8時間労働に大した根拠はなかった…昔は14時間労働も
●8時間労働でも長すぎる説「週40時間を減らしてみてはどうか」
2020/03/21:
●週休3日制で生産性大幅向上で大成功!実は日本でも例があった
●6時間労働の実験は失敗って本当?仕事の生産性は85%も向上
2017/2/14:当初こちらの投稿は、「6時間労働の実験は失敗に終わる」というタイトルで投稿していました。ただ、これはすべてにおいて失敗したわけではありませんし、うまくないやり方をしたせいかもとも感じるところがありました。
私が読んだのは、
「8時間労働」から「6時間労働」に変更した結果、人は本当に幸せになれるのか? - GIGAZINE(2017年02月13日 06時00分00秒)という記事。スウェーデンで行われている「6時間労働」を目指した複数の企業や公的機関が取り組みについて書いていました。
実際に6時間労働を2年間取り入れた結果、以下のようになったとのこと。これらはポジティブな内容なんですよ。ここだけ見ると、全く失敗しているように見えません。むしろ大成功のように見えます。
・看護師の病気休暇は8時間労働時よりも少なくなることが明らかになった。
・調査の結果、試験に参加している看護師たちも自身がより健康的であると報告している。
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仕事の生産性は組織全体で85%も向上した。●どう見ても成功しているように見えるのは失敗とされた理由とは?
看護師の病気が少なくなったことは、看護師本人だけでなく、組織としてもプラスになりそうなもの。また、「仕事の生産性は組織全体で85%も向上した」は非常に大きく、大成功のように見えました。では、なぜ成功ではなく失敗という見方もできたのか?と言うと、お金の問題だったのです。
・試験結果から「あまりにコストがかかりすぎる」ということが判明。
・経済的に持続可能なものと思えない6時間労働の試験に税金を投資し続けることは不公正である、と主張する人々も登場した。
ただし、本当に"仕事の生産性は組織全体で85%も向上"したのであれば、労働時間を短縮して給与がそのままであったとしても、損はせずにむしろ得しているはずです。ここらへんの関係が、記事からは理解できませんでした。もうちょっと細かい話を知りたいですね。
●6時間労働を実際にやってみた企業、不評のためわずか1ヵ月で終了
考えられるとすれば、例えば、「組織全体」とはされていたものの、生産性が85%向上したという話は個別のたまたま良かったケースであり、全体でってことじゃないって感じですかね。「看護師の」ともありますし、この話で最初に出ていた介護施設に限った話かもしれません。
ここらへんの向き不向きは実際にあると考えられます。ゴセンバーグに拠点を置くバイオインク企業のエリック・ガテンホルムCEOは、「6時間労働が起業家やスタートアップの世界に合っているとは思いません」と述べていました。
というのも、ガテンホルムCEOは、6時間労働を実際に自社スタッフで試したことがあるのです。しかし、従業員からひどいフィードバックがあったことで、試験はわずか1ヵ月で終了することになったというさんざんなものでした。
●6時間労働が有効な組織とそうでない組織がある可能性は高い
これは逆に言えば、さっき言ったような生産性が大きく向上するところは6時間労働が有効だということです。この記事への反応は悲観的なものばかりだったんですが、解釈を間違えていると感じました。
ストックホルム大学のストレス研究機関で博士号を取得したアダム・セディ博士の説明もそんな感じ。まず、「6時間労働は病院などの組織で最も効果的だと考えています。なぜなら、そういった組織では6時間働き、その後、職場を離れて家に帰るだけで良いからです」とした上で、以下のようにおっしゃっていました。
「それに対して、仕事と私生活との境界線があまり明確ではない組織の場合、6時間労働はそれほど効果的ではないかもしれません。この解決策は、従業員が8時間で行っていた作業をすべて6時間以内に収められるかどうかにかかっており、もし不可能ならストレスレベルを上げることさえあります」
●信じられない「労働時間が長ければ長いほど生産性が上がる」説
ところで、この記事を読んでいて気になったのが、以前、ギガジンは「8時間労働でも長すぎる説」を紹介した記事を書いていたよね…ということ。試しに検索してみたら、やはりありました。
8時間労働が誕生した経緯と労働時間を短縮すべき理由 - GIGAZINE(2014年07月23日 06時00分37秒)という記事です。
この記事によると、1日8時間・週40時間労働が採用された発端は、18世紀半ばから19世紀にかけてイギリスで起こった産業革命までさかのぼります。当時のイギリスでは「労働時間が長ければ長いほど生産性が上がる」というクレイジーな考えでした。無論そんなことはなく、長時間労働すると、生産性が落ちます。
仕事を休むことが大切な理由 経営者は休憩時間を軽視しすぎ!で書いたように、休憩から時間が経過するとミスが多発することもわかっていますし、現在の労働では休憩時間を軽視しすぎているくらいです。
●実は8時間労働に大した根拠はなかった…昔は14時間労働も
で、実際当時の労働時間はどれくらいだったか?と言うと、1日14時間で、長いときでは16時間から18時間にもなったとのこと。マジでクレイジーです。でも、当然こんなアホな労働時間なので、健康問題や生産性の低下といった問題が多発。労働者が労働時間の短縮を訴える運動が起きるなどし、徐々に法律によって労働時間が制限されるようになりました。
8時間労働が出てくるのは、1861年5月1日のアメリカでの大規模なストライキ。さらに、1919年に開催された国際労働機関第1回総会で「1日8時間・週40時間」という労働制度が国際的労働基準として定められたといいます。
ただ、これらは歴史的経緯という説明だけであり、それ以外の説明はありませんでした。生産性を考える上で最適であるとか、身体的な影響を考えた上で最適だといった根拠があるわけではなさそうだったのです。
●8時間労働でも長すぎる説「週40時間を減らしてみてはどうか」
そんな中、クレジットカードによる借金問題やお金の節約術などに消費者として取り組むサービスを提供するFrugalingが「週40時間を減らしてみてはどうか」という提案を行っています。
FrugalingのSam Lustgartenさんは、テクノロジーの発展のおかげで時間当たりの生産性は劇的に向上しましたが、生産性が向上したおかげで得をするのは労働者ではなく雇い主だけだとしています。
労働時間が固定されているがために、自由時間にありったけのことをするために、時間を節約したり、少ない時間で満足感を得たりすることにお金を消費してしまっていると見ています。また、「経済が不景気だ」と騒がれる一方で、大企業は成長し続けていることも指摘していました。
ただ、こっちも結局、理念があるだけで、特に何か根拠があるわけじゃありませんでしたね。それで最初に読んだときはうちで紹介しなかった記事なのかもしれません。
なお、6時間労働とは異なりますが、
社員に長時間労働させない方が会社も儲かる 健康経営も本当だった!という話もやっています。この手の実験や研究が増えてくれば、どういった際にうまく行って、どういった際にうまくいかないという知見も蓄積されるでしょう。
ネットでは、雰囲気だけで「6時間労働はダメ」みたいになっていましたが、きちんと根拠を出しながら、議論されていくことを望みます。
●週休3日制で生産性大幅向上で大成功!実は日本でも例があった
2020/03/21:
週4日労働・週休3日制実験の真に驚くべき結果とは?ストレスが下がるのは当たり前、注目すべきなのは…でも追記した話をこちらにも追記。フィンランドのマリン首相が、週休3日制の導入を検討する考えを示したそうです。さらに、1日6時間労働制も併せて検討するとされていました。
「人々は家族や愛する人、趣味などにもっと時間を費やすべきだ」と述べており、私が興味を持った生産性の問題ではなく、これもまた思想ありきな感じ。一方、イギリスのガーディアン紙は、従業員の生産性を高めるだけでなく、二酸化炭素の排出量を下げるなど環境にも優しい取り組みだ、と解説していました。
(
フィンランドが「週休3日」を検討 マリン首相「家族や愛する人にもっと時間を費やすべき」 | キャリコネニュースより)
ただ、生産性の話は記事でも紹介があります。一つは前述のスウェーデンの件らしきもの。こちらの記事では失敗ではなく成功とみなされています。また、なんと日本でも19年8月に、日本マイクロソフトが週休3日制を試験導入し、生産性が約4割上がったという例があるんだそうな。従業員の94%が取り組みについて「評価する」と回答していたとのこと。やはり仕事によってはうまくいく可能性を感じますね。
【本文中でリンクした投稿】
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仕事を休むことが大切な理由 経営者は休憩時間を軽視しすぎ! ■
週4日労働・週休3日制実験の真に驚くべき結果とは?ストレスが下がるのは当たり前、注目すべきなのは… ■
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